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Newsみんなの障がいニュース
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増え続ける発達障がいと社会的課題 正常な人が「異常」扱いされている?
2023年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて750万人に上る。日本人の15人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。 「うつ病」や「発達障がい」など、一般的な精神疾患に加えて、近年は社会的な関心が高まる中、診断される人々も増加している。この深刻な状況を警告する声の一つが、精神医療の現場で人権侵害問題に取り組む米田倫康氏のものである。 過剰診断は深刻な問題 米田氏は「患者の増加に伴い、精神科クリニックの中には医療の質が低いところも増えている」と指摘します。一方で、精神科医の和田秀樹氏は「発達障がい者を社会的に排除する傾向がある現状では、過剰診断は深刻な問題である」と警告しています。 日本の精神医療の問題について、米田氏と和田氏の対談を通じて、深層を探るシリーズをお届けします。精神科の診療領域では発達障がいも重要なトピックとなっています。若い人や子供が精神科を受診する現象も増えており、発達障がいの診断が急増していることが示唆されています。 異常な状況と言える 全国的に見ても、発達障がいの診断は急増しています。例えば、長野県では毎年、唯一発達障がいと診断・判定された児童生徒の数と割合を調査しており、その割合は6.82%に達しています。 特に、自閉症スペクトラム障がい(ASD)の増加が顕著で、調査が始まった平成15年度(2003年度)の0.13%から、令和5年度(2023年度)には3.23%にまで上昇しています。これは国際的な基準で考えられる割合(0.65~1%)を大きく上回る数字であり、異常な状況と言えるでしょう。 発達障がいの診断数が増加していることは明らか 和田氏の指摘によれば、発達障がいの診断数が増加していることは明らかであり、過剰診断の可能性が高いとされています。かつては通常学級の3%程度と言われていた割合が、現在では8.8%にまで上昇しています。 また、発達障がいに対する治療の必要性についても議論があります。例えば、ADHD治療薬のコンサータを使用する必要があるほどの重度の症状を示す子供は一部にいますが、大半の子供は多少の落ち着きの欠如や他人の気持ちの理解の遅れ程度であり、それを病気とみなすべきか疑問視されています。 発達障がいであるとしても多様な経験を積むための一助になった 和田氏自身も、自身の子供時代を振り返り、他人の気持ちが理解できないクズガキであったと述べます。しかしその性格は、彼の個性であり、発達障がいであるとしても、それが彼の医師としてのキャリアや多様な経験を積むための一助になったと考えています。 和田氏は自身の家庭での経験を通じて、"正常"であることの重要性に対する母親の考え方を述べます。彼の母親は常に子供たちが個性的であることを受け入れ、一般的な道に進むことを求めず、むしろ資格取得などの個々の才能を伸ばす方向にサポートしていました。 専門家の診断に依存するしかない 特に、和田氏の弟については、彼が幼少期に病気で苦しんだことがあり、知的障がい的な状態が一時期あったにもかかわらず、母親は特殊学級に行くことを拒否しました。和田氏は、このような家庭は少数派であると感じています。 米田氏も同意し、「早期療育が必要だ」という一般的な意見に対して、親が同調することの圧力が強いことを指摘します。発達障がいの子供を持つ親は、早急に対処しなければならないという社会的期待に苦しむことがありますが、実際には発達障がいを客観的に判断する方法がないため、専門家の診断に依存するしかないと述べます。 ダイバーシティの概念と矛盾 和田氏は、自身の娘が学校で仲間外れにされる状況を経験しました。彼の感覚では、娘が居心地の悪い環境で無理をする必要はないと考え、別の学校に行かせようと思っていました。しかし、妻は娘が仲間外れにされているという状況に非常に心配していました。 和田氏自身は、自分が仲間外れにされる経験をよくしており、そのような状況に対してあまりビビらないと述べます。しかし、一般的な人々はそのような状況に対して異なる反応を示すことを指摘します。 彼は、多くの親が自分の子供が異なると言われた場合に、それを受け入れる傾向があると感じています。自分の子供が特別支援学級ではなく普通のクラスにいることを望む親が少ないと述べ、その考え方が現代のダイバーシティの概念と矛盾していると考えます。 天才予備軍として大切にすると指摘 米田氏が指摘するように、発達障がいやうつ病など、メディアを巻き込んだキャンペーンになると、反対意見があまり出なくなり、一つの論調に統一されてしまいます。 和田氏は、灘高校が変わった人が多い学校であり、そこに集まるような天才肌の人たちは共感力が低いため、発達障がいのレッテルを貼られかねないと述べます。しかし、普通の国ではそうした人々を天才予備軍として大切にすると指摘します。 共感能力とシステム化力 この点に関して、英国のケンブリッジ大学の発達心理学者であるサイモン・バロン=コーエン教授の見解が示されます。彼は、人間が進化する過程で共感能力とシステム化力という二つの能力が逆相関にあると述べます。 共感能力は他人の気持ちを理解する能力であり、システム化力は物事の規則性を見つける能力です。日本では共感能力が弱くてもシステム化力だけが高い人が発達障がいとして排除される傾向があるとしていますが、海外ではそうした個性を受け入れる風土があり、スティーブ・ジョブズのような人物が生まれると述べています。 日本の社会は異分子を排除する傾向が強い 和田氏は、日本の社会が異分子を排除する傾向が強いことを指摘し、発達障がいの診断がその傾向を補強してしまっていると述べます。日本の文化では、落ち着きがない人や他人の気持ちがわからない人が不適合と見なされ、そうした個性を持つ人々が排除される傾向があると述べます。 他の国では異なる個性も受け入れられやすい一方で、日本ではそうした個性が排除され、発達障がいというレッテルが貼られることで、日本社会の不寛容さが表面化していると主張します。 異なる個性を持つ人々が同調圧力に押される 米田氏も同様に、日本社会が異分子を排除したがる特性と発達障がいの診断がマッチしてしまったことを不幸だと感じています。彼は、発達障がいの診断が異分子を排除するための手段として機能し、投薬や矯正などの形で異なる個性を持つ人々を強制的に「通常」の集団から遠ざける状況があると述べます。 このような状況下で、当事者が自らの意志で選択するのではなく、周囲が強制することで、異なる個性を持つ人々が同調圧力に押されることがあると述べます。 大人の発達障がいの診断についても過剰診断が見られる 米田氏は、大人の発達障がいの診断についても過剰診断が見られると指摘します。成人の場合でも、社会生活を送ってきた人が突然発達障がいと診断されるケースがあります。たとえば、会社の幹部として活躍していた人が心身の不調を訴えてクリニックを受診し、「あなたは大人の発達障がいです」と診断される場合があります。 しかし、本来の診断基準では、社会性やコミュニケーション能力が極端に低いレベルでないと発達障がいとしての診断は立たないと指摘します。 身の回りのトラブルの免罪符にされる傾向がある 社会性やコミュニケーション能力に問題がある人は多く存在するが、それまで一定の社会生活を営んできた実績がある場合、診断名を付ける必要はないというのが米田氏の主張です。診断がつくと、自己暗示がかかり、自分は発達障がいだからという言い訳にされ、身の回りのトラブルの免罪符にされる傾向があると述べます。 発達障がいを個性として認識することが重要 和田氏は、世間が発達障がいを個性として認識してくれることが重要だと述べます。もし周囲が、「ちょっと落ち着きがないけど好奇心旺盛」「ものを片付けられないけど多くの興味を持っている」といった個性として認識してくれれば、過剰診断もそれほど問題ではないと考えます。 しかし、現在の社会的認知は、発達障がいを「ダメなやつ」として見なし、矯正や薬での治療が必要だという考え方に偏ってしまっていると指摘します。そのため、過剰診断がもたらす害を考えると、現状の診断方法に問題があると主張します。 発達障がいという言葉自体に問題がある 米田氏もこれに同意し、発達障がいという言葉自体に問題があると指摘します。英語の「disorder」が日本語の「障がい」と訳されたことで、生まれつきの器質上の問題や一生治らないというイメージが付加されてしまったと述べます。 このため、発達障がいと診断されると、普通ではないというイメージが付き、普通とは異なるレールで生きなければならないという誤ったイメージが生まれてしまうと述べます。 発達障がいという診断を受けた人は、周囲から普通ではないと見なされ、異なるレールで生きなければならないというプレッシャーを感じることがあります。このようなイメージが付き、社会から排除される可能性もあることは、不幸な側面の一つと捉えられます。 発達障がい:異なる個性の受容と社会の課題 近年、発達障がいの診断が増加しており、このトピックは精神医療や教育の分野で注目を集めています。発達障がいは、個々の社会的行動や学習能力、コミュニケーションスキルに影響を与える状態の総称であり、一般的なものとしては注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム障がい(ASD)、学習障がいなどが挙げられます。その増加には、診断の向上や社会の認知度向上、過去に比べて症状に対する理解が進んだことなどが要因として挙げられます。 