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神奈川県が視覚障がい者用の投票補助具を作成 4月から各市町村の選管に周知
神奈川県選挙管理委員会が、視覚障がい者向けの新しい「投票用紙記入補助具」を発表しました。この補助具は、視覚障がい者の投票体験をより円滑にするために開発されたもので、透明なプラスチックケースに穴が開いており、周囲には凹凸が施されています。投票用紙をケースに挿入することで、触覚を使ってどこに名前を書けば良いかが分かりやすくなっています。
実証実験が好評
この補助具の導入は、厚木市での実証実験が好評だったため、神奈川県全域で推進されることになりました。県内の各市町村の選挙管理委員会には、4月からこの補助具の使い方を周知し、必要な場合は補助具を提供します。これにより、視覚障がい者の方々がより自立して投票できる環境が整備されることに期待が寄せられています。
「障がい者の権利を実現する一助になれば」
県選挙管理委員会の担当者は、「この補助具が目の不自由な方々の投票を支援し、障がい者の権利を実現する一助になれば」と述べ、今後も障がい者の意見を取り入れながら、より良い選挙環境を作り上げていくと話しています。この取り組みが、社会の多様性を尊重し、全ての人が平等に参加できる民主的な選挙を実現する一歩となることが期待されています。
視覚障がい:その状況と支援の重要性
視覚障がいは、視覚機能の部分的または完全な喪失によって生じる障がいであり、その程度や原因はさまざまです。この状態は、個人の日常生活において多くの挑戦をもたらしますが、適切な支援と社会の理解によって、生活の質を向上させることができます。
状況と影響
視覚障がいは、単に視力の喪失だけでなく、個々の生活に多岐にわたる影響を与えます。例えば、教育の分野では、視覚障がい者は視覚情報に依存する一般的な教育方法に適応する必要があります。
雇用の面では、視覚障がい者は適切な職場環境やアクセシビリティの問題に直面することがあります。交通では、十分なバリアフリーな環境が整備されていない場合、移動に制約が生じることがあります。
そして、社会的な相互作用では、視覚情報を伝える視覚的な手段が制約されるため、コミュニケーションの機会が制限されることがあります。
技術の役割
技術の進歩は、視覚障がい者の生活を向上させる上で重要な役割を果たしています。例えば、音声合成技術やスクリーンリーダーは、デジタルコンテンツへのアクセスを可能にし、視覚情報を音声や触覚情報に変換することで、情報へのアクセスを容易にします。
バリアフリーの推進
バリアフリーな環境の整備は、視覚障がい者の自立と社会参加を促進するために不可欠です。これには、公共の施設や交通機関におけるアクセシビリティの向上や、建築物や街路の設計における配慮が含まれます。また、点字案内や音声案内などのサービスの提供も重要です。
教育と啓発の必要性
視覚障がいに関する理解と啓発は、社会全体での視覚障がい者の権利を守るために不可欠です。これにより、差別や偏見が減少し、視覚障がい者が尊重され、包括的な支援を受けることができます。教育施設や職場、地域社会での啓発活動は、視覚障がい者との共生を促進し、多様性を尊重する社会の構築に貢献します。
視覚障がい者の支援に関する取り組みは、彼らが社会的、経済的、そして感情的な側面で充実した生活を送るために不可欠です。そのためには、個人、組織、そして社会全体が連携して取り組むことが必要です。
現代の挑戦と展望
現代の社会では、テクノロジーの進歩や啓発活動の増加により、視覚障がい者の支援が向上しています。しかし、まだまだ課題は残っており、特に開発途上国では支援が不足している場合があります。これらの課題に対処するためには、国際的な取り組みと個々の社会の努力が必要です。
視覚障がい者の権利とニーズを尊重し、彼らが自己実現を果たせるような社会の構築は、包括的な社会の実現に向けた重要な一歩です。
視覚障がいの影響と支援の必要性
視覚障がいは、単に視力の喪失だけでなく、個々の生活に多岐にわたる影響を与えます。例えば、教育の分野では、視覚障がい者は視覚情報に依存する一般的な教育方法に適応する必要があります。
雇用の面では、視覚障がい者は適切な職場環境やアクセシビリティの問題に直面することがあります。交通では、十分なバリアフリーな環境が整備されていない場合、移動に制約が生じることがあります。
そして、社会的な相互作用では、視覚情報を伝える視覚的な手段が制約されるため、コミュニケーションの機会が制限されることがあります。
技術の役割
技術の進歩は、視覚障がい者の生活を向上させる上で重要な役割を果たしています。例えば、音声合成技術やスクリーンリーダーは、デジタルコンテンツへのアクセスを可能にし、視覚情報を音声や触覚情報に変換することで、情報へのアクセスを容易にします。また、点字デバイスや拡大鏡などの補助具も、視覚障がい者が教育や日常生活で効果的に活動できるよう支援します。
バリアフリーの推進
バリアフリーな環境の整備は、視覚障がい者の自立と社会参加を促進するために不可欠です。これには、公共の施設や交通機関におけるアクセシビリティの向上や、建築物や街路の設計における配慮が含まれます。また、点字案内や音声案内などのサービスの提供も重要です。
教育と啓発の必要性
視覚障がいに関する理解と啓発は、社会全体での視覚障がい者の権利を守るために不可欠です。これにより、差別や偏見が減少し、視覚障がい者が尊重され、包括的な支援を受けることができます。教育施設や職場、地域社会での啓発活動は、視覚障がい者との共生を促進し、多様性を尊重する社会の構築に貢献します。
視覚障がい者の支援に関する取り組みは、彼らが社会的、経済的、そして感情的な側面で充実した生活を送るために不可欠です。そのためには、個人、組織、そして社会全体が連携して取り組むことが必要です。
視覚障がいの種類:理解と対応
視覚障がいは、視覚機能の部分的または完全な喪失によって引き起こされる状態であり、さまざまな種類が存在します。それぞれの種類には、異なる原因や症状があり、それに応じた支援が必要です。以下では、主な視覚障がいの種類について説明します。
失明
失明は、視覚機能の完全な喪失を指します。これは、光の感知や視覚情報の処理がほとんどまたはまったく機能しない状態です。失明は、先天性の疾患や外傷、加齢によるものなど、さまざまな原因によって引き起こされます。失明者は、点字や音声合成技術などの補助具を使用して情報にアクセスし、自立した生活を送るためのスキルを習得することが重要です。
低視力
低視力は、一部の視覚機能が損なわれている状態を指します。低視力者は、視力が低下しているため、視覚情報を十分に認識できない場合があります。例えば、物体や文字がぼやけて見えたり、視野が狭くなったりすることがあります。低視力者は、拡大鏡や特殊な光学器具を使用して、日常生活での活動を支援することがあります。
色覚異常
色覚異常は、色を正確に認識できない状態を指します。一般的に、赤緑色盲や青色盲などの形で現れます。これは、染色体の異常や網膜の異常など、遺伝的な要因によって引き起こされることがあります。色覚異常者は、特に信号や警告の色が重要な場面で注意を払う必要があります。
視野障がい
視野障がいは、視界の一部が欠落したり死角が生じたりする状態を指します。これは、眼球や視神経の損傷、網膜の疾患、または脳の損傷によって引き起こされることがあります。視野障がい者は、周囲の状況を把握するために頻繁に頭を動かしたり、特殊な訓練を受けたりすることがあります。
夜盲症
夜盲症は、夜間や暗い環境で視覚機能が低下する状態を指します。これは、網膜の異常やビタミンA欠乏などによって引き起こされることがあります。夜盲症者は、夜間運転や暗闇での活動に制限を受ける可能性があります。
眼の疾患: 白内障、緑内障、網膜色素変性症
白内障
白内障は、眼のレンズが混濁することによって視界が曇り、視力が低下する状態です。通常、レンズは透明であり、光が正常に眼底に届くことを可能にします。しかし、白内障が発生すると、レンズが濁ってしまい、視覚障がいを引き起こします。主な原因は加齢による変化ですが、外傷、糖尿病、または遺伝的な要因も関与することがあります。白内障は手術によって治療され、濁ったレンズが取り除かれ、人工レンズが挿入されます。
緑内障
緑内障は、眼球内の圧力が高くなり、視神経が損傷することによって引き起こされる眼の疾患です。緑内障は通常、症状が進行するまで気づかれないことがあり、視野の狭小化や視力の低下が進行することがあります。主なリスク因子には高眼圧、家族歴、糖尿病、高血圧などが含まれます。早期発見と適切な治療が重要であり、目薬や手術が使用される場合があります。
網膜色素変性症
網膜色素変性症は、網膜の外側にある色素細胞が損傷し、視覚障がいを引き起こす進行性の疾患です。この疾患は、暗闇での視覚障がいや視野の狭小化、または色覚異常などの症状で特徴付けられます。網膜色素変性症は、遺伝的な要因が関与することが一般的であり、現在のところ治療法は限られています。管理の一環として、暗所や夜間の安全確保、特殊な光学器具の使用が推奨されます。
まとめ
これらの眼の疾患は、患者の生活に深刻な影響を与えることがあります。早期の発見と適切な治療は、視覚機能の維持や改善において重要です。また、新たな治療法や技術の進歩により、これらの疾患の管理や治療が向上しています。未来では、より効果的な治療法や予防策が開発され、視覚障がいのリスクを軽減するための取り組みがさらに進展することが期待されます。
参考
【タウンニュース鶴見区版】 県選管 視覚障がい者用の投票補助具 県内で活用へ
障がい者就労 4月から雇用率引上げ 啓発に注力
4月から、民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられることになりました。これにより、障がい者雇用促進法の改正が施行されます。市内の就労支援センターの担当者は、「実際の仕事の質もより重要になってくる」と述べています。同時に、市健康福祉局も企業への啓発活動に注力しています。
神奈川県内では雇用率が全国平均よりも低い水準
この法律は、障がいの有無にかかわらず、誰もが希望や能力に応じて社会参加を果たせるよう促す「共生社会」の理念に基づいています。従業員40人以上の事業主は、1人以上の障がい者を雇用する義務が課されます。
しかし、神奈川県内では実際の雇用率が全国平均よりも低い水準にとどまっています。この問題に取り組むため、神奈川労働局では特に中小企業に対する支援を強化しています。
長時間の勤務が難しい障がい者の雇用を拡大するための特例が導入
一方、市健康福祉局も企業に対する啓発活動に積極的に取り組んでいます。出前講座などを通じて、企業にとって障がい者をどのように雇用すれば良いかを理解してもらうことが重要視されています。
改正により、長時間の勤務が難しい障がい者の雇用を拡大するための特例が導入されました。これにより、以前は週20時間以上働けない人は算定できませんでしたが、10時間以上であれば0.5人として算定できるようになります。
精神障がいを抱える人々が主に利用する市内のある就労支援事業所では、「20時間のハードルは高く、それができるのは一握りです。しかし、10時間ならば多くの人が力を発揮できるため、門戸が広がります」と担当者は喜んでいます。
仕事のやりがいや成長の機会が重要
横浜西部就労支援センターの担当者は、「雇用率だけに焦点を当てると、とにかく雇うことが重視され、その後のサポートが疎かになります。在籍していても仕事を与えられないケースもあるため、仕事のやりがいや成長の機会が重要です。共生社会を実現するためには、企業も障がい者雇用を負担ではなく、戦力として位置付けるべきです」と警鐘を鳴らしています。
この改正には、障がい者雇用の実務に関わる重要な事項が含まれており、企業にとって具体的な対応が必要になる内容となっています。
主な改正点は大きく3つ
主な改正点は大きく3つあります。まず、法定雇用率の引き上げと雇用を義務付けられる対象企業の拡大です。今回の改正では、法定雇用率が現在の2.3%から2024年4月から2.5%へと引き上げられます。
さらに、2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げられる予定です。また、雇用を義務付けられる企業の対象も変化し、現在の従業員43.5人以上から、2024年4月からは40人以上、2026年7月からは37.5人以上へと拡大されます。
次に、雇用率算定対象となる障がい者の拡大があります。これまでは、週20時間以上働けない人は算定できませんでしたが、今回の改正では10時間以上であれば0.5人として算定できるようになります。この変更により、さらに多くの障がい者が雇用の対象となります。
最後に、障がい者雇用報奨金・助成金の見直しが行われます。これにより、障がい者雇用を促進するための支援制度が改善され、企業が積極的に雇用を推進するための補助金や助成金が提供されます。
障がい者の雇用が進まない場合さまざまな問題が生じる
このような改正により、障がい者雇用に関する取り組みがさらに進展し、社会全体での理解と支援がより重要になってきます。企業は、法定雇用率の引き上げに備えて、積極的な雇用促進策を検討し、障がい者が活躍できる環境づくりに取り組むことが求められます。障がい者の雇用が進まない場合、さまざまな問題が生じます。
まず、障がい者の雇用率が法定要件を満たさない場合、企業は罰金を支払う必要があります。具体的には、不足人数1人当たり月額50,000円の障がい者雇用納付金が徴収されます。さらに、ハローワークから行政指導を受けることになります。この指導は、雇用納付金を支払っていても免れることができません。
厚生労働省が定める基準を満たさない場合
また、厚生労働省が定める基準を満たさない場合、企業は2年間で障がい者を雇用する計画を提出するよう求められます。これには、実際の雇用率が全国平均未満でかつ5人以上の不足がある場合や、10人以上の不足がある場合、法定雇用率に基づいて全く障がい者を雇用していない場合などが含まれます。
計画の提出後、1年目の12月に計画の進捗確認が行われます。計画の実施状況が改善されない場合、企業には計画の適正実施を勧告されます。最終的に、計画に基づいた雇用状況の改善が見られない場合、企業名の公表という厳しい措置が取られる可能性があります。企業名が公表されることは、その企業にとって大きなリスクとなります。
戦略的に障がい者雇用に取り組む必要
今回の改正は、これまでの0.1ポイント程度の引き上げと比べて、障がい者雇用の促進に国がかなりの注力をしていることを示しています。2026年以降も更なる法定雇用率の引き上げが予想され、企業の社会的責任が拡大することが期待されます。
このため、単なる一時的な対応ではなく、戦略的に障がい者雇用に取り組む必要があります。以下に、その具体的な取り組みのポイントを3つ挙げます。
中期的な人員計画に障がい者雇用を組み込む
3~5年の人員計画に障がい者の採用計画を組み込むことで、増員が必要なタイミングを見える化し、計画的な新たな障がい者の受け入れに向けた業務や環境の設定、募集活動を行うことができます。
短時間労働の障がい者の雇用を考える
改正により、短時間勤務希望の障がい者を雇用しやすくなります。特に、短時間しか就業できない障がい者に対して、柔軟な雇用条件を提供することが可能です。
支援機関を積極的に活用し、雇用する障がい者の支援体制を構築する
就職を希望する障がい者は、様々な支援機関のサポートを受けています。企業がこれらの支援機関を活用することで、障がい者の採用から職場定着までの様々な支援を受けることができます。特に、ハローワーク以外の支援機関を活用することで、より専門的な支援を受けることが可能です。
これらの取り組みを通じて、企業は社会的責任を果たしつつ、多様な人材を活かした効果的な組織づくりを進めることができるでしょう。
法的義務だけでなくポジティブな思考で取り組むことが重要
国が法的枠組みを強化し、障がい者雇用の促進に向けた取り組みを強化する中、企業においても積極的な姿勢で障がい者雇用に取り組むことがますます求められます。法的義務だけでなく、ポジティブな思考で取り組むことが重要です。
障がい者雇用は、企業にとってだけでなく、社会全体にとってもプラスの影響をもたらします。障がい者の多様な能力や経験を活かすことで、企業の多様性と創造性が向上し、新たな価値を生み出すことができます。さらに、障がい者に働く機会を提供することで、社会的包摂が促進され、より包括的な社会が実現されます。
企業がポジティブな思考で障がい者雇用に取り組むためには、以下のようなアプローチが有効です。
価値観の変革
障がい者雇用を単なる法的義務ではなく、企業の価値観や文化の一部として捉えることが重要です。障がい者が多様性の一部として認められ、その個々の能力や才能が評価される文化を築くことが必要です。
リーダーシップの発揮
上層部やリーダーが障がい者雇用に対する積極的な姿勢を示し、その重要性を従業員に伝えることが重要です。リーダーシップの下で、障がい者雇用に関する取り組みが推進されることで、組織全体がその価値を共有し、実践することができます。
社内教育と意識啓発
従業員全体が障がい者雇用の重要性やメリットを理解し、その取り組みに参加できるようにするために、定期的な社内教育や意識啓発活動が必要です。これにより、偏見や誤解が解消され、障がい者への理解と支援が深まります。
企業が積極的な姿勢で障がい者雇用に取り組むことで、社会的責任を果たし、組織の成長と持続可能な発展を実現することができます。
障がい者と健常者の賃金格差:課題と解決策
障がい者と健常者の間には、多くの場面で賃金格差が存在します。この格差は、経済的不平等や社会的包摂の課題として広く認識されており、解決に向けての取り組みが求められています。
格差の背景
障がい者の雇用における賃金格差は、様々な要因によって引き起こされています。
能力やスキルの見落とし
障がい者の能力やスキルが見過ごされ、健常者と同等のポジションに就けない場合があります。これにより、同じ仕事をしていても報酬が低くなることがあります。
就業機会の制限
障がいにより一定の職種や業務に制約がある場合、選択肢が限られてしまい、それに伴って報酬も低くなる傾向があります。
就業環境の適応
障がい者が就労する際には、適切な支援や調整が必要となります。これにより、企業側が追加の負担を感じ、賃金の低下につながることがあります。
格差解消のための取り組み
障がい者と健常者の賃金格差を解消し、公平な雇用環境を実現するためには、以下のような取り組みが必要です。
教育と意識啓発
障がい者に対する偏見や誤解を減らし、能力やスキルに基づいた評価が行われるよう、社会全体での教育と意識啓発が重要です。
適正な職場環境の整備
障がい者の特性やニーズに合わせた職場環境の整備が必要です。適切な支援やアクセシビリティを提供することで、障がい者も能力を十分に発揮できる環境が整います。
法的規制の強化
障がい者の雇用を促進し、賃金格差を解消するためには、法的規制の強化が不可欠です。障がい者雇用の義務化や賃金の公平性を保証する法律や規制の整備が必要です。
企業のリーダーシップ
企業のトップが障がい者雇用に対する積極的な姿勢を示し、社内での取り組みをリードすることが重要です。障がい者雇用に対するリーダーシップがあれば、組織全体がその重要性を理解し、実践することが可能になります。
まとめ
障がい者と健常者の間の賃金格差は、社会の包摂と経済的な公平性を求める上での大きな課題です。適切な取り組みが行われることで、障がい者も能力を十分に発揮し、健常者と同等の待遇を受けられる社会の実現が期待されます。
参考
【タウンニュース中区・西区版】 障がい者就労 4月から雇用率引上げ 市も企業啓発に注力
2024年4月障がい者の法定雇用率引き上げ、その対応とは?
