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聴覚障がい者が能登半島地震で直面する壁 どのように向き合うのか

地震や津波などの災害が発生すると、聴覚障がい者は避難情報にアクセスすることが難しく、命の危険にさらされます。さらに、避難所での生活も困難で、水や食料の配布、入浴時間の案内などが聞き取れないという苦労があります。   孤立という問題 今回の地震で浮かび上がったのは、孤立という問題です。避難所で他の人とのコミュニケーションが取れないことで、一日中誰とも話すことができない状況になるのです。このような課題にどのように対処するか、石川県聴覚障がい者協会の業務執行理事であり、石川県聴覚障がい者センター施設長を務める藤平淳一さんに話を聞きました。   情報の混乱 地震が発生した元日の夕方4時10分、藤平さんは金沢市内にいました。金沢での揺れは5強で、直ちにテレビをつけて奥能登での地震を確認しました。しかし、情報が混乱しており、聴覚障がいの仲間たちの安全を心配しました。 そこで、石川県手話通訳制度を確立する推進委員会のメンバーと連絡を取り、石川県聴覚障がい者センターに集まり、石川県聴覚障がい者災害救援対策本部を立ち上げました。本部長は吉岡真人さんで、藤平さんは副本部長を務めました。   最初に取り組んだのは安否確認 最初に取り組んだのは安否確認でした。石川県手話通訳制度を確立する推進委員会は、昨年夏にこのような状況に備えて防災マニュアルを作成していました。 このマニュアルは、聴覚障がいの当事者だけでなく、手話サークルのメンバーや通訳者、要約筆記者なども含めた安否確認の手順を定めています。しかし、今回の地震ではすぐに全員の安否確認を完了することはできませんでした。   多くの人々が自宅にとどまる状況 地震の規模が大きく、多くの人々が自宅にとどまる状況でした。そんな中、就労支援事業所「やなぎだハウス」の職員が中心になり、LINEやメールで安否確認を行い、わからない場合は自宅や近隣の避難所に探しに行って確認しました。それでも分からない場合は、自治体に確認を依頼しました。 金沢より南の地域では1日で確認ができましたが、被害が大きかった能登半島では1週間かかり、石川県聴覚障がい者協会の会員や「やなぎだハウス」利用者など約50人の無事を確認できました。   高齢者の連絡手段 高齢者の多い地域では、スマートフォンを使っていない人が多く、持っていても家に置いたまま避難所に行った人もいました。彼らは普段はスマホを持ち歩かず、連絡が必要な時だけメールを送受信するために使っています。さらに、地震後は通信障がいも起き、連絡がつながりにくくなっていました。 奥能登に住む手話通訳者の中には、家が倒壊したり、集落が孤立したりして身動きが取れない人や、電波が届かず安否が確認できない人もいました。   安否確認の対象 安否確認の対象は、協会傘下の9団体の会員だけでなく、難聴者生活訓練事業に参加していたきこえにくい人や、知的障がいや精神障がいのある人たちも含まれていました。 地震後、避難して生き延びた人々にとっても、生活はますます困難なものとなりました。特に奥能登地域では、聴覚障がい者が点在しているにもかかわらず、避難所では自分だけが孤立して情報が得られない状況が顕著でした。 不安や孤独に耐えなければならなかった この地域では、地域のつながりが強く、震災直後には隣人が危険を伝え合ったり、食料や水を分け合うなどの助け合いが行われました。しかし、避難所の運営においては、聴覚障がい者の存在が十分に認識されず、必要な支援が行き届かない状況も見受けられました。 彼らは自らの状況や必要な支援が十分に理解されず、不安や孤独に耐えなければなりませんでした。このような状況に対応するため、石川県聴覚障がい者協会は積極的に行動しました。 彼らは、「孤立」の問題に焦点を当て、石川県に対し、金沢市内のいしかわ総合スポーツセンターを1.5次避難所として指定し、聴覚障がい者を集めるよう要望しました。この避難所では手話通訳が常駐し、情報提供が行われ、聴覚障がい者が状況を理解し、適切な判断ができるよう、支援が提供されました。   聴覚障がいに対応した福祉避難所を作るよう行政に要望 能登半島では2007年に大きな地震があり、その際、輪島市に全国で初めて福祉避難所が設置されました。福祉避難所は、病気や知的障がいなどの障がいのある人に対応した支援ができる体制を整えた避難所です。 しかし、奥能登地域ではこれまでにきこえない・きこえにくい人に対応した福祉避難所が作られたことがありませんでした。聴覚障がい者協会は、傘下の奥能登ろうあ協会とともに10年以上にわたって、奥能登に1か所でも聴覚障がいに対応した福祉避難所を作るよう行政に要望してきました。 しかし、それが実現する前に今回の地震が発生してしまい、聴覚障がい者協会藤平さんには残念な思いが残ります。   情報提供ができる体制を整えることができた 一方で、今回の地震では1.5次避難所と2次避難所で、きこえない・きこえにくい人を集めることによって情報提供ができる体制を整えることができました。これは、福祉避難所とは異なりますが、そのニーズに一部応えるものとなりました。今後も、きこえない・きこえにくい人に対応した福祉避難所の必要性を訴えていきます。 1.5次避難所にきこえない・きこえにくい人を集めることで分かったのは、彼らが1次避難所で近隣の人たちのケアを受けながら生活していたものの、必要なことを十分に伝えられていなかったことでした。例えば、自分に持病があることや薬がなくなっていることなど、困っていることがあっても、それを伝えることができず、苦しんでいました。 命を守るために必要な情報が届かない状況でしたが、今回の1.5次避難所では手話通訳者が常駐しており、医師との間で簡単にコミュニケーションが取れるようになりました。   手話の重要性 手話通訳者と仲間の両方が重要です。まず、手話通訳者がいることは、命や権利を保障する上で不可欠です。薬の必要性や健康状態を手話通訳者を介して医師に伝えることができることは、非常に重要です。 そして、手話言語で会話をすることができる仲間がいることも重要です。孤独感やストレスを軽減するためには、話し相手や仲間が必要です。24時間話し相手がいない状況や、自分の意見や感情を表現できない状況は、大きな負担になります。仲間やコミュニティがあれば、心理的な支えとなり、生活の質を向上させることができます。   情報発信を行う 石川県聴覚障がい者協会では、元日の地震発生直後からYouTubeなどを通じて手話動画による情報発信を積極的に行っています。手話言語で状況を伝えることで、聴覚障がい者が正確な情報を得られるようにしています。 また、きこえにくい・きこえる人のためには字幕を挿入し、情報のアクセシビリティを高めています。これにより、聴覚障がい者コミュニティが必要な情報を迅速に共有し、支援を受けることができるようになりました。   聴覚障がい者全員に必要な情報が届いているかどうかは不透明 今後の課題として、聴覚障がい者全員の訪問調査が挙げられます。現在、石川県全体で約3000人の聴覚障がいの身体障がい者手帳を持つ人がいるとされていますが、その中で奥能登地域には約268人が暮らしています。 しかしこの人たちに必要な情報が届いているかどうかは不透明であり、現時点での安否確認ができたのは約50人に過ぎません。そのため、個々の状況を確認するためには、直接訪問する必要があります。   ニーズ調査を行う 2007年の地震や昨年の地震では、保健師や手話通訳者、ろうあ者相談員などでチームを組んで、個々の家庭を訪問してニーズ調査を行いました。今回の地震を受けても同様の調査を行いたいという要望がありますが、現在の道路の状況や市役所の多忙さなどから、すぐに実施するのは難しい状況です。道路の復旧や状況の落ち着きを待ってから実施することが望ましいと考えています。 調査を行う際には、障がい者手帳保持者や災害時要援護者の名簿の開示が必要ですが、個人情報保護の観点から容易には見ることができません。そのため、協会が把握している会員や参加者を中心に調査を行い、行政に報告する方針です。 現在は、日本相談支援専門員協会に調査を委託しており、必要に応じて連絡があることが期待されていますが、まだそのような連絡は届いていません。今後も聴覚障がい者の安全確保とニーズへの対応に向けて、様々な課題に取り組んでいく必要があります。   手話も日本語の読み書きも不得意な人々が多い 奥能登地域におけるきこえない・きこえにくい人たちにとって、心のよりどころとなる施設が地震で大きな被害を受けたことが懸念されています。以前の地震で訪問調査を行った際、多くの人々が家に閉じこもり、孤立していることが判明しました。 特に、学校に通っていないため手話も日本語の読み書きも不得意な人々が多く、適切なコミュニケーション手段を持っていないことが問題視されました。   当たり前の生活を送るための支援が必要 その解決策として、かつて北野雅子さんが施設長を務めていた頃から、きこえない・きこえにくい人たちが定期的に集まって情報を共有し、手話で楽しく交流できるミニデイサービスが提供されてきました。 これは、彼らが社会で当たり前の生活を送るための支援が必要だという認識から始まった取り組みでした。その後、このサービスは就労支援事業所「やなぎだハウス」として発展し、奥能登地域のきこえない・きこえにくい人たちが仕事を学び、自立していくための場所として活用されています。   高齢化が進むがサポートがあれば可能性は広がる ICTのスキルを磨く必要性は高まっています。能登地域でも、電話リレーサービスや遠隔手話通訳などのICTの説明会を何度か行っていますが、まだ自分のスマートフォンを使い慣れていない方が数多くいます。現在、ほとんどの場合、手話通訳者が現地に行って対面で通訳しています。 石川県聴覚障がい者協会では、奥能登地区の会員は現在12名で、その中で一番若いのがやなぎだハウスの職員で、現在29歳です。他の会員は全員60歳以上で、平均年齢は75歳ほどです。このような高齢化が進む中、ICTの習得は難しいと感じられるかもしれませんが、周囲のサポートがあれば可能性は広がります。   意欲的に学ぼうとする姿勢 ICTの習得に関しては、単に年齢だけでなく、それぞれの個人の学習意欲や環境も大きな要因です。特に高齢者の場合、新しい技術について学ぶことに対するハードルは高いかもしれませんが、その中には意欲的に学ぼうとする人もいます。そのため、地域コミュニティや協会がサポートすることで、ICTの利用が促進されることが期待されます。 まとめ 今後は、地域の施設やコミュニティセンターでのICT教室やワークショップの開催、個別のサポートプログラムの提供など、様々な取り組みが考えられます。また、若い世代やデジタルに慣れた人々が、高齢者や初心者に対して手助けをすることも重要です。 こうした取り組みが地域全体のICT活用の促進につながり、きこえない・きこえにくい人たちの生活をより豊かにすることが期待されます。   参考 聴覚障がい者(ろう者・難聴者)は能登半島地震とどう向き合ったか ~社会福祉法人 石川県聴覚障がい者協会 藤平淳一業務執行理事にきく~ - 記事 | NHK ハートネット

