2024.03.29

時間が気になり休めない「時間不安障がい」とは?症状と対処法

時間不安障がいは、時間の進行に対する強迫観念や、常に時間が足りないという憂いを含むと言えます。友達が待ち合わせに遅れると、後で取り組む予定がなくなることで不安になったり、郵便局が混雑していると焦燥感に襲われ、手のひらがベタベタになるのは、典型的な時間不安障がいの症状です。

 

時間がただ過ぎ去ることを恐れる傾向

臨床心理士のケヴィン・チャプマン博士は、「問題は時間の制約にあるのではなく、自分が時間をコントロールできないという感覚です」と説明します。この感覚にとらわれると、不安に襲われ、自分が時間を無駄にしていることについて考え込んでしまい、最終的には日常のルーティンですらこなせなくなる悪循環に陥る可能性があります。

著書『The Undefeated Mind』の著者であるアレックス・リッカーマン氏によれば、「人生に意味を求める人は、時間の無駄遣いという考えに抵抗を示すことが多い」とのことです。常に目標を持ち、すべての行動に意味を見出すことで幸福や成功を追求する人は、時間がただ過ぎ去ることを恐れる傾向があります。

 

一日一分一秒がどんどん貴重になる

子どもの頃、夏休みが終わらないかのように感じたもので、大人になると時間の経過が急速に感じられるのは、単なる気のせいではないでしょう。しかし、時間以外の変化は確かです。

成長する過程で、喪失を経験し、赤ちゃんの成長を目撃し、学校の長期休暇から解放される。そして、歳を重ねるにつれて、時間の貴重さが身に染みて分かる一方で、大人としての責任と目標は増えていく。そのため、一日一分一秒がどんどん貴重になることを感じるでしょう。

 

「時間を無駄にすることを恐れて何もせずに終わってしまう」

作家のクラウディア・ハモンド氏は、大人の時間が減った主な要因として、「2008年の金融危機による個人の仕事量の急増」と「テクノロジーによる仕事とプライベートの境界線の曖昧化」を挙げています。

31歳の小学校教師、フェイ・ミッチェルは皮肉にも、スケジュールに余裕があるときに不安を感じます。「時間を無駄にすることを恐れてしまい、結局何もせずに終わってしまう」と彼女は述べます。

 

プレッシャーの大きい仕事をしている人など特に強い

身動きが取れないような感覚です。やらなければいけないことや、時間の使い方は分かっているのに、自分への期待が高すぎて手に付かないんです。濡れた髪のままベッドに座って、時間の経過をただ見つめているだけ。週に何度か、頭では遅れることを理解していても行動に移せないことがあります」。

チェンジマネジメントを専門とする心理学者で神経科学者のリンダ・ショー博士によれば、時間を無駄にしたくないという強い気持ちは、プレッシャーの大きい仕事をしている人や、1日12時間労働が日常的な個人事業主を苦しめることがあります。私もこの気持ちに共感せざるを得ません。

 

特に母親は不安を感じやすい

「スーパーママになりたかった」と語るロシェル・ロドニー=マソップ(26歳)は、ロンドンで接客業のパートをしながら双子を育てるシングルマザーです。「21歳の時に心理学を専攻中に妊娠した時、本当にインターンシップと子育てを同時にできると信じていました。しかし、卒業後にアパレル・マーチャンダイジングの仕事を始めてからは、子育て、長時間の労働と通勤、家の改築を同時進行で行うことが不可能に思えてきました。どんなに時間を効率的に使っても、1日24時間では足りません」

ショー博士によれば、家族が増えても時間は増えないため、特に母親は不安を感じやすいとのことです。女性は普段から時間のプレッシャーを感じているだけでなく、周囲の人々の精神的な負担を引き受けることが多いです。子どもや親、パートナーや兄弟姉妹の不安を一手に受け止めるのは一般的に女性ですから」。

常に危機感に駆られていることは健康にも悪影響を与える

時間に対する不安がメンタルヘルスに与える影響は深刻で、常に危機感に駆られていることは生活の質だけでなく健康にも悪影響を与えます。ロシェルの場合、自分の人生をコントロールできない焦燥感が仕事にも波及し、自信を持てなくなりました。

時間が気になっていると体が麻痺するような感覚や不眠が起こりますが、それでも未完了のタスクについて常に考えてしまい、貴重な時間を無駄にしてしまいます。このような時間の無駄遣いに対する嫌悪感は、人間関係にも悪影響を与えます。

予期せぬ出来事に喜べなくなり、友人や家族との関係から遠ざかってしまいます。その理由は、自分で決めたスケジュールに遅れが出ることを避けたいからです。

 

コルチゾール反応を加速させ悪影響を及ぼす可能性

ショー博士によれば、どんな種類の不安障がいもコルチゾール反応を加速させ、体内の様々なプロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。少量のコルチゾールは集中力の維持に役立ちますが、慢性的なコルチゾール分泌の増加は神経伝達物質の働きを抑制し、メンタルヘルスに悪影響を与える恐れがあります。

ドーパミンの不足は「やる気がなくなり、楽観的でいることができなくなります」と言います。一方、セロトニンは気分、睡眠、食欲、感情の調節に不可欠であり、不足すると気分のむらが激しくなり、睡眠が乱れ、イライラしやすくなります。さらに、コルチゾール値が慢性的に高くなると、うつ病、高血圧、心疾患のリスクが高まるということも、これまでの研究で証明されています。

 