「発達障がいグレーゾーン」は存在しない?専門医が「発生割合が増えているわけではない」と感じる理由とは?
「発達障がいグレーゾーン」の存在について、専門医が「発生割合が増えているわけではない」と感じる理由は、発達障がいの特徴が明確に定義されていないことにあります。精神科医の岩波明さんによれば、「発達障がいの症状の区分には客観的な指標が存在せず、個人差も大きい。専門医であっても診断に悩むことは多い」とのことです。
誤解が広まった理由
「発達障がい=自閉症」という誤解が広まった理由は、まず、診断名にあります。かつて、自閉症はDSM-Ⅳ-TRにおいて「広汎性発達障がい(PDD)」に含まれていました。このため、発達障がいと聞けば自閉症を指すという誤解が生じました。
また、日本の発達障がいの診療が長い間、自閉症を中心に行われてきたことも大きな要因です。この傾向が、発達障がいを自閉症と同義とみなす誤解を生み出しました。このため、一般の人々や医療関係者の中にも、「発達障がい=自閉症」という誤解が根強く残っているのです。
自閉症は医学界で「研究し甲斐のある」疾患とみなされてきました。なぜなら、自閉症はしばしば「強度行動障がい」を示し、他の児童期の精神疾患よりも治療や対応が難しいとされるからです。
強度行動障がい
強度行動障がいとは、自分の体を叩いたり、食べられないものを口に入れたり、壁をドンドン叩いて壊したり、他人を叩いたり、大泣きが何時間も続いたり、急に道路に飛び出したりする行動を指します。
これらの問題行動は、本人の健康を損なうだけでなく、周囲の人々の生活にも影響を及ぼすため、特別な支援が必要です。岩波さんが診療した患者さんの中には、「信号機を見ると必ず石を投げる」という特異な行動特性を持つ方もいました。
自閉症
自閉症は治療が難しく、鎮静化させる薬はあっても治療薬は存在しません。そのため、精神科に長期入院するケースも珍しくありません。このような背景から、日本では自閉症、特に知的障がいを伴うケースを診療の中心に据えてきました。さらに、教育界でも自閉症の治療教育に関する多くの研究が行われています。
世界的にも自閉症に対する関心は高く、自閉症や関連症状については積極的な研究が行われています。自閉症は多くの謎を含む疾患であり、その研究は未だ多くの進展を遂げています。
また、自閉症の人々には「サヴァン症候群」と呼ばれる特異な能力を持つ人も多く見られます。これらの人々は、驚異的な記憶力や再現力を持ち、その脳内システムに関する研究が盛んに行われています。各疾患には明確な境界線が存在しないというのが現在の医学の見解です。
ケースバイケースでの考察が求められる
ASD、ADHD、LD(読字障がい、書字障がい、算数障がい)、トゥレット症候群、サヴァン症候群などの区分は、あくまで現在の知見に基づくものであり、厳密な境界線を区別するものではありません。実際には、これらの疾患の特徴を併せ持つ例も多く存在し、異なる疾患の間には類似点も見られることから、一つの疾患としてではなく、ケースバイケースでの考察が求められます。
さらに、個別の疾患においても、症状の濃度には幅があります。同様の特徴を持っていても、一部の患者は比較的社会生活が可能な場合もありますが、他の患者は引きこもりを続けることもあります。実際、米国精神医学会のDSM改訂では、「PDD(広汎性発達障がい)」というカテゴリーが「ASD(自閉症スペクトラム障がい)」として変更された際に、「症状と症状の間に明確な境界線は引けない」という考え方が示されています。
「ADHD症状が明確だがASD症状もある」というケースは、その患者ごとに個人差が大きいことを示しています。このような状況は、各疾患の特徴がスペクトラム状に広がっており、境界線や範囲が明確ではないことを表しています。
実際に、患者さんを診察すると、単一の病名で説明できない場合がしばしばあります。例えば、ADHDの特徴が明確に見られる一方で、ASDに類似した対人関係の障がいも示す患者もいます。
強弱には個人差がある
さらに、複数の症状が併存している場合でも、その強弱には個人差があります。一人の患者がASD症状よりもADHD症状が強く見られる一方で、別の患者では逆の状況が見られることもあります。
このように、症状の区分には客観的な指標が存在せず、また患者ごとに特徴の発現の強弱にも大きな個人差があることが、診断や治療の難しさを示しています。
専門医であっても診断が難しいケースは珍しくありません。典型的な症状がない場合、診断はますます困難になります。
生育環境によって引き起こされる要素も考慮する必要
生育環境によって引き起こされる愛着障がい的な要素も考慮する必要があります。虐待や育児放棄などの過程で安心や安全を感じる機会を得られなかった子どもは、他人とのコミュニケーションに問題を抱えることがあります。複数の問題行動や精神症状が愛着障がいと関連している可能性もあります。
また、思春期の成長過程は不安定な時期であり、うつ病や不安障がいなどの精神疾患が発症しやすくなります。これらの精神疾患が同時に存在する場合も考えられます。
したがって、診断には症状の評価や個人差だけでなく、愛着障がいや他の精神疾患の影響も考慮する必要があります。しかし、医師に求められているのは正確な診断だけではありません。
むしろ、患者の個々の生活上の問題を理解し、その改善策を見出すことが重要です。診断は重要ですが、実際の生活の質を向上させることが最も重要なのです。
ADHDを抱える男性のケース
ADHDを抱える男性のケースでは、摂食障がいと万引き依存という異なる症状が同時に現れていました。
ある男性が摂食障がいで私の診療所を訪れました。彼は高校生の頃から食べ物に強い興味を持ち、食事にこだわりを見せるようになり、その結果拒食症の症状が出ていました。また、私立の有名大学に進学したものの中退し、後に別の大学に入学しました。
診療を進める中で、彼は「実は万引きに悩んでいるんです」と告白しました。摂食障がいと万引きは密接に関連していることがあります。かつて、マラソン日本代表の女性選手が好成績を収めるために減量を試み、食べ吐きをしていたところ、気がつけば万引きをしていたという例もあります。
集中力の不足、忘れ物が多かった
さらに、彼は「何度かパニック障がいを経験したことがあります」とも明かしました。そのときは落ち着いていたようでしたが、記憶を振り返ると小学校時代から集中力が不足していたことや、忘れ物やものをなくすクセがあったことが判明しました。これらの症状の背後にはADHDがあることが明らかになりました。
この男性のように、摂食障がいや万引き依存、パニック障がいなど、さまざまな症状が複合的に現れるケースでは、発達障がいが背後に潜んでいることがあります。その男性の家庭では、彼の言動について特に問題視されることなく、成人になるまで医療機関を受診する機会がありませんでした。
彼は、幼少期からのADHD、思春期からの拒食障がい、そして成人期に至るまでのパニック障がいといった、複数の症状が同時に存在していました。これらの症状が複合的に影響し合い、彼の日々を苦しめていたのです。このように、発達障がいではさまざまな精神疾患が同時に現れ、症状が複雑に絡み合うことがあることが示唆されます。
子どもの発達障がいの増加「YES」とも「NO」とも言える
「YES」の根拠は、文部科学省の調査結果によるものです。この調査によれば、全国の公立小中学校の通常学級における発達障がいの可能性がある児童生徒の割合が増加しており、10年前の調査に比べて2.3ポイント増加していることが明らかになっています。
また、発達障がい教育推進センターのデータによれば、自閉症や情緒障がい特別支援学級に在籍する児童生徒数も増加傾向にあります。
一方、「NO」という可能性もあります。発達障がいに対する理解が広まり、医療関係者や教育関係者、親御さんたちの関心が高まったことで、認知率が増加している可能性が考えられます。過去には認識されなかった発達障がいが現在では認識されるようになっているケースもあります。
医療の現場からは、「発達障がいの発生割合は以前も今もさほど変わらない。ただし、認知数が増加している」という実感があります。
「グレーゾーン」という言葉は医学的には使用しない
この言葉は、発達障がいの特徴がいくつか見られるものの、診断基準を満たしていないため、確定診断が難しい状態を指すものとして使われています。
しかし、医学用語としては存在しません。医学では、明確な「疾患」と「正常」の間には、その中間の「グレーの領域」が存在するとは認識されていますが、発達障がいの場合、この境界を明確にすることは難しいのです。
発達障がいは、身体的な疾患とは異なり、明確な診断基準が存在しないため、診断が曖昧なケースが存在します。そのため、「グレーゾーン」という表現は、不正確で曖昧なものをさらに不明確にする可能性があります。
診断の目安となる客観的な指標が存在しない
精神的な症状や主観的な症状は、数値化することが困難です。例えば、痛みの程度を考えてみましょう。「ひどい痛み」といっても、それはあくまで主観的なものであり、どれくらい痛いのかを客観的に測定することはできません。一方、肝機能障がいのような場合は、特定の数値を超えたら肝硬変と診断できるため、境界線を明確に設定できます。
しかし、発達障がいの場合、現段階では診断の目安となる客観的な指標が存在しません。そのため、境界を明確に設定することも難しいのです。
臨床医は診断を行う必要がありますが、情報が不十分な場合や症状が明確でない場合は、「~の疑い」という形で診断名を書くことがあります。しかし、「グレーゾーン」という言葉はあくまでマスコミ用語であり、医学的な用語として使用されることはありません。
まとめ
発達障がいの診断においては、客観的な指標が不足しているため、診断が困難なケースが多く存在します。この問題に対処するためには、さらなる研究や臨床の進展が必要です。発達障がいの特性を客観的に評価し、診断基準を明確化する取り組みが重要です。また、患者や家族への教育と支援を強化し、早期に適切な介入を行うことで、症状の悪化を防ぎ、生活の質を向上させることが必要です。
参考
じつは「発達障がいグレーゾーン」は存在しない…専門医が「発生割合が増えているわけではない」と感じる理由 不正確なものをさらに曖昧にするだけ #プレジデントオンライン
https://president.jp/articles/-/77562?page=1
ナイツ、ウエストランド、暗闇の舞台で輝く笑い 視覚障がい者も含めた新しい漫才体験
新潟市西蒲区のイベント会社「ホイミ」が主催した漫才ライブは、異色の舞台設定で注目を集めました。ナイツ、ウエストランド、三拍子、三四郎、きしたかの、キュウ…といった実力派の漫才師6組が、暗闇の中で笑いを届けるという斬新な試みでした。
照明を一切落とし客席もステージも漆黒の闇に包まれる
「真っ暗にしてもらっていいですか、芸人さんの気持ちになります」と齋藤桂代表が提案したこの漫才ライブは、視覚障がいの人々も含め、誰もが同じ環境で楽しめることを目指していました。会場の「巻文化会館」は、照明を一切落とし、客席もステージも漆黒の闇に包まれました。
齋藤桂代表は、「視覚障がいの人に楽しんでもらいたいから、暗くするっていうのは演出的に面白さもあるけど、僕の気持ち的には皆さんの環境で一緒に楽しみませんか?」と語ります。このイベントは、見えない世界を経験することで新たな気づきを与え、笑いと感動を共有するきっかけとなりました。
暗闇で繰り広げられた漫才の新たな可能性
齋藤桂さんがこの漫才ライブを企画するきっかけとなったのは、彼の1歳下の弟である真(まこと)さんの存在でした。真さんは視覚障がいを抱えており、よくラジオを聞いている姿を見て、齋藤さんは「耳で楽しむ世界」があることに気付きました。
「(暗闇は)僕らには特殊な環境ですけど『見えない世界ってこういうことなんだ』という風に感じてもらうきっかけにも、結果的にはなるといいなと」と齋藤桂さんは述べます。しかし、このイベントの開催に向けてはまさに“暗中模索”のようでした。
「『どうやって(舞台に)出ていけばいいですか?』って言われて『蛍光テープを貼って、そこを頼りに出ていく感じになると思います』と…」「もう…ここに向けて来る感じだ」と齋藤桂さんは話します。
主催者、出演者、観客の誰もが経験したことのない暗闇での漫才ライブ。果たして、どんな舞台になるのでしょうか?この新たな挑戦は、見えない世界への新たな扉を開くことになるでしょう。
挑戦と不安が交錯する暗闇の舞台
開場を迎えた当日、午後3時半になると大勢の人が会場に集まってきました。来場者たちは興味津々で、暗闇の中での演出や漫才師たちの工夫に期待を寄せていました。
齋藤桂さんは、開演を前に「良く考えると『どんなになるのかな』っていうワクワクと、悪く考えると何かトラブルとかハプニングがないことを願う」と語ります。
出演者たちも会場入りし、本番前に暗闇のステージを体感しました。「あ、暗!」「怖いな」「どうしよう、これ…」という声が漏れました。
「センターマイクに辿り着けるかどうか」
ウエストランドの井口浩之さんは、「ちょっと思ったより真っ暗なので、みんなが今思ってるのはセンターマイクに辿り着けるかどうか」とコメントしました。
また、三四郎の小宮浩信さんも、「ラジオとかでは言葉だけでネタで笑かすっていうのはある。それと一緒じゃないっていうのは、難しいところではありますね」と述べ、未知の舞台に対する不安を口にしました。
数々のステージに立ちながらも、この暗闇の舞台は出演者たちにとって新たな挑戦であり、少し不安な様子が見受けられました。しかし、その不安がまた、新しい可能性を切り拓く一歩への勇気でもありました。
視覚障がい者への配慮と支援
開場の時刻が迫る中、トイレの入り口には音声案内が設置され、会場内には出演者の経歴などをまとめた点字版パンフレットが配布されました。さらに、新潟駅から会場までの送迎バスなど、安心して参加できるよう様々な環境が整えられました。
今回のライブは、申し込みがあった視覚障がい者と同伴者合わせて132人を無料で招待する取り組みが行われました。そのための費用は、クラウドファンディングで募ったもので、目標とした額の倍、100万円もの支援が集まったとのことです。
「見える方も見えない方も声を出して楽しんで」
午後4時、開演を前に齋藤桂さんが舞台に登場しました。「本日は皆さまに直接お礼を申し上げたく、開演直前のお時間をいただきノコノコと挨拶に出てまいりました」と述べる齋藤さん。普段は挨拶をすることはないという彼ですが、このライブが大きな支援を受けて実現したことに対する“特別な思い”が感じられました。
「見える方も見えない方も、同じこの場所で声を出して楽しんで元気になって帰っていただけたらと思います。それでは開演します」と齋藤さんが呼びかけると、ライブはいよいよ始まりました。
新たな舞台、後半へ
観客の期待が最高潮となる中、ライブがいよいよスタートしました。前半は通常の照明の下、6組がそれぞれ1回ずつネタを披露し、笑い声が会場を包みました。
