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知的障がい(知的発達症)とは?特徴や原因、診断について

知的障がい(知的発達症)は、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習などにおいて必要となる知的機能と、発達および文化的な水準を満たす日常生活に関する社会的な適応機能における問題が見られます。 発達期に発症し、継続した支援がない場合には、家庭・社会・職場などのさまざまな環境において、社会参加や日中活動が妨げられることがあります。 ※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5‐TR』では「知的発達症(知的能力障がい」と表記されていますが、知的障がい者福祉法などの福祉的立場においては「知的障がい」と使用していることが多いため、この記事では「知的障がい(知的発達症)」という表記を用います。   知的障がい(知的発達症)とは 知的障がい(知的発達症)という用語は、複数の法律に記載があるのですが、具体的に何をもって知的障がい(知的発達症)とするのかに関する法的な規定は現時点でありません。そのため前述の医学的な定義が用いられることが多いのですが、例えば教育の分野では『「認知や言語などにかかわる知的機能」の発達に遅れが認められ、「他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全、仕事、余暇利用などについての適応能力」も不十分であり、特別な支援や配慮が必要な状態』といった定義が用いられています(文部科学省)。   また、発達期や発達の過程で明らかになるために、『DSM-5』などでは、神経発達障がいというカテゴリに含まれていますが、法律上の発達障がいは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障がい、学習障がい、注意欠陥多動性障がい、その他これに類する脳機能障がいであってその症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障がい者支援法)とされており、知的障がい(知的発達症)は含まれていません。   知的障がい(知的発達症)の診断と判断基準 知的障がい(知的発達症)については、医学的な診断としての知的障がいと、療育手帳の交付など福祉的支援の対象としての知的障がいの2つがあります。 医学的な基準において知的障がい(知的発達症)は、概念的、社会的、および実用的領域における知的機能と、適応機能両面の障がいによって特徴づけられます。   現在の診断基準は適応機能が重視 知的機能の評価として以前は知能検査で評価される知能指数(IQ)が用いられることが多く、同年齢の中の下位2.5%に相当するIQ70や75などが目安とされていました。しかし、従来は、IQの基準が重視されていたのですが、IQが必ずしも社会生活上の困難と結びつかない場合があることから、現在の診断基準においては、概念的領域(記憶・言語・読字書字・数学的思考・問題解決・新規場面での判断など)、社会的領域(対人的コミュニケーション・社会的な判断など)、および実用的領域(セルフケア、金銭管理、行動管理など)における適応機能が重視されています。   適応機能は臨床評価および標準化された評価尺度により評価され、少なくとも1つの領域での障がいが著しく、適切な行動をとるために継続的な支援が必要である場合に診断基準を満たすとされています。また、知的障がい(知的発達症)の重症度も上記3つの領域の状態によって、軽度・中等度・重度・最重度の4段階で特定されます。ただし、小児期の早期でそれらの評価が難しい場合には、全般性発達遅延と診断される場合もあります。   福祉的な判断については、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」に基づいて、児童相談所、または知的障がい者厚生施設などにおいて判定がなされます。判定がなされたものについては、療育手帳が交付され、障がい福祉サービスを受けることができます。その際の判定基準や手帳の名称については、交付する自治体によって異なっています。また、定期的に再判定がおこなわれます。   知的障がい(知的発達症)と併存しやすい疾患 知的障がい(知的発達症)においては、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障がいや、抑うつや双極性障がい(双極症)、全般性不安障がい(全般不安症)などの精神疾患を併存しているケースが多いことも報告されています。しかし、知的障がいの特性からそれらの併存に気づかれにくい場合もあるので、注意が必要です。   最近は、知的障がい(知的発達症)があるお子さまへの早期療育をおこなう例が増えてきています。早期から介入し、子どもに合った環境の中で学ぶことで、今後必要となるスキルを早い段階から身につけることができます。また、抑うつなど二次的な問題をが起きるのを予防できるとも言われています。   知的障がい(知的発達症)によく見られる行動 学習技能を身につけることが難しい 学齢期の子どもや成人では、年齢相応に期待される読字・書字・算数などの学習技能の習得が難しく、支援が必要な場合が多くあります。 ただし、困難が読み書き算数などに限定される場合、学習障がいの可能性もありますので、注意が必要です。   柔軟に考え、物事に対処することが難しい 抽象的思考や実行機能、短期記憶の苦手さにより、計画を立てたり、優先順位をつけることが難しく、問題の解決に固定化された方法でしか対処できないことがあります。   コミュニケーションが難しい 言語的なコミュニケーションが難しかったり、仲間の意図を正確に理解することが難しい場合があります。こちらもコミュニケーション面特定的に困難な場合には、コミュニケーション障がい(社会的コミュニケーション症)やASD(自閉スペクトラム症)の可能性もありますので、注意が必要です。   行動のコントロールが難しい 年齢に応じた方法で気持ちや自分の行動をコントロールすることが難しく、未熟であるように見られる場合があります。こちらも、衝動のコントロール面が特定的に困難な場合には、ADHD(注意欠如多動症)などの可能性もありますので、注意が必要です。   食事や身支度など、身の回りのことの自立に時間がかかる 同年代と比べて、複雑な日常生活上の課題には支援が必要であったり、自立するには長期的な支援が必要である場合があります。 ※上記は行動の一例です。必ずしもすべてのお子さまに該当するとは限りません。 知的障がい(知的発達症)の症状と特徴 知的障がい(知的発達症)の程度 知的障がい(知的発達症)の程度は、前述のとおり、概念的領域、社会的領域、実用的領域の3つの領域の状態によって、軽度・中等度・重度・最重度の4段階で特定されます。   知的障がい(知的発達症)の程度別に見られる特徴 軽度の場合、概念的領域では、読み書き計算や、時間、金銭などにおいて、年齢相応の水準を満たすのに支援を必要としたり、抽象的な思考が難しかったりする様子が見られるとされています。そのため、中学年以降授業についていくことが難しくなるケースなどもあります。   社会的領域では、コミュニケーションや会話、言語が年齢相応よりも未熟であったり、パターン化されていたり、気持ちや行動のコントロールの苦手さが見られたりします。実用的な領域では、日常生活の複雑な課題において支援を必要とする様子が見られるかもしれませんが、ある程度こなせることも多くそのために周囲からは、怠けている、がんばればできるといった評価をされているケースも見られます。そのような場合、その負担から不登校や無気力などの二次的な困りにつながってしまうこともあります。   ■中等度の場合 幼児期の早い時期から言葉の遅れが見られたり、就学後も学習についていくことが困難な様子などが見られるとされています。成人後も小学校ぐらいの精神年齢にとどまることから、かなり早い時期から周囲にその困難が気づかれることが多いでしょう。   ■重度の場合 発達の初期から、運動面、言語面の発達の遅れから気づかれ、専門家の支援や特別支援教育の必要性が高くなります。成人後の精神年齢も3から6歳相当と見込まれており、生涯を通じて、食事や身支度などの生活上の活動について支援が必要な場合が多いようです。   ■最重度の場合 言語、運動面の発達に著しい遅れなどが見られます。生活面のかなり多くの領域で支援を必要とし、重い身体障がいやてんかん発作などを伴う場合もあります。   知的障がい(知的発達症)の原因 出生前に生じる要因と出生後に生じる要因について 知的障がい(知的発達症)の要因は大きく3つに大別することができます。   ■1つ目 特に基礎疾患が見られないケースで、突発的要因(本田, 2018)や、生理的要因と呼ばれます。   ■2つ目 先天的な要因(出生前に生じる要因)で、先天性の代謝異常(フェニルケトン尿症など)や出産前後の感染症、中毒や染色体異常(ダウン症など)といった出産前に生じる先天性の異常が原因になる場合です。先天性の代謝異常の場合には、新生児の時期のスクリーニング検査により早期発見が可能であり、その場合には、投薬(先天性甲状腺機能低下症など)や食事療法(フェニルケトン尿症など)による治療が可能な場合もあります。   ■3つ目 後天的な要因(出生後に生じる要因)で、外傷性の脳挫傷やけいれん性疾患、感染症などが挙げられます。例えば日本脳炎や結核性髄膜炎、ポリオ、麻疹、百日咳などに感染し重篤化して脳炎になると知的障がい(知的発達症)を引き起こす場合があります。これらは、予防接種により感染の危険を減らすことができます。また乳幼児期に栄養不足だったり、不適切な養育環境に置かれることで脳の発達が遅れることもあります。   知的障がい(知的発達症)は遺伝する? 知的障がい(知的発達症)が遺伝するのか?については、知的障がい(知的発達症)の原因はさまざまですので、上記のように遺伝を原因としない場合もあります。まれに脆弱X症候群などの単一遺伝疾患など、原因となる遺伝子が親から子に伝わることで知的障がい(知的発達症)が発症する場合もあります。   ただ、親が知的障がい(知的発達症)の素因を持っていたとしても、それが必ず遺伝するわけではありませんし、遺伝しても必ず発現するとも限りません。つまり親が知的障がい(知的発達症)だからといって必ず子どもが知的障がい(知的発達症)になるわけではないのです。また、遺伝子の変異は誰にでも起こりうるものですし、遺伝性疾患のほとんどは正常な遺伝子や染色体が突然変異を起こすことによります。   知的障がい(知的発達症)のあるお子さまとの接し方 本人の願いや思いを中心にサポートする 年齢や障がいの程度に関わらず、本人の願いや思いを中心に置き、本人の幸せの実現をサポートしましょう。   わかりやすく伝える 本人が自分で判断し行動するためには、その人にわかる方法でつたえることが大切です。短く簡単な言葉でゆっくりと伝える、写真や絵を合わせて使いイメージを共有するなどの工夫をしましょう。   生活に密着した内容を重視する 抽象的な理解が難しく、経験した内容から理解することのほうが得意です。例えば実生活につながりやすいよう、より生活に密着した内容から学びのサポートをおこないましょう。   困った行動には予防的な対応を 困った行動をとらなくて済むように、ルールや対処法をわかりやすく事前に伝えておくなどの予防的な対応をとりましょう。 ※上記は接し方の一例です。必ずしもすべてのお子さまに該当するとは限りません。   サポート方法 職場や学校で…… 困ったこと 自信が持てず、誤解されやすい行動をとってしまう。   対応の方法 失敗した経験などがあると、自信が持てず消極的になりがちです。その逆で、できないことでも「できる」といってしまうことがあります。障がいのある方が成功体験を通して自信を持てるように、できることに目を向けた支援が求められます。 困ったこと 学習に時間がかかったり、忘れたりしてしまうことがある。   対応の方法 仕事の仕方を覚えても、翌週になると忘れてしまったり、指示した三つの仕事のうち、一つしか実行していなかったりすることがありますが、意欲がなかったり、反抗しているわけではありません。やることを具体的にメモに書いて渡したり、一つひとつ指示をすることが大切です。   街中で…… 困ったこと 状況に応じた行動をすることや見通しをもって考えることが難しい。   対応の方法 いつも通っている道路が工事中で通行止めになっているなど、予想外の出来事に臨機応変に対応したり、状況に応じて適切とされる行動をとったりすることが難しい場合があります。困っている様子に気づいたら、まず話しかけて希望を聞いてください。 困ったこと 案内板などの表示の意味を理解することが困難。   対応の方法 絵や記号を用いて分かりやすい内容にしましょう。また、文字を書く場合は漢字にふりがなをつけましょう。   日常生活の中で…… 困ったこと 相手の気持ちを考えて行動をすることが難しい。   対応の方法 知的障がいのある方は、相手の気持ちを考えたり、自分の気持ちをうまく表現したりすることが難しく、対人関係をうまく築けないことがあります。そういった場合にも、分かりやすい言葉で、対応するように心がけましょう。 困ったこと 子供に対するような話し方をしてくる人がいる。   対応の方法 相手の年齢に応じた言葉づかいで話しましょう。 まとめ 知的障がい(知的発達症)の理解と支援は、個々の特性やニーズに応じた対応が求められます。早期から適切な介入を行うことで、本人の可能性を最大限に引き出し、充実した生活を送るための支援が重要です。また、社会全体がこの障がいについて理解を深め、温かい目で支え合うことで、知的障がい(知的発達症)を持つ方々が自分らしく生きることができる環境を整えていきましょう。   参考 知的障がい(知的発達症)とは?特徴や原因、診断について|LITALICOジュニア 知的障がい|ハートシティ東京   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram  

視覚障がいとは?学校での支援方法、サポート方法をご紹介!

視機能の永続的な低下により、学習や生活に支障がある状態をいいます。学習では、動作の模倣、文字の読み書き、事物の確認の困難等があります。 また、生活では、慣れない場所においては、物の位置や人の動きを即時的に把握することが困難であったり、他者の存在に気付いたり、顔の表情を察したりするが困難であり、単独で移動することや相手の意図や感情の変化を読み取ったりすることが難しい等があります。   視覚障がいとは 視覚障がいとは、眼球、視神経及び大脳視中枢などで構成される視覚系のいずれかの部分に障がいがあるために、見ることが不自由または不可能になっている状態のことです。視覚的な情報をまったくえられない、またはほとんどえられない「盲(もう)」と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる「弱視」に大きく分けられます。 この他に、色彩の弁別能力に障がいのある場合もあります。ただ、「盲」「弱視」と一口に言っても、視力があるかないかの単純な状態ではありません。   「盲」とは、明暗の区別のつかない状態も指しますが、明暗の区別はつく状態、目の前で手を振ると動いているか止まっているかわかる状態、目の前で出された指の数程度ならわかる状態も含みます。 また「弱視」には、視力が低い状態の他に、見える範囲が狭い状態、光をまぶしく感じる状態、明るいところではよく見えるのに、夜や暗いところでは見えにくくなる状態も含みます。   一見して視覚障がい者とわからないことが多くある 視力をほとんど活用できない盲の人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握しています。文字の読み書きは、最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンでおこなうことが多くなっています。また、点字も視覚障がい者が自由に読み書きできる大切な手段の一つです。移動時は、白杖を持ち単独で歩くケース、ガイドヘルパーや盲導犬と歩くケースがあります。   弱視の人で視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり、文字を拡大したり、近づいて見るなどの、さまざまな工夫をして情報を得ています。最近では、盲の人と同様に、パソコンも活用しています。視力を活用できても、遠くのもの、小さいもの、動いているものが見えない、大きいものの全体像が把握できないなどの困難があります。また、読み書きに時間がかかったり、負担が大きかったりすることもあります。移動時には白杖を用いない人も多く、一見して視覚障がい者とわからないことが多くあります。 学校での支援:特別支援学校  特別支援学校(視覚障がい)には、一般的に小学部、中学部及び高等部が設置され、一貫した教育が行われています。また、寄宿舎を設置している学校もあります。 各教科及び自立活動の指導に当たっては、子供一人一人の実態等に即した個別の指導計画を作成し指導しています。例えば、弱視の子供には、見え方の状態に合わせて拡大や白黒反転した教材を使用して指導したり、弱視レンズなどの視覚補助具やコンピュータ操作の技能の習得を目指したりするなどの指導をしています。 また、高等部を設置している学校では、普通教育を主とする普通科及び専門教育を主として行う学科(理療科等)を設置し、自立と社会参加に必要な知識や技能の習得を目指した指導をしています。   障がいの程度 両眼の視力がおおむね0.3未満のもの又は視力以外の視機能障がいが高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの(学校教育法施行令第22条の3)   教育課程 視覚障がい者である子供については、それぞれ小学校、中学校、高等学校の教育課程に準ずる教育を行い、小学校、中学校又は高等学校の教育目標の達成に努めるとともに、障がいによる学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うことを目標としています。 これらの目標を達成するために、一人一人の障がいの状態等を考慮した弾力的な教育課程として、「小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程」「知的障がい特別支援学校の各教科を中心とした教育課程」「自立活動を中心とした教育課程」等、子供の実態等を考慮した多様な教育課程を工夫して編成・実施しています。   通常の学級 通常の学級においては、小中学校等で編成される教育課程に基づいて、各教科等の指導を学級、学年集団で行ったり、全体で学校行事に取り組んだりするなど、一斉の学習活動が基本となります。視覚障がいのある子供が各教科等を学ぶ場合、障がいによる困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。   例えば、拡大教材等を活用することや、実験や観察の際に危険のない範囲で近づいて見ることができるようにすること、照明や外からの光の入り方に配慮して教室内の座席の位置を検討すること等で見えにくさに配慮することなど、教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容や学習指導要領総則のほか、各教科等編の解説に示されている「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫」等を参考とし、子供一人一人の教育的ニーズを踏まえ指導しています。   通級による指導 通級による指導においては、各教科等の大部分の授業を通常の学級で学び、指導上の工夫や個に応じた手立て、教育における合理的配慮を含む必要な支援を受けながら、一部の授業について当該の子供の障がいによる学習上又は生活上の困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。   例えば、拡大教材等を活用することや、実験や観察の際に危険のない範囲で近づいて見ることができるようにすること、照明や外からの光の入り方に配慮して教室内の座席の位置を検討すること等で見えにくさに配慮することなど教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容のほか、視知覚や視機能の向上を図る学習や、地図やグラフ等の資料を効率的に読み取るための視覚補助具の活用方法を学習する等の障がいの状態等で生活上又は学習上生じる困難さの改善・克服を図る自立活動の指導をしています。   障がいの程度 拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度の者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)   教育課程 通級による指導の視覚障がい者である子供については、それぞれ小学校、中学校、高等学校の教育課程の教育を行い、特別の教育課程を編成する場合には、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし、指導目標や指導内容を設定して指導をしています。   特別支援学級 各教科等の指導に当たっては、子供一人一人の障がいの状態等を考慮し、教材・教具の開発・工夫を行ったり、個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたりしています。また、子供一人一人の障がいの状態や学習状況等に応じて、通常の学級の子供と交流及び共同学習を行い、教科学習を効果的に進めたり、社会性や集団への参加能力を高めたりするための指導をしています。 多くの学級では、子供が可能な限り自らの力で学校生活が送れるよう、例えば、眼疾患によってまぶしい場合があるため遮光カーテンや調光できる照明を設置したり、一人一人に拡大読書器を配置したりするなどの施設・設備の整備や工夫をしています。   障がいの程度 拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度のもの(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)   教育課程 弱視特別支援学級は、小学校、中学校の学級の一つであり、小学校、又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし、子供の障がいの状態等に応じて、特別の教育課程を編成して指導できるようにしており、各教科等の他に、障がいによる学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ、例えば、視知覚や視機能の向上を図る学習や、地図やグラフ等の資料を効率的に読み取るための視覚補助具の活用方法を学習する等の障がいの状態等で生活上又は学習上生じる困難さの改善・克服を図る自立活動の指導をしています。   また、子供の障がいの状態等を考慮の上、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし、各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えたり、各教科を知的障がい者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして、実態に応じた教育課程を編成し指導しています。   視覚障がい者との接し方 視覚障がい者と一口に言っても、見えなくなった時期、障がいの状況や程度はさまざまです。また、白杖を持たずに歩いていたり、白杖は持っていても目をしっかり見開いていて、声のする方に視線が向いたりするため、一見して視覚障がい者と見えない場合もあります。 まずは、本人に、その見え方やどのようなサポートを希望するかを確認してください。個々人の視力、視野、適切な光量、色の見え方などに応じた環境設定を行うことで、効率的な作業遂行が可能となります。例えば、就労支援機器の活用により、パソコンを使った仕事などへの従事可能性が高まります。   視覚障がい者が安心して移動できるように、トイレやエレベーターなど通常使用する場所への移動の手がかり、室内の配置、危険箇所を事前に伝えておく必要があります。 移動の支障となる物を通路に置かない、机の配置を工夫する、書類の保管場所を一定にするなどにより、移動の負担などを軽減することが重要です。 十分な照明がない、逆に明るすぎると疲労しやすい人がいますので、デスクスタンドの利用など、本人に合った照明や採光について検討する必要があります。また、目の疲労回復のための休憩時間の設定などの配慮も重要です。 重度視覚障がい者の場合、どのタイミングで話しかけてよいかわからず、職場内でコミュニケーション不足になってしまうこともありますので、普段からの情報伝達やコミュニケーションといった配慮が重要となります。   声をかける時 前から近づき、「○○さん、こんにちは。○○です」などと自分から声をかけ、名乗ってください。軽く肩や腕に触れていただくと、話しかけられていることが一層わかりやすくなります。   説明する時 「むこうの・・・」「あそこの・・・」「このくらいの・・・」などと指差し表現や指示代名詞で表現しても、視覚障がい者は相手が目で見ている先を理解できません。「あなたの右」、「煙草の箱くらいの大きさ」などと、具体的に説明してください。 何かに触ってもらう場合は、説明しながら視覚障がい者の手をとって触れさせてください。方向や位置を説明するときは、視覚障がい者がいま向いている向きを基準にして説明してください。   初めての場所では、部屋の様子と席の位置や向きなどを説明してください。たとえば、「部屋は講義室のような部屋で、机がロの字型に並んでおり、30人くらい座れそうで、今は15人くらい座っています」、のように、具体的に説明してください。 道順を説明するときは、目印となる具体的な建物などを伝えてください。全盲の人が、さらに誰かに、目的地の場所やそこへの道順を伝えたり、尋ねたりする際には、目印の建物についての情報があると便利です。 壁に貼ってあるポスター類、ビデオやDVDで画面だけが動いているような時、どのような場面や状況か、簡単に伝えてください。   グループで話しているとき どのような人達がグループにいるのかを視覚障がい者は見渡すことができません。話が始まる前に一回り自己紹介をしてください。 いなくなった相手に気づかず、話しかけることがあります。席をはずすときや戻ってきたときは、一声かけてください。また、新たに話に加わるときは自己紹介をしてください。 今しゃべっているのが誰なのか、視覚障がい者は見ることができません。必要に応じて名乗ってから話し始めてください。 まとめ 視覚障がい者は、得意・不得意はありますが、多くの人が、自分の周囲の様子を頭の中にイメージしながら生活していますので、日常的に利用している場所や、使用しているものについては見えているかのように動いたり使ったりします。これは身体が覚えているからできることなのです。 ですから、様子のわからない不慣れな場所や、初めての場所はもちろんのこと、日常的に利用・使用している場所でも、普段と様子が変わっていると戸惑うことがあります。普段から、通路(たとえば、点字ブロックの上)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障がい者が使用しているものの位置を変えないなど、周囲の協力が不可欠です。 困っていそうなときはサポートが必要かどうか声をかけてください。また、その人が、見えない・見えにくいことを心のどこかに留めておいてください。   参考 (1)視覚障がい|文部科学省 視覚障がいについて、知っておいていただきたいこと|バリアフリー推進オフィス 職場改善好事例集   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   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学習障がいの子どもたちが学びを深めるために 慶応に合格した学習障がいの息子と母が直面した過酷な現実

