2024.04.01

字を上達させるため「何度も書く」は良くない?発達障がいの息子 ノートやペンなどの道具を工夫

息子が発達障がいと高IQを持つ「2E」の特性に対処するため、学校の授業に適応できない状況に直面しました。そこで、「学校での勉強よりも、人との交流や遊びに時間を割くことが大切だ」と息子に提案しました。

同時に、「自宅では自分のペースで学び、興味のある分野に深く入ることができる」と伝え、彼もそれを受け入れてくれました。

 

書いた本人も「わからない」

自宅学習では、彼の興味を引き出すために、公立小学校の少し上の学年の教科書を活用しました。特に算数に興味を持っていた息子は、予想以上に学習が進んでいき、その成長を見守ることができました。この段階では、私の頭の中には「中学受験」の考えはまったくありませんでした。

自宅での先取り学習を始めた際、息子の字の汚さが気になりました。発達障がいによる書字の困難さは一般的なものであり、息子もその傾向が強く表れていました。時には、彼の文字を見ても何を書いているのかわからないこともありました。そして、後で見直して「わからない」と言うこともよくありました。

 

「何度も何度も書く」指導をするが

私は当初、「字は練習すれば誰でもうまくなる」という考えでした。自分自身が子供の頃に書道を習っており、美しい字が大人になってからの利益になると感じていました。そのため、息子には典型的な「何度も何度も書く」指導をしました。しかし、これは大きな失敗でした。息子はますます嫌がり、机に向かうことすら嫌悪する日もありました。

発達障がいがある子供は、いくら練習しても上手になれないことがあります。私はその当時、自分の勉強不足が息子を苦しめていることに気づき、「息子の将来のために良かれと思って」行っていたことが実は逆効果だったことに気づきました。これは今でも後悔しています。以降、子供が苦しむのは、親の知識不足が原因だと考え、より学び、理解する努力を重ねることを心がけています。

 

複数の障がいの可能性を考える

息子の字が汚い理由について、以下の三つの要素が掛け合わさっている可能性があると仮説を立てました。

  • ディスグラフィア(書字障がい)

 字がマス目から大きくはみ出したり鏡文字になったりする学習障がい。理由は不明ですが、この特徴が息子の書字に影響を与えている可能性があります。

 

  • 注意力の困難

 ADHD(注意欠陥・多動性障がい)の特徴で、複数の動作が必要な際に注意力をコントロールできず、書字への注意が減り、乱雑な字になる可能性があります。

 

  • DCD(発達性協調運動障がい)

 複数の動作を連動させるのが苦手で、細かい作業に苦手さを示す障がい。特に字を書くことや細かい筆記作業に影響を与える可能性が高いです。

 

特にDCDは息子の他の活動にも影響を与えており、縄跳びや自転車の操縦、キャッチボールなど複数の動作の連動が必要なことが苦手なようです。

「何度も書かせる」ことが息子にとって適切なアプローチではないことは理解しています。そこで、発達障がい支援の基本である「変えるべきは本人ではなく環境」という考えに基づき、私は道具の工夫をしました。

 

カラーマスノートを使用した結果、2Eによくみられる反応

カラーマスノートを使用した結果、息子の字は奇麗になりましたが、その速度が著しく遅くなったことが課題となりました。最初はカラーマスノートを使うことで、文字の一画一画の位置を分かりやすくし、息子の書字のサポートになりました。しかし、時間が経つにつれて、息子の鉛筆が重くなり、漢字の練習などに抵抗感を示すようになりました。これは2Eに多い「シンプルで単純な反復作業への抵抗感」の一例です。

そこで私は、カラーマスノートを有効活用するため、歴史の学習と書字の練習を組み合わせました。私が歴代総理大臣や徳川家の全将軍名、日本の年号をカラーマスノートに書き、息子にそれを手本に書かせることにしました。しかし、このアプローチも新たな問題を引き起こしました。

 

手本を元に字を書くと「こだわり行動」がみられるように

息子は私の字を手本に書くたびに、時間がかかるようになりました。私の手本と自分の文字が異なると、すべてを消しゴムで消してからゆっくりと書き直すようになったのです。これはASD(自閉スペクトラム症)の特徴である「こだわり行動」によるもので、「適当に書いていいんだよ」という曖昧な表現が伝わらないほど、彼の理解が苦手でした。

同じ時期、息子にコクヨの「しゅくだいやる気ペン」を試してみました。このペンは特殊なアタッチメントを使って、学習時間に応じてパワーがたまり、アプリでご褒美が獲得できるというものです。私が息子のために始めた活動である発達障がい動画メディア「インクルボックス」でも取材され、大ヒット商品となっています。

 

「しゅくだいやる気ペン」でもこだわり行動

息子はこのペンの使用において、「パワーをためるには鉛筆をノートから離しちゃいけない」という誤解に取り憑かれ、そこで「こだわり行動」を発揮しました。実際にはそのような必要はありませんが、彼は左手で消しゴムを使用することにこだわり、鉛筆とノートの接点を維持するために左手を利用するようになりました。