三拍子が登場し、「エビ」「え〜っとですね、ビールに合うんです」と独自のユーモアで会場を爆笑させます。舞台袖からライブを見守る齋藤さんの姿もありました。
そして、前半最後に登場したのは、このライブを発案し最初に出演を打診した「ナイツ」。軽妙なやり取りで会場を笑いの渦に巻き込み、期待に応えました。休憩を挟んでライブはいよいよ後半へ。
ナイツの塙宣之さんは、「きょう鼻に吹き出物できてるのでありがたいなと、暗闇が。異常にみんな練習してるっていうのが面白い。賞レースの楽屋並みにみんな練習してる」とコメントし、笑いを誘います。
ナイツの土屋伸之さんも、「結構なベテランたちですけど、緊張してますよ、ちょっと」と緊張感を漂わせながらも会場を楽しませました。
暗闇の中で、漫才が繰り広げられました
全ての照明を落とすと、会場は完全な暗闇に包まれました。きしたかのが登場し、「どうも~きしたかのです」「すごいですね」と掛け合いを始めます。センターマイクを挟んで、2人の立ち位置もばっちりです。
「どんな子になってほしいか、元気な子だったらいいかな」「元気な子!これは簡単ですね、元気と言えばこれ、高野の娘の名前はグルコサミンだね」「やだよ!」と、笑いを誘います。暗闇の中で、出演者たちは息の合った漫才を披露します。
ナイツが登場し、「♪Can you celebrate…」「安室ちゃんと言えばこの歌ですよ」「いまだに冠婚葬祭の時にこの歌」「婚だけだよ、葬式のどのタイミングで流れるんだよ」と歌いながら笑いを誘います。耳での情報だけの漫才に、お客は声を上げて大笑いします。
そして…「うわ~すげえ、こんな感じだったんだ、眩しいですね!」全てのネタが終わり、ライブは大盛り上がりのうちに幕を降ろしました。
「不思議な感覚」
舞台を終えて、ナイツの塙宣之さんは「不思議な感覚でしたよ、お客さんも妙な一体感が生まれて、なんかみんな、いつもより笑いが増してたような気がします」と感想を述べました。三四郎の小宮浩信さんも「きしたかのは明るい時よりウケましたからね」と笑顔で話します。
漫才師としての力量も試されたライブ。出演者は、お客の反応に手ごたえを感じていました。塙宣之さんは「次、文字だけで楽しむライブとか、そういうのもいいんじゃない」と提案し、小宮浩信さんも「コント師もやってほしい」と話します。
観客も大満足の2時間
観客も大満足の2時間だったようです。東京からの一人は「初めての試みだと思うんですけど、とても楽しかったです。かえって集中できたよね、音に」とコメントし、新潟県長岡市からの別の観客は「生で直接の声、迫力あるんですよ、テレビと違って。雰囲気がびんびん伝わってきますし、隣の人と笑いあうというのは楽しいものだなって改めて思いました」と感想を述べました。さらに、もう一人の観客も「また行きたいですね、今度は地元で開催してもらいたいなと思います」と希望を表明しました。
「自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ」と齋藤桂さんは言います。「いや~終わりました。大きなトラブルがなく…よかったです」と安堵の表情を見せます。
『自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ』
障がいがある人もない人も、みんなで笑う。そんな理想が形になった、特別な1日でした。ただ、齋藤さんはこれで終わりにするつもりはありません。
「東京でも大阪でも他のところが『やりたい』ということであれば、まんま同じことをやってもらっても全然構わない。大事なことは、この活動が広がっていって『楽しみたいけど、どうせ自分たちはできないんだ』ってあきらめていた人たちが今回で『自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ』って思ってもらえたことが大事だなと思う」と語ります。
次はどんな仕掛けで「みんなが楽しめる」ライブをつくるのか…新潟で生まれた新しい笑いの形がこれから、さらに広がっていくかもしれません。
障がいとダイバーシティ:多様性を受け入れる社会の構築
障がいとダイバーシティについての議論は、近年ますます重要性を増しています。障がい者の声が大きくなり、彼らが社会の一員として尊重される権利が認識されるにつれ、ダイバーシティ(多様性)の概念も変化しました。
障がいとダイバーシティの理解
障がいは、身体的、感覚的、知的、精神的な障がいなど、多岐にわたるものです。これらの多様な状況は、ダイバーシティの一部であり、それぞれの個性や経験を豊かにします。障がいを持つ人々は、多様な視点や能力を持ち、それが組織や社会に貢献する機会を提供します。
ダイバーシティの推進
障がいという言葉は、単なる問題や制限ではなく、個々の豊かさや多様性を表すものとして捉えられるべきです。
ダイバーシティの推進は、障がい者の社会参加や権利保護を目指すだけでなく、彼らの多様な価値や貢献を認識し、尊重することも含みます。これにより、障がい者が自信を持ち、自分のアイデンティティを誇りに思えるようになります。
ダイバーシティの利点
ダイバーシティを受け入れる組織や社会は、多くの利点を享受します。障がい者の多様な視点や経験は、イノベーションや問題解決において貴重な資源となります。
また、彼らが適切なサポートを受けながら活躍することで、労働力の多様化や効率化が促進されます。さらに、障がい者への配慮や支援は、組織や社会全体の包括的な成長と発展につながります。
ダイバーシティの実践
ダイバーシティを実践するためには、意識改革や教育が欠かせません。偏見や差別をなくし、障がい者を包括的に受け入れる社会を築くためには、積極的な取り組みが求められます。これには、適切な法的枠組みの整備や、障がい者の声を反映した政策の策定も必要です。
障がいとダイバーシティは、社会的な包摂や成長に不可欠な要素です。障がい者が多様な視点や経験を持ち、社会で自己実現を果たすためには、ダイバーシティの概念を受け入れ、実践することが重要です。これにより、より包括的で公正な社会が実現し、誰もが尊重される場所となるでしょう。
まとめ
ライブでは、漫才師たちが暗闇の中でユーモアを繰り広げ、観客は声だけで笑いを楽しみました。そして、出演者たちも舞台を終えて感想を述べ、「自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ」という感覚が広がったことを実感しました。齋藤さんは、今後もこの活動を広げていきたいと考えており、新たな笑いの形が生まれる可能性を示唆しています。
参考
ナイツやウエストランドら“暗闇の中”で漫才を「障がいがある人もない人も一緒に笑おう」 “耳で楽しむ世界”へ誘う | TBS NEWS DIG (1ページ)
統合失調症とは?誰にでも発症の可能性がある疾患 症状、原因、回復への道のり
統合失調症は、広く知られている病名ではありますが、その実態について理解されている人は少ないかもしれません。
しかし、この病気は非常に頻繁に起こるもので、周囲の人々が理解を示すことが重要です。ハウス加賀谷さんは、統合失調症の当事者として、自身の経験をもとに、病気と向き合う方法を考えています。
誰にでも発症の可能性がある疾患
統合失調症は若い人によく見られ、発症する可能性が高い時期にあります。その原因はまだ完全に解明されていませんが、誰にでも発症の可能性がある疾患です。松本ハウスのハウス加賀谷さんも、中学生の頃にこの病気を発症しました。
中学2年生の1学期の終わりごろ、ハウス加賀谷さんが統合失調症を発症した瞬間を振り返ると、その日の出来事が鮮明に思い出されます。「授業中、先生が後ろの女子生徒を叱責していました。彼女が下敷きで匂いを遮るような行動をしているとのことでした。私はその様子を見て、自分が臭いのではないかと思いました。その瞬間から、幻覚や幻聴に苦しむ日々が始まりました」と加賀谷さんは振り返ります。
統合失調症には陽性症状と陰性症状の両方がある
しかし、現在は毎日の服薬により寛解状態にあります。コンビを組む松本キックさんは、加賀谷さんの病気を受け入れ、20年以上にわたって変わらぬサポートを提供しています。「精神疾患を抱える人々を受け入れる社会はまだ進化途中です。知識不足がその理由です。まずは周知活動を通じて理解を深めることが重要です」と松本さんは語ります。
統合失調症には、陽性症状と陰性症状の両方があります。陽性症状は、実際には存在しないものを感じたり信じ込んだりする症状で、幻聴や妄想がその代表例です。例えば、見知らぬ人が自分を監視していると感じたり、実際にはない悪口が声として聞こえることがあります。また、自分の考えが他人にコントロールされていると感じたり、話が脱線してしまうこともあります。これらの症状は薬物療法で比較的治療が可能です。
陰性症状では意欲の低下や感情の鈍化が主な特徴
一方、陰性症状は、通常の状態が低下したり欠如したりする症状であり、意欲の低下や感情の鈍化が主な特徴です。喜怒哀楽の表現が乏しくなり、興味や関心が薄れていくこともあります。
部屋の掃除や身なりの管理に無関心になったり、社会からの引きこもりを選ぶこともあります。これらの症状は薬物療法だけではなく、精神的な支援や社会的な支援も必要とされます。
統合失調症における主要な症状の一つである「認知機能障がい」は、個人の認知機能の低下を伴います。認知機能とは、情報の処理や記憶、注意、計画立案、判断などを含む心理的なプロセスのことであり、これらの機能が低下することで、日常生活に支障をきたすことがあります。
例えば、新しい情報を覚えることが難しくなり、作業の途中で何をしていたのか忘れてしまうことがあります。注意力の低下により、他のことに意識が移ってしまったり、必要のない情報に気を取られてしまったりすることもあります。
計画を立てて実行する能力が低下
認知機能の低下は、日常生活のあらゆる場面に影響を与えます。例えば、仕事や学業において新しいタスクを遂行することが難しくなり、計画を立てて実行する能力が低下します。
また、社会的な場面でも、他者とのコミュニケーションが困難になることがあります。判断力の低下により、状況を適切に判断できなくなり、適切な行動が取れなくなることもあります。
統合失調症の患者における認知機能障がいは、その重症度や程度に個人差があります。しかし、これらの症状は病気の一部であり、本人や家族、医療専門家が適切な支援を提供することで、日常生活における障がいを軽減することができます。
中学2年生の時に発症した方の歩み
10年にわたる闘病の末、不安な状況との向き合い方を見出した例もあります。統合失調症を発症したのは中学2年生の時で、その後、さまざまな症状に苦しむこととなりました。常に不安であり、幻聴や幻覚に苦しみ、周囲の人々との関わりも辛く感じていたそうです。
その苦悩は、家族にも波及しました。特に母親は、状態を見てどう対応すれば良いのか分からず、不安と戸惑いが募っていました。毎日泣きながらも、良くなる兆しを見出せずに不安を感じていたそうです。
漫画で自身の感情や経験を客観的に表現する方法を見つける
しかし、2年半前から漫画を描き始めたことで、変化が現れました。自分の日々の感じたことや苦悩を漫画に描くことで、家族や医師とのコミュニケーションを深めるようになりました。その中には、人と接する際に感じる不安も率直に描かれています。
このような体験を通じて、自身の感情や経験を客観的に表現する方法を見つけました。そして、家族や医師とのコミュニケーションを通じて、支え合いながら不安な状況と向き合っているのです。
漫画を通じて、家族は初めて彼女が抱える不安や恐れを理解することができました。漫画には「家族に迷惑をかけてはいけない」「家族は私のことが面倒くさい」という内面が率直に描かれており、「ひたすらごめんなさい」という言葉が繰り返し登場します。
自身も漫画を通じて、自分の病気を客観的に見つめることができるようになりました。その漫画がクリニックのサイトに掲載されることになったとき、大きな転機が訪れました。自分の作品を読んでくれる人がいることで、自分の存在が認められ、生きているという実感を得られたそうです。この経験は彼女に自信や肯定感を与え、以前よりも症状が落ち着いてきたと感じています。
今では、自分の病気と向き合いながら、社会に参加し、人としての経験を積み重ねることを目指しています。彼女の言葉からは、自立と前向きな成長への意欲が感じられます。
「リカバリー」という概念
統合失調症において、「リカバリー」という概念が重要視されるようになっています。リカバリーとは、精神障がいのある人が自らの生き方を主体的に追求し、自己の希望や夢を実現することを指します。症状の完全な消失ではなく、本人の意思と周囲の支援によって、充実した生活を築いていくことが目指されています。
リカバリーの重要性を認識し、それを支援するために、精神科リハビリテーションや薬物療法が行われています。これらの治療は、本人が自己実現を追求するための基盤を提供し、国際的な治療指針となっています。
加賀谷さんは、自身のリカバリーの軸として「お笑い芸人であること」を掲げています。病気の影響で入院した後も、お笑い芸人としての復帰を目指し、その思いを貫いています。プレッシャーや困難さも感じながらも、「やってやる」という強い意志で前進しています。
評論家の荻上さんは、社会において統合失調症の当事者が受け入れられる場所をつくることの重要性を指摘しています。社会全体がリカバリーを支援し、当事者が自己実現を果たすための環境を整えることが求められています。
「見えない障がい」
統合失調症は他の精神疾患と同様に、「見えない障がい」として苦しむことがあります。病気そのものが本人に苦痛をもたらすだけでなく、無理解な社会がさらに当事者を追い詰めることもあります。具体的には、統合失調症の入院率が高いため、社会との接点が奪われやすいことが挙げられます。
また、学校や職場においては、差別や偏見に直面したり、就労の機会が限られたり、休職後の復帰が難しい場合もあります。こうした社会的なハードルが統合失調症の当事者にとって課題となります。したがって、病気そのものへの対処だけでなく、社会全体が受け皿となる支援をどれだけ提供できるかが重要です。
精神疾患の治療には時間がかかるが焦る必要はない
統合失調症が回復してくると、多くの人が「働きたい」という気持ちに駆られます。しかし、就職活動や職場での対応に不安を感じる声が寄せられています。
20代の方は、「働きたい」という気持ちにもかかわらず、就活中に自分の考えがマイナスの方向に向かってしまい、自信を持って話すことができないと悩んでいます。加えて、履歴書を送ってもなかなか採用されない厳しい現状に直面しています。
加賀谷さんは、このような声に対して焦らずに前向きに取り組むことを応援しています。自身も精神疾患と闘いながらコンビを復活させるまでに10年を要した経験を持ち、その過程が自身の人生にとって必要なものだったと振り返ります。
精神疾患の治療には時間がかかることが多いため、焦る必要はないと述べます。絶対に諦めず、自分のタイミングで働きたいという気持ちを大切にすることを助言しています。