学習障がい(Learning disability:以下、LD)の子どもを取り巻く環境は厳しい――そう話すのは、LDの子どもたちへの支援を行う「一般社団法人読み書き配慮」代表理事の菊田史子さんです。合理的配慮の提供が義務付けられているにもかかわらず、適切な支援や配慮が受けられないケースがまだまだあるといいます。LDの子どもたちの学びの保障に必要なこととは何か。LD当事者の母でもある史子さんに、話を聞きました。   学習障がいの有祐さんの幼い頃 全般的に知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、さまざまな困難に直面している状態――文部科学省は、LDについてこう定義しています。   そうしたLDの子どもたちの支援を行う一般社団法人読み書き配慮代表理事の菊田史子さんは、LDの子を持つ母でもあります。息子の有祐さんの幼い頃について、こう振り返ります。 「有祐が4歳の頃、ニューヨークに滞在していたのですが、有祐の姉の自由研究で国連本部を訪れたことがありました。日本語の通訳付きで案内してもらって帰宅すると、有祐が『安保理ってね、勝ったチームしか入れてもらえないの。でも日本は世界で2番目にお金を出しているんだよ』といきなり説明し始めたのです。それなのに、小学校入学を前に文字を書かせてみると、書けない。せめて名前だけでもと思いましたが、どうしても形にならない。そのギャップに、強い違和感を覚えました」   小学校に入ってからはより適応できないことが増える また、普段から「座っていなさい!」など注意しなければいけない場面が多いことも気になっていたそうです。「小学校に入ってからはより適応できないことが増え、本人も毎日報われない思いがあったのでしょう。帰宅すると大暴れして宿題などできる状態ではなく、何とかなだめて夕食と入浴を済ませることができるかどうかという日々。『このままではこの子をダメにしてしまう。診断名が必要だ』と考え、医療機関へ連れていきました」   すると、小児精神科の医師はこう言ったそうです。「お子さんはアスペルガーです。知的な能力は高いのですが、読み書きに不自由が出るかもしれません。そういうお子さんは海外に出られるケースが多いです。日本で育てる場合、小中学校で心に傷がつかなければ、社会に出ることはできるでしょう。社会ではパソコンを使うことができますから」   この言葉に史子さんは、「学校は子どもの可能性を切り開くところでは?」と不思議に思ったそうです。「同じ頃、知人に『あなたのお子さん、ディスレクシアじゃない? うちの子もそうなの』と言われたんです。そこで初めてLDやディスレクシア※という言葉を知り、調べ始めました。その方のお声かけがなかったら見過ごしていたかもしれません」 ※ 発達の遅れがないのに読み書きに困難がある、LDの1つのタイプ   「いいお母さん像」を手放し、努力のベクトルを変えた しかし、この段階でも史子さんは「練習すればいつかは文字を書けるだろう」と考え、必死に書くことを練習させたといいます。 「何度練習しても定着しないことを一番わかっていた息子にとって、文字を書かなければいけない学校は、いわば敵だらけの場所。そこからやっと帰宅しても、家では私が消しゴムと鉛筆を持って待っているわけです。練習させても暴れて泣きじゃくり、宿題を終えるのも一苦労で、疲れて眠るという繰り返しが4年生まで続きました。私自身、疲れきっていたのに諦めきれなかったのは、いいお母さんでいたかったからでしょうね。自分の自己満足だと気づいたとき、『練習はやめて、努力のベクトルを変えよう』と有祐に伝えました」   そこから史子さんは、有祐さんの知的好奇心を広げる方向へと舵を切りました。「アスペルガーは極めることができる人。好きなことを教えてくれる先生を探しなさい」という主治医の助言から、個人指導塾に相談し、有祐さんの興味のある数学、物理、化学などを教えてくれる大学院生をつけてもらいました。すると有祐さんは、「今日はね、乱数を習ったの!」と、塾のある日は生き生きと話をするようになったといいます。   iPadを使うと学習しやすいことが判明 そして有祐さんが5年生の夏、iPadを使うと学習しやすいことが判明しました。本人は「学校で使うのはダメと言われるに決まっている」と利用を渋ったのですが、史子さんは「有祐の教養を開く窓はICTしかない」と考えました。   「本人の気持ちが固まるのを待ちつつ、担任の先生とはiPadの利用について相談を重ねていきました。そうした中、翌年1月のある日、有祐が『やっぱり俺にはiPadが必要だから、先生に頼んでくる!』と学校に走っていったんです。それを機に担任の先生が丁寧に調整をしてくださり、晴れて6年生からiPadを使えることになりました」   大切なのは、特性を前向きに捉えて説明できること 周囲の協力を得ながら、中学校でもパソコンを使用して学んだ有祐さん。しかし、情報端末の使用については学校や教員と粘り強く交渉を重ねる必要があり、高校受験の際も、入試や入学後のパソコン使用を認めてくれる高校は2校しかないなど、親子ともに数えきれないほどの壁に直面しました。   その長い奮闘については、有祐さんのインタビュー記事で詳しく紹介していますが、「学ぶ機会を確保するために、なぜこんなに苦労しなければいけないのか」という当時の思いが、一般社団法人読み書き配慮を創設した原点になったということです。   読み書き配慮では、心理士による読み書き検査や検査者の養成、LDの学習配慮に関する相談、読み書きが苦手な小中学生がICTの活用や配慮を交渉する力などを学ぶスクール「KIKUTA」の運営、合理的配慮の事例集の公開などを行っています。 こうした活動を通じて、全国のLD当事者とその保護者の相談に乗ってきた史子さんですが、「今もLDの子どもを取り巻く環境は厳しい」と感じています。そのうえで、当事者が合理的配慮を学校で受けるために必要なことについて、次のように話します。   「保護者も学校に丸投げしないこと。まずは本人の心が育っていることが重要で、書けないことを引け目に思っているうちは、戦うことはできません。本人が自分の特性を前向きに捉えたうえで、『どんな方法なら自分の実力を出し切れるか』を自分で説明できるようになることが大切です。読み上げてもらうのがいいのか、読み上げでも機械と人のどちらがいいのか、どんな方法で書くのか──自分に合った方法で時間内に書き上げる調整や積み重ねも大事です。高校入試を考えると、中3の1学期までにはこれらを確立し、支援計画書に盛り込んでもらうのがよいでしょう」   学校との連携も欠かせない 普段の定期テストや受験でのパソコン使用の許可を取りつけるには、学校との連携も欠かせません。「有祐も小学校でのiPadの使用実績を持って中学校に交渉し、中学校の定期テストのパソコン使用実績を持って高校に交渉しました。学校と一緒にその子なりのやり方を確立して実績をつくっていくことが大切です。また、受験当日のパソコン使用を許可してくださいと親が志望校にお願いすると、点数交渉をしにきたと思われるようです。ですから、親が前に出るのではなく、学校の先生に窓口になっていただき、志望校と交渉してもらうことも重要です」   一部の自治体や学校では支援や配慮を必要とする子どもたちへの理解が進みつつありますが、LDやディスレクシア自体の認知度はまだ高くありません。そのため、学校との連携に当たっては、まずは知ってもらう必要があるといいます。 「チームをつくるような意識が重要で、仲間や味方を作っておくといいですね。私は積極的にPTA役員を引き受けました。その際、先生にわが子のことをお願いするのではなく、まずは先生や学校のお手伝いをして気持ちのよい人間関係を築くことを大切にしました」   早めの支援で「学力を積み上げる」重要性 また、LDは早い段階で気づいて支援につなげることが大切だと史子さんは言います。低学年で気づいても「様子を見ましょう」と言われ、そのまま時間が過ぎていくことがよくあるからです。   「今の社会や学校はすべて文字言語がベースになっていますから、考える力があっても読み書きができないとわからないことが増え、小学校の高学年にもなるとかなり苦しい状況に置かれます。聴覚を通じた理解力はかなり高いのに、学力の積み上げができていないことで、WISKなどの知能検査では知的障がい領域と判断されてしまう子もいます。そのため、早い段階からICTを活用して学ぶ力を身に付けさせてあげることが非常に大切です」   心に傷がついてしまうことが最も問題 適切な支援や合理的配慮が受けられずに学力の積み上げができないと、「自分はできない子なのだ」と心に傷がついてしまいます。それが最も問題だと史子さんは指摘します。   「LDの子どもたちは心が折れてしまっているケースが多く、私たち読み書き配慮は心の立て直しを活動の第一義としています。今は、社会に出ればパソコンを使いますから、心を立て直すことができればその先の人生は何とかやっていけます。学校の先生方には、まずはLDについて知ってもらい、ご自身で配慮を判断していただけるとありがたいですね。担任の先生が『校長に確認します』、校長が『教育委員会に確認します』、教育委員会が『前例がないか調べます』と次々と投げてしまい、時間だけが過ぎていく事態は避けたいものです。実際、担任の先生が判断して校長やほかの先生とうまくつなげてくださるケースは、合理的配慮が実現しやすいです」 合理的配慮とは、スタート地点に立てるようにすること 文部科学省はLDをはじめ障がいのある児童生徒の教育支援体制の整備を推進してきました。障がい者差別解消法が施行された2016年には行政や公立学校で合理的配慮の提供が義務化され、2024年4月1日からは私立学校を含む事業者においても同じく義務化されました。しかし、現場の理解が追い付いていない現状があります。   「この4月以降も、LD当事者とその保護者から『私立学校の説明会で“合理的配慮はできない”と言われました』という声が届いています。また、合理的配慮をしますと言われたのに、いざ入学したら対応してもらえないケースもあります。そうした学校は、合理的配慮を点数交渉と誤解されているのかもしれません。合理的配慮とは受験の合格点を変えることではなく、スタート地点に立てるようにすることです。LD当事者が学びでICTを使うのは、裸眼で見えにくい人がメガネを使うのと同じです。大学入学共通テストでも、問題文の読み上げやパソコン・タブレット端末の利用は受験上の配慮事項として明記されています」   1人ひとりの学びの保障は重要だと強調 史子さんは、働き手が少なくなっている時代の流れからしても、1人ひとりの学びの保障は重要だと強調します。「これからは、AIや機械なども活用しながら、みんなが活躍しなければいけない時代で、1人ひとりの能力を磨いておかなければ社会が成立しません。そのためにも、学びを保障し、子どもたちそれぞれのよいところを見出してあげることが大切ではないでしょうか」   子どもたち1人ひとりが学びを深め、自身の可能性を認識して人生を切り開いていくために必要な教育や支援とは何か、学校現場は今、改めて考える必要がありそうです。(文:吉田渓、注記のない写真:菊田史子さん提供) まとめ 子どもたち一人ひとりが学びを深め、自身の可能性を認識して人生を切り開いていくためには、教育や支援が不可欠です。LDの子どもたちにとって、適切な支援や合理的配慮が受けられる環境を整えることが大切です。学校現場や社会全体が、彼らの特性を理解し、学ぶ力を引き出すための取り組みを進めていくことが求められます。史子さんのような先駆者たちの努力により、LDの子どもたちが安心して学べる環境が広がっていくことを期待しています。   参考 【前編】学習障がいの息子が慶応に合格、母が直面した「学ぶ機会の確保」の過酷な現実(東洋経済education×ICT) #Yahooニュース   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