しかし、左手での消しゴムの使用に慣れていないため、うまく消せず、結果的にノートがグシャグシャになることがしばしばでした。「右手で消しなさい」と指示しても、彼は聞く耳を持ちませんでした。これもまた、手段と目的が逆転してしまった例です。

 

こだわり行動に共感を持って接する

息子の「こだわり行動」を大切にしたいという考えに共感します。現代社会では、効率性や速さ、正確さが重視される傾向がありますが、その中で息子が自分らしく生きることが息苦しくならないように、彼の個性を尊重し支えていくことが重要です。

私も息子がネガティブな感情を抱くような場面で、「こだわってよいし、偏ってよいし、とんがってよい。君に合う環境をお父さんが見つけるからね」というような声かけを意識的に行うことで、彼の自信と自己肯定感を育むことができると思います。

 

文字を書くだけでヘトヘトになってしまう

カラーマスノートから方眼ノートへの切り替えは、息子の文字を整える上で効果的なアプローチだったようです。しかし、文字を書くことに集中すると疲れてしまうという問題もあるようです。このような課題に対処するために、学校に合理的配慮を求めることは適切な選択だと思います。息子の発達障がいに起因するストレスを軽減し、彼がより良い学習環境で成長できるようサポートすることが重要です。

息子の受験直前の模試の解答用紙を見せてもらうと、彼の努力と苦労がよくわかります。文字を書くことによる疲労でいつもヘトヘトになっていたという状況を考えると、記述問題の解答が書けなかったことも納得できます。私も彼の頑張りに敬意を表します。

彼が記述問題を解けなかったのは、文字を書くことが苦手だからという理由だけではないことに気づきます。私の発達障がいへの理解が浅かったため、彼の状況を正しく把握できていなかったのです。

発達障がいを持つ子供たちにとって、解答できないことはできないということではなく、解答方法や支援の仕方を工夫すれば可能性があります。彼の能力や可能性を見逃さず、より適切なサポートを提供することが大切です。

発達障がいとは何か?原因、症状、支援方法について知ろう

発達障がいは、個々の発達プロセスにおける異常なパターンによって特徴付けられる神経発達の障がいです。この障がいは、幼児期から始まり、社会的、学校的、職業的な機能に影響を与えることがあります。発達障がいにはさまざまな種類があり、その特徴や重症度は個々の人によって異なります。ここでは、一般的な発達障がいの種類、原因、症状、そして支援方法について説明します。

 

発達障がいの種類

  • 注意欠如・多動性障がい (ADHD)

注意力の欠如、多動性、衝動性の問題が特徴であり、学業や社会的な機能に影響を与えることがあります。

 

  • 自閉スペクトラム障がい (ASD)

社会的な相互作用やコミュニケーションの困難、狭い興味関心、反復的な行動などが見られます。

 

  • 学習障がい

読み書きや計算などの学習に関する問題があります。ディスレクシアやディスグラフィアなどが代表的な学習障がいです。

 

発達障がいの原因

  • 遺伝的要因

発達障がいは遺伝的な影響を受ける可能性があります。家族歴や遺伝子の異常が関連していることがあります。

 

  • 環境的要因

妊娠中の母親の健康や出生時の合併症、早産などの環境的要因が発達障がいのリスクを増加させることがあります。

 

発達障がいの症状

  • 注意欠如・多動性障がい

注意散漫、衝動性、多動性、組織的な問題、時間管理の困難などが見られます。

 

  • 自閉スペクトラム障がい

社会的な相互作用やコミュニケーションの困難、狭い興味関心、反復的な行動などが見られます。

 

  • 学習障がい

読み書きの遅れ、計算能力の低下、理解力の不足などがあります。

 

発達障がいの支援方法

  • 個別化された教育プラン

学校や教育機関は、個々の子供のニーズに合わせた支援を提供することが重要です。

 

  • 専門家の支援

小児科医、心理学者、言語聴覚士などの専門家が、診断や治療のための支援を提供します。

 

  • 家族のサポート

家族は子供をサポートし、彼らのニーズに合わせた環境を提供することが重要です。

 

発達障がいは個々の人によって異なるため、支援方法も個別化される必要があります。理解と支援が十分に行われることで、発達障がいを持つ人々がより健全な生活を送ることができるようになります。

まとめ

子供に合わせた支援方法を模索することで、障がいへの向き合い方や努力する方向が判明することは本人にとっても、家族にとっても良いことだと思います。同じ障がいで悩んでいる親御さんに希望を与えるでしょう。

 

参考

発達障がいの息子の字の汚さ克服へ「何度も書く」は大失敗 ノートやペンなど道具を工夫 | ヨミドクター(読売新聞) 

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