統合失調症を隠すのは差別される恐れがあるため
一方で、統合失調症を公表せずに働く人もいます。30代の方は、周囲の反応や対応に不安を感じ、病気のことを正直に話せないことに悩んでいます。自身が冷たい態度をとられると動揺してしまうなど、心理的な負担があります。このような状況下での仕事はつらく、精神的なサポートが求められます。
荻上さんは、統合失調症を公表しても差別されない社会を作る必要性を強調しています。多くの人が統合失調症を隠してしまうのは、就職などの段階で差別される恐れがあるためです。
そのため、社会全体が差別のない環境を作ることが重要だと荻上さんは考えています。また、統合失調症の早期発見と治療の重要性も指摘されています。症状が強く生活に支障をきたしている場合や、妄想や幻聴などが疑われる場合は、専門家に相談することが重要です。早い段階で治療を始めることで、より良い回復が期待できます。
統合失調症:理解と支援が必要な精神疾患
統合失調症は、精神疾患の一つであり、その症状や影響は個人によって異なります。一般的には、現実感覚や思考、感情、行動に影響を及ぼす症状が特徴です。この疾患は、社会的な機能の低下や日常生活の困難を引き起こすことがあり、しばしば患者とその家族に大きな負担をかけます。
症状と影響
統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」に大別されます。陽性症状には幻聴や妄想、思考の混乱、感情の鈍麻などが含まれます。一方、陰性症状は、意欲の低下、社会的撤退、感情の鈍化などが見られます。これらの症状は、日常生活における様々な活動に支障をきたす可能性があります。
統合失調症はまた、「認知機能障がい」と呼ばれる問題も引き起こすことがあります。これは、記憶力や集中力、計画能力、判断力などの認知機能の低下を指します。その結果、学業や職場でのパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。
支援と治療
統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会的治療の両方が一般的に使用されます。薬物療法は、症状の管理や軽減に役立ちます。一方、心理社会的治療は、患者が日常生活でのスキルを向上させ、社会的な関係を構築し、より良い生活を送るための支援を提供します。
社会的な挑戦と理解の必要性
統合失調症の当事者は、しばしば社会的な偏見や差別に直面します。これは、病気に対する誤解や無知から生じるものであり、患者やその家族にさらなる苦痛をもたらします。統合失調症に関する適切な教育と理解が重要であり、公衆意識の向上が必要です。
また、社会全体での支援体制の構築も重要です。統合失調症の当事者が社会に積極的に参加し、自己実現を果たすための環境が整えられることが求められています。
まとめ
統合失調症は、複雑な精神疾患であり、個々の経験や症状は異なります。適切な支援と理解が必要であり、薬物療法や心理社会的治療を通じて、患者がより良い生活を送るためのサポートが提供されるべきです。また、社会全体での偏見や差別をなくし、統合失調症の当事者が社会に参加し、自己実現を果たすための環境を整えることが重要です。
参考
統合失調症を知っていますか? 症状と回復への道のり - 記事 | NHK ハートネット
映画「奈緒ちゃん」障がいを持つ女性と家族の50年の「記憶」
伊勢真一さんが撮り続けた「奈緒ちゃん」シリーズの5作目が、製作されています。主人公である奈緒ちゃんが50歳になり、これまでの家族との歩みが「記録というより記憶」から描かれます。伊勢監督にとっても集大成の意味を持つこの作品は、4月下旬の完成に向けて追い込みがかけられています。
奈緒さんは重度のてんかんと知的障がい
伊勢監督と主人公の母である西村信子さんは、東京都内の「いせフィルム」事務所や支援者の会社に間借りしている編集室で打ち合わせや編集作業を続けています。前作から7年、新作「大好き~奈緒ちゃんとお母さんの50年~」は、信子さんが昨年80歳になり「終活」を始めたことをきっかけに製作がスタートしました。
信子さんは伊勢監督の実姉で、1973年に奈緒さんが生まれました。奈緒さんは重度のてんかんと知的障がいを抱えており、医師からは長く生きられないかもしれないと言われました。信子さんは自責の念に駆られましたが、専門病院への転院や地元の人々、そして幼稚園との出会いが奈緒さんの成長を支えました。
「自分と自分の家族に置き換え、自分のこととして捉えている」
83年の正月、横浜市の西村家で撮影が始まりました。当時9歳だった奈緒さんと、夫の大乗さん、そして77年に生まれた長男の記一さんとの4人家族の日常を綴った第1作「奈緒ちゃん」は、奈緒さんが成人するまでを追った作品で、1995年に完成しました。この作品は伊勢監督の長編デビュー作でもあり、毎日映画コンクール記録文化映画賞などを受賞しました。
信子さんは、「最初は家族の記録を撮ってもらって、自分たちで見るつもりでした」と振り返りますが、「後悔がいっぱいありました」とも述べています。しかし、作品が公開されると、反響は予想外のものでした。「自分と自分の家族に置き換え、自分のこととして捉えている。障がい者の家族という意識で見ていない人が圧倒的に多くて驚きました。それ以来、映画は見る人のためのものなんだと」、と語ります。
「ここには幸せが映っている」
伊勢監督の作品は、被写体の日常においてカメラが存在しないかのように感じられます。信子さんは「ここは撮っていいかとか聞かないで、掃除してない所や片付けてない所も撮る」と笑いますが、障がいを持つ地域の仲間やその家族も撮影を嫌がりませんでした。
作品では、気が休まらない日々や思わず手を上げる場面、奈緒さんの世話や夫婦の食い違いなどが描かれます。しかし、98分の映像を見終えると、天真らんまんな奈緒さんを中心にした家族の成長が、見た人の心に深く響きます。
伊勢監督とともに「福祉映画にはしない」と決めて撮影を行った瀬川順一さん(故人)は、完成後、「ここには幸せが映っている」と語りました。95年は地下鉄サリン事件や阪神大震災などの悲劇が続いた年でしたが、伊勢監督は「何かしらの希望を感じてもらえたかもしれない」と振り返ります。
撮影中に発作を起こしたことがある
やがて信子さんは、障がいを持つ子どものいる母親たちと共に内職を始め、それが作業所に発展していきます。その歩みを描いた第2作「ぴぐれっと」は、2002年に完成しました。「ありがとう」では、奈緒さんが自宅を出てグループホームで仲間と生活するまでの成長が描かれ、2006年に公開されました。そして第4作「やさしくなあに」は、2016年に相模原市で起きた知的障がい者福祉施設での事件を受けて、製作への意識と意欲が高まり、翌年に公開されました。
幼い頃から奈緒さんは撮影が楽しみで、その間は体調も良かったが、一度だけ、撮影中に発作を起こしたことがあります。スタッフは慌てましたが、カメラを回し続けることや作品に取り込むことにも躊躇がありました。しかし、奈緒さんは作品を黙って見守っていました。「これが私だから、という思いが伝わってきた」と伊勢監督は語ります。
元気になる「奈緒ちゃん語」
毎作のように、奈緒さんが障がいを持つ仲間と永遠の別れを迎える場面も描かれます。日常を淡々と描きつつ、「死」との対峙で「生」を写し取るのが伊勢作品の特徴です。
ここ4、5年は奈緒さんは発作も起こしていません。一方、西村家には夫婦や父子の葛藤があり、記一さんにも転職などの変化が起きていますが、最も安定しているのは奈緒さんのようです。
「ありがとうって言って」「けんかしちゃいけないよ。優しくなあに…って言わなくちゃ」「ハイ!障がい者です」といった言葉は、「奈緒ちゃん語」として知られています。これらの言葉の意味ははっきりとは分からないかもしれませんが、聞くと元気になると言われています。伊勢監督は、「西村家はよくしゃべる家族で、みんなが自分の正論を言うけれども、それを奈緒ちゃんが最後にひっくり返してしまうような力がある」と語ります。
ドキュメンタリーの役割
昨年7月には、50歳の誕生日に合わせて行われた上映会で、奈緒さんが登壇し、パワフルなやりとりで会場を沸かせました。
信子さんも次第に自分の言葉で語るようになる姿が、作品を重ねるごとに描かれてきました。「姉がいろんな体験を受け止めた言葉が出てくる。それがとても大切で、終活を始めたと聞いて、きちんと残さなければと。体験から出てくるから、常に正しいわけではないかもしれないけれど、それを拾い集めるのがドキュメンタリーの役割だと思う」と伊勢監督は語ります。
縛りがない時代が映っている
信子さんと伊勢監督は、現在、奈緒さんの成長とは異なる社会の変化を強く感じています。「奈緒ちゃん」「ぴぐれっと」など初期の作品には多くのファンがおり、「隣の人を大事にする、向き合う、いつも笑っている…縛りがないあの時代が映っているからでは」と信子さんは語ります。
「例えば『ぴぐれっと』で言えば、職員か利用者か分からないくらい垣根がなかった。今はタッチしちゃいけない、ハグしちゃいけない。『きょうの靴、かわいいね』とも言えない。きのうの靴がかわいくないという意味になるそうです。
障がいのある人にはその規制が理解できないから、どうなのかなと。昔もいろんなことはあったけれども、その人がその人らしくいられて、職員さんも、だからこの仕事がしたいんだというのが、顔や体に表れていました」と述べます。
なぜ長く撮ったか
奈緒さんのたくましさは、医学的にも特筆されるケースだと言います。生まれながらに持つ生命力と、それを引き出した家族、地域、医療、そして時代が重要だと感じます。
「なぜ長く撮ったか。長く生きられないと言われた奈緒ちゃんが、長く生きたから。奈緒ちゃんが生きたことが何を語るのか」と伊勢監督は語ります。完成後に作品がどう歩き出すかを自ら楽しむようにとも語りました。
コロナ禍によって、映画人生で未経験の事態に直面しました。自主上映が壊滅状態に陥り、いせフィルムも製作・上映資金に不足しています。この影響で、初めて支援を募ることとなりました。支援金額に応じてエンドロールでの氏名紹介などの謝礼が設定され、自主上映権を得た人も10人ほどいるそうです。
映画作りを諦めない仲間を思う
伊勢監督自身も昨年からがんや骨折に見舞われましたが、映画作りを諦めない仲間を思い、「止まっていた機関車の車輪がまたゴトン、ゴトンと回りだすようなきっかけにもなれば」と、完成後の広がりにも期待しています。
完成上映会は4月27日に東京・日比谷図書文化館で始まり、その後も試写会などが続き、6月からは劇場上映と自主上映が行われます。支援の受付は9月末まで行われます。詳細はいせフィルムのHPまたは03-3406-9455へお問い合わせください。(時事通信社 若林哲治)
てんかん:脳の異常電気活動による神経障がい
てんかんは、脳の異常な電気活動によって発生する神経障がいです。突然の意識消失やけいれん発作が特徴であり、年齢や性別に関係なく発症する可能性があります。
てんかんの原因
てんかんの原因は多岐にわたります。脳の異常な電気信号や遺伝的要因、脳の損傷や外傷、脳腫瘍や脳卒中、そして先天性障がいが挙げられます。これらの要因が組み合わさることで、てんかんの発症が引き起こされる可能性があります。
脳の異常な電気信号
遺伝的要因
脳の損傷や外傷
脳腫瘍や脳卒中
先天性障がい
症状
てんかんの症状には、以下のようなものがあります。
意識障がい:突然、意識を失うことがあります。これは発作の一部として現れることがあり、患者は周囲の出来事を認識できなくなります。
けいれん発作:最も一般的なてんかんの症状であり、筋肉の収縮と緩和が繰り返されます。この発作は、全身的なけいれんや特定の部位のけいれんを引き起こすことがあります。
不随意の動きや感覚の変化:てんかんの一部の発作では、患者が意図しない動きや感覚の変化が現れることがあります。たとえば、手のひらのピリピリ感や無意識のジェスチャーが含まれます。
これらの症状は、てんかんの種類や個々の患者によって異なります。一部の患者は特定のタイプの発作を経験し、他の人は異なる症状を示すことがあります。正確な診断と適切な治療のためには、患者の症状を正確に理解することが重要です。
てんかんの治療
てんかんの治療には、いくつかの方法があります。まず、抗てんかん薬の服用が一般的で、薬物療法によって発作の頻度や重症度を抑えることができます。
また、薬物療法が効果的でない場合や特定の症例では、脳手術や神経刺激法が選択されることもあります。さらに、生活習慣の管理も重要で、睡眠やストレスの管理に配慮することが必要です。
抗てんかん薬の服用
脳手術
神経刺激法
生活習慣の管理(睡眠やストレスの管理)
生活への影響
てんかんは日常生活や仕事に影響を与えることがあります。発作が予測不能なため、日常生活や仕事に制限が生じることがあります。
また、交通や危険な作業への参加が制限される場合もあります。さらに、社会的な偏見や差別に直面することもあるため、患者とその家族には理解と支援が必要です。
予防
予防には、薬物療法の適切な管理が重要です。また、健康的な生活習慣の維持も必要であり、規則正しい睡眠やストレスの管理が大切です。
さらに、定期的な医師の診察とフォローアップも必要です。これらの予防策を遵守することで、てんかんの発作の頻度や重症度を管理することができます。
まとめ
伊勢監督が奈緒ちゃんの物語を映画に収める中、コロナ禍で資金不足に陥り、支援を募ることになりました。伊勢監督も健康に苦しむ中、映画作りへの情熱は変わらず、奈緒ちゃんのたくましさと家族の絆が描かれる作品は、広く支持を受けることが期待されています。完成後の劇場上映が待たれます。
参考
障がいを持つ女性と家族50年の「記憶」 映画「奈緒ちゃん」シリーズ第5作完成へ(時事通信)Yahooニュース
自分が自分でなくなる?解離性障がいとは
時には複数の人格が現れる精神障がい
「一人暮らしのアパートメントで目が覚めると、部屋が驚くほど整然と片付いているのを見つけました。しかし、その秩序を作ったのは自分以外に考えられません。不思議なことに、その整理整頓の記憶は全くありません」。
解離性障がいは、自己の一貫性が揺らぎ、意識、感覚、記憶、行動に断片化が生じ、時には複数の人格が現れる精神障がいです。その存在は一般的に認識されにくく、当事者たちは理解されることを望んでいます。
解離性障がいの当事者が集まり自身の体験を分かち合う
『バリバラ』の放送内容をもとに、解離性障がいに詳しい精神科医の岡野憲一郎さんに話を聞く機会がありました。バリバラに専門医として登場した岡野さんは、長年にわたり解離性障がいの患者を治療してきた経験を持っています。
2020年に放送されたバリバラでは、解離性障がいの当事者が集まり、愛称で呼び合いながら、自身の体験を分かち合いました。
