2024.04.02

障がい者就労 4月から雇用率引上げ 啓発に注力

4月から、民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられることになりました。これにより、障がい者雇用促進法の改正が施行されます。市内の就労支援センターの担当者は、「実際の仕事の質もより重要になってくる」と述べています。同時に、市健康福祉局も企業への啓発活動に注力しています。

 

神奈川県内では雇用率が全国平均よりも低い水準

この法律は、障がいの有無にかかわらず、誰もが希望や能力に応じて社会参加を果たせるよう促す「共生社会」の理念に基づいています。従業員40人以上の事業主は、1人以上の障がい者を雇用する義務が課されます。

しかし、神奈川県内では実際の雇用率が全国平均よりも低い水準にとどまっています。この問題に取り組むため、神奈川労働局では特に中小企業に対する支援を強化しています。

 

長時間の勤務が難しい障がい者の雇用を拡大するための特例が導入

一方、市健康福祉局も企業に対する啓発活動に積極的に取り組んでいます。出前講座などを通じて、企業にとって障がい者をどのように雇用すれば良いかを理解してもらうことが重要視されています。

改正により、長時間の勤務が難しい障がい者の雇用を拡大するための特例が導入されました。これにより、以前は週20時間以上働けない人は算定できませんでしたが、10時間以上であれば0.5人として算定できるようになります。

精神障がいを抱える人々が主に利用する市内のある就労支援事業所では、「20時間のハードルは高く、それができるのは一握りです。しかし、10時間ならば多くの人が力を発揮できるため、門戸が広がります」と担当者は喜んでいます。

 

仕事のやりがいや成長の機会が重要

横浜西部就労支援センターの担当者は、「雇用率だけに焦点を当てると、とにかく雇うことが重視され、その後のサポートが疎かになります。在籍していても仕事を与えられないケースもあるため、仕事のやりがいや成長の機会が重要です。共生社会を実現するためには、企業も障がい者雇用を負担ではなく、戦力として位置付けるべきです」と警鐘を鳴らしています。

この改正には、障がい者雇用の実務に関わる重要な事項が含まれており、企業にとって具体的な対応が必要になる内容となっています。

 

主な改正点は大きく3つ

主な改正点は大きく3つあります。まず、法定雇用率の引き上げと雇用を義務付けられる対象企業の拡大です。今回の改正では、法定雇用率が現在の2.3%から2024年4月から2.5%へと引き上げられます。

さらに、2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げられる予定です。また、雇用を義務付けられる企業の対象も変化し、現在の従業員43.5人以上から、2024年4月からは40人以上、2026年7月からは37.5人以上へと拡大されます。

次に、雇用率算定対象となる障がい者の拡大があります。これまでは、週20時間以上働けない人は算定できませんでしたが、今回の改正では10時間以上であれば0.5人として算定できるようになります。この変更により、さらに多くの障がい者が雇用の対象となります。

最後に、障がい者雇用報奨金・助成金の見直しが行われます。これにより、障がい者雇用を促進するための支援制度が改善され、企業が積極的に雇用を推進するための補助金や助成金が提供されます。

 

障がい者の雇用が進まない場合さまざまな問題が生じる

このような改正により、障がい者雇用に関する取り組みがさらに進展し、社会全体での理解と支援がより重要になってきます。企業は、法定雇用率の引き上げに備えて、積極的な雇用促進策を検討し、障がい者が活躍できる環境づくりに取り組むことが求められます。障がい者の雇用が進まない場合、さまざまな問題が生じます。

まず、障がい者の雇用率が法定要件を満たさない場合、企業は罰金を支払う必要があります。具体的には、不足人数1人当たり月額50,000円の障がい者雇用納付金が徴収されます。さらに、ハローワークから行政指導を受けることになります。この指導は、雇用納付金を支払っていても免れることができません。

 

厚生労働省が定める基準を満たさない場合

また、厚生労働省が定める基準を満たさない場合、企業は2年間で障がい者を雇用する計画を提出するよう求められます。これには、実際の雇用率が全国平均未満でかつ5人以上の不足がある場合や、10人以上の不足がある場合、法定雇用率に基づいて全く障がい者を雇用していない場合などが含まれます。

計画の提出後、1年目の12月に計画の進捗確認が行われます。計画の実施状況が改善されない場合、企業には計画の適正実施を勧告されます。最終的に、計画に基づいた雇用状況の改善が見られない場合、企業名の公表という厳しい措置が取られる可能性があります。企業名が公表されることは、その企業にとって大きなリスクとなります。

 

戦略的に障がい者雇用に取り組む必要

今回の改正は、これまでの0.1ポイント程度の引き上げと比べて、障がい者雇用の促進に国がかなりの注力をしていることを示しています。2026年以降も更なる法定雇用率の引き上げが予想され、企業の社会的責任が拡大することが期待されます。

このため、単なる一時的な対応ではなく、戦略的に障がい者雇用に取り組む必要があります。以下に、その具体的な取り組みのポイントを3つ挙げます。

 

