2024.04.02

ナイツ、ウエストランド、暗闇の舞台で輝く笑い 視覚障がい者も含めた新しい漫才体験

新潟市西蒲区のイベント会社「ホイミ」が主催した漫才ライブは、異色の舞台設定で注目を集めました。ナイツ、ウエストランド、三拍子、三四郎、きしたかの、キュウ…といった実力派の漫才師6組が、暗闇の中で笑いを届けるという斬新な試みでした。

 

照明を一切落とし客席もステージも漆黒の闇に包まれる

「真っ暗にしてもらっていいですか、芸人さんの気持ちになります」と齋藤桂代表が提案したこの漫才ライブは、視覚障がいの人々も含め、誰もが同じ環境で楽しめることを目指していました。会場の「巻文化会館」は、照明を一切落とし、客席もステージも漆黒の闇に包まれました。

齋藤桂代表は、「視覚障がいの人に楽しんでもらいたいから、暗くするっていうのは演出的に面白さもあるけど、僕の気持ち的には皆さんの環境で一緒に楽しみませんか?」と語ります。このイベントは、見えない世界を経験することで新たな気づきを与え、笑いと感動を共有するきっかけとなりました。

 

暗闇で繰り広げられた漫才の新たな可能性

齋藤桂さんがこの漫才ライブを企画するきっかけとなったのは、彼の1歳下の弟である真(まこと)さんの存在でした。真さんは視覚障がいを抱えており、よくラジオを聞いている姿を見て、齋藤さんは「耳で楽しむ世界」があることに気付きました。

「(暗闇は)僕らには特殊な環境ですけど『見えない世界ってこういうことなんだ』という風に感じてもらうきっかけにも、結果的にはなるといいなと」と齋藤桂さんは述べます。しかし、このイベントの開催に向けてはまさに“暗中模索”のようでした。

「『どうやって(舞台に)出ていけばいいですか?』って言われて『蛍光テープを貼って、そこを頼りに出ていく感じになると思います』と…」「もう…ここに向けて来る感じだ」と齋藤桂さんは話します。

主催者、出演者、観客の誰もが経験したことのない暗闇での漫才ライブ。果たして、どんな舞台になるのでしょうか?この新たな挑戦は、見えない世界への新たな扉を開くことになるでしょう。

 

挑戦と不安が交錯する暗闇の舞台

開場を迎えた当日、午後3時半になると大勢の人が会場に集まってきました。来場者たちは興味津々で、暗闇の中での演出や漫才師たちの工夫に期待を寄せていました。

齋藤桂さんは、開演を前に「良く考えると『どんなになるのかな』っていうワクワクと、悪く考えると何かトラブルとかハプニングがないことを願う」と語ります。

出演者たちも会場入りし、本番前に暗闇のステージを体感しました。「あ、暗!」「怖いな」「どうしよう、これ…」という声が漏れました。

 

「センターマイクに辿り着けるかどうか」

ウエストランドの井口浩之さんは、「ちょっと思ったより真っ暗なので、みんなが今思ってるのはセンターマイクに辿り着けるかどうか」とコメントしました。

また、三四郎の小宮浩信さんも、「ラジオとかでは言葉だけでネタで笑かすっていうのはある。それと一緒じゃないっていうのは、難しいところではありますね」と述べ、未知の舞台に対する不安を口にしました。

数々のステージに立ちながらも、この暗闇の舞台は出演者たちにとって新たな挑戦であり、少し不安な様子が見受けられました。しかし、その不安がまた、新しい可能性を切り拓く一歩への勇気でもありました。

 

視覚障がい者への配慮と支援

開場の時刻が迫る中、トイレの入り口には音声案内が設置され、会場内には出演者の経歴などをまとめた点字版パンフレットが配布されました。さらに、新潟駅から会場までの送迎バスなど、安心して参加できるよう様々な環境が整えられました。

今回のライブは、申し込みがあった視覚障がい者と同伴者合わせて132人を無料で招待する取り組みが行われました。そのための費用は、クラウドファンディングで募ったもので、目標とした額の倍、100万円もの支援が集まったとのことです。

 

「見える方も見えない方も声を出して楽しんで」

午後4時、開演を前に齋藤桂さんが舞台に登場しました。「本日は皆さまに直接お礼を申し上げたく、開演直前のお時間をいただきノコノコと挨拶に出てまいりました」と述べる齋藤さん。普段は挨拶をすることはないという彼ですが、このライブが大きな支援を受けて実現したことに対する“特別な思い”が感じられました。

「見える方も見えない方も、同じこの場所で声を出して楽しんで元気になって帰っていただけたらと思います。それでは開演します」と齋藤さんが呼びかけると、ライブはいよいよ始まりました。

 

新たな舞台、後半へ

観客の期待が最高潮となる中、ライブがいよいよスタートしました。前半は通常の照明の下、6組がそれぞれ1回ずつネタを披露し、笑い声が会場を包みました。

三拍子が登場し、「エビ」「え〜っとですね、ビールに合うんです」と独自のユーモアで会場を爆笑させます。舞台袖からライブを見守る齋藤さんの姿もありました。

そして、前半最後に登場したのは、このライブを発案し最初に出演を打診した「ナイツ」。軽妙なやり取りで会場を笑いの渦に巻き込み、期待に応えました。休憩を挟んでライブはいよいよ後半へ。

ナイツの塙宣之さんは、「きょう鼻に吹き出物できてるのでありがたいなと、暗闇が。異常にみんな練習してるっていうのが面白い。賞レースの楽屋並みにみんな練習してる」とコメントし、笑いを誘います。

ナイツの土屋伸之さんも、「結構なベテランたちですけど、緊張してますよ、ちょっと」と緊張感を漂わせながらも会場を楽しませました。

 