診断の増加と過剰診断の問題 近年の発達障がいの診断増加は、専門家の理解や診断技術の進歩によるものとされています。しかし、その一方で過剰診断の問題も指摘されています。過剰診断は、個々の特性や行動を病的とみなし、必要以上に医学的な介入を行うことを意味します。特に、発達障がいの診断は、人々の社会的生活や教育に大きな影響を与えるため、その正確性が重要視されます。 社会的受容の課題 発達障がいの診断が増加する中、社会的な受容の問題も浮き彫りになっています。一部の国や文化では、発達障がい者に対する偏見や差別が根強いことがあります。また、異なる個性や行動が、社会的な「異分子」として排除される傾向も見られます。これにより、発達障がいを持つ人々が適切な支援や機会を受けることが難しくなります。 個性の受容と支援の重要性 発達障がいを持つ人々の多くは、他の人々とは異なる個性や能力を持っています。これらの個性を受容し、適切な支援や環境を提供することが重要です。例えば、発達障がいを持つ人々が社会的に受け入れられるためには、教育機関や職場での配慮やアクセシビリティの向上が必要です。また、家庭や地域社会においても、理解と支援が求められます。 まとめ 発達障がいという診断を受けた人は、周囲から普通ではないと見なされ、異なるレールで生きなければならないというプレッシャーを感じることがあります。このようなイメージが付き、社会から排除される可能性もあることは、不幸な側面の一つと捉えられます。しかし、和田氏と米田氏の警告を通じて、過剰診断と社会の受容性の問題について考えることが重要です。 発達障がいは、個々の人々の生活や社会に与える影響が大きい状態です。その診断の増加と過剰診断の問題、そして社会的な受容の課題を考えると、個性の受容と適切な支援の提供が喫緊の課題となります。将来的には、社会全体が多様性を受け入れ、それぞれの個性や能力を活かす環境が整うことを願うばかりです。 参考 「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障がい」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ @gendai_biz 「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障がい」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ @gendai_biz -
新入社員が非難されやすい「適応障がい」の特徴とは?ストレスからの解放への道
「新入社員が非難されやすい『適応障がい』の特徴とは?」―そう問いかけるのは、精神科医であり、1万人以上の悩みを解決してきたいっちー氏です。 彼の著書『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」といった感情のコントロール方法がまとめられています。本記事では、その一部を抜粋・編集し、新入社員が自分を変えていくための方法に焦点を当てます。(構成/種岡 健) ストレスが増大して心身に影響を及ぼす 4月はどんな人でも変化の起こりやすい時期です。それゆえに、病みやすいリスクのある時期でもあります。変化によって引き起こされる可能性のある病気、「適応障がい」について共有したいと思います。この知識は、様々な予防策に役立つことでしょう。 適応障がいとは、環境への適応が難しく、ストレスが増大して心身に影響を及ぼし、生活に支障をきたす状態を指します。 うつ病のように心身に症状を引き起こす 環境の変化によって引き起こされる問題であるため、「甘えているだけ」「性格の問題」として扱われることもあります。その結果、本人が相談できずに放置され、解決が難しくなってしまうことがあります。 適応障がいは、以下のようなストレスによって心身の不調が現れます。 心の症状:気分の落ち込み、不安感、モチベーションの低下、集中力の低下、記憶力の低下 身体の症状:不眠、食欲不振、仕事への行く際の動悸、吐き気、めまい、手の震え 行動の変化:飲酒や喫煙量の増加、イライラや暴力的な行動、休日でも仕事のことばかり考える 以上のように、適応障がいはうつ病のように心身に症状を引き起こします。 適応障がいは「ストレス」が原因 個々人によって感じるストレスは異なりますが、仕事や家庭、学校などの日常生活におけるストレスが適応障がいを引き起こします。このようなストレスは、生活や環境の変化によってより顕著になります。 たとえば、突然の単身赴任によって家族と離れなければならなくなったり、友人との離別が生じる中学から高校への進学など、環境の変化が起こりやすい状況があります。 良い変化とされる出来事でもストレスの要因 また、新しい職場への移動や、結婚や昇進など、他者から見れば良い変化とされる出来事でも、本人にとってはストレスの要因となり得ます。 こうしたストレスによって、憂鬱な気分になったり、体調を崩したり、不安を感じやすくなったりすることで、環境への適応が困難になり、適応障がいが生じるのです。 ストレスの原因を特定することが必要 適応障がいの解決方法はシンプルに言えば「ストレスの影響を減らす」ことが重要です。まず、ストレスの原因を特定することが必要です。人間関係や業務量、残業時間など、何がストレスの原因なのかを明確にすることで、適切な対策を立てやすくなります。苦痛を感じるかもしれませんが、一度振り返ってみてください。 無理をせずに必要な休息を取ることが大切 ストレスが特定されれば、そのストレスを取り除くか、解決策を考えます。人間関係に問題がある場合は、部署の変更や転職を検討することが有効です。業務量が原因なら、業務の見直しや効率化の取り組みを考えましょう。 それでもストレスが解消されない場合は、休養が必要かもしれません。精神科や心療内科を受診し、休職することで回復するケースもあります。適応障がいは、原因から離れることで改善されることが多いため、無理をせずに必要な休息を取ることが大切です。 助けを求めることも大切 また、休職によって問題が表面化し、会社が働く環境や働き方を改善することもあります。ストレス社会では、時に自分一人で解決することは難しいです。助けを求めることも大切です。 最後に、適応障がいに苦しむ人々にとって、助けを求めることや休養を取ることは勇気のいる行動かもしれません。しかし、それらの行動が自己を守り、健康を回復する一歩となることは間違いありません。自己を大切にし、ストレスに立ち向かうためのサポートを受けることが重要です。 適応障がい:ストレスとの戦い 新しい環境への適応は、私たちの日常生活でよくある経験です。しかし、その過程でストレスを感じ、心身の不調が現れることがあります。この状態を適応障がいと呼びます。以下では、適応障がいの原因、症状、そして克服するための方法について探ってみましょう。 適応障がいの原因 適応障がいの原因は、さまざまなストレス要因によって引き起こされます。日常生活や環境の変化が主な要因であり、その影響は個人によって異なります。具体的なストレス要因としては、以下のようなものが挙げられます。 新しい環境への適応 新しい職場や学校、住居などに移る際には、環境の変化によるストレスが生じることがあります。新しい人間関係の構築や、未知の状況に対する不安が適応障がいを引き起こす要因となります。 人間関係のトラブル 職場や家庭、友人間などの人間関係におけるトラブルや対立は、ストレスを引き起こす一因です。コミュニケーションの問題や対立、孤立感などが適応障がいを誘発する要因となります。 仕事や学業の過剰な負荷 業務量の増加や学業の圧力が高まると、ストレスが蓄積され、適応障がいが生じる可能性があります。長時間の労働や学習、厳しい環境下でのプレッシャーは、心身に負担をかけることがあります。 家族や友人との関係の変化 離婚や別居、友人との関係の変化など、親しい人間関係に変化が生じると、ストレスが増大し、適応障がいが発症する可能性があります。家族や友人との関係性の変化は、感情的な負担を引き起こすことがあります。 これらのストレス要因が、個々の人々にどのような影響を与えるかは異なりますが、適応障がいの発症につながる可能性があります。このようなストレス要因に対処することが、適応障がいを予防する上で重要です。 適応障がいの症状 適応障がいの症状は、心身のさまざまな側面に影響を及ぼします。以下では、適応障がいの症状をより詳しく掘り下げてみましょう。 心の症状 気分の落ち込み:適応障がいの人は、悲しみや無気力感を感じることがあります。何事にも興味を失い、日常生活に対する喜びが薄れることがあります。 不安感:不安や緊張が日常生活に支配的な存在となり、さまざまな場面で不安を感じることがあります。不安が過度に高まり、日常生活に支障をきたすことがあります。 集中力の低下:仕事や学業、日常の活動において集中力が低下し、業務や課題に取り組むことが難しくなる場合があります。 身体の症状 不眠:眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めたりすることがあります。また、朝起きたときに疲れを感じることがあります。 食欲不振:食欲が低下し、食事をすることが億劫に感じることがあります。体重が減少することもあります。 めまいや手の震え:ストレスによって身体的な症状が現れることがあります。めまいや手の震えが生じることがあります。 行動の変化 飲酒や喫煙量の増加:ストレス解消のためにアルコールやタバコを過剰に摂取することがあります。これによって依存症や健康への影響が懸念されます。 イライラや暴力的な行動:ストレスや焦燥感によって、感情の制御が難しくなり、イライラや怒りを爆発させることがあります。これは他者や自己に対して危険を引き起こす可能性があります。 