その中で、Tokinさんが「頭の中に誰かがいて、私に話しかけてくる。何人かのチームで」と語り、もっさんが「勝手に足が動いたり、手が動いたり、体が動くときは“のっとりくん”がまた来たなと」と述べ、綾子さんが「夫とのコミュニケーションで問題が発生すると、非常にバイオレンスな人格が出てきてしまって、それをコントロールできない」と明かし、くわまんさんが「学校に行く途中で気がついたら街の喫茶店にいたりした」と述べました。
主な症状
解離性障がいには、主に以下の4つの症状があります。これらの症状が同じ人に重なって現れることもあります。
①解離性同一障がい:複数の人格が入れ替わる多重人格として知られる。
②解離性健忘:記憶の一部分が飛んで、思い出せなくなる。
③解離性遁走:ふだんの生活圏から離れて、知らない場所に行ってしまう。
④離人症:自分や世界についての現実感がなくなってしまう。
解離性障がいは、アメリカの研究データによれば100人に1人の割合で発症するとされ、実際にはかなり一般的な病気であると考えられています。しかし、患者は病気を隠すことが多く、症状も複雑で診断も難しいため、発症率1%という数字は推計値であり、正確な統計データではありません。潜在的な患者数は少なくないとされていますが、その実態はまだ完全には解明されていません。
周囲から否定的な言葉を受けて困惑
解離性障がいは、本人が自作自演しているような印象を与えることがあります。突然、別の人格に変わってしまったり、記憶を失ったり、知らない場所に行ってしまったりしますが、しばらくすると元に戻ってしまうこともあります。
このような症状から、詐病や虚言だと疑われることもあります。番組でも当事者のくわまんさんは、周囲から否定的な言葉を受けて困惑したと語っています。岡野さんは、「解離性障がいは常識では理解しがたい面がありますが、コンピュータの比喩で説明するとわかりやすい」と話します。
「コンピュータはCPUだけで成り立っているわけではなく、モニターやスピーカー、記憶装置やプリンターなどの周辺機器とつながって機能を果たします。そのネットワークの接続が切れてしまうと、周辺機器が働かなくなったり、連動した動きができなくなってしまいます。脳がそういう状態に陥るのが解離だと、私は理解しています」
急激な症状の変化は他の精神障がいとは異なる
岡野さんが解離性障がいの説明に用いるコンピュータと周辺機器の比喩は、その障がいの特質を明確に説明しています。通常の精神障がいでは、コンピュータ自体がダウンしてしまい、修復が必要ですが、解離性障がいでは接続が戻れば機能が元通りになるとされています。
岡野さんは、「解離性障がいが他の精神障がいと大きく違うのは、スイッチングと言って、その症状が急に現れたり、急に消えたりすることです」と述べています。この急激な症状の変化は他の精神障がいとは異なり、解離性障がいの特徴です。
記憶の飛びという現象も説明されています。解離性障がいでは、記憶が存在しているにもかかわらず、アクセスできない状態になることがあります。これは、コンピュータ上のファイルが存在しているにもかかわらず、アプリケーションによってはアクセスできない状況に例えられます。
生まれつきの素因と幼少期のトラウマ体験が関与している
解離性障がいの原因については、はっきりとした理解が得られていませんが、生まれつきの素因と幼少期のトラウマ体験が関与していると考えられています。解離性傾向を持つ子どもが、特定の心理的なストレスやトラウマ体験によって、障がいが引き起こされる可能性があるとされています。
岡野さんは、「いたずらをしてビンタを食らわされる自分の順番が迫ると、ふっと体の後ろに心が抜けて、ビンタされている自分を外側から見るという体験をする子どもがいます。ふつうはならないのですが、100人に何人かはそうなる子どもがいるのです。そんな素因をもった子どもが過酷な体験をすると解離性障がいになっていくのです。」と述べています。
家庭内だけでなく家庭外でも発生する可能性
トラウマは家庭内だけでなく、家庭外でも発生する可能性があります。岡野さんの治療を受けている患者の中には、政情が不安定な国で恐ろしい体験をした結果、複数の人格を持つようになった来日女性がいるそうです。
現在ウクライナでの戦争が続いている状況下では、同様のトラウマを持つ子どもたちが解離性障がいを発症する可能性が高いとされています。
解離性障がいには一定の意味がある
解離性障がいには一定の意味があります。なぜなら、子どものときの苦しい体験をそのまま耐えるのではなく、心が体から抜け出して、苦しさを緩和することができるからです。しかし、その場を解離によって乗り切ったとしても、後には日常生活を送ることが難しくなったり、人間関係のトラブルに巻き込まれたりすることがあります。そのため、岡野さんは解離性障がいはやがて解消していくべき症状だと考えています。
番組では、解離がいつ起きるかについての質問が行われました。くわまんさんは、「アウェイの場面で緊張すると、ほぼ変わってしまいます」と答えました。強いストレスを感じたり、無理をしたりすると解離が起きるというのは、参加メンバーに共通していました。
一方で、Tokinさんは「家に帰って、寝る前とかが危険ゾーン。ふと力が抜けると、自分をコントロールできない感じ」と述べ、リラックスする場面でも解離が起きることがあると話しました。
緊張感を強いられるときだけではなくリラックスした状態でも起こる
岡野さんは、「解離は何の理由もなく起きるわけではなく、強く感情が動くと起こると言われています。緊張感を強いられるときだけではなく、リラックスした状態やカウンセリングを受けているような場面でも起こることがあります。恋人の前で緊張のタガが外れて、幼児のような別人格が出てくるようなこともあります。他にも、道を歩いていて、知らない人がケンカをしているのを見て、解離が起きたという例もあります」と説明しました。
解離性障がいの治療は可能
解離性障がいの治療は可能であり、穏やかな日常を大切にすることで症状は軽快していくと言われています。岡野さんは、番組の中で周囲の人が気をつけるべき3つのポイントを挙げています。
まず、「過去のトラウマは聞かない」ということです。トラウマを思い出すことが再トラウマになる可能性があるため、本人が話し始めたら耳を傾ける姿勢が大切です。
次に、「約束ごとは文面で」ということです。解離性障がいの人は自分が言ったことを記憶していないことがあるので、お互いに確かめ合えるようにすることが重要です。
そして、「普段通りに接する」ことが大切です。必要のない先入観は取り払い、怖がらず、ふつうの付き合いを大切にすることが理想的です。
年齢を重ねると起きにくくなっていく傾向
岡野さんは、「解離性障がいは、ありがたいことに、ストレスを経験しないで、平穏な生活を送っていれば、徐々によくなっていくことが多いのです」と述べています。解離症状は幼い頃に一番起きやすく、年齢を重ねると起きにくくなっていく傾向があるそうです。平和な日々を送ることで、症状が軽減し、別人格が寝てしまって、主人格だけでいられるようになることもあると述べています。
解離性障がいは、当事者が知らないところでいろいろなことが起きてしまうため、周囲からの理解が重要です。Tokinさんは、「特殊な人ではなく、ふつうにみんなと同じ社会で生きているのだと知ってほしい」と訴えました。解離性障がいは、センセーショナルな存在としてではなく、日常的にありうるものとして理解されることで、生きづらさが軽減されると言います。
解離性障がい:自我の断絶と複数の人格
解離性障がいは、自分という一貫した統一された自己感覚がゆるみ、複数の人格や自我の断片化が生じる精神障がいです。この病態は、意識や感覚、記憶、行動の一時的な分断をもたらし、個々の経験やアイデンティティの一貫性が失われることを特徴とします。解離性障がいは、日常生活に深刻な影響を与える可能性があり、患者やその周囲の人々にとって大きな苦しみをもたらすことがあります。
症状は、突然現れたり消えたりすることがあり、他の精神障がいとは異なる特徴を示します。解離性障がいは、ストレスやトラウマ体験などの強い感情の動きが引き金となりやすいことも特徴の一つです。
原因と治療
解離性障がいの原因は複雑であり、生まれつきの素質や幼少期のトラウマ体験などが関連していると考えられています。特に幼少期に深刻な身体的または精神的なトラウマを経験した場合、解離性障がいのリスクが高まるとされています。
治療法は、精神療法や薬物療法、そしてサポートグループなどが組み合わせて用いられます。精神療法では、解離した部分の統合やトラウマの処理を促すことが目指されます。また、薬物療法では、抗不安薬や抗うつ薬が症状の管理に役立つことがあります。
日常生活との関わり
解離性障がいの当事者やその周囲の人々にとって、日常生活での関わり合いは重要です。当事者に対しては、過去のトラウマを無理に聞き出すことなく、安全な環境を提供することが重要です。また、約束事を文面で確認するなど、コミュニケーションに工夫をすることが必要です。
まとめ
解離性障がいは、日常生活の中で理解されることが大切です。そのような理解が、当事者やその周囲の人々が受ける心理的な負担を軽減し、適切な支援を提供するための基盤となります。
参考
自分が自分でなくなっちゃう!?解離性障がい - 記事 | NHK ハートネット
「障がい者グループホーム」質の向上を図る 透明性高めるため厚労省が対策
厚生労働省が障がい者グループホームの質向上を目指し、透明性を高めるための新たな対策を打ち出しました。
これは、福祉経験の少ない事業者の参入により質が低下しているとの指摘からきています。4月から、運営事業者に外部の目を入れるための会議を設置することが努力義務化されます。
福祉の経験の少ない事業者の増加により質の低下が懸念
グループホームは、障がい者が地域の家庭的な環境で生活できるよう整備されており、その数は過去5年間で1.6倍に増加し、全国に1万2600か所に達しています。しかし、この増加に伴い、専門家会議の報告書では、福祉の経験の少ない事業者の増加により質の低下が懸念されています。
さらに、去年12月には、全国でグループホームを運営する企業「恵」が、利用者から集めた食材費の一部しか使用せず、その差額を組織的に会社の利益としていたとして、厚生労働省から勧告を受けました。
厚生労働省の新たな取り組み
障がい者グループホームの質向上を図るため、厚生労働省は新たな取り組みを打ち出しました。新年度から、グループホームを運営する事業者に対して、利用者と地域住民、有識者などで構成される「地域連携推進会議」の設置を努力義務化します。
この会議では、ホームの運営内容を報告したり、助言を受けたりするだけでなく、地域住民がグループホームを訪れて暮らしの実態を見学することも行われます。そして、再来年度からはこの会議の設置が義務化されます。厚生労働省は、外部の目を入れることでグループホームの運営の透明性を高め、サービスの質を向上させることを目指しています。
「恵」のグループホームが唯一の希望
千葉市在住の堀井弥穂さん(64)の息子である龍飛さん(36)は、重度の知的障がいを抱え、言葉で自分の気持ちを表現することができません。龍飛さんは障がいが重いため、適切な支援が必要でありながら、適切な施設が見つからず、地元から離れた場所での入所生活を余儀なくされました。
そんな中、将来に不安を感じていた時、堀井さんには県内にオープンした「恵」のグループホームが唯一の希望として提案されました。「恵」のグループホームは自宅から近く、見学時には従業員から、複数のスタッフが利用者の支援に当たり、栄養士が食事を作ること、そしてどんなに障がいが重くても利用者を受け入れる方針が説明されました。これにより、堀井さんは息子の入居を決めました。
グループホームの実態が明らかに
しかし、国から勧告を受けたことで、「恵」のグループホームの実態が明らかになりました。入居してすぐに支援の内容に疑問を感じた堀井さんによれば、ある日の食事は小さなおにぎり2つとわずかなおかずのみで、そのたびに龍飛さんはやせていき、精神的にも不安定になっていったといいます。
閉鎖的な環境で地域との関わりもなく、質の確保がされていなかったことに、堀井さんは愕然としました。職員からの説明も納得がいかず、不安を感じた堀井さんは龍飛さんを退去させ、現在は別の施設で生活しています。
堀井さんは、「なんでこんな仕打ちを受けないといけないのかしら」と悲痛な声を上げ、「重い障がいのある利用者を受け止めるには適切な訓練や経験を積んだ人でないと難しく、人間らしく暮らすには、閉鎖的ではない地域に開かれた環境も必要だと思います。子どもの心を傷つけてほしくない。本当に障がい者が安心して暮らせるためにはどうしたら良いか考えながら対策を行って欲しい」と述べました。
一方、グループホームの運営会社「恵」はNHKの取材に対し、「担当者が不在で個別の利用者のことについてお答えできません」とコメントしました。
厚生労働省の対策
【対策1】職員の専門性
支援の質向上に向けた対策の1つは、グループホームで働く職員の専門性を高めることです。現在、施設長に必要な特別な資格がないため、厚生労働省は施設長を務めるための資格要件を専門家に検討してもらうことを決定しました。また、グループホームでの支援の質を向上させるためのガイドラインの整備も検討されます。
【対策2】運営の透明性
もう1つの対策は、運営の透明性を高めることです。グループホームが閉鎖的になりやすいという指摘に対し、厚生労働省は来月から地域連携推進会議の設置を求めます。この会議では、障がい者の日常生活や支援内容、運営状況について報告し、参加者からの助言や意見交換を行います。
さらに、会議の構成員は定期的にグループホームを訪れて暮らしの状況を見学する機会も設けられます。この取り組みは新年度から努力義務化され、再来年度からは義務化されます。
南高愛隣会の取り組み
長崎県諫早市では、社会福祉法人 南高愛隣会が知的障がい者などが生活するグループホームを120か所運営しています。
この法人では、地域住民などの協力が不可欠だと考え、2013年から施設や利用者の生活を知ってもらうための会議を開催しています。年に3回開かれるこの会議では、地域住民に運営状況を紹介し、グループホームを見学してもらう機会も提供しています。
積極的な交流と地域住民からの意見を反映させ関係を築く
始めた当初は出席者が集まりにくかったそうですが、障がい者が地域の清掃活動に参加するなど積極的な交流があり、地域住民からの意見を反映させることで関係を築いてきました。その結果、現在では住民たちが施設の改善に向けたアイデアを積極的に提案するようになりました。
最近の会議では、地域の町内会長や民生委員、利用者の家族など10人余りが参加し、前回の見学会で指摘された側溝の修理などについて話し合いました。地域の協力を得て、グループホームの改善に向けた具体的な取り組みが進められていることがわかります。
利用者と地域住民との関係が深まり地域での手助けも自然と行われるように
南高愛隣会では、グループホームでのソフトボールのクラブ活動にも地域住民が積極的に参加しています。職員の異動により活動が一時休止していましたが、地域住民が職員の代わりに講師を務めることで、活動を再開できたそうです。