テレワークで労災 長時間労働で適応障がい 極めて異例の認定

長時間労働によって精神疾患を発症し、それが労災認定された事例は、近年の労働環境の変化と、それに伴う労働者の健康問題の深刻化を象徴しています。特に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが急速に普及したことで、労働構造や労働時間の変化が顕著になっています。   外資系補聴器メーカーで働く50代の女性 横浜市に本社を構える外資系補聴器メーカーで働く50代の女性のケースは、テレワーク増加に伴う業務量の増加が精神疾患を引き起こした典型的な事例と言えます。この女性は経理や総務を担当する正社員であり、テレワークが導入されたことで業務が増加しました。 特に、新たな精算システムの導入などにより、残業時間が急増したという背景があります。こうした状況が適応障がいを発症させ、労災認定に至ったとされています。   労働時間の管理やストレス対策が不十分 この事例は、労働者の健康と労働環境の関係性を再考させるものとして注目されています。従来の労働形態からテレワークへの移行により、働き方や労働時間が大きく変化しました。 しかし、その一方で、テレワークにおける労働時間の管理やストレス対策が不十分である場合、労働者の健康問題が深刻化する可能性があります。このような問題に対処するためには、労働者と企業が協力して、適切な労働環境を整備することが不可欠です。   労働者の健康と安全を確保 労働基準監督署が女性の残業時間を過労死ラインを超えると指摘し、会社に是正勧告を行ったことは、労働者の健康と安全を確保する上で重要な一歩です。企業側も、テレワークにおいて長時間労働が生じないよう、上司への申請を義務付けるなどの措置を講じる必要があります。 それに加えて、法的な規制や指針の整備も欠かせません。労働者の健康を守るためには、労働環境の改善と労働法の適切な運用が求められます。このケースが、長時間テレワークによる労災認定という異例の事例となったことは、今後の労働環境の改善や労働法の見直しに向けての重要な契機となるでしょう。 労働者の健康と安全を守りながら、テレワークなどの柔軟な働き方を実現するためには、法規制の見直しや企業の取り組みが必要不可欠です。   リモート環境下で上司の監督が難しくなる テレワークの普及に伴い、労働環境の変化が浮き彫りになっています。神戸大学の大内伸哉教授は、テレワークが普通の労働と変わらず、原則に沿った認定が適切だと述べています。 しかし、リモート環境下で上司の監督が難しくなるという特殊性があるため、企業は従業員の健康配慮義務を果たし、行政は企業を適切に監督することが求められます。テレワークの利点は確かにありますが、労働者の健康や適切な労働管理を確保するためには、社会的な議論と法整備が不可欠です。   テレワークの普及 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークは急速に普及しました。総務省の通信利用動向調査によれば、テレワークを導入している企業の割合は年々増加しており、2022年には51.7%に達しています。 この数字はテレワークが今後も一般的な労働形態として定着していくことを示唆しています。しかし、テレワーク導入に伴って長時間労働や仕事とプライベートの時間の区別がつかなくなると感じる従業員が増えており、これが労働管理の課題となっています。 労働者がテレワークを行う場合、自宅や外出先などの非オフィス環境で仕事を行うため、従来のオフィス勤務とは異なる課題が浮かび上がってきます。例えば、家庭や生活の中での雑音や他の家族の存在などが、労働効率や集中力に影響を与える可能性があります。 また、労働者が自ら労働時間を管理することが求められるため、業務とプライベートのバランスを保つことが難しくなるケースもあります。   適切な労働時間の確保 このような状況下で、適切な労働管理を実現するためには、企業が労働者の健康を最優先に考え、適切な労働時間や休息を確保することが不可欠です。また、労働者自身も自己管理能力を高め、適切な労働時間の確保やリラックスする時間を持つことが重要です。さらに、労働者と企業のコミュニケーションを円滑にし、労働環境の改善に向けた取り組みを促進することも必要です。 テレワークが広がる中で、労働者の健康と労働環境の保護がますます重要となっています。適切な労働管理の実現に向けては、企業や行政、労働者が連携し、様々な対策を講じることが必要です。これによって、テレワークが労働者と企業の両方にとって健康で持続可能な働き方となることが期待されます。   精神障がいによる労災認定の増加 精神障がいによる労災認定の増加は、過重労働やストレスが背景にあるとされています。2014年に制定された過労死防止法やその後の働き方改革関連法は、長時間労働の抑制を図ったものの、一方で精神障がいによる労災認定は増加傾向にあります。 厚生労働省の調査によれば、過去10年間では脳出血や心筋梗塞による労災認定は減少していますが、精神障がいによる認定は増加しています。2023年の調査によれば、全国で労災と認められた精神障がいのケースは710人に上り、前の年度より81人増加しています。これは1983年度以降で最も多い数字です。   労災認定の職種 労災認定の職種別にみると、「専門的・技術的職業従事者」や「事務従事者」「サービス職業従事者」などが主な対象となっています。これは、高度な専門性を要求される仕事やオフィスワーク、接客業などでストレスや過労が蓄積されやすいためと考えられます。 年代別に見ると、40代が最も多くの労災認定を受けています。これは、キャリアや家庭の責任が重くなる中での働き方やストレスが影響している可能性があります。次いで20代が続き、若年層でも精神障がいによる労災認定が増加しています。 また、50代も一定数の労災認定があり、年齢が上がるにつれて仕事の負荷が増加することが背景にあると考えられます。 これらのデータは、労働者の心身の健康を考慮した労働環境の整備が喫緊の課題であることを示しています。適切な労働時間の確保やストレス対策の充実、心理的なサポート体制の構築が求められます。また、労働者と企業の双方が協力して、健康な労働環境を実現するための取り組みが必要です。 テレワークの注意点:健康と効率を両立させるためのポイント 新型コロナウイルスの影響により、テレワークが一般的な働き方となりつつあります。しかし、自宅や外出先での作業は便利で柔軟性が高い一方で、健康や効率面での課題も潜んでいます。ここでは、テレワークを行う際に注意すべきポイントをいくつか挙げてみましょう。   適切な作業環境の整備 自宅での作業環境を整えることは非常に重要です。静かな場所で、快適な椅子とデスクを用意し、良好な姿勢を保つよう心がけましょう。また、十分な照明や適度な空調も効率的な作業に欠かせません。   定期的な休憩の取得 テレワークでは、オフィスでのような定時の休憩が難しくなることがあります。しかし、長時間の画面作業や座りっぱなしの状態は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。こまめな休憩を取り、ストレッチやウォーキングなどの運動を取り入れることが大切です。   作業とプライベートの区別 テレワークを行う際には、作業とプライベートの時間を明確に区別することが必要です。特に、自宅での作業では仕事と家庭の境界が曖昧になりがちですが、これがストレスや疲労の原因となることがあります。仕事が終わったら、意識的に仕事から離れる時間を設けるよう心がけましょう。   コミュニケーションの維持 テレワークでは、直接顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーションの維持が難しくなることがあります。しかし、チームメンバーや上司との円滑なコミュニケーションは業務の円滑な進行に不可欠です。定期的なビデオ会議やチャットツールを活用して、コミュニケーションを密に保つよう努めましょう。   目標設定と時間管理 自宅での作業環境は、外部の刺激が少なくなりがちです。そのため、目標設定や時間管理がより重要になります。作業時間やタスクの優先順位を明確にし、効率的に作業を進めるための計画を立てることがポイントです。   これらの注意点を意識しながら、テレワークを行うことで、健康や効率性を両立させることが可能です。自分に合った働き方を見つけ、バランスの取れた生活を送るために、日々努力していきましょう。   適応障がいを予防するための方法 適応障がいは、長期間にわたるストレスや心理的負荷によって引き起こされる心の健康上の問題です。このような状態になる前に、適応障がいを予防するためには以下のような方法があります。   ストレス管理の重要性を認識する ストレスは日常生活において避けられないものですが、その管理方法を学び、積極的に実践することが重要です。ストレスの原因を特定し、対処方法を見つけることで、適応障がいのリスクを軽減することができます。   適切な休息とリフレッシュの時間を確保する 忙しい日々の中で、自分自身に時間を与えることが重要です。定期的な休息やリラックスする時間を確保し、ストレスから解放されることで心身のリフレッシュが促進されます。   健康的なライフスタイルの維持 適切な栄養摂取、十分な睡眠、適度な運動は、心の健康を維持するために不可欠です。バランスの取れた食事や適度な運動は、ストレスへの抵抗力を高めることに役立ちます。   ソーシャルサポートの活用 家族や友人、信頼できる同僚など、身近な人々とのコミュニケーションはストレスを軽減し、心の安定を保つのに役立ちます。困難な状況に直面した際には、ソーシャルサポートを受けることで心の負担を分かち合うことができます。   仕事とプライベートのバランスを保つ 仕事とプライベートの時間を適切に配分し、過度な労働や仕事へのストレスが生じないように注意しましょう。定期的な休暇や趣味に時間を割くことで、心のリフレッシュとストレスの解消が促進されます。   心理的なセルフケアの実践 自己肯定感を高め、ポジティブな思考を持つことは、ストレスへの抵抗力を高めるうえで重要です。自己肯定感を高めるためには、自己肯定の練習やセルフコンパッションの実践が有効です。   これらの方法を積極的に取り入れることで、適応障がいを予防し、心の健康を維持することができます。常に自分の心身の状態に気を配り、適切なケアを行うことが大切です。 まとめ 適応障がいの予防には、ストレス管理や健康的な生活習慣の確立が不可欠です。適切な休息やリフレッシュの時間を確保し、心身のリフレッシュを図りましょう。また、ソーシャルサポートを活用し、困難な状況における心の負担を分かち合うことが重要です。 仕事とプライベートのバランスを保ち、心の健康を維持するために、心理的なセルフケアも大切です。自己肯定感を高め、ポジティブな思考を持つことで、ストレスへの抵抗力が向上し、適応障がいのリスクを軽減できます。   参考 テレワークで異例の労災認定 長時間労働で適応障がいに 横浜 | NHK

発達性協調運動障がいの息子にかけた言葉に後悔「どうしてできないの」

オチョのうつつさんは、東京都に住む42歳の漫画家であり、現在は小学校6年生の男の子、ウノくん(12歳)を育てるママです。ウノくんが発達性協調運動障がい(DCD)と診断されるまでの経緯を振り返ると、彼が乳幼児の頃から発達に関して異変を感じていたそうです。   心配事は無かった 2011年、ウノくんは予定日の10日ほど前に自然分娩で誕生し、健康な赤ちゃんとして3250gの体重で生まれました。オチョさんはその瞬間、幸福感に包まれ、生まれたばかりのウノくんを抱く喜びを感じたそうです。育児に関しては、「たまひよ」の育児新百科を参考にし、赤ちゃんの成長や発達について手掛かりを得ていたと述べました。 ウノくんは幼少期にはぐずることなく、夜に起きてもおっぱいをあげればすぐに眠りにつくおとなしい子でした。首すわりやはいはい、おすわり、喃語(なんご)、発語の発達も順調で、母子健康手帳の目安通りだったため、オチョさんにとっては心配事はありませんでした。   違和感を覚えた遊びの様子 しかし、食事の際にむせたりえずいたりすることが頻繁にあったため、「空気を飲んじゃってるのかな?」という疑問が生じました。後で動画を見返してみると、それが意外にも頻繁であったことに気付き、少し心配になったそうです。 ウノくんが10カ月の頃にはいはいができるようになりましたが、彼のやる気はあまり感じられず、祖母の手助けが必要でした。オチョさんは彼が1歳を過ぎてからの公園遊びの様子を見て、違和感を覚えました。 彼は歩けるようになったものの、自発的に走り出すことは少なく、「抱っこ」とせがむことが多かったと述べました。   他の子どもたちとの差異がより明らかに オチョさんは、自分の幼児期を振り返ると、ウノくんの発達とは異なることに気付きます。たとえば、すべり台で遊ばせると、普通の座り方ではなく、体幹を支えられずに横に倒れることがよくありました。また、ジャンプの仕草は楽しそうに見えるものの、実際には浮いていないこともありました。 夫に相談すると、「まだ小さいんだから、こんなものだよ。気にしすぎじゃない?」と返ってきたそうです。しかし、ウノくんが3歳を過ぎて幼稚園に入園すると、他の子どもたちとの差異がより明らかに感じられるようになりました。   4歳頃からは運動の苦手さがますます顕著に ウノくんは3月生まれであるため、少しは他の子との年齢差があるとしても、運動能力に関しては2年ほどの遅れを感じるようになったと述べます。特に目立ったのはボールの扱いで、ドッジボールではボールを捕ることもままならず、投げても相手に届かず、全く逆方向に飛んでしまうこともありました。 4歳頃からは、運動の苦手さがますます顕著になりました。キックバイクに乗れず転倒したり、ブランコをこげなかったり、なわとびができなかったりしました。指先を使う遊びも苦手で、折り紙や粘土などに興味を示さず、すぐに飽きてしまうことがありました。   発達支援センターに電話するものの… 自治体の集団健診ではウノくんの発達の遅れは指摘されませんでしたが、オチョさんは幼稚園の保護者会で発達障がいの子どもを持つママの話を聞いたことがあり、発達支援センターに電話してみることにしました。当時、ウノくんは年長の1月でした。 「ウノの様子は単に運動が苦手というだけではないように感じました。もし運動面での発達障がいのようなものがあるとしたら、ウノはその一部かもしれないと思ったんです。 発達支援センターに電話をしようと思ったのは、生活が困難なわけではないけれど、子どもの発達について心配なことがある場合、どう対処すればいいのか知りたかったからです。心臓がバクバクしながらも、思い切って電話をかけました。 ところが、その支援センターは半年先まで予約がいっぱいでしたし、対象は未就学児のみとのことでした。半年後にはウノくんは小学生になるため、対象外と言われてしまいました。小児リハビリテーションの病院への紹介もありましたが、その時は病院にかかる必要性を感じておらず…。 何よりも、話を聞いてもらえず断られてしまったことがショックでした。あんなに緊張して、勇気を振り絞って電話をかけたのに、拒絶されたような気持ちでした」とオチョさんは振り返ります。   厳しく叱る時もあり「後悔」 だれにも相談できず、頼る先もないとショックを受けたオチョさんは、「それなら親の自分が頑張るしかないと決意した」と語ります。地域の小学校に進学したウノくんは、入学後に文字を書くことやお友だちとの外遊びについていけないことに苦労しました。 「学校生活が始まった当初、一番大変だったのは文字の練習でした。最初はウノの字は個性的でかわいいと思っていましたが、担任の先生から『もっとちゃんと練習してください』と言われ、とてもショックでした。 クラスメイトたちの綺麗な字を見て『ウノにも練習させなくては』と厳しくなってしまいました。文字の宿題がうまくいかないと、厳しくしかって書き直させることもありました。今思うと、ウノがとてもつらそうだったことを思い出して、後悔しています」とオチョさんは振り返ります。 学校を休まずに頑張っていた 運動に苦手さを持つウノくんは、友だちとの遊びについていけず、一人で帰ってくることも多かったそうです。 「ウノは明るい性格でしたが、小学校に入ってから消極的になり、学校に行きたくないと言うこともありました。先生からは、友だちからからかわれることがあるという報告もありました。 たとえば、ハンカチを返してと言っても、友だちが取れないようにひらひらさせてほかの子に投げてしまうことがあったそうです。一度は全員が集められてウノに謝らせられたそうです。いじめられていたわけではないと思いますが、ウノにとってはつらかったようです。 ある時には『僕がいじめられてたらどうする?』と相談され、ウノは淡々と『いじめがあったら訴訟します』と冷静に答えていました。 その後、『そんなことがあったら、学校なんか行かなくてもいいんじゃない』と伝え、お母さんが守ってくれると伝わったそうです。それでもウノは学校を休まずに頑張っていました」とオチョさんは語ります。   頑張る姿を見て考えが変わる ウノくんは運動が苦手でも、ピアノや水泳のほかにスポーツ教室の習い事にも通っていました。オチョさんは週に3回の送迎や宿題のチェックなど、自分の仕事以外にも大忙しでした 「発達支援センターにも断られて『自分が頑張るしかない』と一生懸命でした。でも、ウノの小学校3年生の運動会で徒競走をする姿を見て、考えが変わりました。 運動会の演目では徒競走とダンスがありました。『運動会イヤだなぁ』と渋るウノに、なんとか徒競走を頑張れるようにと『前を見て腕を振るんだよ』『体を少し前に倒すんだよ』と教えました。でもウノにはあまり響かないんです。 そして、教えたこともすぐ忘れちゃうんです。運動会当日の徒競走で、ウノは教わったことがスッポ抜け、よそ見をしながらにこにこして走っていました。 その姿を見て、どんなに私が一生懸命教えても、これ以上ウノをよくしてあげることはできないんじゃないか、と思いました。もう自分はこれ以上頑張れないな、と。 私はウノに結果を求めすぎていたのかもしれません。それに、運動が苦手でも字が下手でも元気で笑顔で育っている、それだけで十分じゃないかなとも思いました」とオチョさんは振り返ります。 勉強や運動を頑張る意欲を失いつつあったオチョさんとウノくん。ウノくんが4年生になったある日、オチョさんは当時のTwitter(現X)でDCDについて書かれた記事を目にしました。   DCDの特徴に当てはまる 「記事に書いてあったDCDの特徴は『字が下手』『手先が不器用』『運動が苦手』『ボールやなわとびができない』『周囲から理解されず努力不足だと思われるため自己評価が下がる』とありました。それを見て、『これ、ウノに全部当てはまる!』と驚きました。そしてずっと困っていたことの解決方法がやっと見つかるかもしれない!とすごく感動しました」とオチョさんは述べます。   DCDついて知識がある先生に出会い変わる その後、オチョさんは小学校の保健室の先生に相談しました。先生はDCDという発達障がいについて知識があり、適切な相談先の紹介や今後の対応について検討してくれました。オチョさんは、悩んでいたことに光が見えたと感じたそうです。 うつつ家では実は両親とも運動が苦手でした。「夫は、自分が運動ができなくても乗り越えて生きてきた経験から、子どもが運動ができなくてもそんなに問題ではない、と思っていたようです」とオチョさんは語ります。   発達性協調運動障がい(DCD)とは 発達性協調運動障がい(Developmental Coordination Disorder、DCD)は、子どもや成人の日常生活における運動や協調能力に影響を与える発達障がいの一種です。DCDは、運動技能の獲得や実行、統合に関連する困難を特徴とします。この障がいは、身体的な問題や知的障がいとは異なり、脳の発達に関連した問題が原因です。   特徴と症状 DCDを持つ人々は、以下のような特徴や症状を示すことがあります。   運動技能の困難 例えば、走る、跳ぶ、投げる、キャッチするなどの基本的な運動技能に苦労することがあります。また、自転車に乗る、縄跳びをするなどの複雑な運動にも問題を抱えることがあります。   不器用さ 手先の不器用さや筋力のコントロールの難しさがあります。細かい作業や手先を使った活動に苦労することがあります。   空間認識の困難 身体の位置や動きを正確に把握することが難しい場合があります。これは、周囲の環境での移動や物理的な活動に影響を与える可能性があります。   社会的な影響 DCDを持つ人々は、運動技能の困難や不器用さからくる挫折や不安を経験することがあります。これにより、学業や社会的な活動において自己評価が低下し、ストレスや不安が生じる場合があります。   支援と治療 DCDの早期発見と適切な支援が重要です。支援の方法は個々に異なりますが、以下のようなアプローチが一般的です。   運動療法 物理療法士や作業療法士による運動療法やリハビリテーションが効果的です。運動技能の向上や身体的なコントロールの向上を促すためのプログラムが提供されます。   学校や家庭での支援 教育者や保護者が子どものニーズを理解し、適切な環境を提供することが重要です。柔軟な学習環境や適切な支援が与えられることで、子どもの自己評価や学業成績が向上することがあります。   認知行動療法 不安やストレスの管理に役立つ認知行動療法が有効な場合があります。個々のニーズや症状に応じて、心理療法士によるカウンセリングが提供されます。 まとめ DCDは治癒する疾患ではありませんが、適切な支援や治療により、日常生活や学業、社会参加における障がいを軽減することが可能です。社会全体での理解と支援の向上が、DCDを持つ人々の生活の質を向上させる鍵となります。   参考 発達性協調運動障がいの息子、「どうしてできないの!」思わず出た言葉に後悔も。キックバイクがこげない、ボールが投げられない、字が下手、すべてが当てはまり…【DCD体験談】(たまひよONLINE)Yahooニュース

仕事のストレスで適応障がい 命を絶つ前に思いとどまれた理由とは?

