2024.04.01

「障がい者グループホーム」質の向上を図る 透明性高めるため厚労省が対策

厚生労働省が障がい者グループホームの質向上を目指し、透明性を高めるための新たな対策を打ち出しました。

これは、福祉経験の少ない事業者の参入により質が低下しているとの指摘からきています。4月から、運営事業者に外部の目を入れるための会議を設置することが努力義務化されます。

 

福祉の経験の少ない事業者の増加により質の低下が懸念

グループホームは、障がい者が地域の家庭的な環境で生活できるよう整備されており、その数は過去5年間で1.6倍に増加し、全国に1万2600か所に達しています。しかし、この増加に伴い、専門家会議の報告書では、福祉の経験の少ない事業者の増加により質の低下が懸念されています。

さらに、去年12月には、全国でグループホームを運営する企業「恵」が、利用者から集めた食材費の一部しか使用せず、その差額を組織的に会社の利益としていたとして、厚生労働省から勧告を受けました。

 

厚生労働省の新たな取り組み

障がい者グループホームの質向上を図るため、厚生労働省は新たな取り組みを打ち出しました。新年度から、グループホームを運営する事業者に対して、利用者と地域住民、有識者などで構成される「地域連携推進会議」の設置を努力義務化します。

この会議では、ホームの運営内容を報告したり、助言を受けたりするだけでなく、地域住民がグループホームを訪れて暮らしの実態を見学することも行われます。そして、再来年度からはこの会議の設置が義務化されます。厚生労働省は、外部の目を入れることでグループホームの運営の透明性を高め、サービスの質を向上させることを目指しています。

 

「恵」のグループホームが唯一の希望

千葉市在住の堀井弥穂さん(64)の息子である龍飛さん(36)は、重度の知的障がいを抱え、言葉で自分の気持ちを表現することができません。龍飛さんは障がいが重いため、適切な支援が必要でありながら、適切な施設が見つからず、地元から離れた場所での入所生活を余儀なくされました。

そんな中、将来に不安を感じていた時、堀井さんには県内にオープンした「恵」のグループホームが唯一の希望として提案されました。「恵」のグループホームは自宅から近く、見学時には従業員から、複数のスタッフが利用者の支援に当たり、栄養士が食事を作ること、そしてどんなに障がいが重くても利用者を受け入れる方針が説明されました。これにより、堀井さんは息子の入居を決めました。

 

グループホームの実態が明らかに

しかし、国から勧告を受けたことで、「恵」のグループホームの実態が明らかになりました。入居してすぐに支援の内容に疑問を感じた堀井さんによれば、ある日の食事は小さなおにぎり2つとわずかなおかずのみで、そのたびに龍飛さんはやせていき、精神的にも不安定になっていったといいます。

閉鎖的な環境で地域との関わりもなく、質の確保がされていなかったことに、堀井さんは愕然としました。職員からの説明も納得がいかず、不安を感じた堀井さんは龍飛さんを退去させ、現在は別の施設で生活しています。

堀井さんは、「なんでこんな仕打ちを受けないといけないのかしら」と悲痛な声を上げ、「重い障がいのある利用者を受け止めるには適切な訓練や経験を積んだ人でないと難しく、人間らしく暮らすには、閉鎖的ではない地域に開かれた環境も必要だと思います。子どもの心を傷つけてほしくない。本当に障がい者が安心して暮らせるためにはどうしたら良いか考えながら対策を行って欲しい」と述べました。

一方、グループホームの運営会社「恵」はNHKの取材に対し、「担当者が不在で個別の利用者のことについてお答えできません」とコメントしました。

 

厚生労働省の対策

  • 【対策1】職員の専門性

支援の質向上に向けた対策の1つは、グループホームで働く職員の専門性を高めることです。現在、施設長に必要な特別な資格がないため、厚生労働省は施設長を務めるための資格要件を専門家に検討してもらうことを決定しました。また、グループホームでの支援の質を向上させるためのガイドラインの整備も検討されます。

 

  • 【対策2】運営の透明性

もう1つの対策は、運営の透明性を高めることです。グループホームが閉鎖的になりやすいという指摘に対し、厚生労働省は来月から地域連携推進会議の設置を求めます。この会議では、障がい者の日常生活や支援内容、運営状況について報告し、参加者からの助言や意見交換を行います。

さらに、会議の構成員は定期的にグループホームを訪れて暮らしの状況を見学する機会も設けられます。この取り組みは新年度から努力義務化され、再来年度からは義務化されます。

 