このような活動を通じて、利用者と地域住民との関係が深まり、地域での手助けも自然と行われるようになっています。南高愛隣会の田島光浩理事長は、「閉鎖的に運営すると、利用者が望むことを実現できないため、地域との交流が重要である」と語りました。
地域住民との関係を築くことで、グループホームの運営についての情報を開示し、信頼の上に意見を集約することが必要だと述べました。
生活に必要な社会資源の不足を反映している
一方、日本社会事業大学専門職大学院の曽根直樹教授は、グループホームの増加は地域での生活に必要な社会資源の不足を反映していると指摘しました。営利法人が多くのホームを開設する一方で、適切な人材や資源が確保されていないため、支援の質の低下が課題となっていると述べました。
「地域連携推進会議」の役割について、障がい福祉に関する専門家は次のように述べています。「グループホームは外から見えにくく、閉鎖的になりやすい。会議には様々な機能が期待されるが、最も大切なのは地域との関わりを作ることだ。
会議をきっかけに、障がい者や事業所と住民がお互いを知り合い、良い関係を築くことができれば、例えば万が一、障がい者の権利侵害が起きたときにも地域が気がつきやすくなる。グループホームも地域の1つの住居として隣どうし関わり合っていこうという関係を作るきっかけにすることが重要だ」と話していました。
障がい者グループホーム: 地域との連携で生活の質を向上
障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が地域で共同生活を送るための施設です。地域の支援と協力を得ながら、障がい者が自立した生活を送るための環境を提供しています。ここでは、障がい者グループホームについての重要性や取り組みについて考察します。
障がい者グループホームの重要性
障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が家族や地域社会と共に生活し、自立した生活を送ることを支援する役割を果たしています。これらの施設は、障がい者が社会参加を促進し、生活スキルを向上させるための場を提供します。また、家庭的な雰囲気の中で心の安定を保ちながら、自己実現を目指すことができる環境を提供しています。
地域との連携による取り組み
障がい者グループホームの運営では、地域との連携が重要な役割を果たしています。地域の支援を受けながら、施設の運営や利用者の生活の質を向上させるために、様々な取り組みが行われています。
地域連携推進会議の設置
地域住民や有識者との定期的な会議を通じて、施設の運営状況や利用者の生活に関する情報を共有し、意見交換を行います。これにより、地域との協力関係を強化し、施設の透明性を高めることができます。
地域イベントへの参加
地域のイベントや活動に積極的に参加することで、障がい者と地域住民との交流を促進します。これにより、地域社会とのつながりを強化し、社会参加の機会を提供します。
地域のリソース活用
地域の施設や団体と連携し、さまざまなリソースを活用して施設のプログラムや活動を充実させます。これにより、利用者の生活の質を向上させるだけでなく、地域社会との連携を深めます。
まとめ
障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が自立した生活を送るための重要な施設です。地域との連携を強化し、地域社会とのつながりを深めながら、利用者の生活の質を向上させる取り組みが求められています。地域の支援と協力を得ながら、障がい者が豊かな生活を送るための環境を提供することが、障がい者グループホームの重要な役割となっています。
参考
障がい者グループホーム質向上へ 透明性高めるため厚労省が対策 | NHK
発達性協調運動障がい(DCD)とは?不器用なのには理由がある 理解されにくい障がい
発達性協調運動障がい(DCD)に関する理解が深まるにつれて、不器用さや運動の困難さが、この障がいの重要な特徴として認識されるようになりました。洋服のボタンかけが苦手だったり、字がマス目からはみ出すことがあったり、リコーダーを上手に吹けなかったり、ボールをうまく投げられなかったりするのは、彼らの特性のひとつであり、生きづらさの原因でもあります。
一般的には、友達関係や学習の場面などが注目されることが多い中で、身体の使い方や運動の難しさは見過ごされがちでしたが、DCDの重要性が認識されるにつれ、これらの側面にも注目が集まっています。
発達性協調運動障がい(DCD)とは
発達性協調運動障がい(DCD)は、「協調」という脳の機能に問題があるため、運動や動作にぎこちなさが現れ、日常生活に支障をきたす発達障がいです。
この「協調」とは、身体の外部や内部からの多数の情報を統合し、運動企図や計画に基づいて運動や動作を行い、さらにその結果を考慮して微調整する脳の機能です。
日常生活の様々な場面で現れる
DCDの子どもたちは、体育の授業やスポーツだけでなく、靴ひもを結ぶ、箸やナイフ・フォークを使う、字を書く、はさみや定規・コンパスなどの文具・道具を使用する、リコーダー・鍵盤などの楽器を操作する、正確さを要求される理科実験を行うなど、日常生活や学校生活のさまざまな局面で不器用さが現れます。
DCDという診断名は1987年にはアメリカの精神医学会の診断基準であるDSMに登場しましたが、日本で広く知られるようになったのは、2013年に日本小児精神神経学会が学術集会のメインテーマとして取り上げてからと言われています。その後、2017年には日本DCD学会が設立されましたが、専門家の間でも認知度はまだまだ十分ではないとされています。
高い頻度でみられる障がい
最新の精神疾患の国際的な診断基準DSM-5-TRによれば、DCDの発生頻度は子どもの約5~8%と、AD/HD(注意欠如・多動性障がい)の約7.2%と同じぐらいであり、ASD(自閉症スペクトラム障がい)の約1~2%よりもはるかに高い頻度でみられます。
また、他の発達障がいとの併存率も高く、ASDの約80%、AD/HDの約30~50%、SLD(限局性学習障がい)の約50%に併存が見られ、他の発達障がいとも深く関係します。
重要なのは脳の機能である「協調」
一般的に、運動の不器用さは「身体の能力」と考えられがちですが、DCDの理解と支援のキーワードとして重要なのは脳の機能である「協調」です。武庫川女子大学の中井昭夫教授は、長年にわたりDCDの診療や研究、啓発活動を行ってきました。彼は日本DCD学会の設立に参加し、理事として活動し、第1回学術集会の大会長を務めました。
また、国際DCD研究・支援学会(ISRA-DCD)日本代表委員も務め、協調や感覚、睡眠など身体性と発達の関係を研究し、発達障がいを理解し、支援する上での重要性を強調しています。胎児の頃から環境との相互作用や感覚運動経験を通じて脳の発達が形成され、協調の発達は他の発達障がいの中核症状にも深く関わっていると指摘しています。
早期の気づきと適切なアセスメントに基づく包括的支援は、協調の問題だけでなく、その他の特性によるさまざまな生きづらさを軽減できる可能性があると述べています。
有効な療育プログラムの開発、エビデンスの蓄積
療育の現場では、以前から発達障がいの子どもたちの中に極端に不器用な子どもが存在していましたが、そのことがDCDという理解に結びついていなかったため、十分な対応が取られていませんでした。しかし、最近では介入効果に関する研究が進み、有効な療育プログラムが開発され、エビデンスも蓄積され始めています。
海外では、幼児や低学年の児童の身体活動を促すことによって、AD/HDの子どもの症状が改善されたという研究も報告されています。これらの知見を活用し、包括的な支援プログラムを構築することが、子どもの生きづらさを軽減するための鍵となります。
大人になっても続く課題
DCDの課題は、子ども時代だけでなく大人になっても続きます。手先の不器用さや運動の苦手さは、周囲の大人からは親の過保護な育て方や才能の問題、努力不足と誤解されがちです。
しかし、実際にはDCDは脳の協調機能に起因する障がいであり、練習や努力だけでは解決できない問題です。中井さんは、「協調の発達は子どもの認知、社会性、情緒の発達、学習とも密接に関係していることから、DCDは身体活動の苦手意識や参加機会の減少、自尊感情や自己肯定感の低下、怠学、いじめ、不登校など情緒的・行動的問題につながってしまっている」と指摘しています。
大人になると運動の機会は減りますが、ひげ剃りや化粧、料理や家事、自動車運転、タイピングや書字など、協調が必要な活動が生じます。これらの課題が続くと、精神障がいや生活習慣病、心血管障がいなどのリスクが高まる可能性があります。
DCDは子ども時代だけでなく、大人になってからも生命予後に影響を与える継続的な課題を抱えていることが重要です。そのため、適切な支援や理解が必要です。
適切な保育・教育や療育などのサポート
発達の速度や道筋は個々に異なります。DCDの子どもに必要なのは、まず、DCD特性への気づきと理解です。そして、なぜ、どこで、どうして躓いているのかというアセスメントと、それらに基づくていねいな説明による適切な保育・教育や療育などのサポート、合理的配慮が必要です。
「誤解している人はまだまだ多いと思いますが、DCDの子どもたちは怠けているわけでもなく、やる気が欠けているわけでもなく、ふざけているわけでもないのです。発達障がい特性のある子どもたちは、発達の速度やその道筋が定型発達の子どもたちとは少し違っているだけなのです」と中井さんは語ります。
大変な努力や時間を要することが多い
DCDのある子どもは、定型発達の子どもが難なくやれることでも、大変な努力や時間を要することが多く、周囲にも理解されにくいという現実があります。多くの人は普段、ちょっとした動作を行う際に「この関節をこのぐらい曲げて、この筋肉にこれぐらい力を入れよう」「上下左右の手足の動きを協調させよう」といったことを意識していないため、協調という脳機能の発達に問題があるDCDの子どもたちについての理解や想像がしにくいのです。
しかし、DCDの子どもたちは身体を動かすことが嫌いなわけではなく、発達しないわけでもないと中井さんは強調します。
「本人のやりたいこと、なりたい自分などに焦点を当てた課題を設定し、適切なアセスメントと、特性に合わせたサポートがあれば、時間はかかることもありますが、徐々に上達していくのです」と中井さんは述べます。
よい教育環境を整えていくための重要な視点
DCDの子どもに関する話を聞いていると、身体を動かすことは生命活動そのものであり、あらゆる子どもの成長にとって必要不可欠であることがよく理解できます。粗大運動だけでなく、書字のような手先を使用する微細運動にも関わり、体育だけでなく、教科学習にも大きな影響を与えます。協調運動への理解は、発達障がいの子どもだけでなく、すべての子どもたちにとって、よりよい教育環境を整えていくための重要な視点を提供しています。
発達性協調運動障がい(DCD):見えにくいが深刻な障がい
発達性協調運動障がい(Developmental Coordination Disorder、DCD)は、日常生活における運動や動作に問題があり、子供や成人の社会的、学習的、心理的な側面に影響を与える障がいです。この障がいは、一般的な理解や認識が難しく、見逃されがちでありながら、その影響は深刻です。以下では、DCDについてその特徴、診断、影響、そして支援について解説します。
DCDの特徴
DCDを持つ人々は、運動や動作を行う際に不器用さやぎこちなさを示します。具体的な特徴としては、次のような点が挙げられます。
手先の不器用さ:細かい作業や書字などの動作が難しい。
運動のコーディネーションの困難:身体の動きをまとめ上げる能力が低く、スポーツや体育の授業での運動に苦労する。姿勢やバランスの維持が難しい。
感覚統合の問題:外部からの刺激を適切に処理することが難しい場合がある。
これらの特徴は、日常生活のさまざまな場面で困難を引き起こします。
DCDの診断と影響
DCDの診断は、専門家による詳細な評価に基づいて行われます。一般的に、DCDの診断には次のような要素が含まれます。
運動能力の遅れや不器用さの評価
運動機能の問題が日常生活にどのように影響しているかの評価
他の発達障がいや身体的な問題との区別
DCDは、個々の人に異なる影響を与えますが、以下のような側面に影響を及ぼす可能性があります。
学業成績の低下
社会的な孤立や不安
自尊心や自己肯定感の低下
日常生活での独立性の低下
心理的なストレスやうつ病などの精神的な問題
DCDの支援
DCDを持つ人々に対する支援は、個々のニーズに応じて様々です。適切な支援は、次のような点に焦点を当てます。
個別の治療プログラム
物理療法や作業療法などの専門的な支援を提供することで、運動や動作の改善を図ります。
教育的なサポート
学校や教育機関での特別支援や適応教育プログラムを提供し、学習や社会的なスキルの向上をサポートします。
環境の適応
日常生活や学習環境を適応させることで、個々のニーズに合ったサポートを提供します。
まとめ
DCDの子どもたちにとって適切な支援が与えられることが重要です。早期の発見と適切な支援によって、彼らの生活の質を向上させることができます。この支援には、個別のニーズに合わせた療育や教育、家族や教育関係者との協力が欠かせません。また、DCDの認知度向上や理解の促進も必要です。彼らが生きやすい社会を築くために、DCDについての正確な情報を広め、支援体制を整えていくことが重要です。
参考
発達性協調運動障がい(DCD)(1)“不器用”なのには理由がある ~見えているのに理解されにくい発達障がい - 記事 | NHK ハートネット
高齢者の移動格差解消につながる オンデマンド交通サービス「チョイソコ」
車がなければ生活必需品ですら買いに行けない地域がある
高齢者の自動車事故が頻繁に取り上げられ、運転免許の返納が求められる声が日に日に高まっているように感じます。しかし、車がなければ生活必需品ですら買いに行けない地域や、公共交通機関が廃止されている地域が存在することも忘れてはなりません。
こうした課題に対処するため、各地で導入が始まっているのが、利用者の予約に応じて運行する乗り合い型の公共交通サービス「オンデマンド交通」です。しかし、なかなか利用者が伸びず、軌道に乗らないまま、廃止される自治体も多いといいます。
高齢者の外出機会も増やし健康を促進している
そんな中、2018年7月に愛知県豊明市で始まったのが「チョイソコ」です。これまでの運営コストの面で厳しいとされていた「オンデマンド交通」とは異なり、民間企業主体で運営されており、持続性の高いサービススキームを確立していますさらに、民間企業との協力によりイベントを実施することで、高齢者の外出機会も増やし、健康を促進しています。「チョイソコ」の仕組みと、地域における移動手段の格差問題について、開発した株式会社アイシンの鈴木歩さんに話を伺いました。
「チョイソコ」とは?