精神科産業医である夏目誠さんは、45年以上のキャリアを持ち、これまでの経験を元にストレスへの気づきや対処法を提案しています。 3月は厚生労働省が「自殺対策強化月間」として位置づけ、自殺率が高い我が国において、彼の経験は重要です。自殺の予防には精神科を受診することや、絆を持つことが有効であることを考えます。   期待を背負う 夏目誠さんは、ある43歳の新商品販売担当部長のケースを紹介します。彼は大手販売会社で法人営業部次長として成功を収め、妻と2人の子どもを持つ生活を築いていました。しかし、新商品の販売担当部長として抜てきされ、半年で成果を出すようにとの期待を背負いました。 しかし、思うように成果を上げることができず、彼は自問自答に追われました。「なぜ売り上げが伸びないのだろう?」「何か間違っているのか」。彼の生真面目な性格が彼を苦しめました。   自らの状況を客観的に捉えることができない 精神的に追い込まれ、衝動的に自殺を考える状況に陥りました。彼は精神的な負担から不眠や不安に苦しむようになり、妻からの心配を受けながらも自らの状況を打ち明けることはありませんでした。 彼はついに自殺衝動に駆られ、妻に出張と偽って旅に出ました。売り上げの不振だけで自殺を考えることは異常に思えますが、彼は視野が狭まり、自らの状況を客観的に捉えることができなくなっていました。   「家族のためにもう一度やり直そう」 しかし、死のうとした時、妻や子どもの顔が彼の心に浮かび上がりました。家族を残して自らの命を絶つことの重さに気づき、「家族のためにもう一度やり直そう」という思いが彼を立ち止まらせました。 彼は妻とともに精神科クリニックを受診し、適応障がいと診断され、休職を勧められました。主治医は彼の不安を和らげるために薬や睡眠導入剤を処方し、回復に向けて支援を行いました。   「死ぬくらいなら退職しよう」 東南アジアに工場を設立するプロジェクトに携わった40歳の製造課長のケースもあります。彼は単身赴任先での孤独や文化の違いに適応できず、仕事でも予期せぬ問題が頻発し、過労が重なりました。 彼はある日、発作的に自殺を考えましたが、その時に妻や子どもの顔が浮かび、思いとどまりました。死の淵に立った彼は「死ぬくらいなら退職しよう」と考え、リーダーに辞表を提出しました。しかし、本社の部長は部下の状況に気づいていたものの、海外の事情に対応しきれなかったようです。自殺未遂を聞いた後、急きょ帰国させられ、精神科産業医として夏目さんが対応することになりました。   当事者自身が相談や受診の必要性に気づくのは容易ではない メンタル不調に陥ると、自らの状況を客観的に見ることが難しくなり、思考が停止してしまうことがよくあります。そのため、当事者自身が相談や受診の必要性に気づくのは容易ではありません。 このような場合、職場や家族が気づき、サポートすることが重要です。ただし、先述したケースでは周囲の気づきがサポートのきっかけにはなりませんでした。それでも自殺を防ぐことができたのは、家族との絆の力があったからだと考えられます。 家族との絆を築くには、相互の信頼と交流を長期間にわたって積み重ねる必要があります。男性の育児休業取得など、家族がより絆を深めるための仕組みも重要です。このような取り組みは、家族の絆を強化する土台となります。   「絆」の本質 日々の相談の中で、仕事のストレスや悩みの奥に、家族の問題が潜んでいることはよくあります。家族との関係を深めるために、日常の中で外食や旅行、イベント参加を楽しむことが大切です。 夫婦で運動会に参加したり、家族で食事を楽しんだりすることで、共感や思い出が生まれます。楽しい経験は脳の側頭葉にしっかりと記憶され、いつでも思い出すことができると言われています。これこそが「絆」の本質ではないでしょうか。   会社や仕事よりも家族との絆を大切にすること 日常生活でのおしゃべりや会話は、絆を築く上で非常に重要です。何気ない会話や冗談めかした話は、意味のないように見えても、実は大切なのです。目的のない会話こそが、家族や友人との絆を深める手段です。 そうすることで、困った時に相談しやすくなります。夏目さんは精神科産業医として、逆境を乗り越える心を育むには、会社や仕事よりも家族との絆を大切にすることを常に伝えています。 適応障がいとは:ストレスが日常生活に影響を与える状態 適応障がいは、身体的または精神的なストレスが日常生活に適応する能力を超え、さまざまな身体的・精神的な症状を引き起こす状態を指します。適応障がいは、ストレスが継続的である場合や、ストレスに対処するための適切な手段が不足している場合に発症することがあります。   主な症状 適応障がいの症状は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。   身体的症状 頭痛、胃の不調、疲労感、睡眠障がいなどの身体的な不調が現れることがあります。   感情的症状 不安、抑うつ、イライラ、怒りなど、感情の不安定さが現れることがあります。   行動上の症状 社交活動の減少、仕事や学業のパフォーマンスの低下、日常生活のルーチンからの逸脱などが見られることがあります。   発症の原因 適応障がいは、さまざまなストレス要因が組み合わさることによって引き起こされることがあります。以下は適応障がいの発症要因の例です。   職場のストレス まず、職場のストレスは、業務の過度な負荷や効果的なサポートの不足、人間関係の問題などが挙げられます。これらの要因が組み合わさると、仕事環境がストレスフルになり、適応障がいのリスクが高まります。 例えば、上司や同僚とのコミュニケーションの問題や、業務の過酷さによる心身の疲労が、適応障がいを引き起こす可能性があります。   生活の変化 次に、生活の変化も適応障がいの原因となり得ます。例えば、引っ越しや離婚、転職などの生活の大きな変化は、人々の日常生活に大きなストレスを与えることがあります。 これらの変化に適応することが難しい場合、適応障がいが発症する可能性が高まります。新しい環境に適応するプロセスは、心理的な負担が大きいため、適応障がいのリスクを高めます。   過去のトラウマや心的外傷 最後に、過去のトラウマや心的外傷が未解決のまま残っている場合、それが適応障がいの原因となることがあります。 過去の辛い経験やトラウマが、現在のストレスと相まって、心のバランスを崩すことがあります。このような場合、適切なサポートや治療が必要です。   これらの要因は、個々の人々の生活状況や精神的な強さによって異なりますが、適応障がいの発症につながる可能性があります。したがって、適応障がいの予防や治療には、これらの要因を理解し、適切な対処法を見つけることが重要です。   対処方法 適応障がいの治療には、個々の症状や状況に合わせたアプローチが必要です。以下は一般的な対処方法の例です。   ストレス管理 リラックス法やストレス軽減のテクニックを学ぶことで、ストレスに対処する能力を高めます。   心理療法 カウンセリングや認知行動療法(CBT)などの心理療法を受けることで、ストレスの原因や対処方法を理解し、対処する能力を高めます。   生活習慣の改善 健康的な食事、十分な睡眠、適度な運動など、健康的な生活習慣を確立することが重要です。   ストレス管理には、リラックス法やストレス軽減のテクニックを積極的に取り入れることが重要です。深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラックス法を習得することで、日常生活でのストレスに対処する能力が向上し、心身のリフレッシュが図れます。 また、ストレスの原因や対処方法を理解するために心理療法を受けることも有益です。カウンセリングや認知行動療法(CBT)などの心理療法を通じて、自身の思考や行動パターンを客観的に見つめ直し、ストレスに適切に対処するスキルを身に付けることができます。 さらに、生活習慣の改善も適応障がいの管理に効果的です。健康的な食事、十分な睡眠、適度な運動を取り入れることで、身体的な健康を維持し、ストレスへの抵抗力を高めることができます。これらの生活習慣の改善は、心身のバランスを整え、ストレスによる負荷を軽減するのに役立ちます。適応障がいの管理には、これらのストレス管理や心理療法、生活習慣の改善を組み合わせて取り組むことが効果的です。 まとめ 適応障がいは、現代社会で多くの人々が直面する問題の一つです。仕事や生活のストレス、人間関係の問題、経済的なプレッシャーなど、さまざまな要因が組み合わさって発症することがあります。 しかし、適切なサポートや治療を受けることで、適応障がいを克服し、健康で幸福な生活を送ることが可能です。心の負担やストレスを感じた場合は、自己判断せずに早めに専門家の助けを求めることが重要です。心理カウンセリングや精神科医の診断を受けることで、適応障がいの原因や対処方法を理解し、適切な治療を受けることができます。 また、ストレス管理やリラックス法を学ぶことも有効です。適応障がいには早めの対処が重要であり、十分なサポートを受けることで、再び健康で充実した生活を取り戻すことが可能です。   参考 ビジネスパーソンが仕事ストレスで適応障がいに…自ら命を絶つ寸前に思いとどまれた理由は?(読売新聞(ヨミドクター)Yahooニュース

障がい者女性の「生きづらさ」障がい者女性の声はないがしろにされ障がいのことを考慮されない

「障がいがあり女性であること 生活史からみる生きづらさ」 障がい者について論じられる際、しばしば障がい者男性に焦点が当てられ、一方で女性について論じられるときは、健常者女性がクローズアップされることが一般的です。この言葉は、土屋葉氏が「障がいがあり女性であること 生活史からみる生きづらさ」の序章として述べたものです。 障がい者に関する議論では、性差別が影響して障がい者女性の声が無視されがちであり、一方で女性について論じられる際には、障がいについての配慮が欠け、結果として障がい者女性の立場が透明化されてしまうことを示唆しています。   男女の分断を煽るのではなく障がい者女性が直面する特有の課題に焦点を当てる この二重の無視の結果、障がい者女性は「複合差別」と呼ばれる厳しい現実に直面しています。彼女たちが直面する困難は多岐にわたり、生活上の問題、結婚や出産に関する困難、職場での課題、性暴力に対するリスクなどが挙げられます。これらの問題を一つずつ掘り下げていくことが重要です。 もちろん、「障がい者は男女に関係なく困難を抱えている」という点についての議論も重要ですが、この文脈での言及は、男女の分断を煽るものではなく、むしろ障がい者女性の声を強調し、彼女たちが直面する特有の課題に焦点を当てることを目的としています。   男性が介助を担うケースも多い 身体障がい者女性が直面する困難の一つに、日常生活での介助の必要性があります。特に肢体不自由者の場合、着替えや食事から排泄や入浴まで、介助が必要になることがあります。そして、この介助の中でも特にプライベートなゾーンを扱う場面では、同性からの介助を希望する女性が多いのが現実です。 しかし、現実には男性が介助を担うケースも多く、これにより肢体不自由者の女性は強い羞恥心を抱えながら日々を過ごすことになります。また、異性からの介助を不満に思っても、「わがままな障がい者」とレッテルを貼られる恐れから、声を上げることがためらわれる女性もいます。   その違和感さえ失ってしまう女性も存在 一方で、長年にわたり異性からの介助を受け続ける中で、その違和感さえ失ってしまう女性も存在します。しかし、ある時点でその女性は、「本人の望まない異性介護は虐待にあたる」という事実を知り、自らの気持ちに正直になることが重要であることに気づきました。そして、彼女は思わず「私、男性からの介助は望みません!」と声を上げることができたのです。   「恥ずかしいって場合?」 あるグループホームでは、生活の全てに介助が必要な肢体不自由の女性たちが共同生活を送っていました。ある日、女性の世話をしていたスタッフが入浴介助中にてんかんの発作を起こしたのです。この状況ではすぐに湯船から引き上げなければなりませんが、女性自身の力では不可能で、男性のスタッフの協力が必要でした。 しかし、男性のスタッフが介助をしようとすると、女性は激しく抵抗し、男性の腕を振り払うのだそうです。スタッフが笑いながら「私には無理だから、しょうがないよね。恥ずかしいって場合?」と話したそうです。入浴介助とはいえ、女性が発作を起こすたびに全裸で男性に抱え上げられることになります。   性暴力と結びつく可能性 この異性介助が後に性暴力と結びつく可能性もあり、この問題を放置するわけにはいきません。さらに、肢体不自由の女性は婦人科にかかることが難しい場合もあります。例えば、内診台で十分に足が開けないなどの理由で、診察時に大きな負担を強いられることもあるのです。 その他にも、聴覚障がい者女性が手話通訳者の不在によって婦人科での相談を躊躇する場面もあります。このような課題が女性たちの心身の健康に影響を与える可能性があるため、この問題には真剣に向き合わなければなりません。   家事や育児といった家庭内の負担は依然として主に女性 家事や育児といった家庭内の負担は、依然として主に女性に押し付けられており、障がい者女性もその例外ではありません。 障がいが遺伝する可能性を理由に、「子どもを産むな」という声が障がい者女性に向けられる一方で、「少子化はわがままな女性のせいだ」という声が健常者女性に対して繰り返されています。このような言動は、障がい児を望まないという意識を社会全体に広め、健常な子どもだけが望ましいという印象を与えかねません。 このカテゴリでは、多くの障がい者女性が生活上の困難に直面しています。例えば、視覚障がい者女性の場合、弱視を持つ女性に対しても「家事育児はできるもの」という暗黙の了解が存在します。   視覚障がい者への差別 また、視覚障がい者同士の結婚においては、弱視の女性が全盲の男性の介護をするというパターンが珍しくありません。 「少しでも視力があるなら、全ての家事育児をするのは当然」という偏見が根強いようですが、結婚した以上は男性も家事育児に貢献すべきだと考えます。 しかしそれだけではありません。全盲の障がい者同士が結婚を考えた場合、女性が全盲であることを理由に破談になるケースも多いようです。 多くの場合、全盲男性の親族が「全盲の嫁では息子の世話ができない」として一方的に破談にすることがあるそうです。 男女間で大きな違い 障がい者女性が家事や育児を担うことが当たり前視される一方で、同じ障がい者男性には同じ期待が寄せられない状況に複雑な思いを抱きます。家事能力が不足していることを理由に、全盲の女性が結婚を許されない一方で、男性には同じ期待が寄せられないことに疑問を感じます。 全盲同士の結婚において、女性が全盲であることを理由に破談にされるケースも珍しくありません。このようなハードルの差は、男女間で大きな違いをもたらしているように思えます。   精神障がい者女性の困難 次に、精神障がい者女性の困難について考えてみましょう。多くの精神障がい者女性が、女性らしい家事や育児をこなすことに過度なプレッシャーを感じています。しかし、体調の悪化などで期待に応えられないと自責の念に苛まれ、さらに悪化してしまうこともあります。健常者の夫婦間でも生じる「子どもを持つかどうか」の問題においても、精神障がい者女性は特有の課題に直面しています。精神障がいの治療の一環として服用する向精神薬の断薬が求められることがあり、その際には胎児への影響を考慮する必要があります。 この問題は男性には当然には影響しませんが、女性は断薬によって体調が悪化する可能性があります。   統合失調症を抱える女性の困難 一方で、統合失調症を抱える女性が子どもを望んでいないことに対し、パートナーからの理解を得られずに関係が破綻するケースもあります。これらの問題は、女性にとって大きな負担となっています。 そして、配偶者暴力に関する相談でも、障がい者女性が圧倒的に多くを占めています。この問題には急いで対処する必要があります。   女性障がい者の収入 女性障がい者の収入に関して、その現状を見てみましょう。障がい者生活実態調査研究所の調査によれば、障がい者女性の平均年収は111万円とされています。この金額は年金などを含めたものであり、障がい者男性の平均年収の約半分に相当します。 年収の低さは、家庭で暮らしている場合でも、施設に住んでいる場合でも、虐待や性被害に遭った場合に加害者を訴えることが困難であることを意味します。転居に必要な費用も十分に用意できないかもしれません。 ある40代の視覚障がい者女性は、出産後の職場復帰に不平等を感じました。健常者女性は正職員として復帰できるのに対し、彼女はパート扱いとされ、扶養内で働くように勧められたといいます。   様々な軽視 また、ある精神障がい者女性は、受診した精神科で医師から「女性なら家族や配偶者に養ってもらえる」と言われたことに衝撃を受けました。さらに、一部の女性は労働市場で不当な扱いを受けることもあります。例えば、一度は正社員として採用されたのに、実際には嘱託社員のままであるといったケースも見受けられます。 障がい特性を隠し、他者の期待に応えようとする努力は、女性にとって特に負担が大きいようです。特にASD女性は、外見やふるまいに関する規範に従うことに苦心しています。 このような現状から、障がい者女性は女性のジェンダー規範に対して疑問を持ちやすく、自らの人生やアイデンティティについて深く考えることもあります。   性暴力の実態は長らく明らかにされてこなかった 性暴力の実態は、障がい者にとってはあまりにも闇が深く、長らく明らかにされてこなかったものでした。しかし、最近、法政大学の岩田氏が当事者団体や支援団体と協力してアンケート調査を行った結果、恐るべき事実が明らかになりました。 岩田氏によれば、加害者の7割が被害者に近しい関係にあり、障がいを持つ被害者に対して性加害を行ったというのです。中には10回以上も性暴力を受けた被害者も存在したと言います。 女性障がい者の介護を受けることが性暴力に結びつきやすいというのは以前からの話でしたが、最近、障がい者支援団体職員が障がいを持つ女性に対して繰り返し強制わいせつを行ったとして逮捕されるという悲劇も報じられました。   被害者は逃げることが難しい このような加害者が近しい関係にあるため、被害者は逃げることが難しく、何度も繰り返される被害によってどれほどの絶望感に襲われるか想像するだけでも恐ろしいことです。さらに、肢体不自由女性からは、介助を受けている間に性的な触れ回しが行われるという訴えも上がっています。露出魔や痴漢に遭遇しても逃げることができないため、恐怖にさらされることも多いようです。 買春を持ちかけられるだけでも屈辱的なのに、障がい者だからと金額まで値切られることもあるというのは、人間としての尊厳を傷つけられることと同じです。障がい者の性被害は立件が難しいというのも以前からの問題であり、加害者を野放しにされるケースも少なくありません。被害者やその家族が証拠を集めても、警察の対応が迅速でなかったり、検察が不起訴にする場合もあるため、被害者の不安と怒りは増すばかりです。   障がい者女性たちの性暴力被害に直面している現実 障がい者男性に対しては、健常者男性と同じように性的なサービスを求める声が上がり、障がい者向けの風俗や自慰介助サービスなどが提供されるようになってきました。これまで障がい者の性についてはタブー視されてきましたが、「なぜ重度障がい者男性は、健常者男性と同じような性的なサービスが受けられないのか」という疑問は、決して不当なものではないと思います。 しかし、同じくらいの声が障がい者女性たちの生き辛さと性暴力被害に直面している現実と対比されると、やるせなさを感じざるを得ません。   まとめ 障がい者男性の性的ニーズが認識されつつありますが、障がい者女性の生活困難と性暴力被害が放置されています。男性のサービス提供と女性の苦悩との対比が痛ましく、ジェンダーによる二重基準が浮き彫りにされています。男女ともに問題を解決するため意識改革や教育の必要があり、早急な対応が求められます。   参考 障がい者女性の透明化された「生きづらさ」