時間が気になって休めない人向けの「時間の上手な使い方」

  • 不安な気持ちをアファメーションで置き換える

チャプマン博士によれば、時間や日にちが足りないという強迫観念を手放すためには、現実的で前向きなアファメーションを使いましょう。「この時間では1つのことしかできないけれど、その1つはしっかりやろう」といった言葉で自分を励ましてみましょう。

 

  • 思い切ってタスクを減らす

ショー博士によると、私たちは所要時間を短く見積もりがちです。そのため、やらなければならないことを全部書き出すよりも、その中から2~3個選んでその日中に終わらせることにコミットする方が効率的です。それ以外のタスクは明日に回しましょう。

 

  • 問題はひと晩寝かせる

ショー博士によれば、時間が気になって眠れないときは、考えていることを紙に書き出し、翌朝に対処することを心がけましょう。「眠っているわけでもないが、まだ完全に目覚めていない」という状態で、脳は軽い瞑想状態に入り、アルファ波を発しています。この状態でさまざまな疑問に対する答えが浮かぶこともあります。散歩中や空想中、窓の外を眺めているときや自分の呼吸を数えているときに、この状態に入りやすいかもしれません。

 

時間不安障がい:時間に対する恐怖との戦い

  • 時間の恐怖とは

時間不安障がいは、時間に対する異常な恐怖や不安を特徴とする精神疾患の一種です。患者は時間が過ぎることに対して強迫観念を抱き、時間の管理や時間の無駄遣いに対する異常な不安を感じます。友人の待ち合わせに遅れるだけでなく、日常生活のさまざまな場面で時間に対する恐怖が現れることがあります。

 

  • 症状と影響の詳細

時間不安障がいには、様々な症状があり、それらが日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。以下に、それぞれの症状とその影響は以下の通りです。

 

  • 強迫観念

時間不安障がいの患者は、時間に対する不合理な恐怖を抱きます。たとえば、少しでも予定より遅れることが不安や恐怖を引き起こす場合があります。この強迫観念は、患者が日常生活で時間に対する過度のプレッシャーやストレスを感じる原因となります。さらに、時間管理に対する異常な執着が生じ、タスクを完了することに過度に集中し、他の重要な活動や関係を犠牲にすることがあります。

 

  • 焦燥感

時間不安障がいの患者は、予期せぬ出来事や待ち時間に対する焦燥感が強く現れることがあります。この焦燥感は、日常生活での予定外の変化や遅延に対する過剰な反応を引き起こし、患者の心理的および身体的な健康に影響を与えます。また、焦燥感が持続すると、ストレスや不安が増大し、うつ症状の発現を促進する可能性があります。

 

  • 身体的症状

時間不安障がいにより、身体的な症状が現れることがあります。不安やストレスにより、患者は身体的な反応を経験し、手の震えや心臓の鼓動の速さなどが挙げられます。これらの身体的症状は、患者の日常生活における快適さや能力に影響を与え、日常的な活動や社会的関係の維持を困難にします。

 

これらの症状と影響は、時間不安障がいが個々の患者に及ぼす深刻な影響を反映しています。時間に対する過度の恐怖と不安は、日常生活全体にわたって患者の心理的および身体的な健康を脅かす要因となります。そのため、時間不安障がいの治療と管理は重要であり、早期の介入と適切な支援が必要です。

 

対処法と治療の詳細

時間不安障がいを管理するためには、様々なアプローチや治療法があります。以下に、それぞれのアプローチ方法を見てみましょう。

 

  • 認知行動療法(CBT)

CBTは時間不安障がいを治療するための主要な方法の一つです。この治療法では、患者は時間に関する不合理な信念や考え方を認識し、それらを変えることを学びます。具体的には、時間に関する恐怖や不安を引き起こす具体的な事象や状況を特定し、それに対する肯定的な思考や行動を身につける訓練を行います。また、タイムマネジメント技術やストレス管理のスキルも学び、時間に対する過度なプレッシャーや不安を軽減します。

 

  • リラクゼーション法

リラクゼーション法は、時間不安障がいの症状を軽減し、心身のリラックスを促すのに役立ちます。マインドフルネス瞑想や呼吸法、プログレッシブ・マッスル・リラクセーションなどのテクニックを習得することで、患者は不安やストレスを和らげ、時間に対する恐怖を軽減することができます。これらのリラクゼーション法は、日常生活での実践が比較的容易であり、患者が自宅で自己管理することも可能です。

 

  • 薬物療法

重度の時間不安障がいの場合、医師は抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法を検討することがあります。これらの薬物は、不安や恐怖を軽減し、患者の症状を管理するのに役立ちます。ただし、薬物療法には副作用や依存のリスクがあるため、医師の指導のもとで適切な薬物の選択と管理が必要です。また、薬物療法は通常、他の治療法と併用されることが推奨されます。

 

これらのアプローチや治療法は、時間不安障がいの管理と症状の軽減に効果的です。しかし、個々の患者に最適な治療法は異なるため、医師や専門家との相談が重要です。早期の診断と適切な治療を受けることで、患者は時間に対する恐怖から解放され、充実した生活を送ることができるでしょう。

まとめ

時間不安障がいは深刻な精神疾患であり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。しかし、適切な治療法や対処法を用いることで、症状を管理し、生活の質を改善することが可能です。早期の診断と適切な治療を受けることが重要です。

 

参考

時間が気になって休めない…「時間不安障がい」の現実と対処法(ウィメンズヘルス)Yahooニュース

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