仕事への過度な執着:仕事に対する過度なストレスや焦燥感から、仕事に取りつかれる傾向があります。仕事が生活の中心となり、他の側面を犠牲にすることがあります。 これらの症状が適応障がいの特徴であり、早期の対応が重要です。適応障がいの症状が現れた場合は、適切な支援や治療を受けることが必要です。 適応障がいの克服方法 適応障がいを克服するためには、以下の方法が有効です。 ストレスの原因を特定する まずは、自分がどのような状況や要因からストレスを感じているのかを明確にします。仕事、家庭、人間関係など、どの部分がストレスの主な原因なのかを特定しましょう。 適切な対策を立てる ストレスの原因を特定したら、それに対する具体的な対策を考えます。例えば、仕事のストレスであれば、タスク管理の改善やコミュニケーションの改善などの対策を立てます。 専門家の助けを借りる 自力でストレスを解消することが難しい場合は、心理カウンセリングや心療内科などの専門家の助けを借りることが有効です。専門家は、ストレスの原因を探り、適切な対処法を提案してくれます。 リラックスやストレス解消の方法を取り入れる リラックスやストレス解消の方法を日常生活に取り入れることで、ストレスを軽減することができます。瞑想やヨガ、アロマセラピーなどの方法を試してみましょう。 健康な生活習慣を確立する 十分な睡眠を確保し、バランスの取れた食事を心がけることで、ストレスへの抵抗力を高めることができます。また、定期的な運動やリフレッシュタイムを設けることも重要です。 以上の方法を組み合わせることで、適応障がいを克服することができます。自分の状況やニーズに合った対策を選択し、着実に取り組んでいきましょう。 まとめ 適応障がいに苦しむ人々にとって、助けを求めることや休養を取ることは勇気のいる行動かもしれません。しかし、それらの行動が自己を守り、健康を回復する一歩となることは間違いありません。自己を大切にし、ストレスに立ち向かうためのサポートを受けることが重要です。 適応障がいは、私たちが日常生活で経験するストレスの影響から生じる心身の不調です。しかし、この状態から抜け出すことは可能です。まず、ストレスの原因を特定し、それに対する具体的な対策を講じることが大切です。また、専門家の助けを借りることや、リラックスやストレス解消の方法を取り入れることも有効です。自分の健康を守るために、ストレスとの戦いに積極的に取り組みましょう。適応障がいは克服可能であり、健康的で幸福な生活を取り戻すための一歩となります。 参考 【適応障がいは「甘え?」「性格?」】新入社員が非難されやすい「適応障がい」の特徴とは? | 頭んなか「メンヘラなとき」があります。 | ダイヤモンド・オンライン -
障がい者基本計画を見てみよう!消費者トラブルの防止と被害からの救済
前回に続き、障がい者基本法を詳しく見ていきましょう。障がい者の権利を尊重し、消費者の安心と安全を確保するため、我々は消費者トラブルの防止と障がい者への救済に向けて、積極的な取り組みを行います。障がい者の消費者教育から始まり、消費者被害の早期発見や法的なサポートまで、幅広い方策を展開し、より包括的な支援体制を構築します。以下に、我々の具体的な施策を示します。 情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実 情報アクセシビリティの向上と意思疎通支援の充実は、障がい者基本法の重要な柱です。この取り組みは、障がい者が必要な情報に円滑にアクセスし、意思を適切に伝えることができるよう支援することを目指しています。 情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進 障がい者に配慮した情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進し、放送や出版の分野でも障がい者が利用しやすい環境を整備することで、情報アクセシビリティの向上を図ります。 また、障がい者が円滑に意思表示やコミュニケーションを行えるよう、意思疎通支援を担う人材の育成やサービスの利用促進、支援機器の開発・提供などの取り組みを通じて、意思疎通支援の充実を目指します。 情報通信における情報アクセシビリティの向上 障がい者の情報通信機器やサービスの利用における情報アクセシビリティの確保及び向上・普及を図るため、障がい者に配慮した情報通信機器やサービスの企画、開発、提供を促進します。 研究開発やニーズ、ICTの発展を踏まえながら、情報アクセシビリティの確保及び向上を促進するため、適切な標準化を進め、必要に応じて国際規格提案を行います。また、各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格や日本工業規格への準拠・配慮に基づいて実施されます。 当該国際規格に基づいて技術仕様を定める 特に、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等を行う際には、アクセシビリティに関する国際規格が存在する場合には、当該国際規格に基づいて技術仕様を定めます。さらに、国立研究機関等では障がい者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進し、障がい者がICTを利用しやすい環境を整備します。 障がい者がIT相談を受けられる支援施設や、パソコン機器等を使用できるよう支援するパソコンボランティアの養成・派遣の促進などにより、障がい者のICTの利用及び活用の機会の拡大を図ります。また、聴覚障がい者が電話を一人でかけられるよう支援する電話リレーサービスの実施体制を構築します。 情報提供の充実等 身体障がい者の利便の増進に資する通信・放送身体障がい者利用円滑化事業の推進に関する法律や放送事業者への制作費助成などを通じて、字幕放送、解説放送、手話放送などの普及を図ります。 聴覚障がい者に対して、字幕(手話)付き映像ライブラリーや手話通訳者の養成・派遣、相談を行う施設の整備を促進し、ICTの発展に応じてニーズの変化にも対応します。また、身体障がい者利用円滑化事業の助成などを通じて、民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し、障がいによって利用が困難な通信・放送サービスへのアクセスの改善を図ります。 電子出版物の利用の拡大に向けた技術開発や普及啓発などの取り組みも行います。心身障がい者用低料第三種郵便についても、障がい者の社会参加を促進する観点から検討を続けます。 意思疎通支援の充実 聴覚、言語機能、視覚などの障がいにより意思疎通が困難な障がい者に対して、手話通訳者や要約筆記者の派遣、点訳や代読による支援を行い、その他の支援機器の給付や貸与を行います。絵記号などの普及や理解の促進を図ることで、意思疎通の支援を行います。 行政情報のアクセシビリティの向上 各府省において、障がい者や障がい者施策に関する情報提供や緊急時の情報提供などに障がい特性に応じた配慮を行います。また、ウェブサイト等で情報提供を行う際には、アクセシビリティに配慮した仕様の採用やウェブアクセシビリティの向上に取り組みます。さらに、災害時や選挙時に障がい者への情報提供を充実させるための施策も行います。 防災、防犯等の推進 障がい者が地域社会において安全かつ安心して生活できるよう、国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」を踏まえて、以下の取り組みを推進します。 災害に強い地域づくりの推進:障がい者の安全を確保するために、災害に強い地域づくりを推進します。これには、地域の防災意識の向上や適切な避難計画の策定、防災施設の整備などが含まれます。 障がい特性に配慮した災害時の支援強化:災害発生時には、障がい者の特性やニーズに応じた適切な情報提供や避難支援が必要です。福祉避難所や応急仮設住宅の確保、福祉・医療サービスの継続など、障がい者が安全に避難し、必要な支援を受けるための体制を整備します。 防犯対策と消費者保護の強化:障がい者を犯罪被害や消費者被害から守るために、防犯対策や消費者トラブルの防止に向けた取り組みを推進します。これには、地域社会全体での安全意識の向上や、障がい者が安心して生活できる環境の整備が含まれます。 防災対策の推進 地域防災計画の作成と防災訓練の実施: 障がい者や福祉関係者の参加と防災関係部局、福祉関係部局との連携の下で、地域防災計画の作成や防災訓練を促進し、災害に強い地域づくりを推進します。 要配慮者利用施設の土砂災害対策:自力避難の困難な障がい者等が利用する施設の立地箇所において、土砂災害のおそれのある場所では、砂防えん堤の施設整備や危険区域の明示など、土砂災害対策を重点的に推進します。 災害時の障がい者への情報伝達の体制整備:災害発生時に障がい者に適切な情報を伝達できるよう、民間事業者や消防機関などと協力して、障がい特性に配慮した情報伝達の体制を整備します。 障がい者への避難支援と安否確認:災害発生時には、避難行動要支援者名簿などを活用して障がい者への適切な避難支援や安否確認を行うため、地方公共団体に必要な体制整備を支援します。 避難所と応急仮設住宅のバリアフリー化:避難所や応急仮設住宅のバリアフリー化を推進し、障がい者が適切な支援と合理的配慮を受けられるよう、市町村の取り組みを促進します。 災害時の福祉・医療サービスの継続:災害発生後も福祉・医療サービスを提供できるよう、障がい者支援施設や医療機関の災害対策を推進し、広域的なネットワークの形成に取り組みます。 聴覚・言語機能障がい者向けの緊急通報システムの導入:火災や救急事案の発生時に、聴覚・言語機能障がい者が円滑な緊急通報ができるよう、音声によらない緊急通報システムの導入を推進します。 