自閉症(自閉症スペクトラム障がい:ASD)とは?特徴や当事者の思いを知る

一般には自閉症で知られていますが、現在はアスペルガー症候群等を統合した【自閉スペクトラム症】の名称に変更されています。 特性としては「コミュニケーション・対人関係の不得意さ」と「行動・興味・活動に対する反復や固執等」が挙げられ、特性の強さには個人差があります。   自閉症とは 自閉症とは、自閉症スペクトラム障がい(ASD)であり、発達障がいの一種です。ASDは、社会的なコミュニケーションと行動に影響を与える広範な障がいを含みます。自閉症は生涯にわたる障がいであり、症状の重さや現れ方は個人によって大きく異なります。   自閉症の主な特徴 ■社会的コミュニケーションの困難 他者との目を合わせるのが苦手 会話のキャッチボールが難しい 非言語コミュニケーション(ジェスチャー、表情など)の理解が困難   ■行動や興味の限定 特定の物事に強い興味を示す 同じ行動やルーチンに固執する 感覚過敏または感覚鈍麻(音、光、触覚などに対する異常な反応)   自閉症の診断と評価 自閉症の診断は、専門的な評価を通じて行われます。通常、以下のような方法が用いられます。 観察:子供の行動や相互作用を観察する インタビュー:親や教師からの情報を収集する 発達検査:発達の遅れや異常を特定するための検査を実施する   自閉症の原因 自閉症の正確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因の組み合わせが関与していると考えられています。例えば、特定の遺伝子の変異や妊娠中の母体の健康状態が影響を及ぼす可能性があります。   自閉症の支援と治療 自閉症は治療によって完全に治るものではありませんが、適切な支援や療育によって症状の改善や生活の質の向上が期待できます。以下は一般的な支援方法です。   ■行動療法 応用行動分析(ABA):ポジティブな行動を強化し、問題行動を減少させる療法 社会技能訓練:社会的な相互作用やコミュニケーションスキルを向上させる訓練   ■言語療法 言語療法士による発語やコミュニケーションスキルの向上を目指す訓練   ■作業療法 日常生活の活動や感覚統合を支援する療法   自閉症と社会 自閉症のある人々が社会で成功し、充実した生活を送るためには、周囲の理解と支援が不可欠です。多くの企業や団体が自閉症に対する理解を深めるためのキャンペーンやプログラムを実施しています。また、教育現場でもインクルーシブ教育が推進され、自閉症のある子供たちが通常の学級で学ぶ機会が増えています。 対人関係の特徴 求めている時だけ関わって欲しい 自閉スペクトラム症の特性が強い場合は、対人関係のあり方が異なり、雑談等の会話を邪魔と感じたり、一人でいる時と変わらない行動を取ります。 自ら関わりを求めてくる状況としては、玩具やお菓子が欲しい時の欲求場面、不快と感じる物事(認知の偏りがあるので、一般的には不快とならないことでも不快を感じる)への回避場面等です。   興味のあることや楽しいことでの関わりは嫌いでない 手を繋がれてトランポリンに乗ったり、ブランコ遊びで背中を押されることは、当事者が興味を持っていれば受け入れ可能で、肯定的な関わりを持つ機会となります。知的能力が高い児童に対しては、鉄道やゲーム等の関心がある話題を提示することで、対人関係を深める機会となります。 自閉スペクトラム症の子供と関係を築く際は、本人が好む遊びや興味を探し、量より質の関わりを持つと喜ばれるはずです。   対人関係で躓くケース 友達が怒っているけど理由は分からない 自閉スペクトラム症の特性が弱い場合は、友達等との関係を求める反面、対人関係で躓きをみせることがあります。躓く理由として、彼らは相手の感情や状況理解が分かりづらい特徴を抱えており、一方的に話し続けたり、偏った内容の会話を続けてしまうからです。 又、場面にそぐわないことを言ったり、杓子定規な発言を繰り返すこともあります。その他、冗談の理解が難しく、空気が読めないとラベルを貼られたりもします。   悪いことはしてないはずだけど 対人関係の難しい点は、コミュニケーションに偏りがあっても、相手が受け入れていれば問題となりません。反対に、些細な偏りでも相手が不快と感じた場合、良好な関係を築くことが困難となります。幼児期の子供達は、友達との関わりで嫌なことがあっても、仲間外れを頻繁にはおこないません。しかし、学齢期以降の児童は、些細な違いに敏感となり、距離を取られます。 自閉スペクトラム症のお子さんが友人関係を構築・維持するには、違いを気にしない児童との共存が求められます。   遊びや余暇の特徴 同じ遊びをずっと続けることは楽しい 自閉スペクトラム症の子供は、繰り返し同じ遊びする特徴があります。大人側からみると「大丈夫?」と思ってしまいますが、本人達によると問題ないとの話です。彼らは特定の物事に興味・関心を持つ傾向で、一般と比べて遊びが偏ります。大人から遊びに幅広さを求められて、受容できる子供もいますが、退屈や苦痛を感じている場合もあるので注意して下さい。 周囲のスタンスとしては、日常生活に支障がない範囲で、本人の選好性を大切にして頂きたいです。   ごっこ遊びって何をすればいいの 幼児期の代表的な遊びとして「ごっこ遊び」があり、自閉スペクトラム症の子供が苦手とする遊びでもあります。 ごっこ遊びは、誰かや何かの真似を楽しむ、即興的な想像で遊びが成り立ちます。しかし、玩具遊び等の明確な遊びを得意とする彼らにとって、即興的な想像は難しく、遊びの楽しさも見い出しづらいです。更に、友達を交えたごっこ遊びに発展すると、他者と想像を共有するので、遊びの難易度がぐっと増します。   新しいことをしたいと思わないし、むしろ不安になる 初めての体験を「どう感じるか」は、人それぞれ違います。同じ体験をしても、ある人は不安を覚え、ある人は緊張を楽しめるという個人差が生じます。自閉スペクトラム症の子供は、物事の捉え方に偏りがあり、遊びや余暇であっても、強い不安や緊張を感じる場合があります。 新しいことを始める際は、情報を事前に伝えたり、写真や実物の手掛かりを提示し、本人が安心できるよう配慮して下さい。   食事で見られる偏食等の特徴 僕の食べたい物は限られている 自閉スペクトラム症の児童の中には、食事に対して、強い拒否やこだわりをみせる場合があります。嫌がる要因は、一般にみられる敏感さや味覚の問題だけでなく、以下のことが考えられます。 食材一つひとつの色、形、堅さ。食材同士の混ざり方。食べる順序。食材の匂い。使用する食具。食べる席や場所。 不快なく食べる糸口を探るには、何が好みかを知るだけでなく、何を苦手としているかも把握するべきです。   学齢期には偏食が減る傾向 児童の年齢が上がるにつれて、本人の嗜好も変化し、今まで食べていた物を拒む場合も起こり得ます。自閉スペクトラム症の偏食に関しては、学齢期を含めて長期で取り組むことが大切で、少しずつ食べられる食材の幅を広げて下さい。 日常的に食べている食品の種類は、国々で当然異なり、食べなけらばならない食品の定義はありません。ただし、最低限の栄養摂取と健康状態は、配慮して下さい。   過敏さ味覚について 子供の口唇や口腔は、非常に過敏です。舌には味蕾と呼ばれるセンサーがあり、成人期には減少していることが知られています。大人になると苦手な食べ物が減る要因の一つに、この味覚の鈍感さが考えられています。又、子供の嗜好は、苦味の強い野菜類や酸味のある果物類を苦手とし、甘味のある食べ物を好みます。   こだわりや感覚の特徴 気になる物を目にすると、近寄らずにはいられない 自閉スペクトラム症の代表的な特性に、反復や固執があります。一部分の映像を繰り返しみたり、エレベーターをみると走り出したりと、こだわり方は様々です。 コミュニケーション場面においては、同じ質問、同じ会話を何度も続ける児童がいます。一方的に、同じ言葉を言い続けるケースもあります。 知的能力が高い自閉スペクトラム症の場合は、急なスケジュール変更、普段と異なる状況を受け入れる際、強い嫌悪感を覚えるそうです。   音や光、温度の変化が苦手  聴覚の過敏として、大きな音全般に不快を示す例や、特定の音のみに反応するケースがあります。光に対して、強い照明を苦痛と感じたり、夜のネオンに過敏さをみせる場合があります。その他、些細な気温変化が苦手で、居ても立っても居られない状態となる子供がいます。    「我慢できない」とは違う 大人の視点に立つと「抑制してもらいたい」と考えますが、こだわりや過敏は自閉スペクトラム症の特性なので、やみくもに我慢させても効果的ではありません。言語化ができる学齢期の児童によると「急に予定が変わると落ち着かなくなる」「触りたくて仕方ない」「その音はなんかダメなんだよね」と教えてくれます。 当事者への配慮として、こだわりを示す対象を避けたり、スケジュール表を用いて予定変更を伝えたり、過敏となる物は排除することが大切です。 まとめ 自閉症は多様な特性を持つ発達障がいであり、早期の診断と適切な支援が重要です。自閉症のある人々がその能力を最大限に発揮し、豊かな人生を送るためには、社会全体の理解と協力が求められます。   参考 自閉症とは 特徴や当事者の思いを知る   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

「障がいは個性」、健常者と共に働ける職場へ 精神疾患がある若者を人材活用する企業の狙い

鬱病や統合失調症、発達障がいなどの精神疾患を抱える若者を、企業が採用する事例が増えています。一定割合での障がい者雇用が義務付けられていることに加え、人手不足の深刻化や、精神疾患について社会的認知度が高まっていることも背景にあります。「働きやすさ」の実現には、仕事内容や勤務条件、周囲の理解などの課題があります。企業には、本人が能力を発揮できる環境を整える取り組みが求められています。   就活生の54%「鬱を自覚」 「鬱病などは身近な病気。精神科を受診することは〝普通のこと〟として受け止められています」学生の就職活動の支援サービスを手掛けるABABA(アババ、大阪)で広報を担当する尾上七海(おのうえななみ)さん(24)は、最近の若者についてそう語ります。   かつて「精神病院」には暗いイメージがつきまといましたが、近年は軽症でも気軽に通える、清潔で明るい「メンタルクリニック」や「心療内科」などの医療機関が増えました。「若い人たちは自分の精神疾患を知られることに抵抗が小さくなっている」と話す尾上さんによると、人気バンド「サカナクション」のボーカル、山口一郎さんが鬱病を公表しながら活動を続けていることも、若者に影響を与えているといいます。   精神疾患を発症しやすい状況 一方、学生の就職活動は長期化し、「交流サイト(SNS)で周りが内定をもらっているのに自分はもらえていないと知り、焦りを募らせる学生が多い」といいます。ABABAが昨年10月、就職活動を経た学生100人に行った調査によると、54%が「鬱の自覚症状がある」、30%が「就活中に死にたいと思ったことがある」と回答しました。   医師の診断がなくても、自覚症状を抱えて悩む人がいます。若者が強いストレスにさらされ、精神疾患を発症しやすい状況にあることが分かります。   人手不足で要件を緩和 その結果、いったん就職しても早い時期に退職する若者も多いとみられ、中途採用を含む労働市場に精神疾患を抱える若者が増加し、企業は雇用に向けて対応を迫られています。   人材関連事業などを手掛けるレバレジーズ(東京)が昨年11月、企業の中途採用担当者330人を対象に調査したところ、半数が「精神疾患を抱える若者から応募があった経験がある」と回答しました。そのうち「新型コロナウイルス禍を経て、精神疾患を抱える若者からの応募割合が増加したと感じる」と回答した会社は75・7%に上りました。   「法定雇用率」の制度変更も採用を促している さらに同調査では、半数以上が精神疾患を抱える若者の採用要件を緩和していることも判明しました。理由として、46.6%が「早急な人員確保を行う必要があったから」と回答し、若年層の人手不足が背景にあることが浮き彫りになりました。   障がい者雇用促進法により、企業には従業員に占める障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。障がい者手帳を持っている患者が対象で、平成30年4月から、身体障がい者、知的障がい者に精神障がい者が追加されました。この制度変更も、精神疾患のある若者の採用を促しています。   特性理解、貴重な戦力に 課題は大きいです。レバレジーズの担当者は「精神疾患を抱えていても、外見ではわかりにくく、どこまでどんな仕事ができるのか見極めが難しい。体調も不安定な事例が多い。雇用側の理解が及ばず、職場への定着率は身体障がい者より低い」と話します。   それでも、企業が精神障がい者を健常者と同様に雇用する利点はあります。発達障がいの人はコミュニケーションが苦手な場合でも、集中力に優れていることがあります。そうした視点から人材活用を模索する企業があります。   日揮ホールディングス特例子会社で、IT技術を軸に業務支援サービスを行う日揮パラレルテクノロジーズ(横浜市)は「障がいの有無にかかわらず、全ての人が対等に働ける社会の実現」をミッション(使命)として掲げ、令和3年1月に設立されました。20~40代の社員37人のうち34人が障がい者で、大半が精神障がい者です(今年6月下旬現在)。   採用に際しては、インターンでIT技術の基礎があるかを判断したうえで、最終面接で「障がいについての自己理解、障がいの特性が出たときに自己対処できるか」を見ます。 採用されると、在宅勤務を基本に、自由な時間に働けます。職場は「1人1プロジェクト」でチームでの仕事はせず、人間関係の摩擦が生じにくい環境をつくっています。心理的負担をかけないように「重要だが、緊急ではない仕事」を任せてせかさないようにしています。自身も生まれつき両腕に障がいがある阿渡(あわたり)健太社長(37)は「環境を整備することで、障がい者が活躍できるという手応えを感じている」と話します。   得意分野で活躍する〝スペシャリスト〟を育てる 一方、「障がいは個性」を掲げ、健常者と同じ職場で障がい者の特性を生かそうとしているのが、人材派遣事業などを行うマーキュリー(東京)です。約110人(平均年齢44歳)の障がい者を雇用し、大半が精神障がい者です。今年3月に「パーソナリティ推進部」を設置し、それぞれの病気や症状をみながら仕事を支えています。   6月1日には「マーキュリー農活部」を設立しました。千葉県木更津市にある農園を借りて、健常者と障がい者がともに野菜や米の無農薬農法に取り組むことで、一体感の醸成や健康促進などを目指しています。同社の福元直樹・管理本部副本部長は「障がい者は貴重な戦力。もっと能力を生かせるようにしていくことが人材サービス会社の使命」と語ります。   東京都立大の山下真裕子教授(精神看護学)は「精神疾患は比較的早期に適切な治療をすることにより、就労できるほど回復することが多くなった。本人が疾患・障がいを自覚し、企業が特性を理解することが重要です。そのうえで、何でもできる〝ゼネラリスト〟ではなく、得意分野で活躍する〝スペシャリスト〟を育てることで、企業の生産性も上がる」と指摘します。(牛島要平) 精神疾患とは 精神疾患は、心や脳の働きに影響を及ぼし、感情や思考、行動に異常をきたす病気の総称です。代表的なものには、鬱病、統合失調症、双極性障がい、強迫性障がい、パニック障がい、発達障がいなどがあります。これらの病気は、本人の生活や社会活動に大きな影響を及ぼすことがありますが、適切な治療やサポートを受けることで、症状を管理し、社会復帰や生活の質を向上させることが可能です。   精神疾患の種類と特徴 鬱病 鬱病は、持続的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失を特徴とする病気です。身体的な症状として、食欲不振や睡眠障がい、倦怠感などが現れることがあります。社会的な孤立や仕事のパフォーマンス低下を引き起こすことも少なくありません。   統合失調症 統合失調症は、現実と非現実の区別がつかなくなる幻覚や妄想、思考の混乱などを特徴とする病気です。発症は遺伝的要因や環境的要因が関与しているとされ、治療には抗精神病薬や心理療法が用いられます。   双極性障がい 双極性障がいは、鬱状態と躁状態が交互に現れる病気です。躁状態では異常な高揚感や活動の増加が見られ、鬱状態では重度の抑うつが現れます。治療には気分安定薬や抗うつ薬が使用されます。   強迫性障がい 強迫性障がいは、強迫観念(不合理な考え)や強迫行為(繰り返し行う行動)を特徴とする病気です。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことが多く、治療には認知行動療法や薬物療法が用いられます。   パニック障がい パニック障がいは、突然の強い恐怖感や不安感を伴うパニック発作を繰り返す病気です。発作時には心拍数の増加や息切れ、めまいなどの身体症状が現れます。治療には認知行動療法や抗不安薬が使用されます。   精神疾患の原因と治療 原因 精神疾患の原因は複雑で、遺伝的要因、脳の構造や機能の異常、ストレスやトラウマ、環境要因などが関与しています。これらの要因が組み合わさって発症すると考えられています。   治療 精神疾患の治療には、薬物療法と心理療法が主に用いられます。薬物療法では、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬などが使用され、症状の緩和を図ります。心理療法では、認知行動療法やカウンセリングが行われ、患者が自分の考えや行動を理解し、適切に対処する方法を学びます。また、家族や友人のサポートも重要です。   社会的な理解と支援 精神疾患を抱える人々が社会で生きやすくするためには、社会全体の理解と支援が不可欠です。偏見や差別をなくし、精神疾患についての正しい知識を広めることが求められます。また、企業や学校などでのサポート体制の整備も重要です。例えば、柔軟な勤務時間やリモートワークの導入、専門家による相談体制の設置などが効果的です。 まとめ 精神疾患は誰にでも起こりうる病気であり、適切な治療と支援を受けることで、社会復帰や生活の質の向上が期待できます。社会全体で精神疾患に対する理解を深め、支援体制を整えることが重要です。精神疾患を抱える人々が安心して暮らせる社会を目指しましょう。   参考 「障がいは個性」、健常者と共に働ける職場へ 精神疾患がある若者を人材活用する企業の狙い(産経新聞) #Yahooニュース   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

