2024.04.02

統合失調症とは?誰にでも発症の可能性がある疾患 症状、原因、回復への道のり

統合失調症は、広く知られている病名ではありますが、その実態について理解されている人は少ないかもしれません。

しかし、この病気は非常に頻繁に起こるもので、周囲の人々が理解を示すことが重要です。ハウス加賀谷さんは、統合失調症の当事者として、自身の経験をもとに、病気と向き合う方法を考えています。

 

誰にでも発症の可能性がある疾患

統合失調症は若い人によく見られ、発症する可能性が高い時期にあります。その原因はまだ完全に解明されていませんが、誰にでも発症の可能性がある疾患です。松本ハウスのハウス加賀谷さんも、中学生の頃にこの病気を発症しました。

中学2年生の1学期の終わりごろ、ハウス加賀谷さんが統合失調症を発症した瞬間を振り返ると、その日の出来事が鮮明に思い出されます。「授業中、先生が後ろの女子生徒を叱責していました。彼女が下敷きで匂いを遮るような行動をしているとのことでした。私はその様子を見て、自分が臭いのではないかと思いました。その瞬間から、幻覚や幻聴に苦しむ日々が始まりました」と加賀谷さんは振り返ります。

 

統合失調症には陽性症状と陰性症状の両方がある

しかし、現在は毎日の服薬により寛解状態にあります。コンビを組む松本キックさんは、加賀谷さんの病気を受け入れ、20年以上にわたって変わらぬサポートを提供しています。「精神疾患を抱える人々を受け入れる社会はまだ進化途中です。知識不足がその理由です。まずは周知活動を通じて理解を深めることが重要です」と松本さんは語ります。

統合失調症には、陽性症状と陰性症状の両方があります。陽性症状は、実際には存在しないものを感じたり信じ込んだりする症状で、幻聴や妄想がその代表例です。例えば、見知らぬ人が自分を監視していると感じたり、実際にはない悪口が声として聞こえることがあります。また、自分の考えが他人にコントロールされていると感じたり、話が脱線してしまうこともあります。これらの症状は薬物療法で比較的治療が可能です。

 

陰性症状では意欲の低下や感情の鈍化が主な特徴

一方、陰性症状は、通常の状態が低下したり欠如したりする症状であり、意欲の低下や感情の鈍化が主な特徴です。喜怒哀楽の表現が乏しくなり、興味や関心が薄れていくこともあります。

部屋の掃除や身なりの管理に無関心になったり、社会からの引きこもりを選ぶこともあります。これらの症状は薬物療法だけではなく、精神的な支援や社会的な支援も必要とされます。

統合失調症における主要な症状の一つである「認知機能障がい」は、個人の認知機能の低下を伴います。認知機能とは、情報の処理や記憶、注意、計画立案、判断などを含む心理的なプロセスのことであり、これらの機能が低下することで、日常生活に支障をきたすことがあります。

例えば、新しい情報を覚えることが難しくなり、作業の途中で何をしていたのか忘れてしまうことがあります。注意力の低下により、他のことに意識が移ってしまったり、必要のない情報に気を取られてしまったりすることもあります。

 

計画を立てて実行する能力が低下

認知機能の低下は、日常生活のあらゆる場面に影響を与えます。例えば、仕事や学業において新しいタスクを遂行することが難しくなり、計画を立てて実行する能力が低下します。

また、社会的な場面でも、他者とのコミュニケーションが困難になることがあります。判断力の低下により、状況を適切に判断できなくなり、適切な行動が取れなくなることもあります。

統合失調症の患者における認知機能障がいは、その重症度や程度に個人差があります。しかし、これらの症状は病気の一部であり、本人や家族、医療専門家が適切な支援を提供することで、日常生活における障がいを軽減することができます。

 

中学2年生の時に発症した方の歩み

10年にわたる闘病の末、不安な状況との向き合い方を見出した例もあります。統合失調症を発症したのは中学2年生の時で、その後、さまざまな症状に苦しむこととなりました。常に不安であり、幻聴や幻覚に苦しみ、周囲の人々との関わりも辛く感じていたそうです。

その苦悩は、家族にも波及しました。特に母親は、状態を見てどう対応すれば良いのか分からず、不安と戸惑いが募っていました。毎日泣きながらも、良くなる兆しを見出せずに不安を感じていたそうです。

 

漫画で自身の感情や経験を客観的に表現する方法を見つける

しかし、2年半前から漫画を描き始めたことで、変化が現れました。自分の日々の感じたことや苦悩を漫画に描くことで、家族や医師とのコミュニケーションを深めるようになりました。その中には、人と接する際に感じる不安も率直に描かれています。

このような体験を通じて、自身の感情や経験を客観的に表現する方法を見つけました。そして、家族や医師とのコミュニケーションを通じて、支え合いながら不安な状況と向き合っているのです。

漫画を通じて、家族は初めて彼女が抱える不安や恐れを理解することができました。漫画には「家族に迷惑をかけてはいけない」「家族は私のことが面倒くさい」という内面が率直に描かれており、「ひたすらごめんなさい」という言葉が繰り返し登場します。

自身も漫画を通じて、自分の病気を客観的に見つめることができるようになりました。その漫画がクリニックのサイトに掲載されることになったとき、大きな転機が訪れました。自分の作品を読んでくれる人がいることで、自分の存在が認められ、生きているという実感を得られたそうです。この経験は彼女に自信や肯定感を与え、以前よりも症状が落ち着いてきたと感じています。

今では、自分の病気と向き合いながら、社会に参加し、人としての経験を積み重ねることを目指しています。彼女の言葉からは、自立と前向きな成長への意欲が感じられます。

 