要配慮者の避難確保計画の実施:水害・土砂災害時に、要配慮者の円滑な避難を確保するため、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成と訓練を促進します。 防火安全体制の強化:非常災害時における障がい福祉サービスの提供継続や、消防団や近隣住民との連携体制の構築を促進し、防火安全体制を強化します。 男女共同参画の視点からの防災・復興の取組:防災体制や避難所、応急仮設住宅において、男女共同参画の視点からの取り組みを促進し、障がいのある女性を含めた配慮を行います。 東日本大震災を含む災害からの復興の推進 地域のまちづくりへの障がい者の参画促進: 各地域の復興施策において、障がい者やその家族などの参画を促進し、地域全体のまちづくりを推進するため、事例集の作成や公表などの情報提供を行います。 被災地での障がい福祉サービスの安定的な提供:被災地の障がい福祉サービス事業者に対する支援を実施し、被災地での障がい者の生活継続や帰還を支援し、安定的な障がい福祉サービスの提供を図ります。 避難生活を送る障がい者への心のケア:避難生活を送る障がい者に対して心のケアや見守り活動、相談活動などの取り組みを充実させます。 雇用の創出と求職支援の推進:被災地における雇用情勢を考慮し、産業政策と連携した雇用の創出や求人と求職のミスマッチの解消を図り、障がい者の就職支援を推進します。 防犯対策の推進 110番通報の利用促進と的確な対応: ファックスやEメールなどを活用した110番通報の利用を促進し、事案の内容に応じた迅速かつ的確な対応を行います。 警察職員の障がい理解とコミュニケーション支援:警察職員の障がい理解を深めるための研修を充実させ、手話を行うことのできる警察官の配置やコミュニケーション支援ボードの活用などを推進します。 地域との連携による犯罪被害の防止と早期発見:警察と地域の障がい者団体や福祉施設、行政などとの連携を促進し、犯罪被害の防止と早期発見に努めます。 障がい者支援施設等の安全確保:障がい者支援施設等を利用する障がい者が安心して生活できるよう、施設整備や職員の対応に関する点検などの取り組みを促進し、安全確保体制の構築を図ります。 性犯罪被害者への支援体制の充実:障がい者を含む性犯罪被害者や配偶者暴力被害者への支援体制の充実を図り、ワンストップ支援センターの設置促進や相談機能の充実を推進します。 消費者トラブルの防止及び被害からの救済 障がい者の消費者教育の推進: 障がい者やその支援を行う者に対して、消費者関連の情報提供や各種消費者関係行事への参加を促進し、障がい者等に対する消費者教育を推進します。 消費者被害防止のための見守りネットワークの設置促進:障がい者団体、消費者団体、福祉関係団体、行政などの連携により、消費者被害防止のための見守りネットワークの設置を促進します。 障がい者の消費生活相談体制の整備:地方公共団体における消費生活センター等での障がい者に対する消費者相談の受付や相談員の障がい者理解のための研修を促進し、障がい者の特性に配慮した消費生活相談体制の整備を図ります。 法制度の利用促進:被害を受けた障がい者の被害回復に関する法制度の利用を促進するため、日本司法支援センター(法テラス)の業務充実に努めます。 振り込め詐欺や悪質商法への対応強化:法テラスの契約弁護士が福祉機関等との連携・協力体制を密にし、配慮を要する障がい者などの振り込め詐欺の被害や悪質商法による消費者被害の早期発見と被害回復に努めます。 まとめ 消費者トラブルの防止と被害からの救済は、障がい者が安心して消費生活を送るための重要な取り組みです。障がい者やその支援を行う者に対して消費者教育を推進し、消費者被害防止のための見守りネットワークの設置を促進します。さらに、消費生活相談体制の整備や法制度の利用促進、振り込め詐欺や悪質商法への対応強化を通じて、障がい者の消費者権利の保護と被害からの救済を図ります。 参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度) -
「障がいがあっても普通に働く」輝く笑顔が織りなす物語:夢を見つけたダウン症の女性
大阪の中心部に位置する「ヒカルコーヒーロースター」は、障がいがあってもなくても誰もが普通に働くことを応援するカフェです。その中で、26歳の美帆さんが輝く夢を見つけました。 店内では、こだわりの豆で淹れたドリップコーヒーや自家製のチーズケーキが人気を集め、観光客や地元の人々が訪れます。アルバイトとして美帆さんが働く姿は、いつも笑顔で包まれています。 優しさと丁寧な接客で多くのお客さんを魅了 美帆さんはダウン症という障がいを持ちながらも、その優しさと丁寧な接客で多くのお客さんを魅了しています。「イチゴのチーズケーキどうぞ」と美帆さんが優しく声をかけると、お客さんからは「10月のパンプキンのケーキめっちゃおいしかった」という感想が返ってきます。美帆さんは笑顔で「かぼちゃのチーズケーキですね」と返答し、お客さんとの会話が店内に温かい雰囲気を広げます。 一人でコーヒーを淹れることができるまでに成長 美帆さんの存在は、障がいがあっても夢を追い求め、誰もが自分らしく働ける社会を象徴しています。その笑顔が、店内にいる誰もが心温まるひとときを提供してくれます。 美帆さんは、自身の仕事がしんどいと感じることはないそうです。練習を重ねた結果、今では一人でコーヒーを淹れることができるまでに成長しました。 日常生活の中で普通に働ける環境を作りたいという思い このカフェを立ち上げたオーナーの山中英偉人さんは、特別な思いを込めてこの店を作りました。「ヒカルコーヒーロースターの『光』というのが、僕の弟の名前なんです。彼がダウン症で生まれたことが、ダウン症というテーマに取り組み始めたきっかけです。弟が生きていて、誰が面倒を見ていたんだろうか、とか」と山中さんは語ります。 1歳で亡くなった弟が生きていたら社会人になり、彼がどこで働いていたのか、という疑問から、山中さんはダウン症の人々が日常生活の中で普通に働ける環境を作りたいという思いを強く抱きました。 時給や待遇を一般就労と同じ そのため、時給や待遇を一般就労と同じに設定し、美帆さんを1人の従業員として雇い入れました。彼女は障がいを持ちながらも、同じ仕事をこなす他の従業員と同じような待遇で働くことができる環境を提供されています。 美帆さんは支援学校を卒業した後、福祉事業所で7年間働いてきました。しかし、家族と一緒にヒカルコーヒーを初めて訪れ、「ここで働きたい」と話したといいます。 なかなか受け入れ先がない 美帆さんの母は、「一度、就職したいというので、色んな所へ実習に行かせていただいたんですけど、なかなか受け入れ先がない。(ここで働いて)笑顔が増えた。写真を向けられたときに『笑って』って言われて、なかなか自然に笑えなかったのが、普通にここでは笑っている」と語ります。 美帆さんのお母さんが語るように、美帆さんが普通に働ける場所がなかなか見つからず、受け入れ先がない現実があることがうかがえます。しかし、ヒカルコーヒーでの働き始めをきっかけに、美帆さんの笑顔が増え、自然に笑顔でいられる環境が提供されています。 一般就労はわずか2% ダウン症の当事者らが集まるイベントに参加した際に、美帆さんは自信を持ってコーヒーを淹れました。山中さんが尋ねます。「大丈夫、提供できる?」美帆さんは自信を持って答えます。「できます」。 生き生きと輝ける仕事との出会いを経験した美帆さん。しかし、日本ダウン症協会などの調査によると、企業の障がい者雇用枠で働いているのは約6%。一般就労はわずか2%で、半数が福祉作業所で働いているのが現実です。 自分でちゃんと生活を立てていってほしい イベント参加者の親たちに聞くと、それぞれが悩みを抱えています。ダウン症の娘(21)を持つ母親は、心配しながらも語ります。「私がやっぱり死ぬじゃないですか、先に。自分でちゃんと生活を立てていってほしい。(決まった)時間に、ちゃんと行って、時間の間きちんとお仕事して、時間になったら帰るルーティーンが、なかなか身につかないタイプなので、お仕事できればいいなって思うけど、なかなか難しい」。 もう一人の親は、息子を持つ親の立場から語ります。「知的(障がい)の子たちの一般就労は現実問題、難しい。一回言って(頭に)入る子ではないことが多いので、(企業が)そこにどれだけ時間を使えるか」。 1回の勤務時間を短くし、出勤回数を多くする 美帆さんがコーヒーを淹れている最中、大きく背伸びをしました。野々村店長が声をかけます。「まだ気ぬくの早いで、仕事中やで」。美帆さんは謝ります。「はーい、すみませーん」。こうした個別の特性に合わせたサポートが、ダウン症の方々が働くことを可能にしています。 ヒカルコーヒーでは、注ぐお湯の量やドリップする時間を定めたレシピがあります。何度も繰り返すことで覚えられるよう、1回の勤務時間を短くし、出勤回数を多くしました。 山中さんが指導します。「自分の手の方に引いたらつくやん、なるべく逆の方向に引くようにして…」 ケーキ作りで、ボールの中のクリームチーズに苦戦する美帆さん。しかし、山中さんが教えてくれたように、美帆さんがやってみます。山中さんが称賛します。「そうそう、上手上手」 家でも振り返ることができるようにノートに記す スタッフはイラストを使って、その日教えたことをノートに記します。家でも振り返ることができるようにしています。 美帆さんは笑顔で語ります。「野々村店長と山中さんと、一緒にお仕事をするのが楽しみで、スイーツ作りやドリップコーヒーをお客さんに飲んでほしい」 美帆さんの成長 山中さんは、知り合いのカフェとコラボイベントを行うことにしました。異なる環境でコーヒーを淹れることで、美帆さんの成長に期待を寄せています。 美帆さんは意気込みを求められましたが、緊張している様子です。地元の人やヒカルコーヒーの常連客など、訪れた人に無料でコーヒーをふるまいます。