南高愛隣会の取り組み

長崎県諫早市では、社会福祉法人 南高愛隣会が知的障がい者などが生活するグループホームを120か所運営しています。

この法人では、地域住民などの協力が不可欠だと考え、2013年から施設や利用者の生活を知ってもらうための会議を開催しています。年に3回開かれるこの会議では、地域住民に運営状況を紹介し、グループホームを見学してもらう機会も提供しています。

 

積極的な交流と地域住民からの意見を反映させ関係を築く

始めた当初は出席者が集まりにくかったそうですが、障がい者が地域の清掃活動に参加するなど積極的な交流があり、地域住民からの意見を反映させることで関係を築いてきました。その結果、現在では住民たちが施設の改善に向けたアイデアを積極的に提案するようになりました。

最近の会議では、地域の町内会長や民生委員、利用者の家族など10人余りが参加し、前回の見学会で指摘された側溝の修理などについて話し合いました。地域の協力を得て、グループホームの改善に向けた具体的な取り組みが進められていることがわかります。

 

利用者と地域住民との関係が深まり地域での手助けも自然と行われるように

南高愛隣会では、グループホームでのソフトボールのクラブ活動にも地域住民が積極的に参加しています。職員の異動により活動が一時休止していましたが、地域住民が職員の代わりに講師を務めることで、活動を再開できたそうです。

このような活動を通じて、利用者と地域住民との関係が深まり、地域での手助けも自然と行われるようになっています。南高愛隣会の田島光浩理事長は、「閉鎖的に運営すると、利用者が望むことを実現できないため、地域との交流が重要である」と語りました。

地域住民との関係を築くことで、グループホームの運営についての情報を開示し、信頼の上に意見を集約することが必要だと述べました。

 

生活に必要な社会資源の不足を反映している

一方、日本社会事業大学専門職大学院の曽根直樹教授は、グループホームの増加は地域での生活に必要な社会資源の不足を反映していると指摘しました。営利法人が多くのホームを開設する一方で、適切な人材や資源が確保されていないため、支援の質の低下が課題となっていると述べました。

「地域連携推進会議」の役割について、障がい福祉に関する専門家は次のように述べています。「グループホームは外から見えにくく、閉鎖的になりやすい。会議には様々な機能が期待されるが、最も大切なのは地域との関わりを作ることだ。

会議をきっかけに、障がい者や事業所と住民がお互いを知り合い、良い関係を築くことができれば、例えば万が一、障がい者の権利侵害が起きたときにも地域が気がつきやすくなる。グループホームも地域の1つの住居として隣どうし関わり合っていこうという関係を作るきっかけにすることが重要だ」と話していました。

障がい者グループホーム: 地域との連携で生活の質を向上

障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が地域で共同生活を送るための施設です。地域の支援と協力を得ながら、障がい者が自立した生活を送るための環境を提供しています。ここでは、障がい者グループホームについての重要性や取り組みについて考察します。

 

障がい者グループホームの重要性

障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が家族や地域社会と共に生活し、自立した生活を送ることを支援する役割を果たしています。これらの施設は、障がい者が社会参加を促進し、生活スキルを向上させるための場を提供します。また、家庭的な雰囲気の中で心の安定を保ちながら、自己実現を目指すことができる環境を提供しています。

 

地域との連携による取り組み

障がい者グループホームの運営では、地域との連携が重要な役割を果たしています。地域の支援を受けながら、施設の運営や利用者の生活の質を向上させるために、様々な取り組みが行われています。

 

  • 地域連携推進会議の設置

地域住民や有識者との定期的な会議を通じて、施設の運営状況や利用者の生活に関する情報を共有し、意見交換を行います。これにより、地域との協力関係を強化し、施設の透明性を高めることができます。

 

  • 地域イベントへの参加

地域のイベントや活動に積極的に参加することで、障がい者と地域住民との交流を促進します。これにより、地域社会とのつながりを強化し、社会参加の機会を提供します。

 

  • 地域のリソース活用

地域の施設や団体と連携し、さまざまなリソースを活用して施設のプログラムや活動を充実させます。これにより、利用者の生活の質を向上させるだけでなく、地域社会との連携を深めます。

まとめ

障がい者グループホームは、障がいを持つ個人が自立した生活を送るための重要な施設です。地域との連携を強化し、地域社会とのつながりを深めながら、利用者の生活の質を向上させる取り組みが求められています。地域の支援と協力を得ながら、障がい者が豊かな生活を送るための環境を提供することが、障がい者グループホームの重要な役割となっています。

 

参考

障がい者グループホーム質向上へ 透明性高めるため厚労省が対策 | NHK

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