突発性難聴の症状や原因とは?仕事に影響が出てしまった時の対応法

突発性難聴は、突然起こる難聴のことで、早期発見と治療を行うことで聴力をもとの状態に戻すことができる可能性が高い病気です。 しかし治療が遅れてしまうと本格的な難聴になってしまいます。本記事では、突発性難聴とはどのような病気か、原因や治療法、り患した際の仕事や日常生活での対処法について解説していきます。   突発性難聴ってどんな病気?その代表的な症状とは 突発性難聴とは、何の前触れもなく左右どちらかの耳、または稀に両方の耳が聞こえにくくなる病気のことです。音を上手く聞き取ることができない難聴(感音難聴)のうち、原因がはっきり分からないものを総称したものを突発性難聴といいます。   少々古いデータですが、2001年の厚生労働省の調査によると、全国で一年間に35,000人の突発性難聴の患者が出ていると推定されています。年齢的には30歳代から60歳代の人に多く発症し、発症率に男女差はあまりありません。   主な症状や特徴 突然聞こえなくなる 突発性難聴の最大の特徴は、なんの前触れもなく耳が聞こえづらくなる、または聞こえなくなるという点です。朝起きたら昨日と違いテレビの音が聞こえにくくなっていたり、電話中に急に相手の声が聞こえづらくなっていたりと、その症状への気づき方はさまざまです。 聞こえにくさの程度も人によって異なり、全く聞こえなくなる人もいれば、高音の部分だけが聞き取りづらくなるなどの場合もあります。一部の音域の音のみが聞こえづらくなる人は、自分が突発性難聴にかかっていると気付くのが遅れるため、病院に行くのが遅れてしまい、症状がさらに悪化してしまう危険もあります。   放置すると悪化する 突発性難聴は放置すると悪化していくので、そのままにしておいても症状が好転することはありません。また、突発性難聴の発症と前後して耳が詰まった感じや耳鳴り、めまいなどを感じることもありますが、このような症状を感じるのは発症時のみで、メニエール病のように繰り返しこのような症状が続くこともありません。 厚生労働省の突発性難聴の定義は、「突然の、文字通りの即時的な難聴、または朝目が覚めて気付くような難聴。ただし、難聴が発生したとき、就寝中や作業中など、自分がその時何をしていたかが説明できるもの」とされています。   完治できるのは1/3程度 突発性難聴になった患者のうち、三分の一が完治、三分の一が回復しても難聴が残り、三分の一が回復しません。その理由は、突発性難聴という病気が発症してから約1か月で症状が固定してしまうためです。 そのため早期の発見と治療が非常に大切になってくるのですが、発症後2週間以上経過した場合や高度の難聴を認める場合、回転性のめまいを伴う場合、高齢者や10才以下の子供が発症した場合には、予後が悪くなる可能性が高くなります。   突発性難聴になる原因 突発性難聴が起こるシステムは、音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が傷つくことで音が聞こえにくくなる、または聞こえなくなるというものです。   ウイルス感染と血流障がい 原因はまだはっきりとは分かっていませんが、ウイルス感染による血流障がいが有毛細胞に血液を送っている血管の血流を悪化させることが原因ではないかと考えられています。ウイルスの感染とは、何らかのウイルスが内耳に入ってしまい炎症を起こし、機能障がいが生じることです。発症前に風邪を引いていたり、ストレスを抱えていたりしてウイルスに感染しやすい状態にあることが多いため、ウイルスが原因と考えられています。   内耳の出血や血管のけいれん 耳の内耳にある血管が詰まり血流が遮断されたり、出血や血管のけいれんによる原因も考えられます。この血管や血流が原因となる突発性難聴は、ストレスや過労、食生活や生活習慣の乱れにより血流障がいが起こるため発症すると考えられています。そのため、ストレスなどを避けることが突発性難聴の予防につながるとも言われています。また、糖尿病や心臓病などによる血流障がいも原因の一つではないかと推測されます。 突発性難聴にはどのような治療法があるの? 突発性難聴を発症した場合には、どのような治療を行えばよいのでしょうか?治療は、薬物によるものと生活習慣の改善によるものの2つがあります。   薬物による治療 薬物による治療は、副腎皮質ステロイドの内服や点滴による投与が一般的です。それ以外には、血管拡張薬やビタミンB12製剤、代謝促進薬などを合わせて使うこともあります。   副腎皮質ステロイド剤を使う上で、胃潰瘍や糖尿病の持病がある人は、投与を慎重に行う必要があります。特に糖尿病の人は、副腎皮質ステロイドにより一時的に血糖値が上昇するため、糖尿病の症状がひどくなる恐れがあります。   糖尿病の人に副腎皮質ステロイドを使用する場合には、糖尿病の専門医と連携し、血液検査を行いながらインシュリンの量を増やすなどの措置を取らなければなりません。   このような治療を続けても症状が改善しない場合には、ステロイド鼓室内注入療法という耳の中にステロイドを注入する方法や、高圧酸素療法といった治療法もあります。 突発性難聴にはこのような治療法がありますが、何より大切なのは、聞こえに異常を感じたら速やかに耳鼻科を受診することです。   生活習慣の改善 突発性難聴の原因にストレス過多が考えられる場合には、十分な安静も効果的です。   受診の遅れが症状の悪化につながる 受診が遅れると、このような治療を行っても聴力が回復する確率が低下してしまいます。また、ストレスが原因であっても薬物療法は必要であり、ただ安静にするだけでは症状は改善しないので、必ず早い時期に耳鼻科を受診するようにしましょう。   突発性難聴の患者は、原則として症状を感じたその時から48時間以内に入院し、治療を始めることが望ましいとされています。 症状が軽度の場合は通院での治療も可能ですが、突発性難聴の治療には安静と投薬治療、投薬による副作用の管理が非常に重要になるため、入院してからの治療が望ましいです。   ストレスや過労、睡眠不足が原因の場合にも、入院してゆっくりと休養を取ることが大切です。突発性難聴の患者をストレス源から隔離し、生活リズムや食生活を整えることも立派な治療の一環です。入院期間は、大体1週間から2週間と考えておけば良いでしょう。   突発性難聴を発症したら仕事は休んだほうがいい? 突発性難聴の治療は、症状に気付いてから治療を始めるまでの時間が早ければ早いほど治癒率は上がります。そのため、聞こえの異常を感じたら、「何をおいてもまず病院」というぐらいの気持ちで耳鼻科を受診する必要があります。   一般的には、聞こえの異常を感じてから1週間以内に耳鼻科を受診するのがベターですが、それよりも早いに越したことはありません。しかし、一般的な会社勤めの人は、なかなか耳鼻科を受診するタイミングが掴めないことが考えられます。   「この仕事が片付いたら病院へ…」などと考えているうちに、発症から受診までの期間が長くなり、結果として難聴などの後遺症が残ってしまう恐れもあります。そのような事態を防ぐためにも、まずは耳鼻科を受診するために半日でもよいので会社をお休みしましょう。   そこで異常が見つからなければ、また日常生活に戻ることができますが、突発性難聴の診断が下りた場合には、医師に診断書を書いてもらい、それを会社側に提出して、医師が指示した期間は会社を休んで治療に専念することをお勧めします。   将来の自分に突発性難聴の後遺症を残さないようにするために安静に 通院でも治療できるなら、会社を休む必要はないのではないかと考える人もいると思います。しかし、通院であれ入院であれ、突発性難聴を治療するにあたって休養は、投薬治療と同じぐらい重要な要素となります。通勤しながら通院治療も行うとなると、安静状態を保つことはできません。   将来の自分に突発性難聴の後遺症を残さないようにするためにも、会社側に突発性難聴の特徴と治療法についてよく理解してもらい、治療中は会社を休んで、通院治療であってもなるべく自宅で安静を保つようにしましょう。   突発性難聴の人の仕事や日常生活での対処法 突発性難聴により耳が聞こえづらくなった場合、聴覚障がいをいかに受容するか、ということが大きなテーマになってくるものと思われます。聞こえていた自分から、聞こえなくなった(あるいは聞き取りづらくなった)という喪失感があります。   誰もがたどる道ではないですが、まず失聴したというショックを受け、そこから立ち直りのきっかけを見つけ、聞こえない自分を「受容」し、改めて聞こえない自分として社会に適応していく、こうした「受容」の過程を渡るまでにどれくらいかかるかによって社会復帰までの期間が変わってきます。   難聴になる前の状態に近い生活に戻していくこともできる 今の自分のままで社会に貢献していく、あるいは活躍していくか、という視点に立つためには、そこにはまず自分の「聞こえ」がどんな状態なのかを他者に伝える力が必要になります。 人の聞こえの程度はさまざまである以上、自分の様態を詳しく知り、言葉で説明できるようになることは、よりよく生きる上で大切な作業となります。 そうして自己理解を深め、自分なりの対処法を創出し、職場や家庭など周囲の理解を少しずつ得る中で、難聴になる前の状態に近い生活に戻していくこともできるようになるでしょう。   具体的な対処法 日常生活における具体的な対処法の例としては以下が挙げられます。 自律神経の安定を図るために生活習慣を改め、ストレスの少ない生活リズムを整える 周囲の人の理解やサポートを受けるために、自分の聞こえの状態について「自分説明書」を用意する 会話の中で聞き取れなかった部分があったときに、遠慮なく聞き直す 気の置けない友人、家族に聞き直しや、話しかけ方について理解を得る練習をする   職場における具体的な対処法の例としては、上記に加え以下が挙げられます。 自分の聞こえの状態に即した合理的配慮により、働きやすい環境を整えてもらえるようにする 合理的配慮とは、障がいがある人とない人が平等に人権を享受し行使できるよう、個々の特徴や状況に応じて発生する障がいまたは困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことを言います。   突発性難聴により、聞こえに困難がある人に対する合理的配慮の具体例としては以下が挙げられます。 同僚に騒がしいところでの電話や会話が難しい事を伝える 会議の内容を要約してもらったりする 自分の働く席を雑音が少ない場所に移してもらう 要約筆記者を派遣してもらう、またその場合には事前に専門用語などについて打ち合わせをしてもらえるようにする 重要なことは口頭ではなくメールや文書で伝えてもらう 会議などで聞き取りが困難になることが予想される場合、事前に休息を取らせてもらい体調を整える このように周囲の理解とサポート、合理的配慮を受けながら自分の現在の耳の聞こえ方によって生じる不都合に対処していきましょう。   「目に見えない障がい」は誤解されやすい障がい 聞こえの障がいは、「目に見えない障がい」のため、誤解されやすい障がいです。また、聞こえない、聞こえにくいことで周りの情報が入ってこないことで協調性を求められる場面では、ことさらしんどい思いをするケースもあると思います。   そうした事態を少しでも軽減するうえでも、周囲の理解を得るための「自分説明力」を身につけることがとても重要になります。このような対処方法については、地域の聴覚障がい専門の就労支援センターや、聴覚障がい専門の就労移行支援事業所などに相談に行くのもよいでしょう。 まとめ ここまで、突発性難聴の症状や原因、治療法や突発性難聴になってしまった場合に会社を休むべきか、その後の生活や職場での対処法について解説してきました。 突発性難聴になった場合、後遺症を残さないためには、まず何をおいても早急に耳鼻科を受診すること、もし後遺症が残ってしまっても、適切に対処することで日常生活や仕事上の不都合を軽減させることができることを覚えておきましょう。   参考 突発性難聴の症状や原因とは?仕事に影響が出てしまった時の対応法   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

大人の発達障がいとは?特性・困りごと・対応法を知ろう!

生活や仕事の中で「ほかの人はうまくできることが、自分はできない」と悩むことはありませんか? うまくいかない原因が分からなかったり、気をつけているのに困りごとが続いたりする場合、発達障がいの特性が関係しているかもしれません。 発達障がいは子どもの頃に診断には至らず、大人になってから診断を受ける場合もあります。 この記事では、大人の発達障がいの特徴や仕事での困りごと、「発達障がいかもしれない」と思ったときの仕事の対処法や、相談できる機関などを紹介します。   大人の発達障がいとは? 発達障がいとは、生まれつきの脳機能の偏りによる障がいです。得意・不得意や行動の特性などによって、人間関係や仕事で困りごとが生じることがあります。   一般的には、発達期(幼児から学齢くらいまでの間)に特性があらわれます。しかし特性のあらわれ方や程度、環境などは人により異なるため、子どもの頃は発達障がいがあることに気づかれない場合もあります。   例えば、ADHD(注意欠如多動症)の方は「不注意」「衝動性が強い」などの特性がみられますが、子どもの頃は周りの人の理解やフォローがあることで「困りごと」にならない場合もあります。   仕事で困りごとが生じて発覚 しかし、社会に出て仕事を始めると「目の前の仕事に集中することが難しく、その結果としてケアレスミスが多くなってしまう」「仕事を頼まれたときに衝動的に取りかかることが多く、その結果タスク管理がうまくいかなくなる」などの困りごとが生じることがあります。困りごとによるストレスから心身に負担が生じ、医療機関を受診してみたところ、その背景に発達障がいがあることが分かる場合があります。   このように、大人になってから発達障がいであることが分かる場合を「大人の発達障がい」ということがあります。 主な発達障がいには、「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)※」の3種類があり、これらは重複することがあります。 ※学習障がいは現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障がい)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。   大人の発達障がいの特徴と仕事で困ること 発達障がいのある方の困りごとは、特性と環境が合わないことから生じます。このため同じ特性があっても、環境によっては困りごとが起こらない場合もあれば、起きる場合もあります。 なお、ここでいう「環境」とは、バリアフリーなどの物理的な環境面だけでなく、仕事内容や仕事の進め方、人間関係や職場のルールなどさまざまな意味を含んでいます。   また、発達障がいの種類によっても困りごとの傾向が異なります。ただし特性のあらわれ方は人により異なるため、同じ種類の発達障がいのある方であっても、正反対の特性があらわれる場合もあります。例えば、感覚過敏といっても人によって聴覚が過敏な方もいれば、視覚が過敏な方もいます。また、過敏ではなく鈍麻(どんま)といって、感覚を感じづらい方もいます。 次に、発達障がいの特性と、仕事において起きやすい困りごとの例を挙げます。   ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と困りごとの例 ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期からみられ、日常生活に困難を生じる発達障がいの一つです。 知的障がい(知的発達症)を伴うこともあります。幼少期に気づかれることが多いといわれていますが、症状のあらわれ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから社会生活において困難さを感じ、診断を受ける場合もあります。 仕事をする中で感じる困難さの例としては、次のようなものが挙げられます。 あいまいな指示の理解が難しい 急な予定変更があると混乱する 会社の「暗黙のルール」を理解することが難しい   ADHD(注意欠如多動症)の特徴と困りごとの例 ADHD(注意欠如多動症)は「集中を持続させることが難しい(不注意)」「落ち着きがない(多動性・衝動性)」などの特性がみられ、仕事では次のような困りごとが起こる場合があります。 仕事のタスク管理が難しい 整理整頓が苦手で、大事な書類を紛失する カッとなりやすく、職場での人間関係が険悪になる   LD・SLD(限局性学習症)の特徴と困りごとの例 LD・SLD(限局性学習症)は、知的発達の遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」などの特定の学習が極端に困難な状態にあることです。仕事の場面では、次のような困りごとが起きることがあります。 マニュアルや指示書を読むことが難しい お釣りの計算やお金の管理が苦手 会議の内容や上司の指示を聞きながらメモを取るのが苦手   二次障がいにつながることもある 発達障がいの特性から生じる困りごとのストレス反応が高じて発症するうつ病や不安症などの疾患は、「二次障がい」と呼ばれます。うつ病や不安症などの症状があり医療機関を受診すると、発達障がいであることが分かる場合もあります。 二次障がいの中には、治療に時間がかかる疾患もあります。発達障がいの困りごとに適切に対処していくことは、二次障がいを防ぐ意味でも重要です。 発達障がいかもしれないと思ったときの仕事の対処法は? 仕事で困りごとが続き「自分は発達障がいかもしれない」と感じている方もいるかもしれません。このような場合は、以下のような対処法を活用できる可能性があります。   ASD(自閉スペクトラム症)の困りごとと対応方法の例 あいまいな表現が苦手な場合 「できるだけ早く」などのあいまいな表現だと「できるだけ」の基準が分からず、困ってしまう場合があります。また、「もうちょっと早くできますか?」と言われたときも、「もうちょっと」が5分なのか1時間なのかといったことがつかめずに判断ができないという場合もあります。   その場合の対処法としては、いつまでなのかを明確に伝えてもらうよう、周囲の方たちにお願いしておくといいでしょう。それでも理解できないときは、相手や周囲の人に「◯◯日までに〇〇をやればいいでしょうか?」など聞いて確認してみましょう。また、口頭での指示の理解が苦手な方は、口頭ではなく、メールなど文章で指示をもらうと理解がしやすくなるかもしれません。 その他の困りごとや対処方法の例については、以下の記事でも解説しています。 関連ページ ASD(自閉スペクトラム症)|向いている仕事や適職とは?事例もご紹介 感覚過敏とは?大人に当てはまるチェックリストと嗅覚・聴覚・視覚など種類ごとの対策を解説 聴覚過敏の症状や原因を解説|大人が仕事中にできる対処法も   ADHD(注意欠如多動症)の困りごとと対応方法の例 タスク管理が苦手な場合 複数の作業を管理することが苦手な場合は、優先順位を確認し、取りかかる順番を決めて一つずつ確実に進めます。順番を整理して取りかかれば、混乱せず落ち着いて作業できるでしょう。もし、優先順位の付け方などで迷ったら上司に相談してみましょう。   また、頭の中で処理するのではなく、TODOリストなどを用いて視覚化するなど、自分にあったツールを活用すると整理しやすくなるでしょう。 その他の困りごとや対処方法の例については、以下の記事でも解説しています。 関連ページ ADHD(注意欠如多動症)と仕事|無理なく続けるコツとは?就職や適職探しも【専門家監修】 【ADHD(注意欠如多動症)】向いている仕事や職業とは?適職探しに悩んでいる方へ 【ADHD(注意欠如多動症)の悩み】頭の中がごちゃごちゃする場面と対処法とは?   LD・SLD(限局性学習症)の困りごとと対応方法の例 会議の内容や上司の話を聞きながらメモを取ることが苦手 メモを取ることが苦手なことをあらかじめ説明し、上司や同僚に了承を得たうえで、ボイスレコーダーや音声入力などのツールを利用して記録します。また、手順の説明を受ける場合は動画を撮影する方法もあります。   周囲の方ができること 職場に「発達障がいなのかもしれない」と思われる人がいる場合は、まずその人の特性について知ることが重要です。本人が未診断の場合でも、困っている様子があれば「何に困っているのか」を本人に尋ね、一緒に対策を考えてみましょう。   発達障がいの診断 自分が「大人の発達障がい」かもしれないと思う場合は、適切な対処をおこなうためにも、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。 発達障がいの診断は、精神科や心療内科、発達障がい専門外来などでおこなわれています。ただし、子どもの診察のみ受け付けていて大人の診察はしていない精神科や心療内科もあるため、事前にWebサイトなどで確認しておきましょう。   自治体によっては、発達障がいの診断をおこなっている医療機関のリストを公開しています。 また、診断を受けるかどうかで悩んでいる方もいるかもしれません。以下の記事では、診断を受けるにあたって気になる点や、もし発達障がいと診断されたらどうすればいいのかなどについて解説しています。ぜひ参考にしてください。 関連ページ 大人の発達障がいかも?診断を受けるべきか悩む方へ|受診先や受けられる支援も解説   発達障がいの診断・検査の流れ 発達障がいは生まれつきの脳機能の偏りであるため、診断では生育歴が重要な情報となります。 問診では生育歴について詳しい聞き取りがおこなわれます。そのため、現在の困りごとだけではなく、幼少時の様子やこれまでの学業や仕事での状況、既往歴などについてメモをとったものや資料(例:母子手帳や当時の連絡帳や通知表など)を持参するとよいでしょう。 また、必要に応じて以下の検査が行われる場合もあります。 発達障がいに関するスクリーニング検査 心理検査(知能検査など) 脳波検査など 現在の心身症状のほか、問診や検査から得られた情報を国際的な診断基準である「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」に照らし合わせ、総合的に判断して診断がおこなわれます。   発達障がいの治療 発達障がいの脳機能の偏りに対する根本的な治療法は、現在までのところ見つかっていません。このため、困りごとに対する自己対処を身につけたり、自分に合う環境調整(※)をしたりすることで、困りごとに対処します。 (※)環境調整とは、発達障がいのある方の特性や困りごとに合わせさまざまな条件を整えていくことで、本人の感じる困りごとを解消したり減らしたりすることを指します。例えば、口頭指示の理解が苦手な人には、メモやメールでの指示にする、といったことも環境調整のひとつです。   ほかに認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング(SST)などが併用されることもあります。 それでも効果がみられない場合、薬物療法をおこなうことがあります。例えば、ADHD(注意欠如多動症)の薬物療法では症状を軽減する効果が期待できる薬が使われる場合があります。   大人の発達障がいの相談先 発達障がいによる困りごとを減らすには、自分の特性を知り、特性への対処と環境調整をおこなうことが大切です。一人では対処が難しいと感じる場合は、以下の支援機関への相談も検討してみるといいでしょう。   発達障がい者支援センター 発達障がいのある方の生活全般と仕事など幅広い相談を受け付けています。必要に応じて、関係機関とも連携してサポートをおこないます。また、医療機関の情報を教えてくれる場合もあります。未診断の方も相談できますので、「どの医療機関で受診したらいいのだろう」など迷ったときはぜひ相談してみましょう。   障がい者就業・生活支援センター 障がいのある方の生活と仕事の分野を一体的に支援する機関です。職場での困りごとについて支援をおこなうほか、生活習慣の構築や健康管理などの日常生活における自己管理についても助言をおこなっています。利用するには、原則として発達障がいやうつ病などの診断書や障がい者手帳などが必要になりますが、利用前の相談は未診断の方でもできる場合があります。事前に障がい者就業・生活支援センターにお問い合わせてみましょう。   就労移行支援事業所 障がいのある方を対象に、就職に向けて必要な知識や能力の習得、自己理解を深め適職を見つけるための支援などをおこなっています。また、就職活動の支援だけではなく、就職後も長く働き続けられるよう定着支援も提供しています。利用するには、原則として発達障がいやうつ病などの診断書や障がい者手帳などが必要になりますが、利用前の相談は未診断の方でもできる場合があります。事前に就労移行支援事業所にお問い合わせてみましょう。 まとめ 発達障がいは生まれつきの脳機能の偏りによるものであり、その特性は個人によって大きく異なります。大人になってから発達障がいの診断を受けることは決して珍しいことではありません。自分の特性を理解し、適切な対処法を実践することで、生活や仕事の中での困りごとを軽減することが可能です。 もし一人での対処が難しいと感じた場合は、発達障がい者支援センターや障がい者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所など、専門の支援機関に相談することをお勧めします。自分に合ったサポートを受けることで、より良い生活と充実した仕事を実現する一歩を踏み出してみましょう。   参考 大人の発達障がいとは?特徴や仕事の対処法、診断の流れや相談先も紹介|LITALICOワークス   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