「ごゆっくりどうぞー」と美帆さんが声をかけます。 美帆さんのお母さんもやってきました。「美帆って四つん這(ば)いしてないから、肩の周りの筋肉が弱くて、最初は250ccのポットも重くて、500㏄でもできるようになったんだなって思ってみてました」と母親が語ります。 「“当たり前にいる”って結構、実現できる」 山中英偉人さんは、「1人1人の特性が違うので、得意や好きを中心にできるお店の設計をする方が、当人にとって居場所や活躍の場所になる」と語ります。「働いている様子を見てもらって、1つでもこれまでと違った考え方になったり、(ダウン症の人が)“当たり前にいる”って結構、実現できる」とも述べます。 「自分が淹れたコーヒーでたくさんの人を笑顔にすること」 疲れを感じさせず、2時間にわたってコーヒーを淹れ続けました。山中英偉人さんが尋ねます。「どうだった?」美帆さんは満足そうに答えます。「楽しかったです」これからも働きたい?という問いに、美帆さんは自信を持って「はい!」と答えます。 二人は記念写真を撮ることになりました。カメラマンが言います。「めっちゃいいやーん。いつもいい笑顔やな」 美帆さんの夢は、「自分が淹れたコーヒーでたくさんの人を笑顔にすること」です。ここには、誰もが輝ける環境があります。 ダウン症についての理解と社会への包括的な取り組み ダウン症は染色体異常によって引き起こされる疾患で、主な特徴として知的障がい、特徴的な顔貌、身体的な発達の遅れが挙げられます。 通常、21番目の染色体に三本目の染色体が追加されることによって生じます。この症状は生涯続くもので、現在の医学では治療法は存在しません。 社会的な課題 ダウン症の人々が直面する課題の一つは、社会的な理解の不足です。過去には、ダウン症の人々が社会から隔離され、差別や偏見に苦しむことが少なくありませんでした。また、教育や雇用の機会が不十分であったり、適切な医療やサポートを受けられない場合もあります。 包括的なアプローチ 近年、ダウン症に対する社会の理解が向上してきています。多くの国や地域で、ダウン症の人々が自立した生活を送るための支援やサービスが提供されています。 教育機関や職業訓練機関では、個々の能力や興味に合わせたプログラムが提供され、社会参加の機会が広がっています。また、企業や雇用主もダウン症の人々を積極的に雇用する取り組みを進めており、彼らが自立した生活を送るための重要な一歩となっています。 社会へのメッセージ ダウン症の人々は、私たちと同じように多様な能力や個性を持っています。彼らが生き生きとした社会の一員として受け入れられることは、社会全体にとって豊かさをもたらすものです。 私たちは彼らを包括的にサポートし、彼らが持つ可能性を最大限に引き出すための取り組みを続けることが重要です。ダウン症の人々との協力と連携により、より公正で包括的な社会を築いていくことができるでしょう。 まとめ ダウン症の美帆さんが、ヒカルコーヒーロースターでの一日を通して、自らの夢と希望を追い求める姿が、社会への理解と共に歩む一歩となっています。彼女の明るい笑顔は、障がいがあっても誰もが普通に働ける社会の実現を象徴しており、その輝きが周囲に広がる温かな場所がここにあります。 ダウン症は知的障がいや身体的な特徴を持つ染色体異常によって引き起こされる疾患です。社会的な課題に直面しながらも、ダウン症の人々は個々の能力や個性を持っており、包括的な支援と理解によって彼らが持つ可能性を最大限に引き出すことが重要です。 彼らが生き生きと社会の一員として受け入れられることは、社会全体にとっての豊かさとなります。私たちは、ダウン症の人々との連携を通じて、より公正で包括的な社会を築いていくことが求められています。 参考 「障がいがあっても普通に働く」思いを込めたカフェ 特性に合わせたやり方で夢を見つけたダウン症の女性(関西テレビ)#Yahooニュース -
障がい者基本計画を見てみよう!障がい者施策の総合的推進とアクセシビリティの向上
前回に続き、障がい者基本法を詳しく見ていきましょう。政府は障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、横断的な視点から施策を展開しています。この法律は、障がい者が社会の中で自立して活動し、自己実現することを支援し、彼らが快適に暮らせる環境を整えることを目指しています。 そのために、法律ではさまざまな分野にまたがる施策が提案されており、バリアフリーな社会を築くための具体的な取り組みが示されています。こうした横断的なアプローチによって、障がい者の社会参加を実現するための基盤が整備されています。 各分野に共通する横断的視点 条約の理念の尊重及び整合性の確保 障がい者に関する施策や制度を策定・実施する際には、条約の理念を尊重し、整合性を保つことが不可欠です。障がい者を社会の一員として捉え、彼らが自らの決定に基づき社会に参加する主体として尊重することが重要です。 そのためには、障がい者の視点を施策に反映させ、彼らが意思決定過程に参画する機会を提供する必要があります。さらに、障がい者の委員選任に配慮し、障がい特性に応じた適切な情報保障や合理的配慮を行うことが求められます。 社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上 社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れ、障がい者の社会参加を実質的なものとすることが必要です。社会的障壁の除去や障がい者差別の解消に向けた取り組みを強化し、障がい者が安心して生活できる環境を整備することが重要です。 また、広報・啓発活動や企業・市民団体の支援を通じて、アクセシビリティの向上と心のバリアフリーを推進する必要があります。さらに、情報公開やパブリックコメントの際には、障がい特性に配慮した適切な情報保障を実施することが求められます。 アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進 社会のあらゆる場面で情報通信技術(以下「ICT」という。)が浸透しつつあります。新たな技術を活用した機器やサービスは、社会的障壁を生み出す可能性がありますが、同時にアクセシビリティに配慮したものも存在します。 このようなICTを含む新たな技術の利活用は、障がい者への移動支援や情報提供など、様々な場面でアクセシビリティを高める上で重要です。そのため、積極的な導入を推進する必要があります。 市場創出が課題 また、中小・ベンチャー企業が先進的な技術を開発する際には、市場創出が課題となります。この課題に対処するため、国が需要側の視点に立った施策の充実が必要です。 具体的には、公共部門における新技術の調達において、透明性と公正性を確保しつつ、中小・ベンチャー企業の入札機会を拡大することが重要です。さらに、政府調達においてアクセシビリティに配慮した機器・サービスを推進するため、国際規格に基づいた技術仕様の定め方を検討することも必要です。 倫理的・法制度的な課題 そして、科学技術の社会実装には倫理的・法制度的な課題が伴います。遺伝子診断や再生医療などの分野で見られるように、社会としての意思決定が必要です。これらの課題に対処しながら、アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用を推進していくことが求められます。 当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援 障がい者の尊厳と自律、自立の尊重を目指す条約の趣旨に基づき、障がい者が各ライフステージで適切な支援を受けられるよう、教育、文化芸術、スポーツ、福祉、医療、雇用などの分野を有機的に連携させ、切れ目のない支援を提供します。 この支援は、障がい者が直面する困難に対処するだけでなく、自立と社会参加の観点から行われ、障がい者やその家族への支援も重視します。複数の分野にまたがる課題に対処するためには、関係する機関や制度の連携が必要です。 障がい特性等に配慮したきめ細かい支援 障がい者一人ひとりの尊厳を重視し、障がい者の個別的な支援を障がい特性や状態、生活実態に応じて提供します。外見からは分からない障がいや状態の変動する障がいに対しても、配慮が必要です。 また、発達障がいや難病、高次脳機能障がいなどについては、社会全体の理解を促進し、施策の充実を図ることが重要です。特に発達障がいについては、社会全体での理解促進と、家族支援、福祉、労働、教育、医療の分野での総合的な取り組みが必要です。 障がいのある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援 障がい者施策は、障がいのある女性や複合的な困難に直面する障がい者に対して、特にきめ細かい支援を提供する必要があります。 障がいのある女性は、障がいの種類や状態によって異なる支援が必要であり、また女性であることがさらなる困難を引き起こす場合もあります。同様に、障がいのある子供や高齢者についても、それぞれに適した支援が必要です。高齢者施策との整合性を考慮しながら、条約の理念に基づいた支援を提供していくことが重要です。 PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 政策立案の確かな根拠に基づくために、障がい者施策では、必要なデータ収集や統計の充実を図り、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを構築し、着実に実行していきます。このサイクルを通じて、施策の見直しや改善を継続的に行い、実効性のある取り組みを推進していきます。 企画 (Plan) 確かな根拠に基づく政策立案を実現するためには、障がい者の実態や社会環境を適切に把握することが重要です。