犯罪を繰り返した知的障がい者の「やっぱり戻りたい」という言葉 受け入れる支援施設と近隣住民の反対

軽度の知的障がいと自閉症の傾向があるYさんは、過去に逮捕歴があり、2007年には大きな事件を引き起こしてしまいました。 Yさんは障がい者支援施設ゆうとおんに戻りたいと願いましたが、地域の反対や行政の圧力が彼を取り囲んでいました。それでも、彼の心は変わることなく、ゆうとおんに戻りたいという思いで満ちていました。 その思いを受け止めたのは、施設のスタッフでした。彼らはYさんの望みを尊重し、彼を受け入れました。今、彼はゆうとおんで仲間たちと穏やかな日々を過ごしています。事件後、彼を支えるために結成された支援者のグループも、役割を果たし、「発展的に解散」しました。   最初の事件 2007年1月、近鉄八尾駅前の歩道橋で、クッキーを販売していた男が、突然3歳の男の子を抱きかかえ、地面に落としました。その男がYさんでした。男の子は一命を取り留めましたが、重傷を負い、後遺症が残りました。 知的障がい者による事件は、近年多くの報道がなされています。2001年4月のレッサーパンダ事件などがその一例です。これらの出来事は社会において議論を巻き起こし、人々の心に深く刻まれました。 それでも、Yさんのような人々に対する理解と支援が必要です。彼らは特別な配慮と支援を必要としながらも、社会の一員として尊重されるべきです。彼らの望みを尊重し、彼らが尊厳を持って生きることができるよう、私たちの社会は更なる努力を払う必要があります。   触法障がい者、累犯障がい者 法を犯す障がい者は一般的に“触法障がい者”と呼ばれ、中でも犯罪を繰り返す人々は“累犯障がい者”とされています。彼らの刑務所での実態は、元衆院議員の山本譲司氏の著書で詳しくクローズアップされました。 ゆうとおんの名前は「You(r) tone」に由来しています。この施設は、八尾市の職員だった畑健次郎さんと土橋恵子さんが1996年に設立した授産施設で、その後、社会福祉法人として発展しました。彼らはどのような人であっても属性で判断せず、本人が望むなら受け入れるという理念を貫いています。 利用者と支援者を分け隔てない「ともに生きる」支援で知られ、障がいの重度な人から軽度な人、さまざまな事情を抱えた利用者が集まっています。   「八尾事件を考える会」 事件後、テレビで畑さんが責任を取る姿が放送され、それを見た障がい福祉の関係者らが「八尾事件を考える会」を立ち上げました。この会は、同様のリスクのある人々を支援し、地域社会での生活を支援することを目指しています。彼らは月に1度のペースで会合を開き、裁判の傍聴や面会支援などの活動を行っています。 取り調べでYさんが語ったところによれば、彼の犯行の動機は「大きな事件を起こせば、ゆうとおんに戻らなくて済む」というものでした。彼は比較的障がいが軽く、利用者の中でリーダー的存在でしたが、当時は1人の女性利用者との関係に悩み、その問題を解決できませんでした。2008年12月の大阪地裁判決では、彼の心神耗弱が認められつつも、懲役5年6月が言い渡されました。   時には支援者のような振る舞い Yさんがゆうとおんにやってきたのは1999年でした。それまで彼は府立の施設に入所していましたが、無断外出や子どもの連れ去り事件を起こしたことで、施設側は彼を放り出すことを決断しました。家族は途方に暮れ、地域の障がい者施設であるゆうとおんに連絡し、彼を引き受けてもらうことになりました。 Yさんは優しい性格で、冗談を言って周りを笑わせる気さくな人でした。しかし、彼にはきちょうめんで融通が利かない一面があり、ルールや決まり事に厳格で、それを守れない人に対しては我慢ができなくなることもありました。彼は利用者の中で多くのことができるため、時には支援者のような振る舞いも見せることがありました。 幼い頃に両親が離婚し、双方を行ったり来たりする不安定な生活を送りました。学校では同級生からのいじめに苦しんだり、初めての就職先で激しいいじめに遭ったりと、彼の人生は困難な道のりでした。   本当の意味での反省が伝わらない 同年代や成人相手ではなかなか対等な関係を築けないため、彼は小さな子どもに興味を持ち、保護者の目を盗んで子どもを連れ出す行動が増えていきました。 しばらく子どもと遊んでいると、彼は子どもが泣き出すとどう対処すれば良いか分からなくなり、時には暴力を振るうこともありました。このような行動が彼を逮捕することもありました。 幼児の連れ去り行為は、ゆうとおんに入所してからも続きました。しかし、畑さんや土橋さんは彼を見捨てませんでした。彼らは「分けない、切らない、共に」という信念を持ち続け、Yさんも彼らに深い信頼を寄せていました。 Yさんは刑期を終え、社会に戻る際、「再犯しないこと」が最も重要な約束事とされることを理解していました。しかし知的障がいのため、自らの行動の動機をうまく言葉で表現することが難しく、また、事件に対する反省もまだ消化しきれていない状況でした。 彼はいつも謝罪や反省の言葉を繰り返しながらも、その表面的な態度から、本当の意味での反省が伝わりにくいことを自覚していました。   2年間の生活訓練 出所後、直接ゆうとおんに戻ることは許可されませんでした。そのため、彼は府立の入所施設で2年間の生活訓練を受けることになりました。この期間中、彼は閉ざされた人間関係の中で規則正しい生活を送り、アンガーマネジメントやソーシャルスキルトレーニングなどのプログラムに参加しました。 これらの取り組みは、彼の認知と行動の変化を促し、再び犯罪を誘発しない生活環境へと調整するためのものでした。また、ゆうとおんや関係者は、彼が過度に規範意識にとらわれないように心配しました。 行政や専門家から再犯を防ぐため強い圧力 事件から8年後の2015年5月、Yさんはゆうとおんに戻りました。しかし、ゆうとおんは触法障がい者への対応に関して「素人集団」と見なされ、行政や専門家から再犯を防ぐための強い圧力を受けていました。Yさん自身も、失敗を許されないというプレッシャーの中で、再び地域生活を始めることに恐れを感じていました。 Yさんにトラブルや混乱を引き起こさせないため、分かりやすい生活を提供するために、利用者と職員の役割分担を徹底しました。逸脱行為があると、職員は「ここからは職員の仕事なのでタッチしないで」と厳しく指摘しました。 また、日中の活動や夜間の見守りにはそれぞれキーパーソンを配置し、彼の行動を細かくチェックしました。毎週末には、面談者が一対一で彼の生活を振り返り、心の状態を探る時間を設けました。   管理的な対応に強い緊張とストレス しかし、これらの管理的な対応はYさんに強い緊張とストレスを与えました。普段から飲んでいる薬を忘れてしまった際には、彼は自分を責め、「なぜこんな失敗をしてしまったのだろう」と悩みました。その結果、パニックに陥り、職員を殴り、鼻の骨を折るけがを負わせる事態となりました。 行政サイドも「再犯の恐れがある」として、ますます態度を硬化させました。精神科入院を経てゆうとおんに戻る際には、支援者は厳しい警告を行いました。「もし次に何かあれば、ゆうとおんには留まれない。地域での生活も難しくなるだろう」との言葉でした。 その後の支援は監視的なものとなり、彼の行動を細かく制限しました。グループホームでは、彼が生活する上で当然のことを自らで行うことが拒否されました。そして次には、冷蔵庫を開けることすら許可されず、彼は混乱し、パニックに陥りました。   不穏な行動がますます悪化 Yさんの不穏な行動は収まるどころか、ますます悪化し、その2カ月後には大きな事件を引き起こしてしまいました。それは2016年3月の出来事でした。 日中、突然施設を飛び出し、近くのバス停から路線バスに乗り込んで、前に座る高齢女性の首を絞めるという事件が起きました。幸いなことにケガは軽傷で済みましたが、彼は殺人未遂罪で逮捕されました(後に傷害罪で起訴)。 この事件の一報を受けたゆうとおんや考える会のメンバーは、積み上げてきたものがすべて崩れ去ったショックと無力感で絶望しました。彼がゆうとおんに戻ってきてからもうすぐ1年を迎えようとしていました。   諦めずに彼を支える支援者たち このような事態は、彼にはもう地域生活が無理ではないかと思わせるものでした。しかし、支援者らは諦めずに彼を支えました。公判では、ゆうとおんは彼が出所後も再び受け入れる用意があるとする更生支援計画書を提出し、採用されました。そして判決は懲役1年2カ月となりました。 一方で、再犯防止を第一に掲げる行政や刑務所側、触法の専門家たちは、「再犯を許した」ゆうとおんの支援力に見切りをつけました。彼らは服役後に生活する場所が見つからない障がい者らが対象になる「特別調整」の制度に乗せ、ゆうとおんとは別の受け入れ先を探し始めました。そしてゆうとおんや考える会のメンバーは、刑務所でのYさんとの面会を拒否されました。   荒れて暴力行為を繰り返す Yさんは閉ざされた環境で「あなたはゆうとおんと別のところで暮らしたほうがよい」と説得され、動揺していました。再び犯罪をしてしまった自分に対してすっかり自信を失い、「僕もその方がいいと思う。他のところでがんばろうと思う」と手紙でゆうとおんに伝えてきました。しかし、本音では彼は納得していませんでした。この頃から刑務所内でのトラブルが増え、懲罰を繰り返し受けるようになっていました。 結局、満期出所後も受け入れ先が見つからず、Yさんは一度精神科に入院しました。しかし、病院内でも彼は荒れて暴力行為を繰り返しました。このような状況を「本人の粗暴性が顕わになっている」と評価する関係者もいました。 しかし、Yさんに寄り添って考えると、彼がゆうとおんに戻りたいという気持ちと裏腹に、自分の望まない生活を強いられていることが「納得がいかないこと」の行動化につながっていることは明らかでした。   弁護士の介入により行政側が対応を変える Yさんの再びゆうとおんに戻るための闘いは、人権問題として浮かび上がりました。弁護士の介入により、行政側が対応を変え、最終的にYさんをゆうとおんに戻すことが決まりました。 Yさんが再び地域生活に戻ってから6年以上が経過しました。ゆうとおんでは、前回の失敗を踏まえ、細かいルール設定を廃止しました。彼のために小さなユニットの作業場を設け、彼の支援の決定は彼なしで行われないようにしました。週に1回のチーム会議では、本人も交えて生活を振り返り、危機時の対応を含めたクライシスプランを共同で作成しました。   周囲との関係を築きながら落ち着いた生活を送っている 現在のYさんは50代という年齢もあり、抗精神病薬の影響で体力が落ち、歩行や作業のスピードが遅くなっています。 Yさんの生活様式は、新型コロナウイルスの流行を経ても変わらず、常に時間通りに行動します。彼の丁寧な生活やルーティンは、支援者らにとっても驚きの種であり、再犯を否定することはできませんが、周囲との関係を築きながら落ち着いた生活を送っている姿を見て、「今度こそ」という期待が生まれています。 2023年11月末には考える会が解散し、その日に集まったYさんは、長年支えてくれた人々から祝福を受けました。彼は深く反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓い、支援者らの見守りを求めました。 ゆうとおんと考える会は、山あり谷ありの四半世紀を共に過ごし、何が起きるか分からない不確実な状況に耐えながらも、最後には希望を見つけました。「終わりよければ、それもよし」。解散した会のメンバーらが気に入っているフレーズです。 まとめ Yさんは再犯歴を抱えながらも、ゆうとおんの支援で地域生活に向かいます。支援者らは彼の希望を尊重し、成長を見守ります。再犯防止は容易でなかったが、彼の意思が尊重され、地域生活が再開されました。ゆうとおんの支援が彼の自信を取り戻し、新たな未来への道を開いています。   参考 犯罪を繰り返した58歳の知的障がい者が「ぼく、やっぱり戻りたい」と語る支援施設 近隣は反対、行政は圧力…それでも受け入れ続けた | 2024/3/21 - 47NEWS