「統合失調症」の「発症のきっかけ」になる、実は多くの人が当たり前に求める「3つのもの」

ADHDやASDの人たちが「病」であるならば、そうでない定型発達の人にも実は「健常」でない側面があるのではないでしょうか。 そして、「健常発達」の人が人生の中で求めるものは、例えば統合失調症の人が志向し、それをきっかけに発症するようなものとなんら変わりはないのではないでしょうか。 精神科医の兼本浩祐氏はそう考え、統合失調症を発症したある英語教師の事例について分析しています。『普通という異常 健常発達という病』から再編集・抜粋して紹介します。   「生活臨床」――生活破綻のきっかけ 対人希求性(人を求める気持ち)が健常発達の心性にどう重要なのか、そのところをもう少し明確にするために、「生活臨床」という名前で呼ばれていた精神科のムーブメントのことに触れたいと思います。「生活臨床」というムーブメントは、具体的にこの対人希求性が実生活の中でどのような形をとるのかに集中的に焦点を当てているからです。   少しばかり乱暴で通俗的なまとめ方をしますが、生活臨床というのは、「色、金、名誉」のいずれかのキーワードに、統合失調症の発病のきっかけがあるという認識のもとおこなわれた運動です。 「色、金、名誉」といったきっかけが生活の破綻をもたらすので、そうならないように生活環境を患者さんの周りの人たちと医療関係者がいっしょになって整えることが大事だというものです。心ある精神科医の先生とともに地域の保健師さんとかが随分がんばって指導に奔走されたと聞いています。   当事者の求めるものに寄り添うことをめざしていた 「色、金、名誉」に「体」を付け加える場合もあるようですが、『生活臨床の基本』という本のなかで伊勢田堯(いせだたかし)先生がこのキーワードを「指向する課題」という用語で説明されています。伊勢田先生とは一度ごいっしょさせていただきましたが、ほんとうに感じの良い、丁寧な臨床をされている方という印象でした。 実践としての生活臨床では、対象者の生活破綻のきっかけとなる「色、金、名誉」に関わる何かを奪われるか、あるいはそれを獲得する見込みが失われる状況が、破綻前に前駆していると想定されていて、これが診たての中心となります。   生活臨床は、当事者が大事に思っているものが、色なのか、金なのか、名誉なのかを、家族を含めたみんなではっきりと共有し、それを獲得ないしは守ることを、医療者を含めたみんなで応援し、当事者の求めるものに寄り添うことをめざしていたと、とりあえず講演やご本の記載からサマリーしてみます。 伊勢田先生のご本に紹介されている高校教師の事例をごく簡単に紹介して、このムーブメントの実際をみておきましょう。   「出世」を強く求めた英語教師 若くして両親を亡くし、長兄夫妻に養育されたある40代の英語教師は、「親がいないんだから勉強で身を立てなければだめだ」と言われて育ちました。幸い成績は優秀で、東大と思しき大学の入学をめざすほどで、東京で受験のための下宿生活を開始します。 しかし、受験に立て続けに2回失敗したことを契機に、「下宿先の近所の人が悪口を言っている」「電車に乗ると人がじろじろ見る」などといった被害関係妄想が出現。実家に連れ戻されたものの幻覚妄想状態による激しい興奮がおさまらず、最初の入院となりました。   薬物療法で症状はとりあえずは軽快し、周囲の説得で地元の国立大学に見事入学を果たして退院しますが、持ち前の気位の高さと遮二無二突き進もうという姿勢から、周囲との軋轢が絶えず、無理なスケジュールを詰め込んでは、生活破綻をくりかえし、大学在学中は二度の入退院を経験しています。 その後、何とか卒業を果たし、山間部の分校に就職が決まるのですが、本人は都会の学校に就職するのを希望していたため落胆。しかし、校長から「五年くらいしたら転勤になる。実績を挙げて平野部に戻れ」と励まされ、下宿して通勤となりました(勤務地が遠方で実家も安息の場ではないことから、働きかけの方針として、電話連絡をいつでもとれる体制と、休みを利用した休息入院が保証されます)。   二つの転機が訪れる 職場では尊大で配慮に欠ける態度からしばしばトラブルになり、それが契機で被害関係念慮が出現(「無理をして再発したら出世の見込みはなくなる」とアドバイスするなど、生活破綻につながりかねない動きに対しては、これを抑える働きかけがおこなわれます)。 そうした助力もあって、山間部での勤務の間、八回の休息入院を含む短期の入退院をくりかえしながらも、職場での役割遂行には著しい支障をきたさずにすみ、職務を全うすることができました。そうこうして何とか持ちこたえているうちに、この英語教師には二つの転機が訪れます。   その転機とは、何度かのお見合いの失敗の後に、「太っ腹で如才ない」得難い配偶者を得たことと、兄と慕うある会社の経営者が若くして劇症肝炎で急死したため、「出世しても死んだらおしまいだ」と、「生き方をマイホーム主義に変え」、それまでとは打って変わった態度をみせるようになったことです。 彼の急所ともいえる管理職への昇進の野心と距離を取るようになったことで、同僚や上司とのトラブルは目に見えて減り、その後、10年以上にわたって安定状態が続き、投薬もごく少量となって、時に応じた生活相談程度で面談も推移したと書いてあります。   聞き取れなかった英国人教師の英語 しかし、日本語が話せない若い英国人女性の教師が、本場の英語を生徒たちに聞かせるという趣旨で副教員として赴任して同僚となることで、事態は急激に破綻へと向かってしまいます。 この英国人教師の英語を、彼は聞き取ることができず、ひどく困惑したのですが、それを認めるのは彼のプライドから耐え難く、「早口で喋るのでわからない」「田舎の英語だからわからない」と相手を非難。それに対して英国人教師は、「あなたの勉強が足りないだけだ」と言い返し、さらにそれに対して「助手のくせに」と高飛車な態度に出たため事態は収拾がつかなくなっていきます。   次第に、早朝から起きて英会話のカセットを聞き出すなど、生活の枠組みも揺らぎだし、不眠、疲労困憊となって、ついに「ソ連と北朝鮮が攻め込んでくる。危ないから外に出るな」と妻に土下座して訴え、木刀を持って庭に飛び出す、校庭で山に向かって旗を振るなどの異常行動が出現、緊急入院となりました(この事例は実際には当時はその概念がなかったASDを背景とした心因反応ではないかという解釈もありうるとは思います)。   当事者を支える「つっかい棒」 精神科医は診断をおこなうために、「色、金、名誉」では理解できない部分に焦点を当てます。ですから、当事者の話のなかから世間一般の常識からすればどうしてそんなことをするのかが「わからない」部分をできるだけ鋭敏に感じて、それを探り当てることで診断をするわけです。これが精神科医の往路になります。   しかし、ご家族や友人は、可能な限り「わかる」ことに注意を向け、「わからない」ことの前には可能であれば立ち止まらずに通り過ぎようとする傾向があります。 それは時に当事者の生活破綻の原因になる重荷にもなりえますが、「わかる」べき部分をわかって寄り添うことで、当事者を支える大きな力になることも少なからずあります。これは復路になります。   体系的に展開したものだとも考えられる 生活臨床とは、この復路を体系的に展開したものだとも考えられるかもしれません。先ほど、紹介させていただいた英語教師の方にとっての急所、あるいは生活臨床的に表現するのであれば「指向する課題」は、「名誉」であったことは間違いないでしょう。 生活臨床の実践は、「そんな世俗的な欲に囚われているから調子を崩すんだ」「そんな欲から解放されれば発病に至る急所もなくなるよ」と言って、できるだけそこから当事者を遠ざけることをめざすのではありません。   むしろ、当事者が囚われている「色、金、名誉」を、当事者を支えるもっとも太いこの世におけるつっかい棒だと考え、みんなでこのつっかい棒が倒れてしまわないように、あるいはそのつっかい棒がちょっと実人生の規格に合わない場合には、似たような別のつっかい棒への方向転換も含め、いっしょに支えようというものです。   「色、金、名誉」という躓きの石 健常発達の人のさまざまの行動の大部分が、この「色、金、名誉」で理解できるというのが世間的な人間理解の基本であって、そのいずれかがくりかえし人生の躓きの石になるのは統合失調症の人に限らないのではないかというのが、ここでの問題提起です。 犯罪がおこなわれると、精神科医は、その動機が了解できるかどうか、精神鑑定を依頼されて判断を求められることがありますが、動機が了解できないとなった場合には、それは無罪の理由になったりするわけです。逆に、明らかに「色、金、名誉」が動機である場合には、裁判官や検察官だけではなくて、弁護士も、動機はじゅうぶんに了解できる、つまりそんな事情であれば、そんなことをする人はいるよねと動機的にはみんなが納得するというコンセンサスがあります。   「色、金、名誉」だけではうまく説明できないものが現れてきてしまう たとえば、借金で首が回らなくなっている人がいたとして保険金をそんなに関係の良くない奥さんにかけて殺してしまうとか、浮気の現場を押さえたご主人が相手の男性をゴルフのクラブで殴ったとか、「色、金、名誉」に関わることで事件が説明できる場合、自分がその場にいて同じことをやる気持ちになるかどうかは別にして、それはわかるということになって精神鑑定には普通は回ってきません。   逆に、たとえば、近所のラーメン屋さんが北朝鮮のエージェントで、そこから自分の家庭の事情が放映されているという理由で営業中のラーメン屋さんに押しかけて、椅子を振り回して暴れたとすると、これは精神科医による精神鑑定の対象になります。この場合、動機は、明らかに普通の意味での「色、金、名誉」とは違います。 「色、金、名誉」という、つっかい棒が外れてしまうと、統合失調症を病む人では、何か「色、金、名誉」だけではうまく説明できないものが現れてきてしまうといえなくもないようにも思えます。(兼本 浩祐) まとめ 私たちの多くは、健常発達とされる中でこのような「色、金、名誉」に囚われ、時にはそれが生活の破綻を引き起こすことがあります。精神科医の兼本浩祐氏の見解は、健常発達の人々もまた、異常とされる側面を内包している可能性があることを示唆しています。 私たちは、誰もが抱える「健常」と「異常」の境界を見つめ直し、より多くの人々が安心して暮らせる社会を目指す必要があります。この取り組みは、精神科医、医療関係者、家族、そして地域社会全体が協力して行うべき課題であり、共に支え合うことでより良い未来を築いていくことができるのではないでしょうか。   参考 「統合失調症」の「発症のきっかけ」になる、実は多くの人が当たり前に求める「3つのもの」(現代ビジネス) #Yahooニュース   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

大人も学習障がい(LD)と診断される?特性、対処法、支援を解説

学習障がい(LD)とは、知的発達の遅れはないものの「読む」「書く」「計算する」などに困難さがある発達障がいの一つです。この記事では、大人になって表れる特性や診断の流れ、仕事をしていく上での代表的な困りごとや対処法について詳しく説明します。   限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)とは? 学習障がい(LD)とは、知的発達の遅れや視覚・聴覚機能の問題がないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」など特定の領域だけが極端に苦手である発達障がいです。 例えば文字をまったく読めない・書けないというよりも、読みにくさ・書きにくさを感じる、一定の読み方しかできないなど、表れる特性も人によって異なります。ほかにも「文字を書くことが極端に苦手」などといった特定の分野が苦手という特性から、「書くことだけでなく、文字を読むことも苦手」など複数の分野にわたって困難がある人もいます。 また知的発達の遅れがなく、視覚・聴覚などの身体的障がいがないことから、周囲から「怠けている」と誤解されたり、本人が「自分の努力不足だ」と思い込んでしまったりしていることがあります。   【体験談】大人になって学習障がい(LD)と診断される人も 学習障がい(LD)の場合、十分な教育を受ける期間があり、本人の努力が見られるにもかかわらず、学校の授業についていけないことなどをきっかけに、子どものころに診断されるケースが多いと言われています。 しかし学習障がい(LD)の認知度が低かった時代もあり、診断や疑いがあっても適切なサポートを受けられなかった人や、大人になって仕事をはじめてから学習障がい(LD)があると分かった人もいます。   体験談①:Kさん 職種:生活介護支援員 文字を書くことが苦手で、仕事のプレッシャーや人間関係のつまずきから体調を崩してしまい、その後診断を受けたKさん。現在は上司に自分の苦手分野を伝えつつも、パソコンや電子辞書を使いながら自分で工夫して仕事をされています。 Kさんの体験談はこちら   体験談②:Gさん 職種:高齢者介護 人前で書くことが苦手で、仕事に支障をきたし転職を繰り返していたものの、困っていることを誰にも言えなかったGさん。はっきりとした診断はありませんが、今後は書くことが苦手だという特性をオープンにした上で、理解してくれる職場を探して働きたいと考えています。 Gさんの体験談はこちら   大人の限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)における主な3つのタイプと特徴 学習障がい(LD)は、主に読字障がい(ディスレクシア)、書字表出障がい(ディスグラフィア)、算数障がい(ディスカリキュリア)の3タイプに分けられます。まずはそれぞれの特性を見ていきましょう。   読字障がい(ディスレクシア):「読む」ことが苦手 字を読むことに困難があり、識字障がいや失読症、難読症と呼ばれることもあります。読字障がいは学習障がい(LD)と診断された人の中で一番多く見られると言われています。 一文字ずつ区切って読む(「逐次(ちくじ)読み」) 読んでいるところを指で押さえながら読む 文字や行を読み飛ばす 語尾や文末を読み間違える 「っ」「ょ」などの小書き文字を読み飛ばす、書き間違える 長い文章を読むことが苦手、または読むスピードが遅い 「ろ」や「る」など形の似ている文字を見分けにくい など   書字表出障がい(ディスグラフィア):「書く」ことが苦手 文字や文章を書くことに困難が生じます。字が全く書けないというよりも、書字において、下記に挙げた困難さの例のうち、いくつかに当てはまる人が多いです。 言葉と意味を理解していても、文字を正しく書くことができない 漢字や書き順をなかなか覚えられない(覚えても忘れやすい) 書き文字のバランスがとれず、「字が汚い・読めない」とよく注意される 「ろ」や「る」など形の似ている文字を間違えて書く 鏡文字になる(左右が反転する) 文法が苦手(「てにをは」などの接続詞を間違える、句読点がつけられない) 漢字だけでなく、ひらがなやカタカナも間違えることが多い 長い文章を作成することが苦手、または作成に時間がかかる 聞きながらメモを取ることが苦手 など   算数障がい(ディスカリキュリア):「算数・計算」が苦手 数字そのものの概念や数量の大小、図形や立体問題の理解が難しいという特性があります。 数を数えることが苦手 数字に直すことが苦手(例:「ひゃくにじゅう」を「10020」と書いてしまうなど) お釣りや割り勘の計算ができない 大まかな数の検討がつけられない 予算や概算を考えることが難しい(見積書の作成が苦手) 簡単なものであっても暗算が難しい 図形が苦手 時計が読めない、時間が分からない など ここで紹介した以外にも、学習障がい(LD)のある人が感じている困難さにはさまざまなものがあります。「読む」「書く」「計算する」のほかにも、英語の読み書きや漢数字の読み書きに困難さを感じる人もいます。 また、読むことが苦手である場合、文字を書くときにも困難を抱えることが多く、両方が苦手という人も多く見られます。その場合は「読み書き障がい」「発達性読み書き障がい」「発達性ディスレクシア」と呼ばれることもあります。 限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)の原因 学習障がい(LD)の原因は完全には解明されていませんが、見た情報を理解したり、字を音に変換したりするなどの脳機能の一部に障がいがあるのではないかと考えられています。 遺伝や環境など複合的な要素に起因する可能性があるとも言われていますが、いずれにしても「本人の努力不足」というわけではありません。 なお読み書きなどの困難という点では失語症とも似ていますが、失語症の原因は交通事故や脳卒中などによる後天的な頭部外傷がほとんどです。学習障がい(LD)は先天的なものが原因と言われているため、失語症とは違いがあります。   限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)の診断基準と検査の流れ 学習障がい(LD)は特性に大きな個人差があります。診断に際しては、問診や検査などがおこなわれるケースが多いです。詳細を以下に紹介します。   診断に行くかどうか迷ったら 「読む」「書く」「計算する」などに苦手分野があり困っている場合は、早めに専門機関や医療機関への相談をおすすめします。 上で説明したような困難さを一定期間以上感じていたり、学習障がい(LD)の特性の影響で仕事や生活に負担がかかっていたりする場合は、早めに医師に相談しましょう。 学習障がい(LD)を含む発達障がいを専門とする病院は限られているため、事前に調べておくと良いでしょう。 「いきなり病院に行くことに抵抗がある…」という人は、「発達障がい者支援センター」という専門機関もあります。詳しくは後述します。   診断までの流れ まず診断の前に問診による聞き取りや検査などがおこなわれます。方法は病院によって違いますが、大まかな流れは以下のようになることが多いです。 子どもの頃から困りごとや特性があったかの聞き取り 今困っていることはどんなことかの聞き取り 認知特性や、知的発達の偏り・遅れを調べる心理検査 など このようにして得た情報が国際的な診断基準『DSM-5』などを満たした場合に、医師が総合的な判断として学習障がい(LD)と診断します。   また学習障がい(LD)の影響で仕事や生活に負担がかかると、ストレスや悩みからうつ病などの二次障がいが表れることもあります。ほかにも別の発達障がいや別の疾患が隠れている可能性を考慮して、それらに関する検査もおこなわれることがあります。   限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)の治療方法 学習障がい(LD)の根本的な治療法はありませんが、医師の指示に従って環境調整などのさまざまな工夫を取り入れることによって、困りごとを軽減することが可能です。特性の表れ方や対応方法は人によってさまざまですが、基本的には以下のような方針で進められることが多いです。 まずは苦手分野や困っていることを正確に知り、カウンセリングや環境調整(業務内容や仕事の変更など)によって、日常生活のストレスを軽減します。 ほかの発達障がいがあれば、その特性を把握し、多角的に対処法を考えることが重要です。うつ病などの二次障がいがある場合は、その治療も並行しておこなっていきます。   大人の限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)による、仕事で「困った」と感じる例と対処法 学習障がい(LD)の特性は子どものころから出やすいと言われていますが、仕事をしていく中で困りごとがあり、大人になってから「もしかして?」と感じる人もいます。ここでは仕事における代表的な困りごとと対処法の例を紹介します。   文章での指示を理解できず繰り返しミスをする 困りごとの例 上司からメールやチャットで指示があると、文字や文章を正確に読むことが難しく、ミスを繰り返してしまう。   対処法 文章で指示があった場合は、自分が理解している内容と指示内容が合っているか、上司に確認するようにすると齟齬が少なく済みます。最初から口頭で指示してもらうよう相談してみるのもひとつの方法です。   資料や長文のメールを読むのに時間がかかる 困りごとの例 ・資料やマニュアル、長文のメールを読むことが苦手 ・読み飛ばしてしまったり、読み間違いがあったりする   対処法 紙の資料なら、色付き下敷きや定規で区切りながら読む、コピーして蛍光ペンでラインを引くなどすると読みやすくなります。パソコンのデータであればドラッグして色をつけたり、文字色を変えて読んでみたりすることも良いでしょう。   メモを取ることが苦手 困りごとの例 ・メモを取ることができず注意されることがある。 ・口頭で指示を聞きながらメモを取ることが苦手   対処法 手書きのメモが苦手であれば、ボイスレコーダーを利用してみるのもひとつの手段です。正確な情報を残しておけるのでおすすめです。「書くことは苦手だが、読むことに問題はない」という場合は、メールやチャットで指示してもらうようにお願いするのも良いでしょう。音声入力のアプリを使用することもできます。   数字が苦手で発注書や見積書の作成が困難 困りごとの例 ・数字が苦手で、予算や概算の見積もりがうまくできない ・発注書や見積書に対して苦手意識を感じる   対処法 エクセルなどの表計算ソフトで計算する場合は、関数を使って自動的に計算できるようにすることが有効です。環境や業務内容の調整ができる状況であれば、業務内容を変えてもらうよう上司に相談してみることもひとつの選択肢です。   今後はAIなどの技術の活用も含めて、困難さを軽減する工夫を広げていくことが大切です。   限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)だと分かったら、職場の人に伝えた方がいい? 学習障がい(LD)と診断された場合であっても、「必ず職場の人に伝えなければいけない」ということはありません。オープンにするかどうかは自分で決めることができます。 学習障がい(LD)があることをオープンにすることのメリットは、困りごとを解消するための合理的配慮について相談できるという点です。その場合は「どんなことが苦手なのか」「どういった対処をしてほしいのか」を自分なりにまとめてから伝えると良いでしょう。医師から診断書を出してもらうのも有効です。   大人の限局性学習症(SLD)/学習障がい(LD)の相談先や支援機関 仕事や生活の中で困りごとがあり、学習障がい(LD)があるかもしれないと感じる場合は、まず精神科や心療内科などの病院で相談することがおすすめです。いきなり病院に行くことには抵抗があるという場合は、まずは以下のような相談先や支援機関に話をしてみましょう。   発達障がい者支援センター 発達障がいに関するさまざまな相談を受けつけているセンターです。日常生活のサポートから、各種障がい福祉サービス・就労についての支援や情報提供もおこなっています。障がい者手帳がない場合でも利用可能です。自治体によってサービスの内容が違うため、詳しく知りたい場合は以下のページを参照ください。 発達障がい者支援センターってどんなところ?支援内容・手続き方法・最寄りの窓口について解説   障がい者就業・生活支援センター 障がい者就業・生活支援センターは、障がいのある人の生活と就労について、両方の相談ができる機関です。生活や暮らしの相談だけでなく、就労についての相談をしたり、支援制度を紹介してもらったりすることもできます。こちらも障がい者手帳がない場合でも利用できます。   ハローワーク ハローワークには障がいや疾患を持つ人を対象とした窓口があり、就労に関する支援をおこなっています。求人を紹介してもらえるだけでなく、適した職種や働き方などを一緒に考えてもらうこともできます。障がい者手帳がない場合は、医師の診断書など自分の特性が分かるものを持っていくとスムーズです。   就労移行支援事業所 就労移行支援は障がい者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつで、一般企業への就労を目指す、障がいや難病のある人が利用できます。ビジネスマナーやスキルトレーニングなどのプログラム(職業訓練)や、応募書類作成、面接対策など就職活動のサポートも受けられます。就職後の定着支援もしてもらえます。 まとめ 学習障がい(LD)にはさまざまな特性があり、生活や仕事の中で悩む人も多いです。また、学習障がい(LD)があると気づかないまま、「仕事がうまくいかないのは自分の努力不足だ」などと感じ、ストレスを抱える人もいます。 仕事や生活をする上で困っていることがある場合は、早めに専門機関や医療機関への相談をおすすめします。 一方で学習障がい(LD)による困りごとは、パソコンやボイスレコーダーを使う、読み書きがしやすいように工夫する、そもそも苦手な状況を避けるなどの対処法を行うことで軽減することもできます。また就労支援などの障がい福祉サービスを利用したり、障がい者雇用で就職するなどの選択肢もあります。 自分ひとりで抱え込まず、まずは医療機関や専門家、公的なサポートの利用を検討してみてください。   参考 大人も学習障害(LD)と診断される?特性、対処法、支援を解説| LITALICO仕事ナビ   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