チョイソコは、乗り合い送迎サービスです。利用者は会員登録後、電話などで乗車申し込みを行います。予約が集まれば、専用システムが最適な経路や乗り降り順を決定し、送迎します。料金は自治体によって異なりますが、例えば愛知県豊明市では片道200円で利用できます。停留所は公園や公共施設の付近に設置されています。
チョイソコを立ち上げた経緯は、弊社がカーナビの製造販売を行っており、その技術を活用して地域の移動手段に問題意識を持ったことから始まります。豊明市の担当者との協力で、「高齢者の移動ニーズに応えるオンデマンド交通」という形でサービスがスタートしました。
買い物も困難な地域
豊明市では道の傾斜が激しく、道幅も狭く、コミュニティバスが入れない交通不便エリアがありました。このエリアはオールドニュータウンと呼ばれ、住民の高齢化が進んでいます。
高齢者に対する免許返納の動きが加速する中、免許を返納した人々はこのようなエリアでの外出が難しくなり、買い物すらできなくなることが問題視されました。
さらに、外出の難しさが健康を損ない、市の社会保障費を増加させる原因ともなっていました。アイシンの「オンデマンド交通」がこの課題を解決できる可能性があるとして、この取り組みが始まりました。
「チョイソコ」と他のオンデマンド交通サービスとの異なる点
全国的にも同様の問題があります。コミュニティバスが入れない交通不便な地域は各地に存在し、公共交通機関の採算が取れずバス路線が廃止される事例も増えています。また、都市部の周辺でも不便な地域が点在し、「チョイソコ」の導入が進んでいます。
「チョイソコ」と他のオンデマンド交通サービスとの異なる点は大きく2つあります。まず、自治体の予算を下げ、採算性を上げる点が挙げられます。チョイソコはエリアスポンサーという形で地域の企業に協賛を募り、ビジネスモデルを構築しています。スポンサーになると停留所の1つとなり、その結果、利用者がその店舗や事業所に行きやすくなります。
さらに、スポンサーは情報誌やチラシに広告を載せることで広報効果を得ることができ、地域貢献企業としての認知も高められます。単なる運行システムの提供にとどまらず、高齢者の健康増進につながる外出促進の“コト”づくりを行っている点です。これは、エリアスポンサーと共にイベントなどを開催することで実現しています。
“四方良し”を実現している点
「チョイソコ」のもう1つの特徴は、利用者の移動格差問題を解消し外出の機会を創出するだけでなく、自治体、エリアスポンサーになっている企業、交通事業者の“四方良し”を実現している点です。
導入時点で「こういうものを待っていました」と言われることが多いです。これまで友だちや家族に頼まないと外出できなかったのが、自分の意思だけで出かけられるようになったと。
あとはご家族の方からも、送迎の手間がなくなるだけでなく、高齢者や自分たちも一緒にイベントに参加するようになり、外出の機会が増えたと喜ばれています。実際、多くの自治体では、デマンド交通を導入したことで利用者数は増え、高齢者の方が外出をしやすくなっていると思います。
免許返納の推進は公共交通のインフラ整備と行われるべきもの
免許返納の推進は公共交通のインフラ整備と共に行われるべきものです。地域や年齢による移動手段の格差問題が存在する中で、高齢者が運転することへの批判や免許返納を推進する空気が見られることは確かです。
しかし、免許を返納した後、高齢者が移動できる環境がどれだけ整えられているかが重要です。実際に、「チョイソコ」を導入している自治体では、コミュニティバスの本数が限られている場合もあります。このような状況下で免許返納を求めるだけでは、高齢者の移動手段が不十分なままとなります。
免許の自主返納は、十分な移動手段が整備された環境で行われるべきものです。高齢者が安心して免許を返納できるように、公共交通のインフラ整備が必要です。そのような環境が整った時に、免許返納の推進が意味を持つと考えます。
免許の自主返納を推進することと、インフラの整備はセット
移動手段がなくなると外出自体をしなくなります。フレイル(健康な状態と要介護状態の中間)予防には社会参加が有効的だと言われています。外に出て、お仕事をしたり、みんなとおしゃべりすることで、健康を維持できるので、外出しやすい移動手段を確保することがとても重要です。
こういった移動手段の格差解消のために、読者一人一人ができることはいくつかあります。まず、日常生活の中で少しでも公共交通機関を活用することです。都市部を除いて、移動は車中心という方も多いかもしれませんが、公共交通機関を利用することで実績や収益につながり、地域の公共交通を支えることになります。
都心部の周辺でも移動の問題が起こっている
地方の高齢者だけでなく、都心部の周辺でも移動の問題が起こっています。共働き世帯が増える中で、子供を塾に通わせるための公共交通が不足していることもあります。こうした問題についても意識し、必要な場所へのアクセスをサポートすることが重要です。
さらに、移動の大切さを認識し、公共交通の未来について考えることも重要です。技術の進化や社会の変化に伴い、移動手段も変わっていくでしょうが、地域社会や社会全体のニーズに合った公共交通が整備されるよう、声を上げて意見を述べることも大切です。
高齢者の移動手段:格差解消への挑戦
高齢者の移動手段は、地域や年齢によって大きな格差が存在しています。都市部では便利な公共交通機関が整備されている一方で、地方や郊外では公共交通が不十分な場合があります。このような状況下で、高齢者が自らの移動手段を確保することは、彼らの生活や健康に直結する重要な問題となっています。
特に、免許の自主返納を促す動きが広がる中で、移動手段の確保はますます重要な課題となっています。高齢者が安全かつ便利に移動できる環境が整わないまま、免許を返納させることは、彼らの社会参加や生活の質を損なう可能性があります。
高齢者の問題だけではない移動格差
この問題に対処するため、地方自治体や民間企業はさまざまな取り組みを行っています。その一例が、乗り合い型の公共交通サービス「オンデマンド交通」の導入です。このサービスでは、利用者の予約に応じて運行し、地域の移動ニーズに柔軟に対応します。
また、エリアスポンサー制度を導入することで、地域の企業や団体がサービスの支援を行い、地域コミュニティ全体で移動手段を確保する取り組みも行われています。
さらに、高齢者だけでなく、共働き世帯の子供なども移動手段の確保が求められています。子育て世代のニーズに応えるため、安心して子供を送り迎えできる公共交通の整備も重要な課題となっています。
個々の意識や地域社会全体の取り組みが必要
移動手段の格差解消に向けては、個々の意識や地域社会全体の取り組みが必要です。高齢者が自立して生活を送るためには、安全で便利な移動手段が確保されることが不可欠です。そのためには、公共交通の充実や地域コミュニティの支援が欠かせません。
そして、私たち一人ひとりが、移動手段の格差について意識し、地域社会の課題に対する解決策を模索することが求められています。高齢者の移動手段として実際に使われている代表的な手段は以下のようなものがあります。
公共交通機関の利用
バスや電車などの公共交通機関を利用することが一般的です。都市部では路線バスや地下鉄、地域ごとのコミュニティバスが利用され、地方では地域バスや地域交通の利用が主流です。
タクシーの利用
高齢者向けの割引サービスや、ドライバーが乗降の手助けを行うサービスなどが提供されています。特に地方では、公共交通機関の不足や交通アクセスの悪さからタクシーが重要な移動手段となっています。
オンデマンド交通サービス
利用者の予約に応じて運行する乗り合い型の公共交通サービスが導入されています。このサービスでは、利用者が電話やアプリを通じて予約を行い、指定の場所から指定の場所へ移動することができます。
自家用車の利用
高齢者の中には自家用車を所有し、自ら運転して移動する方もいます。ただし、高齢者が安全に運転できるかどうかが問題視され、免許返納を促す動きもあります。
これらの移動手段は、地域の交通インフラや高齢者の健康状態、経済的な条件などによって選択され、利用されています。
まとめ
都市部に住んでいると、移動手段の格差問題というのはあまり意識されないかもしれませんが、免許の自主返納に関しては一般的に良いこととして捉えられがちです。しかし、もし自分が高齢者だったり、公共交通が不十分な地域に住んでいた場合、同じように考えられるでしょうか?
免許返納を促すのであれば、交通インフラの整備も同時に行われるべきだと感じます。危険を理由にして免許を返納するのではなく、車がなくても安心して移動できる環境が整っているからこそ、返納するという選択ができるような社会が望ましいと思います。
参考
車以外の移動手段、オンデマンド交通が移動格差問題を解消するかも? | 日本財団ジャーナル
字を上達させるため「何度も書く」は良くない?発達障がいの息子 ノートやペンなどの道具を工夫
息子が発達障がいと高IQを持つ「2E」の特性に対処するため、学校の授業に適応できない状況に直面しました。そこで、「学校での勉強よりも、人との交流や遊びに時間を割くことが大切だ」と息子に提案しました。
同時に、「自宅では自分のペースで学び、興味のある分野に深く入ることができる」と伝え、彼もそれを受け入れてくれました。
書いた本人も「わからない」
自宅学習では、彼の興味を引き出すために、公立小学校の少し上の学年の教科書を活用しました。特に算数に興味を持っていた息子は、予想以上に学習が進んでいき、その成長を見守ることができました。この段階では、私の頭の中には「中学受験」の考えはまったくありませんでした。
自宅での先取り学習を始めた際、息子の字の汚さが気になりました。発達障がいによる書字の困難さは一般的なものであり、息子もその傾向が強く表れていました。時には、彼の文字を見ても何を書いているのかわからないこともありました。そして、後で見直して「わからない」と言うこともよくありました。
「何度も何度も書く」指導をするが
私は当初、「字は練習すれば誰でもうまくなる」という考えでした。自分自身が子供の頃に書道を習っており、美しい字が大人になってからの利益になると感じていました。そのため、息子には典型的な「何度も何度も書く」指導をしました。しかし、これは大きな失敗でした。息子はますます嫌がり、机に向かうことすら嫌悪する日もありました。
発達障がいがある子供は、いくら練習しても上手になれないことがあります。私はその当時、自分の勉強不足が息子を苦しめていることに気づき、「息子の将来のために良かれと思って」行っていたことが実は逆効果だったことに気づきました。これは今でも後悔しています。以降、子供が苦しむのは、親の知識不足が原因だと考え、より学び、理解する努力を重ねることを心がけています。
複数の障がいの可能性を考える
息子の字が汚い理由について、以下の三つの要素が掛け合わさっている可能性があると仮説を立てました。
ディスグラフィア(書字障がい)
字がマス目から大きくはみ出したり鏡文字になったりする学習障がい。理由は不明ですが、この特徴が息子の書字に影響を与えている可能性があります。
注意力の困難
ADHD(注意欠陥・多動性障がい)の特徴で、複数の動作が必要な際に注意力をコントロールできず、書字への注意が減り、乱雑な字になる可能性があります。
DCD(発達性協調運動障がい)
複数の動作を連動させるのが苦手で、細かい作業に苦手さを示す障がい。特に字を書くことや細かい筆記作業に影響を与える可能性が高いです。
特にDCDは息子の他の活動にも影響を与えており、縄跳びや自転車の操縦、キャッチボールなど複数の動作の連動が必要なことが苦手なようです。
「何度も書かせる」ことが息子にとって適切なアプローチではないことは理解しています。そこで、発達障がい支援の基本である「変えるべきは本人ではなく環境」という考えに基づき、私は道具の工夫をしました。
カラーマスノートを使用した結果、2Eによくみられる反応
カラーマスノートを使用した結果、息子の字は奇麗になりましたが、その速度が著しく遅くなったことが課題となりました。最初はカラーマスノートを使うことで、文字の一画一画の位置を分かりやすくし、息子の書字のサポートになりました。しかし、時間が経つにつれて、息子の鉛筆が重くなり、漢字の練習などに抵抗感を示すようになりました。これは2Eに多い「シンプルで単純な反復作業への抵抗感」の一例です。
そこで私は、カラーマスノートを有効活用するため、歴史の学習と書字の練習を組み合わせました。私が歴代総理大臣や徳川家の全将軍名、日本の年号をカラーマスノートに書き、息子にそれを手本に書かせることにしました。しかし、このアプローチも新たな問題を引き起こしました。
手本を元に字を書くと「こだわり行動」がみられるように
息子は私の字を手本に書くたびに、時間がかかるようになりました。私の手本と自分の文字が異なると、すべてを消しゴムで消してからゆっくりと書き直すようになったのです。これはASD(自閉スペクトラム症)の特徴である「こだわり行動」によるもので、「適当に書いていいんだよ」という曖昧な表現が伝わらないほど、彼の理解が苦手でした。
同じ時期、息子にコクヨの「しゅくだいやる気ペン」を試してみました。このペンは特殊なアタッチメントを使って、学習時間に応じてパワーがたまり、アプリでご褒美が獲得できるというものです。私が息子のために始めた活動である発達障がい動画メディア「インクルボックス」でも取材され、大ヒット商品となっています。
「しゅくだいやる気ペン」でもこだわり行動
息子はこのペンの使用において、「パワーをためるには鉛筆をノートから離しちゃいけない」という誤解に取り憑かれ、そこで「こだわり行動」を発揮しました。実際にはそのような必要はありませんが、彼は左手で消しゴムを使用することにこだわり、鉛筆とノートの接点を維持するために左手を利用するようになりました。
しかし、左手での消しゴムの使用に慣れていないため、うまく消せず、結果的にノートがグシャグシャになることがしばしばでした。「右手で消しなさい」と指示しても、彼は聞く耳を持ちませんでした。これもまた、手段と目的が逆転してしまった例です。
こだわり行動に共感を持って接する
息子の「こだわり行動」を大切にしたいという考えに共感します。現代社会では、効率性や速さ、正確さが重視される傾向がありますが、その中で息子が自分らしく生きることが息苦しくならないように、彼の個性を尊重し支えていくことが重要です。
私も息子がネガティブな感情を抱くような場面で、「こだわってよいし、偏ってよいし、とんがってよい。君に合う環境をお父さんが見つけるからね」というような声かけを意識的に行うことで、彼の自信と自己肯定感を育むことができると思います。
文字を書くだけでヘトヘトになってしまう