「隠れ発達障がい」だった母の生涯を本に「のえの声、永遠に響き続けます」生きづらさを娘が歌う

2008年、37歳でこの世を去ったシンガー・ソングライター、のえ。彼女は命の終わりを告げる直前に、発達障がいと診断されました。 その息子を持つ母、詩人のあする恵子さん(72)は、娘の軌跡を辿り、10年の歳月をかけて彼女の生涯を本にまとめました。   500ページを超えるノンフィクション 「月よわたしを唄わせて “かくれ発達障がい”と共に37年を駆け抜けた『うたうたい のえ』の生と死」。そのタイトルには、のえの生と死、彼女が抱えた発達障がいと向き合いながら生き抜いた37年間が込められています。 500ページを超えるそのノンフィクションは、のえが最期に大量の処方薬を摂取した日から始まります。あするさんは、冷徹なまでにその日を描き、彼女の人生を再構築するために書き記しました。   亡くなるわずか2カ月前に自閉スペクトラム症と診断 のえは東京で生まれ、北陸の山あいで育ちました。彼女は中学を卒業し、上京後に路上での弾き語りを始めました。その独特の歌声は、聴衆を惹きつけましたが、人間関係に悩み、家族との疎遠も経験しました。 そして、亡くなるわずか2カ月前に自閉スペクトラム症と診断されました。その後、うつ病やアルコール依存症といった二次障がいに苦しんだのです。 晩年、のえは関西に拠点を移し、大阪市の長居公園にあるテント村を訪れました。そこで彼女は自然と共にあり、自分自身であることを感じました。しかし、その居場所は07年2月に強制撤去され、のえの心の支えは奪われました。   障がいへの理解の不足を浮き彫りに 「空気なんて読めない 読まないんでなくて 読めないのよ」「できればみんなとおんなじになりたかったんだ でもがんばればがんばるほどに息ができないよ」――最後の曲「KYソング ひらきなおりの唄」は、のえが協調性を求められる社会に追い詰められていた姿を描きます。 あするさんは、のえの生涯における適切な医療や福祉の支援の欠如について綴り、障がいへの理解の不足を浮き彫りにしました。 「ようやく今、太陽を堂々と見られる」。その言葉には、娘の尊厳と生きた証しを刻むあするさんの強い覚悟と愛情がにじんでいました。 そして、16日、のえの記憶をたどるライブが吉祥寺で開かれます。その場所で、のえの声は永遠に響き続けるでしょう。   「大切な記憶をたどる」 吉祥寺のライブハウス曼荼羅(まんだら)が、のえさんの思い出に満ちた1990年代の舞台として、16日の特別なライブに彩られます。 このライブでは、のえさんの音源や映像が流れ、あするさんの朗読が行われ、音楽仲間たちによる演奏が繰り広げられます。また、のえさんと親交のあった韓国文学翻訳者の斎藤真理子さん、そして7歳のときに母を失った作家末井昭さんとの鼎談も予定されています。   「見せなければ伝わらない当事者性がある」 自死というテーマは、一般的にはタブーとされがちですが、あするさんは「見せなければ伝わらない当事者性がある」と述べます。彼女の考えは、自身の生き方とも密接に結びついています。 のえさんが生まれた後、ある日、伴侶となる岩国英子さん(76)との出会いがありました。77年に北陸に移住し、「ベロ亭」と名付けられた家で、のえさんを含む5人の子どもたちを共に育てました。既存の家族とどんなに違おうと試行錯誤しながら肯定し、分かりにくい当事者性を懸命に伝えて生きてきたのです。   「希望と共に前を向くきっかけになれば」 岩国さんもまた、「大切な人を亡くして自責の念で苦しんでいる人の視点がほんの少しでも変わり、希望と共に前を向くきっかけになれば」と願っています。 このライブは、のえさんが生きた証しと、彼女の魂が今もなお息づいていることを讃える場となるでしょう。そして、その場に集う人々は、彼女の音楽とメッセージを胸に刻み、心を繋ぎ合わせることでしょう。 自閉スペクトラム症:理解と支援の重要性 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder、ASD)は、神経発達の障がいの一種であり、個々の発達や行動に幅広い特徴を持つ疾患です。 ASDは、コミュニケーションの困難や社会的相互作用の障がい、興味や行動のパターンの制約など、さまざまな形で表れることがあります。 こうした特性は、個々の人によって異なり、その影響も幅広いため、「スペクトラム(spectrum)」という用語が使われます。   ASDの特徴   コミュニケーションの困難 ASDの人々は、他者とのコミュニケーションにおいて、言葉や身振り、表情などの社会的なサインを理解することが難しい場合があります。 例えば、会話の中で相手の感情や意図を読み取ることが難しく、自分の思いや感情を適切に表現することも困難です。このため、コミュニケーションの円滑な進行が難しくなることがあります。   社会的相互作用の障がい ASDの人々は、他者との関係を築くことや維持することが難しい場合があります。友情や共感を示すことが難しく、他人の感情や視点を理解するのが難しいことがあります。 また、社会的な規範や期待に従うことが難しいため、他者との関係が希薄になることがあります。   興味や行動のパターンの制約 ASDの人々は、特定の興味や関心を持ち、それに強く執着することがあります。例えば、特定のトピックに対する深い知識や情熱を持ち、そのトピックについて熱心に話すことがあります。 また、日常生活の中で同じ行動パターンを繰り返すことがあり、変化や柔軟性に乏しい傾向が見られることもあります。   これらの特徴は、ASDの人々が日常生活や社会的な状況で適応するのを難しくする要因となる場合があります。そのため、適切な支援や理解が必要とされます。   ASDの原因と診断 ASDの原因は、複雑で多岐にわたると考えられています。遺伝的な要因、環境的な要因、そして脳の発達に関連する要因が関与している可能性があります。 遺伝的な影響は、家族内でASDが多く見られることから推測されます。また、妊娠中や出生後の環境要因、特に母親の感染症や妊娠中のストレスなどがASDのリスク要因とされています。   症状が顕著になるのが2〜3歳頃 ASDの診断は、主に行動や発達の観察に基づいて行われます。幼児期から発症することが多く、症状が顕著になるのが2〜3歳頃です。 発達の遅れや異常な行動パターン、コミュニケーションの困難などが見られる場合、専門家による詳細な評価が必要とされます。 精密な診断は、神経発達の専門家や小児科医によって行われ、様々な評価ツールやテストが使用されます。早期の診断と適切な支援は、ASDの人々が最大限のサポートを受けるために重要です。 ASDへの理解と支援の重要性 自閉スペクトラム症(ASD)を持つ人々やその家族は、理解と支援を必要としています。ASDは、個々の人々に異なる特性やニーズをもたらすため、適切なサポートが重要です。以下は、ASDの人々への理解と支援のためのいくつかの重要なポイントです。   教育と啓発 ASDについての正しい情報を広め、偏見や誤解を減らすことが不可欠です。ASDの特性やニーズについての正確な理解は、教育機関や地域社会での啓発活動を通じて提供されるべきです。 このような啓発活動により、ASDの人々が受ける支援が向上し、彼らの生活の質が向上します。   個別化された支援 ASDの人々は、個々の特性やニーズに合わせた支援が不可欠です。個別化された支援プランを策定し、専門家や家族と緊密に連携してサポートを提供することが重要です。 これにより、ASDの人々が最適な支援を受け、彼らの能力や興味を最大限に活かすことが可能になります。   社会的な包摂 ASDの人々は、社会的な結びつきや支援系統を築くことが重要です。包摂的な環境を促進し、異なる能力や興味を持つ人々が共に生活し、成長することができるよう努めることが重要です。また、差異を受け入れる文化を醸成することで、ASDの人々がより満足度の高い生活を送ることができます。   早期介入と治療 幼少期からの早期介入や適切な治療プログラムは、ASDの人々の成長と発達を促進します。行動療法や言語療法などの専門的な治療を提供することで、ASDの人々がコミュニケーションや社会的なスキルを向上させることができます。 早期の介入は、ASDの人々が最大限の支援を受け、ポテンシャルを最大限に引き出すための重要な手段です。   以上のポイントを踏まえると、ASDの人々やその家族が支援を受けるための継続的な努力が必要であることが理解できます。彼らが社会において完全に参加し、自己実現を果たすためには、包括的な支援システムが不可欠です。   まとめ ASDの人々やその家族が直面する課題は多岐にわたりますが、適切な支援と理解があれば、彼らも充実した生活を送ることができます。特に、教育や啓発活動を通じて、ASDに関する偏見や誤解を減らし、社会全体が受け入れる文化を醸成することが重要です。 また、個別化された支援プランを策定し、専門家や家族と連携して、ASDの人々が彼らの能力を最大限に発揮できるよう支援することも不可欠です。 さらに、早期の介入や専門的な治療プログラムを提供することで、ASDの人々がコミュニケーションや社会的なスキルを向上させることができます。 このような取り組みが行われることで、ASDの人々が社会において自己実現を果たし、充実した生活を送ることができるよう支援されるでしょう。   参考 「隠れ発達障がい」37年の生涯を本に 生きづらさ 娘は歌った 母の詩人あするさん:東京新聞 TOKYO Web