「カサンドラ症候群」とは何か?アスペルガー症候群と共感性の欠如がもたらす心身の不調

カサンドラ症候群とは? カサンドラ症候群カサンドラ症候群とは、パートナーや近しい人がアスペルガー症候群をはじめとした共感性の低い特性がある場合に起こる、心身の不調のことです。 「カサンドラ情動剥奪障がい」や「カサンドラ状態」という名称が使われることもあります。 アスペルガー症候群というのは発達障がいの一種で、現在では自閉傾向を持った発達障がい全般を含め「自閉症スペクトラム障がい」という名称に変わっています。メディアやSNSの発達により近年耳にする機会が多くなった名称でもあり、アスペルガー症候群という名前の方が聞き馴染みがある方も多いかと思います(そのため、今回の記事ではアスペルガー症候群という名称を主に用いていきます)。   カサンドラ症候群は医学的に確立していない 「カサンドラ症候群」自体は、疾患や障がいとして医学的に確立しているわけではありません。そのため、精神疾患の国際的診断基準(DSM-5)には記載がない名称です。 “パートナーの共感力の低さが、個人の心身の不調を招く”という概念が初めて提唱されたのは1988年です。比較的新しい概念でありまだまだ一般的に浸透している名称ではありません。 しかしアスペルガー症候群の名称がメディアの発展を通じて広まってきたのと同様に、アスペルガー症候群の周りにいる人たちも、「言いようのない苦しみを日常的に味わっている」こと、また「眠れない、常に疲れ切ってしまい、感情のコントロールが難しくなる」などといった症状を引き起こすことが認知されてきています。   その苦しみや症状が、アスペルガー症候群をはじめとした共感性の欠如が目立つ人をパートナーに持つ者特有の症状であること、また「カサンドラ症候群」という名称で呼ばれることも、少しずつ浸透してきているのではないでしょうか。 しかし、身近にいる人がアスペルガー症候群なのであれば、“ある程度の大変さは誰にでもあるのでは?”と考えがちですよね。しかしカサンドラ症候群への理解を深めると、カサンドラ症候群特有の苦しみが存在することが分かります。カサンドラ症候群の症状や、心身の不調を引き起こす原因をアスペルガー症候群の特徴と共にひも解いていきましょう。   概要 カサンドラ症候群について初めて言及したのはローリー・レイトン・シャピラという心理学者です。パートナーの共感能力・想像力が低いことで、感情を共有したり共感を得られないために心の通い合いが乏しくなり、心身の不調をきたすのがカサンドラ症候群の概要となります。   名前の由来 「カサンドラ」というのはギリシャ神話に出てくる王国トロイの王女の名前です。彼女は物語の中でアポロン神に愛され、予言の能力を授かります。しかし、皮肉にもその予言の力でアポロン神が自分を捨てて去ってしまう未来を視てしまい、彼女はアポロン神を拒絶してしまうのです。当然、アポロン神はこれに激怒します。 授けてしまった予言の力を消すことは出来ないため、代わりに、「カサンドラの予言は誰にも信じてもらえない」という呪いを彼女にかけたのでした。その後カサンドラは予言の力を持ちながら、これから起こる未来の話をしても誰にも信じてもらえない・・・という不遇の人生を送ることになります。 アスペルガー症候群の人は、発達障がいがあっても仕事は真面目にこなしたり勤勉である、社会的にある程度適応しているパターンも多く見受けられるため、そのパートナーが「自分が辛い状況に置かれているということを誰に訴えても」第三者に分かってもらえない、という状況に陥りやすいのです。シャピラはこの比喩表現として「カサンドラ」の名をとったと言われています。   性差 カサンドラ症候群は女性のほうが多いとされています。これは、アスペルガー症候群が男性のほうが多いため、必然的にカサンドラ症候群に陥るのは女性のほうが多くなるからです。   カサンドラ症候群の定義 現在のカサンドラ症候群の定義は、 パートナーが、(アスペルガー症候群などによって)共感的・情緒的表出の障がいを抱えている パートナーとの関係において情緒的な交流の乏しさ・激しい葛藤や不満・虐待などがみられる 心身的症状がある となっています。カサンドラ症候群を最初に言及したシャピラによる定義では、これらに加えて「自分の精神的苦痛を訴えても理解してもらえない」という要件も入っています。医学的な定義とは言い難いものの、カサンドラ症候群という名称の由来にもなっている特徴ですから、大きな要素の一つともいえるでしょう。定義の中身について、具体的に記していきます。   ① パートナーが共感的・情緒的表出の障がいを抱えている アスペルガー症候群以外でも、各種パーソナリティ障がいや共感能力が低いなどの症状がある場合、そのパートナーはカサンドラ症候群に陥るとされています。主には、想像力に欠け相手の立場になって物事を考えるのが難しいとされる「自閉症スペクトラム障がい」、また診断はなくてもその傾向を持つ人なども対象に含まれます。 「自閉症スペクトラム障がい」という名前はあまり認知されていないため分かりにくい表現かと思いますが、以前は別々に考えられていた「自閉症」や「広範性発達障がい」、そして「アスペルガー症候群」など、対人関係が苦手でこだわりが強い特性を持つ発達障がいを同じ障がいとして捉えるようになったため、このような名称となっています。 つまり、どのような原因があれ、一方が共感能力や相手の身になって考えるなどの想像力が低く対人関係が苦手である特性を持つ場合、そのパートナーはカサンドラ症候群を起こす場合があるということになります。 共感能力の低さというのは、人間関係を構築する上で大きな問題になることがありますが、表面上は「理解しているような態度をとる」こともできるため、交際中は気にならなかったのに結婚してから明らかになってくるパターンも多々あります。   ②パートナーとの関係において情緒的な交流の乏しさ・激しい葛藤や不満・虐待などがみられる カサンドラ症候群に陥る人は決まって、上に説明した「パートナーの共感性の低さ」が原因となり、パートナーとの関係性に大きな問題を抱えています。ここでいう「情緒的な交流」とはどのようなものを指すのでしょうか。   パートナーからの「共感的応答」の乏しさが目立つ たとえば、パートナーに日常や仕事上の出来事などを伝えるとき、人は感情を共有したいという目的を持って話しかけます。 仕事上で失敗したという話であればパートナーに悲しかったり恥ずかしかったりする気持ちを理解してほしい、その上で慰めてほしいかもしれません。あるいは日常生活でイレギュラーなことが起きてすっかり疲れてしまったというときは、その体験を話したうえで、労をねぎらってほしいかもしれません。ある一定の反応を期待して、話を持ち掛けることが大半でしょう。   このように、人との会話をする上で「そうだよね」「大変だったね」という気持ちを示し、こうした期待に応えることを「共感的応答」といい、人間関係を円滑に回すためにとても大事なものになります。人は共感的応答が得られると、「自分の気持ちを理解してもらえた」と安心できるからです。そしてその相互関係により「愛着関係」が育まれていき、人間関係は強固なものとなっていきます。 またパートナーである以上は、些細な出来事や今後のイベント、将来のことについてコミュニケーションを取ったり話し合っておきたいこともあるでしょう。こどもがいれば、こどものライフイベントについて色々と打ち合わせておく必要も出てきます。   なぜその話をし始めたのかが分からない場合も珍しくない しかし、パートナーの共感力が低かったり想像力に乏しい場合、パートナーはその意図を理解できず、「共感的応答」が必然的に少なくなります。なぜその話をし始めたのかが分からない場合も珍しくないのです。 もし自分がすっかり疲れたというエピソードをパートナーに話した後に、「そうなんだ、疲れたんだね」とただ表面的に言われたり「それで、今日の夕ご飯は?」と返されたら、自分の話はまるで聞いていないのでは?と思うこともあるでしょう。 理論的に物事を考えやすいタイプだと、その場の状況を深く考えず「そういうときは、こうするべき」と理屈っぽく淡々と結論だけ述べることもあります。   しかも結婚生活の中で、それがひたすら繰り返されることになります。本来は感情や体験を共有して愛着関係が築かれていくのに、それが出来ないわけです。共感力が低い人の場合、わざとやっているのではなく表面上の話しか捉えることができない特性があります。そのため日常のエピソードを言われても「ただの報告」としてしか話を理解することができません。 表面上・文字面として理解することは出来ても、相手の気持ちまで理解することが難しく、言葉の裏には「理解してほしい(この辛さや大変さ・喜びや楽しさ)」という心があるということまでくみ取ることが出来ないのです。 もちろん、自閉症スペクトラム症やその傾向がある人の共感能力の程度によっても変わりますが、パートナーの反応にがっかりしてしまう・あるいは理解してほしいことほど理解してもらえないという辛い状況に陥りやすいのが、カサンドラ症候群を招く一因といえるでしょう。   カサンドラ症候群で起こる心の葛藤 また、これらの出来事(理解・共感してもらえない)を繰り返すと、どうなるでしょうか。最初は「自分は愛されていないのだろうか」「何か振る舞いがよくなかったのだろうか」と不安になり、自分の態度を振り返ろうとします。 しかし、どんな対応をしてもパートナーの共感性が低いと、そのうちその不安が怒りや失望に変わってきて、「どうせ、言っても理解してくれない」「共感してもらえないことで傷つくのは嫌だ」と思うことで、何か楽しいことや大変なことがあっても言わなくなってしまいます。   精神的に非常に不衛生な結果を招く こうして、情緒的交流の乏しさがますます目立っていきます。しかし、本当に理解してほしいパートナーに理解してもらえない・そして今後も無理解が続いていくという辛さは、想像を絶するものです。何のために結婚したのか分からない、という考えにまで追い込まれることもあるでしょう。 結婚した理由がわからない「伝えても傷つくだけ」「伝えなくてもモヤモヤする」という状況になり、どちらをとっても逃げ場が無くなります。心と心の通い合いができないという状態は、精神的に非常に不衛生な結果を招くのです。   そもそも共感性の低い人は感情を共有したい、理解してほしいという気持ちを持っていないことも多いため、情緒的交流に乏しいことは何ら問題ではありません。しかし、そのような傾向を持つ人と結婚した相手にとってはストレスが溜まる一方なのは火を見るより明らかでしょう。 パートナーへの虐待もみられる カサンドラ症候群に陥った人は、心の通い合えないパートナーに酷いいらだちを覚え、そのいらだちの原因にすら気づかないことにも更に怒りを増幅させます。そうしてストレスが極限状態にまで達すると、昔でいう「ヒステリー」の状態を引き起こします。急に興奮状態になって暴れだしたり、金切り声で叫んだり、横暴になってパートナーに掴みかかったり・・・。虐待に発展することもあります。 そこまで極限状態になっても、共感力・想像力の低いパートナーには意味が分かりません。なぜそこまでストレスが溜まっているのか、何度説明されても理解できないのです。むしろただのヒステリー、わがまま、自己中として片付けられてしまいます。   しかしカサンドラ症候群に陥った人はそれまで「共感してもらえない」「自分の気持ちを理解しようともしてくれない」という、いわゆる心理的虐待を常に受け続けてきているのと同じです。その積もり積もった憎悪と、先に出てきた「葛藤のストレス」が大きな誘因となり、虐待に発展することも有り得るのです。   ③心身的症状がある カサンドラ症候群の身体的・精神的症状としては、 自己評価・自尊心の低下 抑うつ状態(慢性的な気分の沈み) 罪悪感 不安障がい・不眠症・PTSDなどの精神症状 体重の増減 鈍重感 情緒不安定・イライラ などが挙げられます。しかしこれは一例であり、他にも片頭痛を抱えていたり、無気力・易疲労性・めまいや手足の震えなどの自律神経失調症を引き起こしているパターンも見受けられます。そしてその不調が改善されないことで、いつしかうつ病などの精神疾患にまで発展することも稀ではありません。 そこまで状況が悪化してようやく、医療機関を受診する人もいるでしょう。その時点では自分に何が起きているのか、状況が良く分かっていない人も存在します。そういう人が医療機関に相談して背景を明らかにしているうちにようやく、どうやらパートナーの共感性に問題があり、カサンドラ症候群に陥っているようだと発覚することもあるのです。   また、共感してもらえないというストレス以外にも、パートナーに発達障がいや精神障がいがあったり、その傾向があることで、 特定のパターンやマイルールにこだわりやすく、それを守れないとパニックになる 場の空気を読まず、不適切な発言をしてしまう 相手の表情が読み取れず、不快に思っていることが分からない 自分の興味のあることだけ延々と一方的に話す よく分からないタイミングで怒りだす といったような部分も目立ち、それ自体もストレスが溜まる一因になっていることもあります。   共感してもらえないという苦しみ この苦痛こそが、カサンドラ症候群の名前の由来そのものを表している状態といえるでしょう。   パートナーから共感してもらえない 共感的応答ができないパートナーが、自閉症スペクトラムの中で以前はいわゆる「アスペルガー症候群」として分類されていたような特性を持っている場合、なぜ相手がストレスをため込んでいるのか理解しづらい典型といえます。真面目で勤勉、融通は利かないところがあるものの記憶力はよく、専門分野では力を発揮するタイプで仕事はうまく回せるケースもよくみられます。 「正しいか正しくないか」や「細かい部分」にこだわりやすいため、「仕事もしっかりこなしている」「家庭を支えているしギャンブルをするわけでもないのに、相手は何が不満なのか?」と考えることになります。   楽しみや苦悩といったものを感じることはできますが、それを「他人と共有する」とか、「他人の感情をくみ取ろうとする」ということが苦手なのです。空気を読んだり、他人の感情の機微を感じ取ることは難しく、マイルールに従って動くので人によっては自己中心的で冷たい印象を持つことも多いでしょう。 またそれが「パートナー」という立場になっても、相手の感情をくみ取ろうとする能力そのものが低いことは変わりないので、結婚相手は「家族なのに、なぜそんなに無関心なのか?」「家族であることに、何の意味があるのか?」と感じ続けることになります。   こどもが生まれると更に表面化することも こども二人に子どもがいる場合は、助け合うことや子どもについて話し合う場面は無数にあります。子どもが熱を出して呼び出されたり、保育園の送り迎えが大変だったり、学校行事の準備をしたり・・・パートナーに「大変だ」と伝え、どれだけの手間と時間がかかるのか、どれだけ大変なのか説明しても相手は「そうなんだ、大変なんだ」と言葉面だけ理解する。 手伝ってほしいといっても自分の都合を優先し、手伝ってくれたとしてもどの範囲をどう手伝うのかを事細かに説明する必要があり、自分でやったほうが早い。そういう状況が繰り返されることで、まるで自分ひとりで育てているような気分になることも少なくありません。   こどもの体調が悪くて心配していても、パートナーはまるで子どもにも関心がなく、心配しながら看病している自分に対しても何か言葉をかけるわけでもない。協力して子どもを育てていくはずが、子どもに関する話題を出すと、煩わしそうな態度さえ見せる。 自分だけであれば我慢出来ていたものが、子どもの気持ちさえくみ取ろうとしないのだと考えると腹立たしくなり、ストレスが急激に増える転機になる場合もあります。   第三者から共感してもらえない 更に、カサンドラ症候群の苦痛を何倍にも膨らませるのがこの「第三者からの無理解」です。パートナーが共感性のなさを見せるこそあれ、上記の特性から社会的には問題なく過ごしている場合も多く、第三者からに苦痛を訴えても「あんなに真面目で勤勉な人の不満を言うなんて・・・」と逆に被害を訴えてきた本人のほうが非難されることも多いのです。   そういった状態で、カサンドラ症候群の人がストレスの極限状態にまで追い込まれ、ヒステリーを起こしでもすれば世間の目はますます厳しくなっていきます。こうしてカサンドラ症候群の人は、二人の関係性を正しく理解してもらう機会を失い、二重の苦しみを味わいどんどん孤立していくことになります。 もともと愛着が安定していた人でも、長期間の「無理解」に晒されれば、精神的に不安定になり心身の不調を引き起こします。その症状が進んでいくと無力感や猜疑心に苛まれ、ついには「自分なんか生きていたって意味がない」「消えてなくなりたい」とまで感じるようになってしまいます。   カサンドラ症候を引き起こしやすい要因 パートナーの共感性が低いからといって、もう片方が必ずしもカサンドラ症候群に陥るとは限りません。それでは、カサンドラ症候群に陥る可能性を高める要因は何があるのでしょうか。   性格特性 真面目である 几帳面で、コミュニケーションをこまめにしようとする 我慢強い 面倒見が良い という人は、相手とのコミュニケーションが上手くいかなくてもなんとか向き合おうと努力し続ける傾向にあります。ある時は自分のせいでは?と行動を振り返って修正しようとし、それで疲れきっても心の限界が来るまで何度も何度も受け入れ続け、いつの間にかカサンドラ症候群に陥ってしまいあるとき我慢の限界が来る、という段階を踏みやすいのです。   近しい人が共感力の低い特性がある 自閉症スペクトラム障がいをはじめとした共感能力の低さが目立つ人と近く、長い時間を過ごす関係性の人はカサンドラ症候群を引き起こしやすいと言われています。具体的な関係性としては、 結婚相手(交際相手) 両親や兄弟などの家 同僚や上司、部下 などが挙げられます。一緒にいる時間が長ければ長いほど、距離感が近ければ近いほど、カサンドラ症候群を招く誘因となりますので、多くはパートナーとの関係が取り上げられることが多いでしょう。   共感的応答を多く必要とする人 カサンドラ症候群である人の中には、そもそも「共感的応答」の機会が多く得られないと不安になりやすいケースが存在します。自分の気持ちを理解してほしい、こまめに注意を向けてほしい、という気持ちが最初から強く、それを相手から得られないと愛されていると感じることが出来ない場合も。 共感的応答が能力的に難しいケースと、共感的応答を多く必要とするケース。その二人が結婚するとなると、当然ながら関係性に問題を生じやすいといえるでしょう。「もともと共感的応答を多く求めるタイプなら、相手の共感能力が低いことは交際中に気づくのでは?」という声も上がってきそうですが、「共感的応答を多く求める」というのは、「自分のことを愛してもらうために甲斐甲斐しく世話をしたり、過度に尽くしたりする」という言い換えにもなります。   自分のせいだと思い込んだり些細な問題だと捉えてしまいがち 特にカップルの段階である場合、気持ちが盛り上がっていることが多く、さらに相手に尽くしやすい人だと自分の気持ちを顧みず、ひたすら相手のために動いてしまう特徴があります。関係性を育むなかで、少し違和感を持ったり、「あれ?おかしいな?」と思う振る舞いを相手がしたとしても、自分のせいだと思い込んだり些細な問題だと捉えてしまいがちなのです。 そうなると、相手に気に入ってもらうためにさらに世話を焼いたり機嫌をうかがうことに集中してしまい、自分の気持ちはないがしろにされてしまいます。 その状態に置かれている時点では、「相手の共感的応答が少ない」ことも多少目を瞑ることが多く、相手の関心が低い理由が「相手の共感能力がそもそも低い」からという原因まではまずたどり着かないのです。   しかし結婚しても、どうも相手からの愛情表現が少なすぎる気がする。むしろ、相手はこちらの気持ちや立場に興味がないような素振りさえ見せる。結婚して距離が近くなり一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど、その疑いが強くなっていきます。なぜ自分に興味を持ってもらえないのか?何が悪いのか?と自分の行動を修正し続けても事態は一向に好転しません。 このケースでの行動原理は「甲斐甲斐しく世話を焼く代わりに、愛をもらいたい」という部分もありますから、どう頑張っても共感的応答がまるで得られないことがわかると、まるで期待が裏切られたかのように傷つくようになり、それは怒りに変わっていきます。   カサンドラ症候群の治療 カサンドラ症候群に陥った人は、心身不調を訴えて受診することが多いです。その時点で自分がカサンドラ症候群を起こしていると自覚している人もいれば、訳も分からずイライラしたり落ち込んだりというのを繰り返している人もいます。どちらの場合でも、まずはその不調に応じて薬物療法や認知行動療法を行い、症状を軽くすることを目指していきます。 特に第三者にさえ理解してもらいにくいカサンドラ症候群ですから、病院を受診して背景をしっかり理解してもらうこと自体でも、心が少し楽になることもあります。そのうえで、カサンドラ症候群を起こしている人だけにアプローチを行うのではなく、可能な限りパートナーと「関係性」に対しても少しずつ対処していくことが必要になってきます。   薬物療法 症状に応じて抗うつ剤や抗不安薬、睡眠導入剤などを使用します。慢性的な落ち込みは脳の神経伝達がうまく働いていないために起こるとされており、抗うつ薬はその脳内環境を調整してバランスを整えることで、気持ちの沈みや落ち込みを改善する薬になっています。 抗不安薬は名前の通り不安や過度の緊張、イライラ感を和らげる薬になります。睡眠導入剤は、眠りにつきにくいとか眠っても途中で目が覚めてしまうなどの症状がある場合に処方されることがあります。自律神経失調症も起こしている場合には、そちらに対しても症状に合わせた投薬や漢方薬の処方を行います。   認知行動療法 認知行動療法では、パートナーの関係性で起こる問題点や違和感に焦点を当て、その問題をいかに適切な関わりに変えるか、という部分を具体的に専門家と話し合います。カサンドラ症候群を引き起こしている本人と、共感性の低いパートナーと双方が同じ場で、二人の関係性について客観視しながら進めていくのが望ましいですが、最初からパートナーも受診させるということは難しい場面も多いでしょう。 特に、グレーゾーンと呼ばれる確定診断がつけられない軽度の発達障がいがある場合だと、本人も気づきにくく、なかなか受診までしてもらえないケースも多くあります。そういった場合は相手に発達障がいや各種のパーソナリティ障がい・またその傾向があるかどうかにこだわるよりも、まずはカサンドラ症候群を起こしている人の苦痛を和らげるための方策を行うことのほうがよほど重要です。   本人のみでも認知行動療法は可能であり、まずはアプローチを通じて自分の身に起こっていることを冷静に受け止め、苦痛を改善するためにはどうすればいいか、まず専門家と一緒に考えることが必要になってきます。 いったん苦痛が落ち着いてくれば、混乱していた時期と比べるとパートナーとの関係性に対してまた違った見方ができるかもしれません。薬物療法と認知行動療法、また適度な休養の機会を作ることが状況の改善への近道といえるでしょう。 まとめ カサンドラ症候群の認知度が少しずつ上がってきたとはいえ、当事者になるとなかなか自分が「カサンドラ症候群を引き起こしている」ということには気づきにくいものです。 相手が発達障がいに当てはまるかもしれないが、もしかしたら自分の思い違いかも?自分ではカサンドラ症候群だと思っているけれど、それもただの思い込みかも?と感じてなかなか専門医に相談できないという人もいるかもしれません。 しかし、実態がどうかということに関わらず、症状が出ている時点で「とにかく体が、心が辛い」というSOSを出しているという証です。 カサンドラ症候群ではなくても、不調が起こっている以上はそれを軽くするのが病院やメンタルクリニックの役目となりますし、カサンドラ症候群であれば、まずは医療機関に相談するだけでも孤立しやすい立場の中での支えになることができます。その「辛い」という本音を大事にして、その苦痛を軽減することから始めましょう。   参考 「カサンドラ症候群」とは何か 〜いちばん近しい人と、共有できない〜|新橋メンタルクリニック   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