  • 中期的な人員計画に障がい者雇用を組み込む

3~5年の人員計画に障がい者の採用計画を組み込むことで、増員が必要なタイミングを見える化し、計画的な新たな障がい者の受け入れに向けた業務や環境の設定、募集活動を行うことができます。

 

  • 短時間労働の障がい者の雇用を考える

改正により、短時間勤務希望の障がい者を雇用しやすくなります。特に、短時間しか就業できない障がい者に対して、柔軟な雇用条件を提供することが可能です。

 

  • 支援機関を積極的に活用し、雇用する障がい者の支援体制を構築する

就職を希望する障がい者は、様々な支援機関のサポートを受けています。企業がこれらの支援機関を活用することで、障がい者の採用から職場定着までの様々な支援を受けることができます。特に、ハローワーク以外の支援機関を活用することで、より専門的な支援を受けることが可能です。

 

これらの取り組みを通じて、企業は社会的責任を果たしつつ、多様な人材を活かした効果的な組織づくりを進めることができるでしょう。

 

法的義務だけでなくポジティブな思考で取り組むことが重要

国が法的枠組みを強化し、障がい者雇用の促進に向けた取り組みを強化する中、企業においても積極的な姿勢で障がい者雇用に取り組むことがますます求められます。法的義務だけでなく、ポジティブな思考で取り組むことが重要です。

障がい者雇用は、企業にとってだけでなく、社会全体にとってもプラスの影響をもたらします。障がい者の多様な能力や経験を活かすことで、企業の多様性と創造性が向上し、新たな価値を生み出すことができます。さらに、障がい者に働く機会を提供することで、社会的包摂が促進され、より包括的な社会が実現されます。

企業がポジティブな思考で障がい者雇用に取り組むためには、以下のようなアプローチが有効です。

 

  • 価値観の変革

障がい者雇用を単なる法的義務ではなく、企業の価値観や文化の一部として捉えることが重要です。障がい者が多様性の一部として認められ、その個々の能力や才能が評価される文化を築くことが必要です。

 

  • リーダーシップの発揮

上層部やリーダーが障がい者雇用に対する積極的な姿勢を示し、その重要性を従業員に伝えることが重要です。リーダーシップの下で、障がい者雇用に関する取り組みが推進されることで、組織全体がその価値を共有し、実践することができます。

 

  • 社内教育と意識啓発

従業員全体が障がい者雇用の重要性やメリットを理解し、その取り組みに参加できるようにするために、定期的な社内教育や意識啓発活動が必要です。これにより、偏見や誤解が解消され、障がい者への理解と支援が深まります。

 

企業が積極的な姿勢で障がい者雇用に取り組むことで、社会的責任を果たし、組織の成長と持続可能な発展を実現することができます。

障がい者と健常者の賃金格差:課題と解決策

障がい者と健常者の間には、多くの場面で賃金格差が存在します。この格差は、経済的不平等や社会的包摂の課題として広く認識されており、解決に向けての取り組みが求められています。

 

格差の背景

障がい者の雇用における賃金格差は、様々な要因によって引き起こされています。

 

  • 能力やスキルの見落とし

障がい者の能力やスキルが見過ごされ、健常者と同等のポジションに就けない場合があります。これにより、同じ仕事をしていても報酬が低くなることがあります。

 

  • 就業機会の制限

障がいにより一定の職種や業務に制約がある場合、選択肢が限られてしまい、それに伴って報酬も低くなる傾向があります。

 

  • 就業環境の適応

障がい者が就労する際には、適切な支援や調整が必要となります。これにより、企業側が追加の負担を感じ、賃金の低下につながることがあります。

 

格差解消のための取り組み

障がい者と健常者の賃金格差を解消し、公平な雇用環境を実現するためには、以下のような取り組みが必要です。

 

  • 教育と意識啓発

障がい者に対する偏見や誤解を減らし、能力やスキルに基づいた評価が行われるよう、社会全体での教育と意識啓発が重要です。

 

  • 適正な職場環境の整備

障がい者の特性やニーズに合わせた職場環境の整備が必要です。適切な支援やアクセシビリティを提供することで、障がい者も能力を十分に発揮できる環境が整います。

 

  • 法的規制の強化

障がい者の雇用を促進し、賃金格差を解消するためには、法的規制の強化が不可欠です。障がい者雇用の義務化や賃金の公平性を保証する法律や規制の整備が必要です。

 

  • 企業のリーダーシップ

企業のトップが障がい者雇用に対する積極的な姿勢を示し、社内での取り組みをリードすることが重要です。障がい者雇用に対するリーダーシップがあれば、組織全体がその重要性を理解し、実践することが可能になります。

まとめ

障がい者と健常者の間の賃金格差は、社会の包摂と経済的な公平性を求める上での大きな課題です。適切な取り組みが行われることで、障がい者も能力を十分に発揮し、健常者と同等の待遇を受けられる社会の実現が期待されます。

 

参考

【タウンニュース中区・西区版】 障がい者就労 4月から雇用率引上げ 市も企業啓発に注力

 

2024年4月障がい者の法定雇用率引き上げ、その対応とは?

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