カラーマスノートから方眼ノートへの切り替えは、息子の文字を整える上で効果的なアプローチだったようです。しかし、文字を書くことに集中すると疲れてしまうという問題もあるようです。このような課題に対処するために、学校に合理的配慮を求めることは適切な選択だと思います。息子の発達障がいに起因するストレスを軽減し、彼がより良い学習環境で成長できるようサポートすることが重要です。
息子の受験直前の模試の解答用紙を見せてもらうと、彼の努力と苦労がよくわかります。文字を書くことによる疲労でいつもヘトヘトになっていたという状況を考えると、記述問題の解答が書けなかったことも納得できます。私も彼の頑張りに敬意を表します。
彼が記述問題を解けなかったのは、文字を書くことが苦手だからという理由だけではないことに気づきます。私の発達障がいへの理解が浅かったため、彼の状況を正しく把握できていなかったのです。
発達障がいを持つ子供たちにとって、解答できないことはできないということではなく、解答方法や支援の仕方を工夫すれば可能性があります。彼の能力や可能性を見逃さず、より適切なサポートを提供することが大切です。
発達障がいとは何か?原因、症状、支援方法について知ろう
発達障がいは、個々の発達プロセスにおける異常なパターンによって特徴付けられる神経発達の障がいです。この障がいは、幼児期から始まり、社会的、学校的、職業的な機能に影響を与えることがあります。発達障がいにはさまざまな種類があり、その特徴や重症度は個々の人によって異なります。ここでは、一般的な発達障がいの種類、原因、症状、そして支援方法について説明します。
発達障がいの種類
注意欠如・多動性障がい (ADHD)
注意力の欠如、多動性、衝動性の問題が特徴であり、学業や社会的な機能に影響を与えることがあります。
自閉スペクトラム障がい (ASD)
社会的な相互作用やコミュニケーションの困難、狭い興味関心、反復的な行動などが見られます。
学習障がい
読み書きや計算などの学習に関する問題があります。ディスレクシアやディスグラフィアなどが代表的な学習障がいです。
発達障がいの原因
遺伝的要因
発達障がいは遺伝的な影響を受ける可能性があります。家族歴や遺伝子の異常が関連していることがあります。
環境的要因
妊娠中の母親の健康や出生時の合併症、早産などの環境的要因が発達障がいのリスクを増加させることがあります。
発達障がいの症状
注意欠如・多動性障がい
注意散漫、衝動性、多動性、組織的な問題、時間管理の困難などが見られます。
自閉スペクトラム障がい
社会的な相互作用やコミュニケーションの困難、狭い興味関心、反復的な行動などが見られます。
学習障がい
読み書きの遅れ、計算能力の低下、理解力の不足などがあります。
発達障がいの支援方法
個別化された教育プラン
学校や教育機関は、個々の子供のニーズに合わせた支援を提供することが重要です。
専門家の支援
小児科医、心理学者、言語聴覚士などの専門家が、診断や治療のための支援を提供します。
家族のサポート
家族は子供をサポートし、彼らのニーズに合わせた環境を提供することが重要です。
発達障がいは個々の人によって異なるため、支援方法も個別化される必要があります。理解と支援が十分に行われることで、発達障がいを持つ人々がより健全な生活を送ることができるようになります。
まとめ
子供に合わせた支援方法を模索することで、障がいへの向き合い方や努力する方向が判明することは本人にとっても、家族にとっても良いことだと思います。同じ障がいで悩んでいる親御さんに希望を与えるでしょう。
参考
発達障がいの息子の字の汚さ克服へ「何度も書く」は大失敗 ノートやペンなど道具を工夫 | ヨミドクター(読売新聞)
時間が気になり休めない「時間不安障がい」とは?症状と対処法
時間不安障がいは、時間の進行に対する強迫観念や、常に時間が足りないという憂いを含むと言えます。友達が待ち合わせに遅れると、後で取り組む予定がなくなることで不安になったり、郵便局が混雑していると焦燥感に襲われ、手のひらがベタベタになるのは、典型的な時間不安障がいの症状です。
時間がただ過ぎ去ることを恐れる傾向
臨床心理士のケヴィン・チャプマン博士は、「問題は時間の制約にあるのではなく、自分が時間をコントロールできないという感覚です」と説明します。この感覚にとらわれると、不安に襲われ、自分が時間を無駄にしていることについて考え込んでしまい、最終的には日常のルーティンですらこなせなくなる悪循環に陥る可能性があります。
著書『The Undefeated Mind』の著者であるアレックス・リッカーマン氏によれば、「人生に意味を求める人は、時間の無駄遣いという考えに抵抗を示すことが多い」とのことです。常に目標を持ち、すべての行動に意味を見出すことで幸福や成功を追求する人は、時間がただ過ぎ去ることを恐れる傾向があります。
一日一分一秒がどんどん貴重になる
子どもの頃、夏休みが終わらないかのように感じたもので、大人になると時間の経過が急速に感じられるのは、単なる気のせいではないでしょう。しかし、時間以外の変化は確かです。
成長する過程で、喪失を経験し、赤ちゃんの成長を目撃し、学校の長期休暇から解放される。そして、歳を重ねるにつれて、時間の貴重さが身に染みて分かる一方で、大人としての責任と目標は増えていく。そのため、一日一分一秒がどんどん貴重になることを感じるでしょう。
「時間を無駄にすることを恐れて何もせずに終わってしまう」
作家のクラウディア・ハモンド氏は、大人の時間が減った主な要因として、「2008年の金融危機による個人の仕事量の急増」と「テクノロジーによる仕事とプライベートの境界線の曖昧化」を挙げています。
31歳の小学校教師、フェイ・ミッチェルは皮肉にも、スケジュールに余裕があるときに不安を感じます。「時間を無駄にすることを恐れてしまい、結局何もせずに終わってしまう」と彼女は述べます。
プレッシャーの大きい仕事をしている人など特に強い
「身動きが取れないような感覚です。やらなければいけないことや、時間の使い方は分かっているのに、自分への期待が高すぎて手に付かないんです。濡れた髪のままベッドに座って、時間の経過をただ見つめているだけ。週に何度か、頭では遅れることを理解していても行動に移せないことがあります」。
チェンジマネジメントを専門とする心理学者で神経科学者のリンダ・ショー博士によれば、時間を無駄にしたくないという強い気持ちは、プレッシャーの大きい仕事をしている人や、1日12時間労働が日常的な個人事業主を苦しめることがあります。私もこの気持ちに共感せざるを得ません。
特に母親は不安を感じやすい
「スーパーママになりたかった」と語るロシェル・ロドニー=マソップ(26歳)は、ロンドンで接客業のパートをしながら双子を育てるシングルマザーです。「21歳の時に心理学を専攻中に妊娠した時、本当にインターンシップと子育てを同時にできると信じていました。しかし、卒業後にアパレル・マーチャンダイジングの仕事を始めてからは、子育て、長時間の労働と通勤、家の改築を同時進行で行うことが不可能に思えてきました。どんなに時間を効率的に使っても、1日24時間では足りません」
ショー博士によれば、家族が増えても時間は増えないため、特に母親は不安を感じやすいとのことです。「女性は普段から時間のプレッシャーを感じているだけでなく、周囲の人々の精神的な負担を引き受けることが多いです。子どもや親、パートナーや兄弟姉妹の不安を一手に受け止めるのは一般的に女性ですから」。
常に危機感に駆られていることは健康にも悪影響を与える
時間に対する不安がメンタルヘルスに与える影響は深刻で、常に危機感に駆られていることは生活の質だけでなく健康にも悪影響を与えます。ロシェルの場合、自分の人生をコントロールできない焦燥感が仕事にも波及し、自信を持てなくなりました。
時間が気になっていると体が麻痺するような感覚や不眠が起こりますが、それでも未完了のタスクについて常に考えてしまい、貴重な時間を無駄にしてしまいます。このような時間の無駄遣いに対する嫌悪感は、人間関係にも悪影響を与えます。
予期せぬ出来事に喜べなくなり、友人や家族との関係から遠ざかってしまいます。その理由は、自分で決めたスケジュールに遅れが出ることを避けたいからです。
コルチゾール反応を加速させ悪影響を及ぼす可能性
ショー博士によれば、どんな種類の不安障がいもコルチゾール反応を加速させ、体内の様々なプロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。少量のコルチゾールは集中力の維持に役立ちますが、慢性的なコルチゾール分泌の増加は神経伝達物質の働きを抑制し、メンタルヘルスに悪影響を与える恐れがあります。
ドーパミンの不足は「やる気がなくなり、楽観的でいることができなくなります」と言います。一方、セロトニンは気分、睡眠、食欲、感情の調節に不可欠であり、不足すると気分のむらが激しくなり、睡眠が乱れ、イライラしやすくなります。さらに、コルチゾール値が慢性的に高くなると、うつ病、高血圧、心疾患のリスクが高まるということも、これまでの研究で証明されています。
時間が気になって休めない人向けの「時間の上手な使い方」
不安な気持ちをアファメーションで置き換える
チャプマン博士によれば、時間や日にちが足りないという強迫観念を手放すためには、現実的で前向きなアファメーションを使いましょう。「この時間では1つのことしかできないけれど、その1つはしっかりやろう」といった言葉で自分を励ましてみましょう。
思い切ってタスクを減らす
ショー博士によると、私たちは所要時間を短く見積もりがちです。そのため、やらなければならないことを全部書き出すよりも、その中から2~3個選んでその日中に終わらせることにコミットする方が効率的です。それ以外のタスクは明日に回しましょう。
問題はひと晩寝かせる
ショー博士によれば、時間が気になって眠れないときは、考えていることを紙に書き出し、翌朝に対処することを心がけましょう。「眠っているわけでもないが、まだ完全に目覚めていない」という状態で、脳は軽い瞑想状態に入り、アルファ波を発しています。この状態でさまざまな疑問に対する答えが浮かぶこともあります。散歩中や空想中、窓の外を眺めているときや自分の呼吸を数えているときに、この状態に入りやすいかもしれません。
時間不安障がい:時間に対する恐怖との戦い
時間の恐怖とは
時間不安障がいは、時間に対する異常な恐怖や不安を特徴とする精神疾患の一種です。患者は時間が過ぎることに対して強迫観念を抱き、時間の管理や時間の無駄遣いに対する異常な不安を感じます。友人の待ち合わせに遅れるだけでなく、日常生活のさまざまな場面で時間に対する恐怖が現れることがあります。
症状と影響の詳細
時間不安障がいには、様々な症状があり、それらが日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。以下に、それぞれの症状とその影響は以下の通りです。
強迫観念
時間不安障がいの患者は、時間に対する不合理な恐怖を抱きます。たとえば、少しでも予定より遅れることが不安や恐怖を引き起こす場合があります。この強迫観念は、患者が日常生活で時間に対する過度のプレッシャーやストレスを感じる原因となります。さらに、時間管理に対する異常な執着が生じ、タスクを完了することに過度に集中し、他の重要な活動や関係を犠牲にすることがあります。
焦燥感
時間不安障がいの患者は、予期せぬ出来事や待ち時間に対する焦燥感が強く現れることがあります。この焦燥感は、日常生活での予定外の変化や遅延に対する過剰な反応を引き起こし、患者の心理的および身体的な健康に影響を与えます。また、焦燥感が持続すると、ストレスや不安が増大し、うつ症状の発現を促進する可能性があります。
身体的症状
時間不安障がいにより、身体的な症状が現れることがあります。不安やストレスにより、患者は身体的な反応を経験し、手の震えや心臓の鼓動の速さなどが挙げられます。これらの身体的症状は、患者の日常生活における快適さや能力に影響を与え、日常的な活動や社会的関係の維持を困難にします。
これらの症状と影響は、時間不安障がいが個々の患者に及ぼす深刻な影響を反映しています。時間に対する過度の恐怖と不安は、日常生活全体にわたって患者の心理的および身体的な健康を脅かす要因となります。そのため、時間不安障がいの治療と管理は重要であり、早期の介入と適切な支援が必要です。
対処法と治療の詳細
時間不安障がいを管理するためには、様々なアプローチや治療法があります。以下に、それぞれのアプローチ方法を見てみましょう。
認知行動療法(CBT)
CBTは時間不安障がいを治療するための主要な方法の一つです。この治療法では、患者は時間に関する不合理な信念や考え方を認識し、それらを変えることを学びます。具体的には、時間に関する恐怖や不安を引き起こす具体的な事象や状況を特定し、それに対する肯定的な思考や行動を身につける訓練を行います。また、タイムマネジメント技術やストレス管理のスキルも学び、時間に対する過度なプレッシャーや不安を軽減します。
リラクゼーション法
リラクゼーション法は、時間不安障がいの症状を軽減し、心身のリラックスを促すのに役立ちます。マインドフルネス瞑想や呼吸法、プログレッシブ・マッスル・リラクセーションなどのテクニックを習得することで、患者は不安やストレスを和らげ、時間に対する恐怖を軽減することができます。これらのリラクゼーション法は、日常生活での実践が比較的容易であり、患者が自宅で自己管理することも可能です。
薬物療法
重度の時間不安障がいの場合、医師は抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法を検討することがあります。これらの薬物は、不安や恐怖を軽減し、患者の症状を管理するのに役立ちます。ただし、薬物療法には副作用や依存のリスクがあるため、医師の指導のもとで適切な薬物の選択と管理が必要です。また、薬物療法は通常、他の治療法と併用されることが推奨されます。
これらのアプローチや治療法は、時間不安障がいの管理と症状の軽減に効果的です。しかし、個々の患者に最適な治療法は異なるため、医師や専門家との相談が重要です。早期の診断と適切な治療を受けることで、患者は時間に対する恐怖から解放され、充実した生活を送ることができるでしょう。
まとめ
時間不安障がいは深刻な精神疾患であり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。しかし、適切な治療法や対処法を用いることで、症状を管理し、生活の質を改善することが可能です。早期の診断と適切な治療を受けることが重要です。
参考
時間が気になって休めない…「時間不安障がい」の現実と対処法(ウィメンズヘルス)Yahooニュース