強度行動障がいとは?原因や対応、支援について

子どもに「自分自身の体を叩く」「頭を壁にぶつける」「他の子どもを叩いてしまう」「道路で危険な飛び出しをする」といった行動がかなりの頻度と強度で継続的に見られる場合は「強度行動障がい」に当てはまる可能性があります。 強度行動障がいとは、「本人の健康を著しく損ねる行動」や「周囲の人々に著しい影響を及ぼす行動」が高い頻度で継続して起こり、特別な支援が必要な状態のことを指します。 強度行動障がいは医学的な診断ではなく、行政・福祉において必要な支援を判断するために用いられる用語です。 この記事では強度行動障がいの原因や周囲の対応方法、相談先や支援の受け方について紹介します。   強度行動障がいとは? 強度行動障がいとは、自分を傷つける「自傷」や他の人やものを傷つける「他害」、「睡眠の乱れ」「異食」「ものを壊す」など、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こすため、特別に配慮された支援が必要な状態を言います。 強度行動障がいという名称は医学的な診断名ではなく、行政・福祉において必要な支援を判断するために使用されています。 今回の記事は厚生労働省の「障がい者総合福祉推進事業」内の資料を基に、強度行動障がいについて紹介していきます。   強度行動障がいのある方の具体的な行動とは? 厚生労働省の「強度行動障がいの評価基準等に関する調査について報告書」によると、強度行動障がいのある方には以下のような行動が見られるとされています。 ひどい自傷 肉が見えたり、頭部が変形に至るような叩き方をしたり、つめをはぐなど。  強い他傷 噛みつき、蹴り、なぐり、髪ひき、頭突きなど、相手が怪我をしかねないような行動など。  激しいこだわり 強く指示しても、どうしても服を脱ぐなど、どうしても外出を拒みとおす、何百メートルも離れた場所に戻り取りに行く、などの行為で止めても止めきれないもの。  激しいもの壊し ガラス、家具、ドア、茶碗、椅子、眼鏡などをこわし、服をなんとしてでも破ってしまうなど、その結果危害が本人にもまわりにも大きいもの。 睡眠の大きな乱れ 昼夜が逆転してしまっている、ベッドについていられず人や物に危害を加えるなど。  食事関係の強い障がい テーブルごとひっくり返す、食器ごと投げるとか、椅子に座っていられず、皆と一緒に食事できない。便や釘・石などを食べ体に異常をきたした偏食など。  排泄関係の強い障がい 便を手でこねたり、便を投げたり、便を壁面になすりつける。強迫的に排尿排便行為を繰り返すなど。 出典:厚生労働省「強度行動障がいの評価基準等に関する調査について報告書」   人によって強度行動障がいを起こす年齢は異なっています。しかし、思春期以降に強いこだわりや自傷行為や他傷、破壊行動などの行動が激しくなり、高校を卒業する年代以降に落ち着いてくる傾向があると言われています。 強度行動障がいの原因 ここでは強度行動障がいの原因として考えられるものを紹介します。まず、強度行動障がいの行動は生まれつきのものではなく、子どもにある特性と周囲の環境や関わりとのミスマッチが大きいことによって現れるとされています。 「コミュニケーションが苦手」「強いこだわり」「衝動性」「感覚が過敏」などの特性と、周囲の環境がうまく合わないことが強度行動障がいにつながっていきます。   強度行動障がいの背景となる特性 知的障がい(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)は、強度行動障がいの背景となりやすいといわれています。知的障がい(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性としては以下の4点が挙げられています。それぞれの特性を具体的に紹介します。 社会性の特性 社会性の特性として、「他者への関心が薄い」「他者の意図を察知するのが難しい」といった人との関わりについての特性や、「周囲で起こっていることへの関心が薄い」「周囲から期待されていることの理解が難しい」といった状況の理解が苦手ということがあります。 コミュニケーションの特性 コミュニケーションの特性として、「話し言葉の理解が難しい」「あいまいな表現が苦手」といった理解に対する特性や、「言葉で伝えるのが難しい」「誰に伝えたらいいのかわからない」といった発信に対する特性があります。また、「状況に合わせた振る舞いが苦手」「表情や目線などの非言語的コミュニケーションの理解が難しい」という人とのやり取りが苦手という特性もあります。 こだわりの特性 特定の刺激や活動に没頭し、切り替えることややめることが困難といった特性があります。また、「臨機応変な対応が苦手」「自分のやり方にこだわる」といったことがあります。 感覚の特性 感覚の特性としては、「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」「嗅覚」といった五感に対する過敏または鈍麻(どんま)があります。また、前庭覚(重力や体の傾き、スピードなどを感じる感覚)に特有の感覚があることもあります。 また、ほかにも特性として衝動性がある場合、感情のコントロールが難しく、突発的な飛び出しや奇声をあげるなどの癇癪が起こることがあります。   強度行動障がいのある方への対応で大切なこと 強度行動障がいは子どもの特性と周囲の環境のミスマッチが要因となっています。そのため、子どもの生活環境や、周囲の関わり方を整えていくことが強度行動障がいのある子どもにとって大事です。 人に対して叩いたり噛みついたりする行動に対して、叩き返す、身体でわからせるなどの対応は虐待行為です。また、自らの身体を傷つける自傷行動についても力ずくで抑えるだけでは上手くいきません。このような誤った対応によって、行動障がいがより悪化してしまう可能性があります。   「強度行動障がいのある人を支えるための5つの原則」 厚生労働省の「強度行動障がいのある人を支えるための5つの原則」では、強度行動障がいのある方が落ち着いて過ごせるための要件として、 安定して通える日中活動 住内の物理的構造化 ひとりで過ごせる活動 確固としたスケジュール 移動手段の確保 が大事とされています。強度行動障がいのある方は、一定のルールや先の見通しがあると比較的落ち着くことが多いとされています。それぞれ具体的に見ていきましょう。 安定して通える日中活動 強度行動障がいのある方は、日中個別のスペースや決まった日課のある落ち着いて過ごせる場所があることが大事といわれています。家庭で落ち着くことが難しい場合は、上記のような落ち着いて過ごせる場所に通うことが良いとされています。また、その場所で過ごしている最中は、強度行動障がいのある方を一人にするのではなく、支援者などが健康や安全に配慮できる環境も必要です。 居住内の物理的構造化 自宅など居住内の部屋の明るさや音の刺激を少なくする対策もあります。強度行動障がいのある方は環境からの刺激が多く、それらがストレスとなって行動の問題が生じることもあります。落ち着いて一人で過ごせる場所を用意することが、予防や気持ちの安定につながります。 ひとりで過ごせる活動 一人で過ごせる場所だけを用意しても、その場で何をしたらいいかわからないと部屋から出てきてしまったり、他者を巻き込んで活動しようとして行動の問題が悪化することもあります。そのため、場所だけでなく、一人で過ごすための活動を用意すると、本人も気持ちを整えたり楽しんだりできると同時に、周囲の人たちも安心して見守ることができます。 確固としたスケジュール 強度行動障がいのある子どものこだわりによる繰り返しの日課を家族が見守ることができ、予定の変更をする際には子どもが見通しを立てることができるような伝え方ができる状態です。 移動手段の確保 日中活動などの外出時に、強度行動障がいのある子どもにとって刺激や変化が少なく、安心できる移動手段が確保できている状態です。   これらの対応は家族だけでは難しい場合もあるため、障がい福祉サービスを活用しながら進めていくと良いでしょう。   家族のレスパイトケアも重要 また、強度行動障がいのある子どもの家族の「レスパイトケア」も重要です。レスパイトとは「小休止」「息抜き」を意味する言葉で、自宅で介護などを行う家族の精神的・身体的負担の軽減を目指すものです。 ショートステイや行動援助などのサービスを計画的に使うことや、身内の不幸などで家族が自宅を離れることがあった際に強度行動障がいのある子どもが利用できる緊急一時サービスを確保しておくことで、家族の精神的・身体的負担を軽減し、長期的なサポートをしていく助けとなります。   強度行動障がいについての相談先 相談支援事業所とは、障がいのある方が地域で自立した日常生活、社会生活を営めるようにさまざまな支援をおこなっている機関です。強度行動障がいについての相談にも対応してくれます。 相談支援事業所では、家族や本人の困りごとに対し専門の相談支援員がヒアリングをおこないます。そのうえで、強度行動障がいのある方がどのような障がい福祉サービスを活用すると良いかを、家族や本人の希望も考慮して検討していきます。   地域の実情に合わせた形をとっていて全国一律ではない 支援を受けることになった場合には、その支援機関との連絡調整や、強度行動障がいのある方に適したサービス等利用計画の作成、定期的な計画の見直し(モニタリング)などもおこなっていきます。 相談支援事業所は、市区町村で運営しているほか、自治体からの指定を受けた「特定相談支援事業所」と「一般相談支援事業所」、そしてその地域の中心となる「基幹相談支援事業所」があります。   ただし、地域の実情に合わせた形をとっていて全国一律ではないため、強度行動障がいについて相談する場合は、まずお住まいの自治体の障がい福祉窓口に問い合わせをすると、困りごとに合った相談支援事業所を教えてもらえるでしょう。 相談支援事業所は都道府県や市区町村のWebサイトに一覧が掲載されていることもあります。参考までに埼玉県のWebサイトを掲載します。 参考:埼玉県「指定施設・事業所一覧」   強度行動障がいのある方への支援 強度行動障がいのある方に向けた支援として、障がい者総合支援法に基づく障がい福祉サービスがあります。支援は施設で受けるもの、自宅で受けるもの、移動をサポートするものなどがあります。これらを強度行動障がいのある方の状態に合わせて組み合わせながら利用します。   在宅で受ける支援 行動援護 自傷、異食などがあり行動の際に介護を必要とする人に、行動に伴う危険を回避するための援護や外出の際の介護を行います。 重度障がい者等包括支援 重度の障がいがあり多くの種類の支援が必要な人に対し、居宅介護、行動援護など包括的なサービスを提供します。 重度訪問介護 重度の障がいがある方に対して、入浴・排泄・食事の身体介護、家族援助、コミュニケーション支援、外出時の移動の介護などを総合的に提供します。   施設で受ける支援 施設入所支援 施設に入居している方に対し、主に夜間の入浴・排泄・食事などの介護を提供するサービスです。 短期入所(ショートステイ) 介護者が不在となる際に、介護を必要とする人に対し一時的に施設で預かり、介護や支援を行う事業所です。障がいのある方だけでなく家族などの介護者の負担軽減にもなります。 共同生活援助(グループホーム) 地域でほかの人と共同生活をしている方に対して、主に夜間の入浴・排泄・食事の介護、その他日常生活の支援を行うサービスです。   強度行動障がいのある方が利用できる障がい福祉サービスは他にも種類があります。「障がい福祉サービス等情報公表制度」によって、全国の障がい福祉サービス事業所をインターネットから探すことができます。強度行動障がいのある方が利用できる支援を探している方は、参考にしていただければと思います。 参考:独立行政法人 福祉医療機構「障がい福祉サービス等情報検索」   強度行動障がいのある方への支援までの流れ 強度行動障がいのある方が障がい福祉サービスを受けるための流れを紹介します。   障がい福祉サービスの申請手続き 障がい福祉サービスを利用するためには「受給者証(障がい福祉サービス受給者証)」が必要になります。強度行動障がいのように医学的な診断がない場合や、障がい者手帳を取得していなくても、受給者証があればサービス利用の対象となります。障がい福祉サービス利用の流れは以下のようになります。 相談・申請 障がい支援区分の認定調査 サービス等利用計画案提出 受給者証の交付 利用開始   ■相談・申請 まずはお住まいの自治体の相談支援事業所や障がい福祉窓口へ、強度行動障がいで困っていることの相談を行います。相談の結果として障がい福祉サービスの利用意思が固まったら、自治体の窓口で申請をします。   ■障がい支援区分の認定調査 申請後は自治体の職員による「障がい支援区分」の認定調査が行われます。障がい支援区分とは、障がいの特性や心身の状態から必要とされる支援を6段階に区分したものです。この障がい支援区分によって受けることができるサービスが変わってきます。   ■サービス等利用計画案提出 認定調査のあとは、本人や家族の意向を踏まえて適切なサービスを受けることができるよう「サービス等利用計画案」の作成を行います。計画案は基本的に「指定特定相談支援事業者」が作成し、自治体へ提出します。   ■受給者証の交付 サービス等利用計画案や自治体の調査をもとに障がい福祉サービスの利用が認められると、障がい福祉サービス受給者証が交付されます。受給者証には使えるサービス・量(時間)などが記載されています。   ■利用開始 実際にサービスを受ける事業所と契約をし、サービスの利用を開始します。   利用開始後も相談支援事業所が定期的な計画の見直しを行い、本人と家族が適切なサービスを受けることができるような体制が整っています。 まとめ 強度行動障がいは、自分や他人を傷つけるなどの行動を繰り返し、周囲の人々の暮らしにも大きく影響を与える状態を指します。これは周りの人々だけでなく、行動を起こす本人も困難を抱えている状況です。そのため、適切な障がい福祉サービスを利用し、環境を整えていくことが大切です。 強度行動障がいは、思春期以降に顕在化する傾向がありますが、幼少期からの気づきと支援が必要です。児童発達支援や放課後等デイサービスでも強度行動障がいの支援を受けられることがあり、専門的なサポートが求められる場合があります。 自傷行動や他害、破壊的行動、その他の問題行動でお悩みの場合、強度行動障がいが疑われる際には、一度支援機関にご相談ください。   参考 強度行動障がいとは?原因や対応、支援について解説します【専門家監修】|LITALICOジュニア   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