各府省は、障がい者の性別、年齢、障がいの種類などの観点を考慮しながら、必要なデータ収集や統計の充実を図ります。具体的な成果目標を設定し、総合的な施策を企画することで、効果的な施策を展開します。 実施 (Do) 各府省は、障がい者やその関係者の意見を聴取しながら、計画的な施策の実施に努めます。障がい者の状況や施策に関する情報を収集し、分析することで、効果的な施策を展開します。他の施策や計画との整合性を図り、総合的な支援を提供します。 評価 (Check) 障がい者の意思決定過程への参画を促進し、施策の実施状況を継続的にモニタリングします。数値やデータに基づき、施策の実施状況や効果を評価し、必要に応じて課題や支障を解消するための分析を行います。障がい者政策委員会も、実施状況の評価や監視を行います。 見直し (Act) 施策の実施状況や評価結果に基づき、各府省は施策の見直しを行います。必要に応じて法制度の整備なども検討します。障がい者政策委員会は、政府全体の見地から施策の実施状況を評価し、必要に応じて勧告を行います。また、社会情勢の変化に柔軟に対応するため、本基本計画の見直しを行います。 施策の円滑な推進 (1) 連携・協力の確保 政府の障がい者施策を一体的に推進するために、各府省間で緊密な連携・協力を図ります。地方公共団体との連携も重要であり、役割分担のもとで連携体制を強化します。障がい者団体や専門職の協力も得ながら、施策を展開していきます。さらに、国際機関や他国政府との連携も努め、持続可能な開発目標の実施を総合的かつ効果的に推進します。 (2) 理解促進・広報啓発に係る取組等の推進 ① 重点的な理解促進事項 社会全体で障がいの有無によらず支え合う共生社会の理念を普及させ、共生社会の実現に向けて啓発活動を展開します。2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会のイメージを広め、障がい者施策の意義について理解を深めます。さらに、知的障がいや精神障がいなど、理解が必要な障がいについても啓発活動を行います。 ② 理解促進に当たり配慮する事項 行政や民間団体との連携による広報・啓発活動を計画的かつ効果的に展開し、国民の理解を深めます。地域社会における障がい者との交流を促進し、障がい者週間などの行事を通じて啓発活動を推進します。また、幼児や児童生徒を対象とした理解促進の取り組みも重要です。 各分野における障がい者施策の基本的な方向:安全・安心な生活環境の整備 【基本的考え方】 障がい者が地域で安全かつ安心して生活できる環境を整備することを目指します。そのために、バリアフリーな住環境や移動しやすい環境、アクセシビリティを考慮した施設の普及などを推進し、社会的な障壁を取り除き、アクセシビリティを向上させます。 (1) 住宅の確保 公営住宅の整備や改修を通じてバリアフリーな環境を提供し、障がい者向けの公共賃貸住宅の供給を増やします。 民間賃貸住宅の活用やバリアフリーな改修を促進し、障がい者の入居をサポートするための制度を導入します。 障がい者の日常生活を支援するため、日常生活用具の給付や住宅改修に対する支援を行います。 グループホームや地域生活支援拠点の整備を推進し、障がい者の地域での生活を支援します。 非常時における防火安全体制の強化を図り、障がい者が安心して福祉サービスを利用できる環境を整えます。 (2) 移動しやすい環境の整備等 駅や旅客施設において段差解消や転落防止設備の整備、障がい者に配慮した車両の整備を促進し、公共交通機関のバリアフリー化を推進します。 公共交通機関内外での案内表示や情報提供の充実を図り、障がい者の利用しやすさを高めます。 交通事業者に対して、障がい者に適切な対応を確保するための教育訓練を促進します。 障がい者に対する個別の輸送サービスを提供するため、福祉タクシーやスペシャル・トランスポート・サービス(STS)の普及を促進します。 過疎地域や地方での移動手段の確保や、高齢者や障がい者の安全な移動を支援するため、ITSの研究開発や高度自動運転システムの導入に取り組みます。 (3) アクセシビリティに配慮した施設、製品等の普及促進 バリアフリー法に基づく建築物のバリアフリー化を促進するため、地域の実情に合わせた取り組みを行い、建築物のバリアフリー化を進めます。 官庁施設においても、バリアフリー法に基づく整備水準を確保することで、窓口業務を行う施設のアクセシビリティを向上させます。 都市公園や河川の整備においても、障がい者や高齢者が利用しやすい環境を整備し、安全で安心した利用を促進します。 日常生活製品や設備のユニバーサルデザイン化を推進し、障がい者や高齢者の利用に配慮した製品の普及を図ります。 (4) 障がい者に配慮したまちづくりの総合的な推進 高齢者や障がい者の社会参画の拡大とバリアフリーのまちづくりを促進するため、バリアフリー法や関連施策の見直しを行います。地域連携を強化し、ハード・ソフトの両面から取り組みます。 福祉・医療施設の適正な立地や公園との一体的整備、生活拠点の集約化などを通じて、バリアフリーに配慮したまちづくりを推進します。 市町村が定める重点整備地区内での生活関連経路の整備や公共交通機関のバリアフリー化を促進し、幅広い歩道や視覚障がい者誘導用ブロックの整備を行います。 国立・国定公園の主要利用施設のバリアフリー化を実施し、生活関連経路を構成する道路においてもバリアフリー対応型信号機や道路標識の整備を推進します。 自動車の運転においても障がい者の安全を考慮し、信号灯器の改善や速度規制などの対策を講じます。 駐車区画の適正利用を促進するため、地方公共団体における「パーキングパーミット制度」の普及を図ります。 ユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進を行い、屋内外でのストレスない活動を実現します。 「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、具体的な取り組みを実施します。 まとめ 障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、政府は横断的な視点から施策を展開します。連携強化や新技術の活用を通じて、障がい者が安心して生活できる社会の実現に向け、着実な一歩を踏み出しています。 参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度) -
3重の障がいを抱える女性の、働くための人知れぬ努力 企業側に必要な「合理的配慮」とは
従業員40人に1人の割合で、障がい者を雇用することが法的義務とされています。この法定雇用率は、企業全体の雇用者における身体、知的、精神障がい者の比率を示しています。そして、この4月、その割合が2.3%から2.5%に引き上げられました。政府は段階的に雇用率を引き上げる方針であり、2026年には2.7%に達する予定です。障がいを持つ労働者の定着や戦力化に向けて、どのような取り組みが必要でしょうか。 「きちんと会社の力になれる」 福岡県久留米市出身の筒井華菜子さん(34歳)は、障がいに対する負い目を一切持たず、「自分の努力次第で、きちんと会社の力になれる」と胸を張っています。 彼女は生まれつきの脳性マヒにより、全身が動きにくく、伝い歩きしかできない状態です。移動には電動車いすが必要であり、同じ姿勢を長時間保つことも難しい状況です。 「健常者の同期に負けたくない」 筒井さんは障がいを乗り越え、北九州市立大学の外国語学部を卒業しました。地元の住宅設備メーカーで契約社員として働き始め、製品の輸出入に関わる英文書類の作成や翻訳などの業務に従事しました。 「健常者の同期に負けたくない」という思いから、彼女は残業も惜しまず、精力的に働きました。しかし、3年目に壁にぶつかります。新人扱いが終わり、仕事の速さが求められるようになりました。 発達障がいが判明 筒井さんは両上肢にもマヒがあり、パソコンの操作に時間がかかる状況です。会社側もその事情を理解していましたが、「もっと頑張れ」との圧力がかかりました。深夜までの作業でも締め切りに間に合わない案件が増え、焦りや不安が募りました。細かなミスも相次ぎ、上司からの叱責も絶えませんでした。 この時期、彼女は発達障がいも判明し、精神的にも落ち込み、業務にも影響が出る負のスパイラルに陥りました。最終的には会社から雇い止めに遭うこととなりました。 障がいに向き合う ハローワークを経由して、筒井さんは地元の大学で事務補助員としての仕事を見つけました。雇用期間は有期であり、賃金は低かったものの、仕事の内容は非常に充実していました。彼女の高い語学力を評価され、研究者が海外の大学や企業と共同プロジェクトを始める際の契約業務を任されました。これにより、彼女の気持ちも上向きになり、障がいに対して少しずつ向き合うことができるようになりました。 障がいとの付き合い方を工夫 彼女は身体障がいとの付き合い方を工夫しました。電動車いすのリクライニング機能を活用し、1時間に1回、約5分かけて全身を動かし、筋肉の緊張をほぐすことで、疲れがたまっても集中力を保つことができるようになりました。 また、発達障がいに対処する方法も見つけました。任された案件をスケジューリングし、早めに取り組むことで提出期限に間に合わせるようにしました。さらに、書類を提出期日の前日までに完成させ、2回以上の見直しを行うことでミスを減らすことに成功しました。 東京オリンピックの組織委員会に応募 さらに、仕事のスピードを向上させるために、彼女は特技である速読術をさらに磨きました。休日にはITスキルやマネジメントの本を読んで新たな知識を学び、コミュニケーションの面でも相手の立場を考えて伝わりやすい言葉を使うようにしました。 自信を取り戻した筒井さんは、幼少期からの夢であった国際的な舞台での活躍を叶えるため、東京オリンピックの組織委員会に応募しました。