「他人の便を触り大腸炎に…」地震で被災した“視覚障がい者” の声 避難先での課題とは

能登町小木での地震によって被災 視覚障がいを抱える方々が遭遇する避難体験は、その厳しさを想像を絶するものです。74歳の灰谷誠司さんも、元日の能登町小木での地震によって自宅が被災しました。 灰谷さんは高校生の時に視力を失い、それ以来、盲導犬と共に暮らしています。地震の揺れが長く強烈だったため、灰谷さんは未曾有の不安に襲われました。 「まだまだ大きな揺れが続くのではないか」という不安に駆られました。そして、トイレにいた彼は、困難な状況に備えて座り込み、静かに待ちました。   周囲の支援 家族と共に避難所に向かう途中、普段なじみのある道が崩れ、高台の小学校への階段が使えなくなりました。これは彼にとって大きな試練でした。彼が通常行っていた道が断絶され、迂回路を通らざるを得なくなったのです。 しかし、灰谷さんを取り巻く人々は、彼の安全を最優先に考え、食事やトイレなどの生活必需品を支援しました。特に、トイレの使用においては、水道が使えず、ペットボトルを使って流す必要がある中、彼は周囲の人々に助けを求めました。その際、失敗を恐れず、率直に助けを求める彼の姿勢に、支援者たちは温かく応えました。   新しい場所での移動は大きな不安要因 現在、灰谷さんは小松市で2次避難生活を送っています。しかし、新しい場所での移動は未だに彼にとって大きな不安要因です。そのため、彼は週に1度の外出では「同行援護」のヘルパーに頼り、自ら道を覚える努力も怠りません。 新しい道は彼にとって恐怖であり、迷子になることが最も恐れることです。しかし、彼はその恐怖と向き合い、一歩ずつ前進しています。   ふるさとに戻りたい 小松市での生活に慣れる努力をする一方で、灰谷さんの願いはずっとふるさとの能登町に戻ることです。彼は語ります。 「散歩していても、僕は見えないけど、向こうから声かけてくださったり、知っている人ばかりだし、ここはあそこの凸凹だとか、あっち側から波の音が聞こえるとか、迷っても知ったところが出てきて、ここなら家まで帰れるという安心感もあるし、やっぱりそういう住み慣れたところがいいのはいいですよね」 能登町は彼にとって、地理的な特徴や地域の人々との繋がりが、心の拠り所となっています。   視覚障がいのある避難者をサポートする取り組み 一方で、視覚障がいのある避難者をサポートする取り組みも進んでいます。加賀市のホテルでは、金沢工業大学の研究チームが開発した「しゃべる点字ブロック」が設置されています。 これは、点字ブロックに音声で道案内を提供するもので、専用のスマートフォンで読み込むことで避難所内での移動を支援しますと、松井くにお教授が説明します。 「点字ブロックというのは『進め』と『止まれ』の2種類しか情報がない。我々はその2種類以上の情報、もっとたくさんの情報を提供したい。いわゆる点字ブロックに黒いマーキングをつけることで、たくさんの情報を提供できるようにした」 この技術は、視覚障がい者の方々の要望に応える形で開発され、避難所内での安全な移動を支援することが期待されています。   困っている人たちの話をよく聞いて技術を提供していきたい 松井教授は、視覚障がい者からの要望に基づき、彼らが困っている問題に対して積極的に取り組んでいく姿勢を示します。 「視覚障がい者の方から連絡いただいて、我々の技術が提供できるのではないかということで、やっぱり困っている人たちの話をよく聞いて、その人たちの要望に沿った形で、いろいろな技術を提供していきたい」と述べます。 このような取り組みは、災害時の避難所生活をより安全で快適なものにすることで、社会全体の福祉を向上させることにつながるでしょう。   しゃべる点字ブロックの導入により自由に移動できるように 珠洲市から避難している大口史途歩さんは、しゃべる点字ブロックの導入により、ホテルの部屋からロビーまで自由に移動できるようになりました。「壁際に物がなければ、壁伝いに歩くということも可能。でも避難所というのは臨時で作るものだから、廊下に物がたくさん散乱する。白杖も触れない、壁伝いにも歩けない、初見の場所で方向も分からない。なければもう動けないっていうのが正直なところ」と喜びを込めて語ります。彼の言葉は、視覚障がい者が避難所内での移動における課題を率直に表しています。 しかし視覚障がい者の避難所内での移動の困難さが如実に表れています。避難所が一時的な場所であるため、通常の生活とは異なり、障がい者にとっては特に課題が多いのです。   最も必要と感じているのは代筆のサポート 一方で、地震から2か月が経過し、生活再建への動きが加速する中で、大口さんが最も必要と感じているのは代筆のサポートです。 「スマートフォンとかを使ったアプリで読み取ることはできる。でも情報を書くことができない。書類の中身も分かって、字の書ける方がいないと、枠が分からないから結局枠の中に字を収めることもできない。代筆代行とか、そういうのがあったら、いま直近で欲しいのはそういう感じ」と述べます。 代読・代筆の支援は、災害時には特に重要であり、避難所での生活再建において不可欠な支援となっています。   代読・代筆の支援はまだ十分ではない しかし、石川県では代読・代筆の支援はまだ十分に整っていません。石川県障がい者協会の米島芳文理事長は、「障がい者総合支援法」に基づき、自治体が支援員の派遣事業を行うよう定められているものの、代読や代筆の支援は任意であるため、導入している自治体は少ないと指摘します。 彼は、居住地だけでなく避難先の自治体でも代読・代筆の支援が必要であるとし、県レベルでの広域支援の必要性を訴えています。災害時には、特に弱者の声に耳を傾け、支援の充実を図ることが、社会の包摂性と福祉の向上につながるでしょう。 手も洗えずに大腸炎に 珠洲市で被災した大口さんは、避難所での困難な経験を語っています。彼は最初に身を寄せた避難所の簡易トイレで、他人の便に触れるという状況に何度か遭遇し、さらに手を洗うことができなかったため、大腸炎にかかってしまったと述べています。このような状況は、災害時における障がい者支援の不備や課題を浮き彫りにします。 さらに、点字ブロックの上に荷物が置かれることもあるとし、大口さんは障がいのある人に配慮した簡易防災マニュアルを避難所に設置してほしいとの願いを語っています。 このような取り組みがあれば、障がい者も含めた避難所利用者が安全かつ快適に過ごすことができるでしょう。   不十分な支援 珠洲市で被災した大口さんの体験は、避難所での生活が障がい者にとっていかに困難であるかを浮き彫りにしています。 彼は避難所の簡易トイレでの衛生状態の悪さや、点字ブロックの上に荷物が置かれることによる障がい者への配慮の不足を指摘しています。特に、代読や代筆の支援が欠かせない書類作成においては、自治体の導入が不十分であることが問題視されています。   行政や関連機関が積極的な取り組みを行う必要 このような課題に対して、石川県障がい者協会の米島芳文理事長は、自治体ごとの支援策の導入とともに、県レベルでの広域支援の必要性を強調しています。 地域全体での協力が必要であり、障がい者が適切な支援を受けられるよう、行政や関連機関が積極的な取り組みを行うことが求められています。 心理的・精神的なサポートも必要 大口さんの経験からも明らかなように、障がい者の生活再建においては、物理的な支援だけでなく、心理的・精神的なサポートも欠かせません。避難所や仮設住宅においては、障がい者に対する十分な配慮と支援が必要です。被災者の声に耳を傾け、適切な施策を講じることが、地域社会の連帯と復興のために不可欠です。   社会全体での支援 視覚障がい者が避難所内での移動において直面する課題は深刻です。物理的な障がいや未知の環境によって、彼らの自立性や安全性が脅かされることがあります。 しかし、しゃべる点字ブロックのような技術の導入は、彼らの生活を改善する一翼を担っています。このような支援がさらに普及し、避難所内での生活をより安全かつ快適にすることが求められます。 また、生活再建においては、代読・代筆の支援も欠かせません。災害時には様々な手続きや書類が必要とされますが、これらを適切に処理できない場合、被災者の生活再建が遅れる可能性があります。 そのため、自治体や関連機関は代読・代筆のサービスを充実させるとともに、被災者が必要な支援を適切に受けられるように努める必要があります。   まとめ さらに、障がい者支援の拡充には、地域レベルから県レベルまでの包括的な取り組みが必要です。自治体間の情報共有や連携強化によって、支援の質と効率を向上させることが可能です。緊急時には迅速な対応が求められるため、事前に計画を立て、リソースを適切に配置することが重要です。 さらに、代読・代筆の支援が災害時だけでなく日常生活でも提供されるようにすることが望まれます。これにより、障がい者が社会参加する際のハードルを下げることができます。また、支援員の育成や教育プログラムの拡充も重要です。代読・代筆の技術やノウハウを持った専門家の存在は、障がい者の自立と社会参加を支援する上で不可欠です。   参考 「他人の便を触り大腸炎に…」地震で被災した“視覚障がい者” 避難先で直面する課題 | TBS NEWS DIG (1ページ) 

刺激が苦手な「HSC」発達障がいとどう違う?子どもたちへの接し方とは?

「HSC(Highly Sensitive Child)」とは、感受性が極めて高く、日常の些細な刺激にも敏感に反応する子どもたちのことです。 彼らは、強い光や音、においなどの刺激に対して過度に反応し、これが日常生活での困難を引き起こすことがあります。しかし、彼らの特性は発達障がいや病気とは異なります。そこで、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生に、HSCとその違いについて尋ねました。   「とても感受性が強い子ども」という意味 「HSC」とは、「Highly Sensitive Child」の頭文字をとったもので、「とても感受性が強い子ども」という意味です。この言葉は、近年メディアや書籍を通じて広く知られるようになりましたが、一部では発達障がいと混同されがちです。 そこで、HSCと発達障がいの違いについて、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生にお聞きしました。   生まれながらに持っている先天的な特徴 現在わかっていることは、HSCが病気や発達障がいではなく、その人が生まれ持った「気質」であるということです。 気質とは、後天的な性格とは異なり、生まれながらに持っている先天的な特徴です。性格は環境や経験によって変化する可能性がありますが、気質は比較的変えることが難しいとされています。   HSCは感受性、発達障がいは脳 HSCは、感覚過敏の特性があります。彼らが日常生活で経験する刺激に過敏に反応し、これが彼らの生活に影響を与えることがあります。 一方で、発達障がいは脳の機能に問題があり、物事の処理に時間がかかる症状です。つまり、HSCは感受性が高すぎるために刺激に疲れるのに対し、発達障がいは脳の処理に問題があるために困難を抱えます。   彼らが適切なサポートを受けることが重要 HSCは、環境感受性や感覚処理感受性が高い子どものことであり、同じ環境下でも刺激を受ける度合いが異なります。そのため、彼らが適切なサポートを受けることが重要です。 また、周囲の理解と支援も必要です。HSCが生活で直面する困難を理解し、彼らが安心して生活できる環境を提供することが重要です。   学校では気の休まる間がない子どもたち HSCの特徴には、さまざまなことが挙げられます。彼らは基本的に人混みが苦手であり、特に学校のような場所では緊張が高まります。しかし、彼らは知的能力に問題がなく、多動性もないため、個別支援学級の対象とはなりません。 教室では、他の子どもたちが叱られている場面などに遭遇すると、その怒りや緊張感に敏感に反応し、自分が叱られているかのようなダメージを感じることがあります。 また、避難訓練のサイレンや、チクチクした素材の衣類など、彼らが苦手とする刺激が多く存在します。   「いじめられた」と思ってしまうことも 友達との交流は楽しいものですが、彼らは人の言葉や表情を敏感に感知するため、その場面で疲れてしまうことがよくあります。さらに、彼らは考えを巡らせ過ぎて「いじめられた」と思ってしまうこともあります。また、算数の小テストで誤答をした際には、自信を喪失してしまうことがあります。HSCの子どもたちは、失敗や自身の評価に対して過剰にプレッシャーを感じ、常に自己評価に苦しむ傾向があります。そのため、学校は彼らにとって常にプレッシャーと戦う場所となりがちです。   困難を感じたときに「SOS」を出せるような環境を整える HSCの子どもが少しでもラクに過ごせるようにするために、まわりができることはあります。彼らにとって安心できる環境を整えることが大切です。 家庭や学校が安心できる場所であること、刺激が過多でないかをチェックし、必要に応じて調整することが重要です。また、彼らが困難を感じたときに「SOS」を出せるような環境を整えることも役立ちます。   事前に情報を提供し理解させること HSCの子どもが安心できるようにするためには、彼らに事前に情報を提供し、理解させることが大切です。例えば、学校に関しては、「知らないことを勉強するのは当たり前だし、失敗しても大丈夫だ」といったメッセージを伝えることが重要です。 彼らが自分の状況を理解し、対処できるようにするためには、常にサポートを提供することが重要です。 また、彼らが日常生活で感じる刺激に対処するために、親や教育者は彼らの感受性やニーズを理解し、適切な支援を提供することが重要です。彼らの苦手な刺激を最小限に抑え、安心して生活できる環境を整えることが、彼らの心の健康をサポートする上で重要です。   感じやすく傷つきやすい傾向 HSCの子どもは常に「ちゃんとやろう」という気持ちを持っています。そのため、「がんばって」といった言葉かけは逆にプレッシャーに感じることがあります。 彼らの努力やプロセスを見守り、成果にかかわらず「よくがんばったね」といったフィードバックが適切です。 また、対人関係でも、彼らは感じやすく傷つきやすい傾向があります。もし彼らが嫌な気持ちを抱えている様子が見られたら、「悲しくなっちゃったの?」とその気持ちを受け止め、一緒に状況を分析しながら相手の気持ちを淡々と説明してあげると理解しやすいでしょう。   家庭では「パーソナルスペース」を意識 家庭では、彼らに「パーソナルスペース」を提供することも重要です。日ごろから、少しの時間でも彼らがひとりで過ごせる環境を用意してあげると、彼らの気持ちを落ち着かせることができます。周囲の刺激を遮断するための工夫も役立ちます。   対策を話し合うことも重要 学年が上がるにつれて、彼らは自分の特徴を理解し、慣れてきたり困らなくなったりすることがあります。親子で彼らが不快に感じる刺激やイライラしがちな環境を共有し、対策を話し合うことも有益です。彼らが安心して成長できるよう、家族や周囲のサポートが重要です。 詳細な知識と理解が必要 「HSC(Highly Sensitive Child)」という言葉は、近年ではより広く知られるようになりましたが、それにもかかわらず、まだ多くの人々がこの特性を理解していないか、あるいは病気や発達障がいと混同してしまうことがあります。 この誤解は、彼らの感受性の高さが日常的な振る舞いに影響を与えるために起こることがあります。こうした誤解を解消し、HSCを適切に理解し支援するためには、より詳細な知識と理解が必要です。   生まれ持った先天的な気質 HSCの特性は、彼らが生まれ持った先天的な気質であることを強調することが重要です。彼らの感受性は、環境の影響を受けるだけでなく、生まれつきのものであり、そのために簡単に変えることができません。 この点で、HSCと性格の形成は異なります。性格は、環境や経験によって形成される傾向がありますが、気質は個々の生まれつきの特性に基づいています。この違いを理解することは、HSCの支援と接し方を理解する上で重要です。   一般的な刺激に対しても過度に反応 HSCの子どもたちは、日常生活の中でさまざまな刺激に敏感に反応します。例えば、強い光や音、におい、または触覚的な刺激に対して過剰な反応を示すことがあります。 これは、彼らの感覚が非常に鋭敏であり、一般的な刺激に対しても過度に反応してしまうためです。このような過敏な反応は、彼らが日常生活で様々な困難に直面することを意味します。たとえば、学校や公共の場での刺激によって、彼らは集中力を欠き、ストレスを感じることがあります。   感受性の高さによるものであり脳機能の問題ではない HSCの特性が病気や発達障がいと混同されることがあるのは、彼らの反応が一般的な範囲を超えることがあるためです。しかし、HSCは単なる感受性の高さによるものであり、脳機能の問題ではありません。この点が、彼らが病気や発達障がいとは異なることを理解する上で重要です。彼らは脳の機能に問題があるわけではなく、単に刺激に対する感受性が高いだけです。   家族や教育者、専門家のサポートが必要 HSCの子どもたちに対する理解と支援は、彼らの生活の質を向上させる上で重要です。彼らが日常生活で直面するさまざまな困難に対処するためには、家族や教育者、専門家のサポートが必要です。 彼らの感受性を理解し、適切に対処するためには、彼らの個々のニーズや状況に応じたアプローチが必要です。これには、彼らの刺激への対処方法やストレス管理の方法を学ぶことが含まれます。   無視したり軽視したりすることはしない また、HSCの子どもたちに対する周囲の理解と支援も不可欠です。家族や教育者、友人や同僚が彼らの特性を理解し、適切に対処することが重要です。 彼らの感受性を無視したり、軽視したりすることはせず、彼らが安心して生活できる環境を提供することが重要です。これによって、彼らの自己肯定感や社会的なつながりが強化され、より健康的な生活が実現されます。   適切な理解と支援 HSCは感受性が極めて高い子どもたちのことであり、彼らが日常生活でさまざまな困難に直面することがあります。しかし、彼らの特性は単なる病気や発達障がいではなく、生まれ持った気質であることを理解することが重要です。彼らに対する適切な理解と支援が提供されれば、彼らはより健康的で充実した生活を送ることができるでしょう。   発達障がいの子どもとの接し方:理解とサポートの重要性 発達障がいを持つ子どもたちとの接し方は、理解とサポートが重要です。彼らは他の子どもたちとは異なる特性やニーズを持っており、適切な支援が必要です。ここでは、発達障がいの子どもたちとの良好な関係を築くためのアプローチについて考えてみましょう。   理解と受容 最初に大切なのは、彼らの特性やニーズを理解し、受け入れることです。発達障がいは一般的な特性とは異なる場合がありますが、それが彼らの個性の一部であることを理解しましょう。彼らが異なる方法で世界を見たり、情報を処理したりすることを受け入れることが重要です。   コミュニケーションの工夫 発達障がいの子どもたちは、コミュニケーションにおいて特に支援が必要な場合があります。彼らのコミュニケーションスタイルやニーズに合わせて、コミュニケーションを工夫しましょう。具体的には、簡潔で明確な言葉を使ったり、視覚的な支援を提供したりすることが役立ちます。   予測可能な環境の提供 発達障がいの子どもたちは、予測可能な環境を求めることがあります。彼らが安心して行動できるように、日常生活や学校での環境を予測可能にする工夫が必要です。定型的なルーティンやスケジュールを作成し、彼らが安定感を持って生活できるようにしましょう。   ポジティブなフィードバックとサポート 発達障がいの子どもたちに対しては、ポジティブなフィードバックとサポートが必要です。彼らが努力したり成長したりした際には、その努力や成長を称賛しましょう。また、彼らが困難に直面した際には、適切なサポートを提供してあげることが大切です。   個別化されたアプローチ 発達障がいの子どもたちとの接し方は個別化されたアプローチが重要です。特性やニーズは一人ひとり異なるため、個別に合わせたサポートやアプローチを提供しましょう。彼らが最善の環境で成長できるよう、常に彼らのニーズに焦点を合わせて行動しましょう。 まとめ HSCは発達障がいではなく、生まれ持った特性だということをしっかり理解したうえで、本人の希望や要望などを聴きながら寄り添うことが大切です。 また、発達障がいの子どもたちとの接し方は、理解とサポートが重要です。彼らが安心して成長できるよう、彼らの特性やニーズに合わせたアプローチを取り入れましょう。彼らとの良好な関係を築くことで、彼らが自信を持ち、成功を収めることができるでしょう。   参考 繊細で刺激が苦手な「HSC」、発達障がいや病気とどう違うの? 専門家に聞く、子どもとの接し方