暗闇の中で、漫才が繰り広げられました

全ての照明を落とすと、会場は完全な暗闇に包まれました。きしたかのが登場し、「どうも~きしたかのです」「すごいですね」と掛け合いを始めます。センターマイクを挟んで、2人の立ち位置もばっちりです。

「どんな子になってほしいか、元気な子だったらいいかな」「元気な子!これは簡単ですね、元気と言えばこれ、高野の娘の名前はグルコサミンだね」「やだよ!」と、笑いを誘います。暗闇の中で、出演者たちは息の合った漫才を披露します。

ナイツが登場し、「♪Can you celebrate…」「安室ちゃんと言えばこの歌ですよ」「いまだに冠婚葬祭の時にこの歌」「婚だけだよ、葬式のどのタイミングで流れるんだよ」と歌いながら笑いを誘います。耳での情報だけの漫才に、お客は声を上げて大笑いします。

そして…「うわ~すげえ、こんな感じだったんだ、眩しいですね!」全てのネタが終わり、ライブは大盛り上がりのうちに幕を降ろしました。

 

「不思議な感覚」

舞台を終えて、ナイツの塙宣之さんは「不思議な感覚でしたよ、お客さんも妙な一体感が生まれて、なんかみんな、いつもより笑いが増してたような気がします」と感想を述べました。三四郎の小宮浩信さんも「きしたかのは明るい時よりウケましたからね」と笑顔で話します。

漫才師としての力量も試されたライブ。出演者は、お客の反応に手ごたえを感じていました。塙宣之さんは「次、文字だけで楽しむライブとか、そういうのもいいんじゃない」と提案し、小宮浩信さんも「コント師もやってほしい」と話します。

 

観客も大満足の2時間

観客も大満足の2時間だったようです。東京からの一人は「初めての試みだと思うんですけど、とても楽しかったです。かえって集中できたよね、音に」とコメントし、新潟県長岡市からの別の観客は「生で直接の声、迫力あるんですよ、テレビと違って。雰囲気がびんびん伝わってきますし、隣の人と笑いあうというのは楽しいものだなって改めて思いました」と感想を述べました。さらに、もう一人の観客も「また行きたいですね、今度は地元で開催してもらいたいなと思います」と希望を表明しました。

「自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ」と齋藤桂さんは言います。「いや~終わりました。大きなトラブルがなく…よかったです」と安堵の表情を見せます。

 

『自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ』

障がいがある人もない人も、みんなで笑う。そんな理想が形になった、特別な1日でした。ただ、齋藤さんはこれで終わりにするつもりはありません。

「東京でも大阪でも他のところが『やりたい』ということであれば、まんま同じことをやってもらっても全然構わない。大事なことは、この活動が広がっていって『楽しみたいけど、どうせ自分たちはできないんだ』ってあきらめていた人たちが今回で『自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ』って思ってもらえたことが大事だなと思う」と語ります。

次はどんな仕掛けで「みんなが楽しめる」ライブをつくるのか…新潟で生まれた新しい笑いの形がこれから、さらに広がっていくかもしれません。

障がいとダイバーシティ:多様性を受け入れる社会の構築

障がいとダイバーシティについての議論は、近年ますます重要性を増しています。障がい者の声が大きくなり、彼らが社会の一員として尊重される権利が認識されるにつれ、ダイバーシティ(多様性)の概念も変化しました。

 

障がいとダイバーシティの理解

障がいは、身体的、感覚的、知的、精神的な障がいなど、多岐にわたるものです。これらの多様な状況は、ダイバーシティの一部であり、それぞれの個性や経験を豊かにします。障がいを持つ人々は、多様な視点や能力を持ち、それが組織や社会に貢献する機会を提供します。

 

ダイバーシティの推進

障がいという言葉は、単なる問題や制限ではなく、個々の豊かさや多様性を表すものとして捉えられるべきです。

ダイバーシティの推進は、障がい者の社会参加や権利保護を目指すだけでなく、彼らの多様な価値や貢献を認識し、尊重することも含みます。これにより、障がい者が自信を持ち、自分のアイデンティティを誇りに思えるようになります。

 

ダイバーシティの利点

ダイバーシティを受け入れる組織や社会は、多くの利点を享受します。障がい者の多様な視点や経験は、イノベーションや問題解決において貴重な資源となります。

また、彼らが適切なサポートを受けながら活躍することで、労働力の多様化や効率化が促進されます。さらに、障がい者への配慮や支援は、組織や社会全体の包括的な成長と発展につながります。

 

ダイバーシティの実践

ダイバーシティを実践するためには、意識改革や教育が欠かせません。偏見や差別をなくし、障がい者を包括的に受け入れる社会を築くためには、積極的な取り組みが求められます。これには、適切な法的枠組みの整備や、障がい者の声を反映した政策の策定も必要です。

障がいとダイバーシティは、社会的な包摂や成長に不可欠な要素です。障がい者が多様な視点や経験を持ち、社会で自己実現を果たすためには、ダイバーシティの概念を受け入れ、実践することが重要です。これにより、より包括的で公正な社会が実現し、誰もが尊重される場所となるでしょう。

まとめ

ライブでは、漫才師たちが暗闇の中でユーモアを繰り広げ、観客は声だけで笑いを楽しみました。そして、出演者たちも舞台を終えて感想を述べ、「自分たちも楽しんでいいんだ、楽しめるんだ」という感覚が広がったことを実感しました。齋藤さんは、今後もこの活動を広げていきたいと考えており、新たな笑いの形が生まれる可能性を示唆しています。

 

参考

ナイツやウエストランドら“暗闇の中”で漫才を「障がいがある人もない人も一緒に笑おう」 “耳で楽しむ世界”へ誘う | TBS NEWS DIG (1ページ) 

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