契約社員として採用され、上京して一人暮らしを始めました。組織委の内外に発信される文書の英訳と和訳を担当し、「夢のような時間を過ごせた」と充実した日々を振り返ります。 目標は安定した正社員の職に就くこと 東京オリンピック閉幕後も東京に残り、次はIT企業で非正規雇用で働きました。しかし、体調を崩して入院し、統合失調症を発症したこともあり、2023年12月末で退職しました。現在も定期的な通院を欠かさず、薬を服用して症状を抑えながら、別の民間企業で翻訳業務に従事しています。 現在の目標は安定した正社員の職に就くことですが、障がい者雇用枠での募集は少なく、競争が激しい状況です。軽度の身体障がい者が企業間で争奪戦となる一方で、重度の障がいや精神的な疾患を持つ人は敬遠されやすいという現実もあります。 周囲の理解や配慮が大きな支え 心身に「3重」の障がいを抱えながらも、筒井さんは努力を惜しまず、やりがいを持って働けた職場では周囲の理解や配慮が大きな支えでした。「障がい者雇用促進法」は、能力を発揮するための支障を取り除くための措置を「合理的配慮」として定め、雇用する事業者側に提供を義務づけています。 しかし、企業側にとって、どのように配慮すればよいかがわからないというケースも珍しくありません。そこで、FA機器大手・オムロンの特例子会社「オムロン京都太陽」を訪れた記者は、ヒントを求めました。 特例子会社は障がい者の雇用に特化した子会社 特例子会社は障がい者の雇用に特化した子会社であり、一定の要件を満たすことで、そこでの雇用人数を親会社のものとしてカウントできます。この制度は、職に就ける障がい者の増加を後押ししてきましたが、通常業務から隔離されているとの批判もあります。 一方、オムロンは法令雇用率の義務化以前から、50年以上にわたって障がい者雇用に取り組んできたパイオニアです。そのため、京都太陽では障がい者が働くためのさまざまな合理的配慮を見ることができました。 約80人の障がい者を受け入れている オムロンは体温計や血圧計で有名ですが、実際には工場で使用されるセンサーや他の機器が主力製品です。その一翼を担う京都太陽では、約60人の従業員のうちおよそ35人が障がい者であり、さらに社会福祉法人との提携により約80人の障がい者を受け入れています。オムロン本体から受注したソケットや電源などの少量多品種生産に取り組み、扱っている製品は約1500種類にも上ります。 甘えは許されない 「ここで作ったものはオムロンの看板で世界中に出荷される。当然、高品質と収益性を求められる。『特例子会社だから』という甘えは許されない」と、京都太陽の三輪建夫社長は強調します。 生産ラインでは、作業効率を高めるための工夫が施されています。例えば、複数の部品をピッキングするブースでは、指示書に印刷されたバーコードを読み込むと、必要な部品の棚に備えられたライトが光ります。センサーが反応し、次に袋へ詰めるべき部品の棚が点灯する仕組みです。このような工夫により、知的障がい者でも簡単に働くことができます。 「業務ありき」の発想 こうした環境整備の根源には、「業務ありき」の発想があります。障がい者雇用の現場では、採用した障がい者ができそうな仕事を見つけて与えるという流れが一般的ですが、京都太陽は異なります。彼らは最初にやるべき業務を設定し、その上で個人の障がい特性を可視化し、仕事の内容と調整し、遂行のハードルとなるものを取り除く過程を辿っています。 各々の障がい特性に合わせ最適化する 頼まれた仕事がある場合、身体障がい者には試してみて何が妨げになるのかを明確にするために一度やらせます。知的障がい者には、作業内容を丁寧に説明し、理解されなかった点を整理していきます。 この過程でカギとなるのは各生産ラインに配置されたリーダー社員です。彼らは各々の障がい特性に合わせ、機械の操作性を最適化するためのアイデアを考案します。技術員と協力して、社内に設けた工作室で必要な補助具を自作します。これまでに製作した補助具の数は約250に及びます。興味深いことに、このリーダー社員は障がいの有無に関わらず、意欲や能力を重視して任用されます。 対面での会話が苦手な人には電子ツールを使って対応 発達障がいを含む精神障がい者は、知能や運動機能は健常者と変わらない場合があります。仕事自体は問題なくこなせることが多いですが、コミュニケーションで苦労するケースが多いとされています。このような障がいの場合、「どちらかというと、業務よりも同僚とのマッチングが必要」と三輪氏は述べています。 対面での会話が苦手な人には、電子ツールを使って対応します。心身の状態を把握するための項目を定め、本人が評価することで、上司との双方向のコミュニケーションを図ります。毎日の感想や異変、悩みなどを記入し、上司はそれを読んでコメントを返します。 このような交換を通じて、早期に問題や異変を察知し、迅速な支援につなげることができます。さらに、行動の原因を分析し、対策を考え、本人の同意を得て職場内や家族に共有することで、問題の解決にも効果的です。 本人も安心して精神的に落ち着くことができる このような双方向のコミュニケーションにより、同僚たちは各自の障がいを受け入れやすくなり、本人も安心して精神的に落ち着くことができます。その結果、問題や周囲に受け取られる言動の改善が期待されます。 独立行政法人高齢・障がい・求職者雇用支援機構が2017年にまとめた障がい別の調査では、就職から1年後の職場定着率が「身体」で約61%、「知的」で約68%、「精神」で約50%と報告されています。そうした中で、京都太陽を辞めた障がい者は、直近5年で計3人にとどまるという実績があります。 このように、京都太陽は障がいの有無にかかわらず、誰もが生き生きと働ける会社づくりに成功しています。法定雇用率の引き上げやインクルーシブな社会の実現が求められる中で、彼らの取り組みから学ぶべき点は多いでしょう。 障がい者雇用促進法:障がい者の雇用機会を拡大するための法的枠組み 障がい者雇用促進法は、障がいを持つ人々の社会参加と経済的自立を支援し、雇用機会を拡大するための法的枠組みです。この法律は、障がい者の雇用に関する措置や支援を定め、企業に対して積極的な取り組みを促しています。 法定雇用率とその意義 障がい者雇用促進法では、企業に対して一定の雇用率を達成することを義務付けています。具体的には、従業員数に応じて一定割合の障がい者を雇用することが求められます。この法定雇用率は、企業全体の従業員に占める身体、知的、精神障がい者の比率を示し、障がい者の雇用機会を促進することを目的としています。 法定雇用率の引き上げと政府の取り組み 日本では、障がい者雇用促進法に基づき、政府は段階的に法定雇用率を引き上げる方針を採用しています。最近では、2024年4月にその割合が2.3%から2.5%に引き上げられました。また、2026年までにはその割合を2.7%にまで引き上げる予定です。これにより、障がいを持つ労働者の雇用機会が拡大し、社会の多様性と包摂性が促進されることが期待されています。 企業への影響と支援策 障がい者雇用促進法の施行により、企業は積極的な取り組みを求められます。法律は、障がい者の雇用に関する措置や支援を企業側に義務付けており、これに違反した場合には罰則が科せられることもあります。一方で、政府や地方自治体は企業に対し、障がい者の雇用や働きやすい環境を整備するための支援策や助成金を提供しています。 まとめ 障がい者雇用促進法は、障がいを持つ人々が社会で自立し、活躍するための重要な法律です。法定雇用率の引き上げや企業への支援策により、障がい者の雇用機会が拡大し、社会の多様性と包摂性が向上することが期待されています。今後も、障がい者の雇用促進に向けた取り組みがさらに進展していくことが重要です。 障がい者雇用の現場では、個々の障がいに合わせた合理的配慮と双方向のコミュニケーションが重要です。筒井華菜子さんの物語は、努力と工夫によって障がいを乗り越え、やりがいを見出す姿を示しています。これからも、彼女の経験から学び、障がい者の雇用と定着を支援するための取り組みを進めていくことが必要です。 参考 「3重」障がい抱える女性、働くための人知れぬ努力 #東洋経済オンライン @Toyokeizai -
「通級に入れない」発達障がい児の通級問題 教育現場の教員不足が深刻化
NHKに寄せられた声によると、「通級に入れない」という苦情が相次いでいます。この「通級指導」は、発達障がいなどを抱える子どもたちが通常の教室に在籍しながら利用できるサービスで、週に数時間程度の特別な指導を受けることができます。 しかし、中には通級に入れず、2年以上も不登校が続いている子どもたちもいます。この問題について、NHKは学校で何が起きているのかを取材しました。(首都圏局/ディレクター 實絢子・岩井信行) 予期せぬ出来事が起きるとパニックに 都内に住む、小学5年生のケンタさん(仮名)は、医師から発達障がいの一つである「自閉スペクトラム症」の傾向があると告げられています。彼は抜き打ちテストなど、予期せぬ出来事が起きるとパニックになってしまいます。 ディレクターが尋ねると、ケンタさんは「予定表とかはあるけど、その時に何があるかわからないから」と答えました。また、「できるかどうか、怖くなる」とも述べました。彼の母親によれば、先生の言葉を100%受け止めてしまい、「間違えちゃだめだからね」という言葉を自分が言われていると思い込んでしまうようです。 通級に入ることができなかった 2年生の時から不登校が続いているケンタさん。彼の母親は、ケンタさんがパニックになった時に気持ちを切り替える方法を学べば、再び学校に通えるかもしれないと考え、通級に申し込みました。しかし、学校からは「希望者全員は受け入れられない」という回答が返ってきたそうです。その結果、ケンタさんは通級に入ることができませんでした。 