横浜市野毛山地区の動物園、図書館を改修 新たに障がい児者支援拠点も整備

横浜市が発表した「のげやまインクルーシブ構想」では、野毛山動物園・公園および中央図書館のリニューアルが進むとともに、新たな障がい児者支援拠点が整備される計画が明らかにされました。この構想は、2024年度中に先行整備が完了する見込みです。   障がいの有無や世代を超えて楽しめるエリアに 市は、誰もが学び、楽しみ、交流し、理解しあえるインクルーシブなまちづくりを目指し、動物園、中央図書館、障がい者支援拠点が連携することで、障がいの有無や世代を超えて楽しめるエリアに生まれ変わるとしています。 野毛山地区は教育や体験施設が集まり、市民に長く愛されてきた場所ですが、坂や階段が多く、車いすやベビーカーでの利用が困難であり、施設の老朽化も課題とされていました。今回の改修ではバリアフリー化を図り、誰もが訪れやすく、利用しやすい環境づくりが進められる予定です。 さらに、最寄りの桜木町駅、日ノ出町駅周辺から地区へのアクセス環境が改善され、都心臨海部との回遊性向上、横浜全体の魅力向上にもつながる見通しとなっています。   親子で楽しめる空間も 24年度予算案には、「のげやまインクルーシブ構想」の推進として、4億3千万円が計上されており、ふれあいコーナーの屋根の設置と屋内休憩棟の整備が完了する予定です。これにより、天候に左右されずに動物と触れ合ったり、観察の間に親子で快適に休憩できる環境が整備されます。 中央図書館は1階を「のげやま子ども図書館」に改修します。24年度中には、現在のレストランフロアを改修し、「安心・楽しい親子フロア」を整備する予定です。ここでは、寝転がったり床に座って読み聞かせができるなど、親子連れや子どもにとって居心地が良く、楽しく学べる環境づくりを目指しています。   動物園や図書館の近くに障がい者支援拠点が整備されるのは初めて 障がい者支援拠点は、図書館の並びにある旧青少年交流センター跡地に28年度までに整備されます。横浜市は多機能型拠点として、医療的ケアが必要な重症心身障がい児者と家族の暮らしを包括的に支援します。 動物園や図書館の近くに障がい者支援拠点が整備されるのは初めてであり、ゆくゆくは動物園や図書館による障がい児者支援拠点への出張体験イベントの実施や、重症心身障がい者が外出余暇活動ができるような環境整備も進められる予定です。   入場料無料 野毛山動物園に新設される「ズーペリエンタ!センター」は、展示のすぐそばに岩場などの動物の生活環境を模した空間や遊具が整備された屋内施設です。遊びながら人と動物の身体的な構造や生態の違い、共通点が体感できます。28年度中に整備が完了し、他にも動物と触れ合えるエリアの充実やレストランの改修などが順次進められます。また、入園料は無料を継続する予定です。   インクルーシブな街づくり:誰もが参加し、誰もが受け入れられる社会の実現 近年、都市開発の中で注目されているのが「インクルーシブな街づくり」です。これは、障がいの有無や年齢、性別、人種などに関わらず、あらゆる人々が参加し、安心して生活できる街を実現することを目指す概念です。インクルーシブな街づくりは、社会的な包摂性や共生性を高め、持続可能な都市の実現に向けた重要な取り組みとなっています。   重要な要素の一つにバリアフリー化 インクルーシブな街づくりの重要な要素の一つは、バリアフリー化です。これは、身体的な障壁や制約を取り除き、誰もが施設や公共空間を利用しやすくすることを指します。車椅子を利用する人や高齢者、小さな子供を連れた親など、あらゆる人々が安全かつ快適に移動し、施設を利用できる環境が整備されることが求められます。 さらに、インクルーシブな街づくりでは、多様なニーズやライフスタイルに配慮した施策が重要です。例えば、親子が楽しめる遊び場や、高齢者向けの交流スペース、障がい者支援施設などが整備されることで、あらゆる人々が街を活用し、参加できる機会が増えます。   地域の特性やニーズに合わせた取り組みが必要 地域社会の参加や共生を促進するために、住民の声を反映させた計画策定やコミュニティ活動の支援も不可欠です。地域の特性やニーズに合わせた取り組みが行われることで、より良い街づくりが実現されます。 インクルーシブな街づくりは、単なる建物や施設の整備にとどまらず、社会全体の意識や文化の変革を求める取り組みでもあります。多様性を尊重し、誰もが自己実現を果たせる社会の実現に向けて、地域のリーダーシップや市民の協力が重要です。 障がい者支援施設:多様なニーズに対応する支援の場 障がい者支援施設は、様々な障がいを持つ人々が生活を送る上で必要な支援を提供する場所です。これらの施設は、障がい者の自立支援や社会参加の促進、生活の質の向上を目指して運営されています。以下では、障がい者支援施設の主な種類と内容について解説します。   生活支援施設 生活支援施設は、日常生活の支援を提供する場所です。居宅介護支援事業所やグループホームなどが含まれます。ここでは、食事の支援、入浴や排泄の介助、家事や買い物のサポートなど、生活のあらゆる面での支援が行われます。   訓練施設 訓練施設は、障がい者が社会生活や労働に向けて必要なスキルや能力を身につけるための場所です。作業所や訓練センターがその代表例であり、仕事のトレーニングやコミュニケーション能力の向上などが行われます。   医療的ケア施設 医療的ケア施設は、重度の身体的な障がいや医療的ケアが必要な障がい者のための施設です。特別養護老人ホームや特別支援学校の中には、医療的ケアを必要とする人々を対象とした施設もあります。   リハビリテーション施設 リハビリテーション施設は、障がい者が健康状態や機能の向上を図るための場所です。理学療法や作業療法、言語療法などの専門的なリハビリテーションプログラムが提供され、障がい者の自立や社会復帰を支援します。   相談支援施設 相談支援施設は、障がい者やその家族が生活や福祉に関する相談を受け付け、適切な支援やサービスを提供する場所です。相談員が利用者のニーズをヒアリングし、適切なアドバイスや情報提供を行います。   これらの施設は、障がいの種類や程度、年齢などに応じて多様なサービスを提供しています。また、地域社会との連携や包括的な支援体制の構築が進められることで、障がい者の自立と社会参加を促進するための支援が展開されています。 障がい者支援施設は、利用者の多様なニーズに応えるために、障がいの種類や程度、年齢などに応じて幅広いサービスを提供しています。生活支援や医療的ケア、リハビリテーション、就労支援など、それぞれの施設が専門性を活かして様々なプログラムを展開しています。   地域社会全体での理解と支援体制の充実が必要 地域社会との連携や包括的な支援体制の構築が進められています。地域の企業や団体と連携し、障がい者の雇用促進や社会参加を促すための取り組みが行われています。さらに、地域住民や関係機関との情報交換や意見交換を通じて、地域社会全体での理解と支援体制の充実が図られています。これにより、障がい者が地域社会で自立し、自己実現を果たすためのサポートが展開されています。   就労支援施設:多様な働き方を支援する場所 就労支援施設は、障がいを持つ人々が働くための環境を提供し、自立した社会生活を送るための支援を行う場所です。これらの施設では、障がい者が自らの能力や興味に合った働き方を見つけ、社会参加を実現するためのプログラムが展開されています。以下では、就労支援施設の主な種類と内容について解説します。   就労継続支援A型事業所 就労継続支援A型事業所は、障がい者が労働能力を維持・向上させながら、安定した就労を継続できるよう支援する施設です。作業や仕事のトレーニング、就労環境への適応支援、コミュニケーションスキルの向上などが行われます。   就労継続支援B型事業所 就労継続支援B型事業所は、障がい者が社会的な環境で働くことに慣れるための訓練や支援を行う施設です。外部の企業や施設での実地研修や就労体験が提供され、社会復帰への支援が行われます。   就労移行支援事業所 就労移行支援事業所は、障がい者が高校や専門学校を卒業し、社会に出て働く準備をするための支援を行う施設です。職業選択の相談や職業訓練、就職先の紹介などが行われ、就労に必要なスキルや知識を身につけることができます。   就労移行支援センター 就労移行支援センターは、障がい者が高等教育機関を卒業し、社会人としてのキャリアを築くための支援を行う施設です。就職活動のサポートや職業訓練、企業とのマッチング支援などが提供され、障がい者が自立した生活を送るための力を身につけることができます。   障がいの種類や程度、希望に応じて幅広いプログラムを提供 障がい者支援施設は、障がいの種類や程度、そして個々の能力や希望に応じて、幅広いプログラムを提供しています。 たとえば、知的障がいを持つ方には、簡単な作業から専門的な技能を身につけるためのトレーニングまで、さまざまな職種や業務に関するプログラムが用意されています。身体障がいを持つ方には、適切な職場環境の提供や適性に合った仕事の見つけ方など、就労支援のプログラムが提供されています。 精神的な障がいを持つ方には、職場でのストレスやコミュニケーションの問題に対処するための支援やカウンセリングが行われます。 さらに、各施設は地域の企業や団体との連携を強化し、障がい者の雇用促進や社会参加を促すための取り組みを行っています。地域の企業と協力して、障がい者が活躍できる職場を創出し、社会的な認知度や理解を高めるための啓発活動も積極的に行われています。 まとめ 様々な施設の取り組みにより、障がい者は自らの能力を活かしながら、自立した生活を送ることができる環境が整備されています。地域社会全体が協力し合い、包括的な支援体制を構築することで、障がい者の就労機会の拡大や社会参加の促進が実現され、より多くの人々が豊かな人生を送ることができるようになります。   参考 【タウンニュース瀬谷区版】 野毛山地区 動物園、図書館を改修 新たに障がい児者支援拠点も

「頭が働かない」「ぼんやりしている」もしかしたらうつ病や適応障がいが隠れているかも?

心の病の影響で頭が働かない状態が続く場合、それが単なる疲れだけではなく、「うつ病」や「適応障害」など心の健康に関わる問題の可能性が高いことが考えられます。心身が元気でも、長期間にわたって集中できない場合は、精神的な要因が影響している可能性があります。   心の健康の問題が関係している可能性が高い うつ病や適応障害では、頭が働かない症状がよく見られるため、これらの病気の兆候が出始めたら、心の健康の問題が関係している可能性が高いでしょう。 病気が原因であれば、放置すると悪化する可能性があるばかりか、ぼんやりしていることでケガをしやすくなる恐れもあります。したがって、早めに対処することが重要です。   特に悩みやストレスを抱えている場合は発症しやすい 心の病全般において、頭が働かない症状はよく見られます。心の病は精神的な負担を受けやすく、特に悩みやストレスを抱えている場合は発症しやすい傾向があります。このような心の問題は、日常生活におけるさまざまな活動に支障をきたす可能性があります。   適切なアドバイスや治療を受ける そのため、心の健康に関する問題が見られた場合は、専門家の診断と適切な治療が必要です。精神科医や心療内科医などの専門家に相談し、適切なアドバイスや治療を受けることが重要です。 また、心の健康を維持するためには、ストレス管理や適切な休息、健康的な生活習慣の確立も大切です。早期の対処と適切なケアによって、心の健康を守り、生活の質を向上させることができます。 モヤがかかっているような感覚 頭が働かない状態は、まるで頭にぼんやりとしたベールやモヤがかかっているかのような感覚をもたらします。頭の中が混乱し、前方の視界が不明瞭であるかのような視界不良のような状態です。   頭が働かないとは? このような状態では、作業中に急に気力が途切れ、手が勝手に止まってしまったり、考え事をしている最中に頭が空白になり、何も考えられないまま無意識の状態で時間が経過していることがあります。頭が働かないとは、一時的に思考が浅くなり、意識的に考えることが困難になる状態を指します。 このような状態は、心にストレスがかかっている場合によく見られます。心のストレスが頭の働きに影響を与え、思考能力が低下することが原因です。うつ病や適応障害などの心の病気では、このような頭が働かない状態が特に顕著です。   思考能力がスムーズに働かなくなる うつ病では、脳の神経伝達が乱れ、脳の機能が低下し、思考能力が鈍化します。一方、適応障害では、環境への適応が困難で精神的な負担が蓄積し、脳が疲労します。その結果、頭の中が曇りがかったような感覚が続き、思考能力がスムーズに働かなくなります。 このような状態は、日常生活においても大きな影響を及ぼします。仕事や学業、人間関係など、さまざまな場面で思考能力の低下が問題となることがあります。また、自己肯定感や生活の質にも影響を与える可能性があります。   専門の医療機関を頼る 心の問題でうつ病や適応障害にかかり、頭が働かない状態に陥った場合、まずは専門の医療機関を頼ることが大切です。 精神科や精神神経科、心療内科、メンタルヘルス科など、心の健康を診る専門家がいる病院を受診しましょう。そこで正確な診断を受けることで、適切な治療法や対処方法が見つかります。   身体の病気が心の症状に影響を与えることもある 適応障害は自然に治ることもありますが、症状の原因や深刻さを確かめるには医師の診断が必要です。医師による適切な診断と治療計画に従うことで、症状の改善が期待できます。 また、思考能力が低下する症状が心の病気だけでなく、身体の病気によるものかもしれません。身体の病気が心の症状に影響を与えることもありますので、医師の診察を受けることでその可能性も排除できます。   放置すると悪化する可能性 頭が働かない状態が長期間続く場合、うつ病や適応障害などの心の病気の可能性があります。これらの病気は放置すると悪化する可能性があるため、早めに医師の診断を受けることが重要です。 思考能力の低下は仕事や日常生活でのミスやトラブルを引き起こす可能性もありますので、自己管理や予防の観点からも注意が必要です。   仕事や人間関係に支障をきたすこともある 心の病気を放置すると、生活全般に大きな影響を及ぼす恐れがあります。仕事や人間関係に支障をきたすこともあり、社会生活における問題が増幅される可能性があります。 そのため、思考能力の低下や頭が働かない症状が見られる場合は、早期に適切な治療を受けることが不可欠です。   活習慣の見直しやストレス管理などの自己ケアも重要 心の病気による症状が長期間続くと、身体的な健康への影響も出てきます。ストレスや不安が持続することで、免疫力の低下や身体の症状が悪化するリスクが高まります。 したがって、早期の治療とともに、生活習慣の見直しやストレス管理などの自己ケアも重要です。   家族や友人のサポートも受け心身のバランスを保つ 心の健康を守るためには、専門医の指導のもとで適切な治療を受けることが肝要です。また、家族や友人のサポートも受けながら、心身のバランスを保つことが大切です。 心の病気に苦しんでいる場合でも、適切な治療とサポートを受けることで、健康な生活を取り戻すことができます。   強いストレスを抱えていないか? 心のストレスが原因であるうつ病や適応障害などの病気は、脳に直接影響を与えるため、思考能力が低下し、頭が働かない症状が出やすくなります。 日常の作業や活動中でも集中力が欠け、ぼんやりすることが増える場合は、自身が強いストレスを抱えていないか振り返ってみましょう。   誰でもかかる可能性 心の病気は、精神面に大きな負担を感じることで発症しやすく、ストレスを抱える人々には誰でもかかる可能性があります。現代社会では、仕事や人間関係、経済的な問題などさまざまな要因がストレスの源となります。そのため、日常生活でのストレスや負担に敏感になり、それが心の健康に影響を与える可能性があります。   自身の状態に注意を払う 頭が働かない状態は一見大した問題ではないように見えますが、背景に心の病気が関わっていることもあります。 このような症状が続く場合は、自己評価や自己観察を行い、自身の状態に注意を払うことが重要です。心の健康に対する自覚を持ち、必要であれば専門家の助言や治療を受けることで、適切なサポートを得ることができます。   放置せずに早めに対処する 心の健康を守るためには、ストレス管理や適切なケアが必要です。日常生活でのバランスを保ち、自己の感情や心の状態を理解し、必要に応じてサポートを受けることが大切です。心の病気は放置せずに早めに対処することで、より健康で充実した生活を送ることができます。 このような心の健康への配慮は、個人だけでなく社会全体にとっても重要です。心の健康を保つことは、生産性や幸福感の向上につながるだけでなく、医療費の削減や社会的な負担の軽減にも役立ちます。したがって、心の健康に対する意識を高め、支援体制の整備を進めることが必要です。 心の健康を守るために:うつ病と適応障害について 近年、心の健康に関する問題が注目されるようになりました。特に、うつ病や適応障害といった精神的な疾患は、社会全体に影響を与える深刻な問題となっています。この記事では、うつ病と適応障害について詳しく解説し、心の健康を守るためのアプローチについて考察していきます。   うつ病について うつ病は、気分の低下や無気力感、興味の喪失など、さまざまな症状が現れる精神疾患です。これらの症状が日常生活に支障をきたし、社会的・職業的機能に影響を与えることがあります。うつ病は個人のみならず、家族や社会全体にも大きな負担を与える可能性があります。   原因は複雑 うつ病の原因は複雑であり、遺伝的要因や生活環境、ストレス、脳内の化学物質のバランスの乱れなどが関与しています。適切な治療とサポートを受けることで、多くの患者が回復の道を歩むことができます。治療法としては、薬物療法や心理療法、カウンセリングなどが一般的に用いられます。   適応障害について 適応障害は、環境の変化やストレスフルな状況に適応できず、身体や精神にさまざまな症状を引き起こす障害です。適応障害の症状には、不安や抑うつ、身体症状、行動の変化などが含まれます。これらの症状は、日常生活に支障をきたし、個人の心の健康に大きな影響を与えることがあります。   ストレスによって引き起こされる 適応障害の原因は、さまざまなストレス要因によって引き起こされると考えられています。仕事や学業、人間関係、経済的な問題など、さまざまな要因が適応障害の発症に関与します。適切な治療とサポートを受けることで、多くの患者が回復に向かうことができます。治療法としては、ストレス管理、カウンセリング、認知行動療法などが有効です。   心の健康を守るために うつ病や適応障害は、放置すると悪化する可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。心の健康を守るためには、ただ症状を無視せずに、自己を理解し、専門家の助けを求めることが必要です。 また、心の健康をサポートするためには、ストレス管理や適切な休息、健康的な生活習慣の確立も欠かせません。日常生活でのバランスを保つためには、自己の感情や心の状態を理解し、必要に応じて適切なサポートを受けることが大切です。 自分の身体と心に敏感であることは、心の健康を維持する上での重要な要素であり、早期の干渉が悪化を防ぐのに役立ちます。ストレスや心理的な負担を感じた場合は、専門家の助言を受けることで、より健康で幸福な生活を送ることができます。   幅広く影響を及ぼす 心の健康を守ることは、個人だけでなく社会全体にとっても重要です。うつ病や適応障害は、その重大性が明らかになっています。これらの疾患は、患者やその家族だけでなく、職場や学校、地域社会にも影響を及ぼします。 未診断や未治療の場合、うつ病や適応障害は仕事や学業のパフォーマンス低下、人間関係の悪化、社会的孤立などを引き起こすことがあります。   まとめ 適切な診断と治療が行われれば、これらの影響を軽減し、回復の可能性が高まります。心の健康を保つためには、一人で抱え込まずに専門家や身近な支援者に相談することが大切です。また、心理的な健康の重要性を理解し、心の健康に対する意識を高めることも必要です。 心の健康を守ることは、個々人の幸福な生活を支えるだけでなく、社会全体の健康と福祉にも貢献します。心の健康に関する啓発活動や、メンタルヘルスに対する支援の充実が求められています。政府や地域社会、企業などが協力して、心の健康に対する取り組みを強化し、社会全体のメンタルヘルスを向上させることが重要です。 心の健康を守ることは、医療や治療だけでなく、予防や啓発活動にも力を入れる必要があります。社会的な支援や理解があれば、心の健康を持つことがより容易になります。したがって、心の健康に対する理解と支援体制の充実が、個人の生活だけでなく、社会全体の幸福と繁栄につながると言えるでしょう。   参考 「頭が働かない…」まさかうつ病や適応障害が隠れてる!?(精神科医しょう)Yahooニュース