「リカバリー」という概念

統合失調症において、「リカバリー」という概念が重要視されるようになっています。リカバリーとは、精神障がいのある人が自らの生き方を主体的に追求し、自己の希望や夢を実現することを指します。症状の完全な消失ではなく、本人の意思と周囲の支援によって、充実した生活を築いていくことが目指されています。

リカバリーの重要性を認識し、それを支援するために、精神科リハビリテーションや薬物療法が行われています。これらの治療は、本人が自己実現を追求するための基盤を提供し、国際的な治療指針となっています。

加賀谷さんは、自身のリカバリーの軸として「お笑い芸人であること」を掲げています。病気の影響で入院した後も、お笑い芸人としての復帰を目指し、その思いを貫いています。プレッシャーや困難さも感じながらも、「やってやる」という強い意志で前進しています。

評論家の荻上さんは、社会において統合失調症の当事者が受け入れられる場所をつくることの重要性を指摘しています。社会全体がリカバリーを支援し、当事者が自己実現を果たすための環境を整えることが求められています。

 

「見えない障がい」

統合失調症は他の精神疾患と同様に、「見えない障がい」として苦しむことがあります。病気そのものが本人に苦痛をもたらすだけでなく、無理解な社会がさらに当事者を追い詰めることもあります。具体的には、統合失調症の入院率が高いため、社会との接点が奪われやすいことが挙げられます。

また、学校や職場においては、差別や偏見に直面したり、就労の機会が限られたり、休職後の復帰が難しい場合もあります。こうした社会的なハードルが統合失調症の当事者にとって課題となります。したがって、病気そのものへの対処だけでなく、社会全体が受け皿となる支援をどれだけ提供できるかが重要です。

 

精神疾患の治療には時間がかかるが焦る必要はない

統合失調症が回復してくると、多くの人が「働きたい」という気持ちに駆られます。しかし、就職活動や職場での対応に不安を感じる声が寄せられています。

20代の方は、「働きたい」という気持ちにもかかわらず、就活中に自分の考えがマイナスの方向に向かってしまい、自信を持って話すことができないと悩んでいます。加えて、履歴書を送ってもなかなか採用されない厳しい現状に直面しています。

加賀谷さんは、このような声に対して焦らずに前向きに取り組むことを応援しています。自身も精神疾患と闘いながらコンビを復活させるまでに10年を要した経験を持ち、その過程が自身の人生にとって必要なものだったと振り返ります。

精神疾患の治療には時間がかかることが多いため、焦る必要はないと述べます。絶対に諦めず、自分のタイミングで働きたいという気持ちを大切にすることを助言しています。

 

統合失調症を隠すのは差別される恐れがあるため

一方で、統合失調症を公表せずに働く人もいます。30代の方は、周囲の反応や対応に不安を感じ、病気のことを正直に話せないことに悩んでいます。自身が冷たい態度をとられると動揺してしまうなど、心理的な負担があります。このような状況下での仕事はつらく、精神的なサポートが求められます。

荻上さんは、統合失調症を公表しても差別されない社会を作る必要性を強調しています。多くの人が統合失調症を隠してしまうのは、就職などの段階で差別される恐れがあるためです。

そのため、社会全体が差別のない環境を作ることが重要だと荻上さんは考えています。また、統合失調症の早期発見と治療の重要性も指摘されています。症状が強く生活に支障をきたしている場合や、妄想や幻聴などが疑われる場合は、専門家に相談することが重要です。早い段階で治療を始めることで、より良い回復が期待できます。

統合失調症:理解と支援が必要な精神疾患

統合失調症は、精神疾患の一つであり、その症状や影響は個人によって異なります。一般的には、現実感覚や思考、感情、行動に影響を及ぼす症状が特徴です。この疾患は、社会的な機能の低下や日常生活の困難を引き起こすことがあり、しばしば患者とその家族に大きな負担をかけます。

 

症状と影響

統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」に大別されます。陽性症状には幻聴や妄想、思考の混乱、感情の鈍麻などが含まれます。一方、陰性症状は、意欲の低下、社会的撤退、感情の鈍化などが見られます。これらの症状は、日常生活における様々な活動に支障をきたす可能性があります。

統合失調症はまた、「認知機能障がい」と呼ばれる問題も引き起こすことがあります。これは、記憶力や集中力、計画能力、判断力などの認知機能の低下を指します。その結果、学業や職場でのパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。

 

支援と治療

統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会的治療の両方が一般的に使用されます。薬物療法は、症状の管理や軽減に役立ちます。一方、心理社会的治療は、患者が日常生活でのスキルを向上させ、社会的な関係を構築し、より良い生活を送るための支援を提供します。

 

社会的な挑戦と理解の必要性

統合失調症の当事者は、しばしば社会的な偏見や差別に直面します。これは、病気に対する誤解や無知から生じるものであり、患者やその家族にさらなる苦痛をもたらします。統合失調症に関する適切な教育と理解が重要であり、公衆意識の向上が必要です。

また、社会全体での支援体制の構築も重要です。統合失調症の当事者が社会に積極的に参加し、自己実現を果たすための環境が整えられることが求められています。

まとめ

統合失調症は、複雑な精神疾患であり、個々の経験や症状は異なります。適切な支援と理解が必要であり、薬物療法や心理社会的治療を通じて、患者がより良い生活を送るためのサポートが提供されるべきです。また、社会全体での偏見や差別をなくし、統合失調症の当事者が社会に参加し、自己実現を果たすための環境を整えることが重要です。

 

参考

統合失調症を知っていますか? 症状と回復への道のり - 記事 | NHK ハートネット

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