身体障がいとは?種類や症状・支援制度から就職まで知っておきたいこと

身体障がいとは「身体の機能に障がいがある状態」のことです。身体障がいがあることで、生活・仕事で困りごとを感じるときはありませんか?そのようなときは、支援機関や福祉サービスなど活用してもいいかもしれません。 この記事では、身体障がいの種類を始め、身体障がい者手帳や活用できる支援機関、働くうえでの配慮事例など、幅広くご紹介します。生活や仕事で困ったときに使える選択肢の一つとして、ぜひご参考ください。   身体障がいとは? 身体障がいとは分かりやすくいうと「身体の機能に障がいがある状態」のことをいいます。視覚障がいや聴覚障がい、内部障がいなども、身体障がいの一つです。身体障がい者福祉法の「身体障がい」は、次の通り定義とされています。   身体障がいの定義 身体の機能に障がいがあって、身体障がい者手帳を交付された18歳以上の方 ※18歳未満の方は児童福祉法に位置づけられます。児童福祉法では「身体に障がいがある18歳未満」を「身体障がい」と定義されています。 身体障がい者福祉法に定められている身体障がいの症状の種類や身体障がい者手帳などについては、後の章で詳しく解説していきます。   身体障がいの症状の種類について 身体障がいの症状の種類はどのようなものがあるか、ここで簡単に見ておきましょう。身体障がい者福祉法によると、大きく分けて次の5つがあります。   視覚障がい 視覚障がいとは、視力や視野などに障がいがあって、目が見えにくい・見えない状態です。   視覚障がいの症状 視覚障がいのある方は以下のような症状が見られることがあります。 両目の視力がそれぞれ0.1以下のもの 一眼の視力が 0.02 以下、他眼の視力が 0.6 以下のもの  両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のもの  両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの  参考:厚生労働省「身体障がい者の範囲について」 聴覚障がい または 平衡機能障がい 聴覚障がいとは、音を伝えるための外耳・中耳、音を感じ取るための内耳などに何かしらの障がいがあって、耳が聞こえにくい・聞こえない状態です。 平衡機能障がいとは、耳や脳神経などの機能に障がいがあって、起立や歩行などに支障がでている状態です。   聴覚障がいの症状 聴覚障がいのある方は以下のような症状が見られることがあります。 両耳の聴力レベルがそれぞれ 70 デシベル以上のもの  一耳の聴力レベルが 90 デシベル以上、他耳の聴力レベルが 50 デシ ベル以上のもの 参考:厚生労働省「身体障がい者の範囲について」   平衡機能障がいの症状 平衡機能障がいの症状としては、「平衡機能の著しい障がい」が挙げられます。具体的には目を開けた状態で立っていることができない、または目を開けた状態で又直線を歩行中に10m以内に転倒もしくは著しくよろめいて歩行できない状態をいいます。 参考:愛知県「身体障がい認定基準(第2 個別事項)<聴覚又は平衡機能の障がい>」   音声機能、言語機能 または そしゃく機能障がい 音声機能・言語機能は構音器官の障がいなどによって、音声を発することが難しかったり、音声・言語のみで意思疎通に支障がでている状態です。 そしゃく機能障がいは、食べ物を噛み砕いて食べるための機能に障がいがあって、摂取できる食べ物の内容や摂取方法に支障がでている状態です。   音声障がい・言語機能障がいの症状 音声障がい・言語機能障がいの症状は、3級では音声を全く発することができないか、発声しても言語機能を喪失した状態のことをいいます。また4級では音声、言語のみを用いて意思を疎通することが困難な状態のことをいいます。 参考:愛知県「身体障がい認定基準(第2 個別事項)<音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障がい>」   そしゃく機能障がいの症状 そしゃく機能障がいの症状は、3級では経管栄養以外に方法のないそしゃく・嚥下機能の障がいのことをいいます。 4級では著しいそしゃく・嚥下機能または、咬合異常によるそしゃく機能の著しい障がいがある状態です。 参考:愛知県「身体障がい認定基準(第2 個別事項)<音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障がい>」   肢体不自由 上肢、下肢、体幹に障がいがあり、具体的には、握る・なでる・摘むといったような手指の機能障がい、歩く・登る・座るといったような下肢の機能障がい、運動機能などに障がいがあって、日常生活の動作へ支障がでている状態です。   肢体不自由の症状 肢体不自由の症状として、「軽度の障がい」と呼ばれるものだと日常生活に支障をきたすと見なされる値(概ね90度で足関節の場合は30度を超えないもの。)の状態をいいます。 「機能の著しい障がい」ですと、各々の部位で関節可動域が日常生活に支障をきたすと見なされる値(概ね90度)のほぼ30%(概ね30度以下)のものをいいます。さらに「全廃」の状態だと関節可動域が10度以内のものをいいます。 ※ただしこの数値は、機能障がいの一面を表したものであるので、その判定に当たっては、その機能障がい全般を総合したうえで定めなければならない。とされています。 参考:愛知県「身体障がい認定基準(第2 個別事項)<肢体不自由>」   内部障がい 内部障がいとは、身体の内部に障がいがある状態です。内部障がいの種類は以下の通り挙げられます。 心臓機能障がい 全身に血液を送り出す心臓の機能に障がいがあって、日常生活へ支障がでている状態です。中には「ペースメーカー」という医療機器を胸部に埋め込まれている方もいます。 じん臓機能障がい じん臓の機能が低下し、老廃物や余分な水分など排泄することができなくなったりする状態です。 呼吸器機能障がい 肺などの呼吸器の機能が低下したことにより、呼吸が難しくなる状態です。 ぼうこう または 直腸の機能障がい 排便・排尿などの機能が低下し、日常生活へ支障がでている状態です。中には、排泄物を体外に排泄するための「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)」を造設した方(オストメイト)もいます。 小腸の機能の障がい 広範囲に及ぶ小腸切除や小腸疾患によって、小腸の機能が低下し、口から摂取する食べ物や薬で栄養を維持することが難しくなったりする状態です。 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障がい HIVウイルス感染によって、ある種の白血球が破壊され、免疫機能が低下している状態です。 肝臓の機能の障がい 何らかの原因で肝臓の機能が低下し、全身倦怠感やからだのむくみ、黄疸などの症状が現れやすくなる状態です。   身体障がい者手帳について 身体障がいのある方をサポートするために代表的なものとして「身体障がい者手帳」があります。   身体障がい者手帳とは 身体障がい福祉法に定める障がいに該当すると認められた場合、本人からの申請に基づき、身体障がい者手帳の交付がされます。 身体障がい者手帳の交付がされると、各種の手当や医療費の助成、税金の控除、公共料金の減税など(※)が受けられます。また、福祉サービスを利用しやすくなったり、障がい者求人への応募ができたりといったように、受けられる支援の幅も拡がります。 (※)お住まいの自治体によって受けられるサービスの内容が異なります。   一方で、身体障がい者手帳が交付されることで不利なことがあるのではないかと心配されるかもしれません。身体障がい者手帳の申請は義務ではないため、不必要なときは返却することもできます。また、身体障がい者手帳を取得していることを履歴書などに記載する義務などもありません。 さまざまなサポートを受けたいと考えている方は、身体障がい者手帳を取得した方がメリットが大きいといえるでしょう。身体障がい者手帳の詳細を知りたい方は、お住まいの自治体の障がい福祉窓口などでご確認ください。   身体障がいのある方が受けられるサービス・制度 身体障がいのある方が生活をおくるうえで、移動やコミュニケーションなどに困りごとを感じるときがあるかもしれません。そのようなときは、この後に挙げる支援機関や福祉サービスなどを活用するといいでしょう。ここでは、受けられる支援(生活編)の一部をご紹介します。 ※お住まいの自治体、障がいの状況や重症度などによって受けられるサービスの内容が異なります。詳細はお住まいの自治体へご確認ください。   経済的なサービス・制度 身体障がいのある方が受けることができる、経済的なサービスや制度について紹介します。 障がい年金 病気やケガなどによって生活・仕事などに著しい制限がある場合に受け取ることができる年金です。障がい年金には「障がい基礎年金」「障がい厚生年金」があり、受け取るためには受給要件を満たす必要があります。 更生医療 日常生活をよりおくりやすくすることを目的とした治療(身体障がい者の障がいを除去・軽減するための手術など)にかかる費用(自立支援医療費)に対して支給を受けることができる制度です。 心身障がい者医療費助成制度 健康保険に加入している重度障がいのある方が病院へ受診したときの自己負担分を軽減するための医療費助成制度です。   日常生活用具/補装具の交付 日常生活をおくるのに必要な用具・補装具を給付(または貸与)する制度です。 ※用具・・日常生活をサポートするためのもの(例:ストーマ装具、透析液加湿器など)補装具・・身体障がいのある方が装着することで機能を補完するもの(例:補聴器、義足、義眼など)   日常生活のサポート 相談支援事業所 自立した日常生活や社会生活に向け、本人の希望や状況に合わせて、福祉サービスや人をつなげ、地域とのよりよい関係を築くサポートをおこなうサービスです。 自立訓練(機能訓練) 障がいのある方が日常生活をよりおくりやすくなるよう、生活に関する相談、理学療法士などによるリハビリテーション、歩行・家事の練習などをおこなうサービスです。 生活介護 常に介護を必要とする方へ、入浴や排泄、食事など日中活動をサポートするためのサービスです。具体的には自宅での入浴・排泄などをサポートする訪問系の「居宅介護」や、介護だけではなく創作活動などの機会も提供する日中活動系の「生活介護」、施設での入浴・排泄、食事などをサポートする施設系の「施設入所」などがあります。   身体障がいと仕事に関する制度 身体障がいのある方の働き方として、「就労継続支援(A型・B型)」・「障がい者雇用」・「一般雇用」があります。   就労継続支援(A型・B型) 通常の事業所に雇用されることが困難である方に対して、就労の機会や生産活動などの機会の提供、また、その他の就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練・支援をおこなう事業所となります。   障がい者雇用 障がい者雇用とは、分かりやすくいうと「障がい者求人に応募して雇用される」ことで、各企業が障がい者雇用促進法に基づいて障がい者雇用を実施しています。   障がい者雇用促進法とは、障がいのある方の雇用安定を実現するために定められたもので、具体的には障がいのある方が働きやすいようにサポートする(合理的配慮の義務)などのルールがあります。そのため、障がいのある方の特性や能力などに合わせた求人が多く、働くうえでのサポートが得られやすいことが特徴となっています。   一般雇用 一般企業の応募条件を満たせば、誰でも応募できる求人のことです。一般企業では「障がいを開示する働き方(オープン就労)」をされる方もいれば、「障がいを開示しない働き方(クローズ就労)」をされる方もいます。   身体障がいと仕事に関するサービス・支援 ここまで身体障がいのある方の働き方について紹介しましたが、実際に「働くうえで困っていることがある」「これからの働き方に迷っている」「配慮がなかなか得られない」といったようなお悩みがあるかもしれません。そのような働くことへのお悩みを相談できる支援機関などがあります。 ここでは身体障がいのある方が受けられる支援(仕事編)の一部を紹介しますので、ぜひ活用してみてください。 ※お住まいの自治体、障がいの状況や重症度などによって受けられるサービスの内容が異なります。詳細はお住まいの自治体へご確認ください。   障がい者職業センター 都道府県に設置されている機関で、障がいのある方に対する職業リハビリテーション、就職支援、就労継続支援などをおこないます。   障がい者就業・生活支援センター 障がいのある方に対して就業面と生活面の一体的な相談・支援をおこない、自立・安定した職業生活の実現をサポートしています。   ハローワーク ハローワークには障がいのある方のための「障がい者相談窓口」があります。専門の相談員によって障がいのある方の就職相談や求人探しなど幅広いサポートが受けられます。障がい者手帳がなくても相談することはできます。 まとめ 身体障がいは私たちの生活において重要な課題ですが、その支援や理解を深めることで、社会全体がより包摂的で支援の行き届いた場所となります。身体障がい者手帳や各種の福祉サービスを活用し、自立した生活と豊かな社会参加を目指しましょう。   参考 身体障がいとは?種類や症状・仕事や就職で利用できるサービスや支援機関をご紹介|LITALICOワークス   凸凹村や凸凹村各SNSでは、 障がいに関する情報を随時発信しています。 気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!   凸凹村ポータルサイト   凸凹村Facebook 凸凹村 X 凸凹村 Instagram 凸凹村 TikTok  

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