障がいのある子どもと被災 母親の体験談

せんだいメディアテークの「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(通称、わすれン!)のサイトでは、東日本大震災の体験談が母親たちの声で公開されています。 知的障がいや発達障がいのある子を抱える母親たちのリアルな日常が、一つ一つの音声に込められています。 このプロジェクトの中心人物である一人の女性は、2023年から仲間を訪ね録音し、その貴重な記録を集めました。彼女たちは、本音を共有することで、理解者が増えることを願っています。   配給場所での列に並ぶことが難しい 震災当日、仙台市内陸部に住む橋本武美さんの家では、断水の影響で生活が厳しくなりました。彼女の一人息子である祐哉さんは、知的障がいを伴う自閉症スペクトラム障がい(ASD)を抱えており、日常生活において様々な困難を抱えています。配給場所での列に並ぶことが難しく、ストレスの中で彼は表情を失いつつありました。   安心して過ごせる社会を実現するために 橋本さんは、街を歩き回りながら食料や飲み水を確保しようとしましたが、開いている店がなく、ますます困難な状況に直面しました。そんな中でも、彼女は自分たちよりもっと大変な状況にある人々がいることを思い出し、その苦しみを心に押し込めました。 そして、障がいを抱える人々が安心して過ごせる社会を実現するためには、どうすれば良いのかという問いを抱えています。   個々の体験を通して共感や理解を深める場 「わすれン!」は2011年5月に開設され、地域の出来事を市民自らが記録し、整理する「コミュニティー・アーカイブ」の試みを担っています。このプロジェクトは、地域の声を集めるだけでなく、個々の体験を通して共感や理解を深める場としても機能しています。これまでに9万5千件以上のデータが集められ、その数は日々増加しています。   震災体験を語る「録音小屋」 橋本さんが「わすれン!」を訪れたのは、2023年5月。子育てが落ち着いたタイミングであり、知人の誘いもあって、震災体験を語る「録音小屋」を利用しました。 そこでの体験共有は、彼女自身の心の整理にも役立ちました。自らの思いを語ることで、他の人に何かを伝えられるかもしれないという希望を抱きました。 実際の体験が多く語られる 彼女は「他の家族にも、まだ言葉にできていないことがあるのでは」と考え、スタッフからのアドバイスを受け、翌月からは他の家族の体験を収集し始めました。 最初はためらっていた親たちも、彼らの心の奥に秘められたストーリーが語られるにつれて、話し始めると止まらなくなりました。 「大声や自傷行為をしてしまうのが目に見えたので、避難所には絶対行きたくなかった」「学校が再開せず子どもがパニックになった」といった実際の体験が、彼らの口から語られました。   被災地の人々にとって希望になる 子どもの学校の先生が、炊き出しを家まで届けてくれた体験談には、多くの人が共感することでしょう。身近なところに動いてくれる人がいることを知ることは、被災地の人々にとって希望となります。そして、能登半島地震の被災者にも、「困り事は素直に発信してもいいよ」というメッセージが届けられることでしょう。 「わすれン!」サイトでは、「3.11あのときのホント」と題し、自身を含む体験談が公開されています。この貴重な記録を活用し、4月21日までの期間中、メディアテークで文章と合わせた展示が行われます。これにより、震災の記憶を風化させず、後世に伝える貴重な機会となります。   「これまで表に出てこなかった声がたくさんある」 スタッフは、「障がいのある人の親が自らコミュニティーの中で記録し、これまで表に出てこなかった声がたくさんある」と語っています。彼らの声は、単なる記録以上の意味を持ち、社会における理解と支援の向上につながることでしょう。 橋本さんも、自らの歩みを止めず、沿岸部の被災地でも親の声を集めることを考えています。彼らの声が広く届き、より多くの支援や理解が得られることを願っています。   障がいを持つ人々はより脆弱な立場に 震災が発生すると、障がいを持つ人々はより脆弱な立場に置かれます。災害時には、彼らが適切な支援を受けられず、安全な避難や生活が困難になることがあります。こうした問題を考慮し、障がい者についての災害対策が必要です。 まず、障がい者が災害時に直面する主な課題について考えてみましょう。身体的な制約や移動の困難さから、適切な避難場所への移動が困難であることが挙げられます。 また、情報へのアクセス困難やコミュニケーションの障がいにより、避難所での生活が困難になることもあります。さらに、医療や介護の必要性が高まることで、適切な医療や介護が確保されない場合もあります。   災害時に避難することが困難な理由 障がいを抱えた人々が災害時に避難することが困難な理由には、さまざまな要因があります。これらの理由を以下のようにまとめることができます。   避難情報へのアクセス困難 障がいを持つ人々の中には、情報にアクセスする能力が制限されている場合があります。災害時に避難勧告や安全情報を得ることが難しいため、適切な行動をとることができないことがあります。   移動や避難所へのアクセス困難 車椅子を使用している人や移動に支援を必要とする人々は、避難所や避難施設への移動が困難です。また、避難所や施設がバリアフリーでない場合、彼らの利用が制限される可能性があります。   必要な医療・介護の提供が困難 障がいを持つ人々は、日常的に医療や介護の支援を必要とすることがあります。災害時には、このような支援を提供することが難しくなるため、彼らの健康や安全が脅かされる可能性があります。   コミュニケーションの困難 聴覚障がいや言語障がいを持つ人々は、災害時に適切なコミュニケーション手段が提供されない場合、情報を受け取ることができません。適切な情報伝達がなされないと、避難行動の遅れや誤解が生じる可能性があります。   感覚過敏や不安の増大 自閉症スペクトラム障がい(ASD)などの障がいを持つ人々は、環境の変化や刺激に対して感覚過敏になることがあります。災害時には、騒音や混乱が増大し、彼らの不安やストレスがさらに高まる可能性があります。   以上の理由から、障がいを持つ人々が災害時に適切な避難行動を取ることが難しい場合があります。社会全体がバリアフリーな環境を整備し、彼らの安全と福祉を確保するための対策が必要です。   適切な支援が必要 課題に対処するためには、災害対策において障がい者のニーズを十分に考慮し、適切な支援が提供される必要があります。具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。   情報のアクセシビリティ向上 障がいを持つ人々が適切な情報を得られるように、情報提供のアクセシビリティを向上させる必要があります。例えば、点字や音声案内、手話通訳などの方法を活用して、情報の多様性を確保し、すべての人が適切な情報を受け取れるようにします。   バリアフリーな避難施設の整備 車椅子や杖を使用する人々が容易に移動できるよう、避難施設や避難所のバリアフリー化を推進します。段差のないアクセスや手すりの設置、避難施設内での車椅子の利用可能性などが考慮されます。   医療・介護の提供 障がいを持つ人々が避難施設で必要な医療や介護を受けられるよう、専門の医療スタッフや介護士の配置を確保します。また、必要な医療機器や薬品の供給も適切に行います。   コミュニケーション支援の提供 聴覚障がいや言語障がいを持つ人々が適切なコミュニケーションを図れるよう、手話通訳やコミュニケーションボードなどの支援を提供します。情報共有や避難指示の理解に役立ちます。   感覚過敏への配慮 自閉症スペクトラム障がい(ASD)など感覚過敏を持つ人々に対して、避難施設での騒音や混乱を最小限に抑える工夫が必要です。静かなスペースやリラックスできる環境を提供し、彼らのストレスを軽減します。   以上の対策を総合的に実施することで、障がいを持つ人々も安全かつ円滑に避難できる環境が整備されます。社会全体が協力し、バリアフリーな災害対策を推進することが重要です。   災害時に安全に避難するために 障がいを持つ人々が災害時に安全に避難できるようにするためには、周囲の人々も以下のような行動を心掛けることが重要です。   理解と支援の提供 障がいを持つ人々が避難時に支援を必要としていることを理解し、その人々に対して積極的な支援を提供します。避難計画や緊急対策の策定に際して、彼らのニーズや要望を十分に考慮しましょう。   情報提供とコミュニケーション 避難時には、障がいを持つ人々に対して適切な情報提供を行い、コミュニケーションを円滑にします。簡潔で明確な指示や案内を提供し、理解しやすい方法でコミュニケーションを取りましょう。   協力と連携 障がいを持つ人々とそのサポーター、地域のボランティアや救援組織など、関係者と協力して行動しましょう。避難施設や避難所での支援や介護に参加し、彼らの安全と福祉を確保します。   バリアフリーな環境の提供 障がいを持つ人々が安全に避難できるよう、避難施設や避難所のバリアフリー化を推進します。段差のないアクセスや必要な設備の提供など、彼らの移動や生活を支援する環境を整えましょう。   思いやりと配慮 障がいを持つ人々のニーズや感情に対して思いやりを持ち、配慮を示します。彼らの状況やストレスに理解を示し、可能な限り快適な環境を提供することが大切です。   周囲の人々がこれらの行動を取ることで、障がいを持つ人々も安心して避難できる環境が整います。協力と配慮が災害時における共助の基盤となり、地域全体の安全と福祉を確保することにつながります。   具体的な施策が生まれる 震災時に障がい者が直面する困難やニーズは、社会がより包括的な対策を講じる必要性を示唆しています。彼らの声を忘れずに生かすことは、災害対策の改善や社会の包摂性を高める重要な一歩です。 障がい者が遭遇する困難を理解し、その声を取り入れることで、避難所や避難施設のバリアフリー化、情報のアクセシビリティ向上、医療・介護の提供、コミュニケーション支援などの具体的な施策が生まれます。 まとめ 彼らの経験やニーズを踏まえた災害対策は、全体の安全確保に資するだけでなく、社会の包摂性や共感力を高め、より強固な共同体を築くことにつながります。障がい者の声を取り入れることで、誰もが安全で安心して避難できる社会を目指すために、その重要性を再認識することが不可欠です。 また、災害時に障がい者が安全に避難できるようには、バリアフリーな施設の整備や情報提供のアクセシビリティ向上が必要です。医療や介護の確保、コミュニケーション支援の提供も重要です。地域全体が協力し、障がい者のニーズを十分に考慮することが、災害時の安全確保に繋がります。   参考 障がいのある子と震災体験 母親の体験談、音声で公開 - 日本経済新聞

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