対人関係を学ぶには学校に行くことが必要 母親は、「ケンタさんが同級生の友達と一緒に遊べなくなったことが一番つらい」と述べています。彼女はまた、知識を詰め込むだけであれば家庭でもできると考えますが、対人関係を学ぶにはやはり学校に行くことが必要だと語ります。 ディレクターが尋ねると、ケンタさんは「みんなと一緒にお話したい。一緒に鬼ごっことか、そういうことをしたい」と答えました。 「通級に入れない」という声が相次いで寄せられる 「通級に入れない」という声は、ケンタさんのケース以外にも、相次いで寄せられています。 ある保護者は、「親が通級を希望しても、希望者が何名もいるため、一年以上待つ状態が普通のようです。その間に不登校になった子も何人もいます(我が家もそうです)。そしてやっと入級となっても、受けられるのは週に1時間のみでした。」と述べています。 別の保護者は、「発達の凸凹が判明した小学生の子どもがいます。二次障がいで不登校になっており、学校にも相談していますが、『通級はもっと困っている子を優先したい』とのことで、利用が難しそうです。」と訴えています。 さらに別の保護者は、「通っている学校には通級指導教室はなく、通級指導教室のある学校までの送迎を親がやらなければ指導は受けられない、という現実を知りました。私は仕事をしていて送迎をするのは難しく、諦めたまま現在に至ります。」と述べています。 教員の不足 希望しても入れない通級。その背景には、教員の不足があります。通級指導にあたるのはその学校の教員で、特別な資格は必要ありません。 都内の小学校教諭、吉川美穂さんは、教員歴14年で、4年前から通級を担当しています。彼女は、ADHDと診断された児童を指導する日々を送っています。ゲームや運動を通して、集中力や最後までやりきる力を養うことに取り組んでいます。 通級では1人1人の特性に合わせた指導が求められます。東京都では、教員1人当たり受け持つ児童数は12人という基準を設けています。しかし、吉川さんは一時期、基準を超える15人を受け持っていました。その原因は、通級を希望する児童の急増でした。当初は20人ほどと見込まれ、2人の教員が配置されましたが、実際の希望者は31人に達しました。 子ども1人1人の特性に合った指導が難しくなってしまう 江東区立豊洲北小学校の吉川美穂教諭は、「担当する子どもたち1人1人に、現在かかっている医療機関や、服薬状況などを聞き取ったりしています。その資料作りも時間がかかります。正直言うと12人でも結構いっぱいで、それ以上になると、子ども1人1人の特性に合った指導が難しくなってしまうかなと思います」と語ります。 学校は区の教育委員会に、新たな教員を配置してもらえないかと交渉しましたが、江東区立豊洲北小学校の統括校長である喜多好一さんは、「人員を配置してくださいと要望を出したのですが、通常学級でも教員が足りない状況なので配置は難しいとのことでした。結局、学校で探してくださいというような現状がずっと続いていました」と述べています。 誰でも指導を担当できるわけではない 学校は半年かけて、早期退職した元教員を探し出し、通級の担当を補充することができました。しかし、発達障がいの児童の急増に追いつかない教員の確保は、教育現場にとって深刻な課題です。 特別支援教室(通級)では、教員免許があっても、誰でも指導を担当できるわけではありません。「充実はもちろん大事ですが、教育界の中での人材不足が、すごく大きな足かせになっているのかなという実感を持っています」と、喜多統括校長は述べています。 発達障がいの認知や理解が広まったことが通級利用者数の増加に繋がった NHKが東京都内の全区市町村に実施したアンケートによれば、「教職員の人員不足など、学校側の対応を理由に、通級に待機が生じている」と答えた自治体は7つありました。 特別支援教育が専門の明官茂さんによれば、ここ数年で発達障がいの認知や理解が広まったことが通級利用者数の増加に繋がっています。この10年でおよそ3倍に増加し、18万人あまりに上ります。 今後さらに増えると予想 明星大学教育学部の明官茂教授は、「発達障がいなどの子どもに適切な指導をすると、学習や生活の困難が改善することが理解されるようになってきました。当事者や保護者、学校が、対応の必要性を認識しはじめたことで、通級を利用する子どもが増えています。通級の利用者は、今後、さらに増えると予想しています。特別支援教育を受けている子どもの割合は、諸外国に比べて、日本はまだとても少ないからです。通級を必要とする子どもが受けられる体制を整えることが必要です。」と述べました。また、彼は支援の入り口にたどり着けていない子どもたちが多くいることにも言及しました。 学習方法を身につけてもらいたいと通級に入ることを希望 都内に住む小学5年生のミカさん(仮名)については、発達障がいの一つである「学習障がい」の傾向があるといいます。1年生の時、漢字の読み書きが苦手であることに気づいたといいます。 算数など他の教科は問題なくこなせるミカさん。しかし、何度練習を繰り返しても、覚えられない漢字があるといいます。音読や漢字テストなどがあると、クラスでからかわれることも。 ミカさんはこう語ります。「例えば国語と書いてある時に、国語の「語」が読めないと、「国」で止まっちゃって読めなくなっちゃう。『読むのが遅い』とか、『ちげーだろ』って言われたことはあった」と。 ミカさんの母親は、ミカさんにあった学習方法を身につけてもらいたいと通級に入ることを希望しました。「ルビを教科書に振ったら楽になるよとか。どこを読んでいるのか分からなくなったらこういう風に線引くといいよとか、そういうサポートがあると助かるなと」と述べています。 検査を受けるのが条件 しかし、思わぬ壁が立ちはだかります。東京都では、通級に入るために、「発達検査」と呼ばれる検査を受けるのが条件になっています。検査の予約をとろうと区に問い合わせると、ほとんどが埋まっている状況。検査を受けるまで、1年以上かかりました。 ミカさんは検査を待つ間、不登校になりました。大好きなバレーボール部の活動も、参加できずにいます。「読むのが遅い」とか、そういうことがトラウマになって行けなくなったのかもしれない。学校に行けるように6年生になるまでにしたいとミカさんは語ります。 病院の予約が取れない 保護者からの声は、「発達検査は、病院の予約がまず取れない。取れても検査の予約ははるか先。5月に予約したら検査は10月、結果は11月ころになります。新規受け付けすらしていないクリニックも多いので、初診でとなると、いったいいつ検査できるんでしょう…」というものや、「2年生になる時に転勤で移住しました。それまで他県での通級を利用していたことや、診断名を転校先にお伝えしました。しかし、その自治体で検査をしなければ利用ができないルールで、検査まで半年待ち、利用開始は1年間待たされました」といった声が寄せられています。 マンパワー的にたくさんの患者さんを診ることができない なぜ、こうした事態が起きているのか。通級に入るための検査は、自治体や民間の医療機関などで行われています。 記憶力や理解力を測り、検査後の手続きまで含めると、子ども1人につき約5時間かかります。この小児科で実施できる検査数は、最大で月に10件ほどです。現在、検査は5か月待ちだといいます。 カラムンの森こどもクリニック院長である内田創さんは、「なかなかマンパワー的にたくさんの患者さんを診ることができません。需要と供給が全く合っていない状況かなと思います。なんとか検査をしなきゃいけないという思いもありますが、限界といいますか、なかなかやりきれません」と述べました。 専門的な指導を行う教員の養成 支援を拡充していく上で、もうひとつの課題となっているのが、専門的な指導を行う教員の養成です。埼玉県戸田市では、教員に専門的なスキルを身につけてもらう取り組みを始めています。 おととし、教員になった中野健志さんは、初めて担任を任されたのが、発達障がいなどの生徒14人がいるクラスでした。「子どもたちに対して何をすればいいのか、本当に何もわからない状態でした。どうすればいいのか、わからないこともわからない」と中野教諭は振り返ります。 この学校には、そんな中野さんをサポートする民間の専門家がいます。アメリカで心理学などを学び、発達障がいの子どもの支援に長く携わってきた宇都綾子さんです。 問題が起きないよう環境を変える 重視するのは、問題行動をする生徒を叱るのではなく、問題が起きないよう環境を変えることです。たとえば、かつては周りの注目を集めるため、大きな音をたててドアの開け閉めを繰り返す生徒がいました。 そこで、LITALICOパートナーズの精神保健福祉士である宇都綾子さんは、先生方と共にDIYを行いました。スポンジやシリコンを使って、音が出ないようにドアを加工すると問題行動を起こすことが無くなりました。 宇都綾子さんはこう語ります。「いくら締めても音が鳴らないので、注目をもらえない状態になったら、児童の注目欲求の行動がどんどん減少していきました。子どもたちが怒る、イライラする、爆発するという行動ではない行動に、うまく導いてあげるのが重要かなと思っております」。 心理学や行動分析に基づく専門的なスキル 担任の中野教諭は、このような心理学や行動分析に基づく専門的なスキルを宇都さんから学んでいます。この日は、独り言を言い続ける生徒について、相談しました。 中野教諭はこう述べます。「先生が話しているときに、独り言を話して自分の世界に入り込んじゃうのを、何とかしたいんですけれど」。 すると、宇都さんは提案します。「本人に、1人で話しているということを認識してほしいので、注意というよりは、「呼んだ?」という感じで、話していることを認識できるよう促してみてください」。 学校は専門家を招いて教員の成長を促す試み 発達障がいのある子どもの学びを支援するため、学校は専門家を招いて教員の成長を促す試みを行っています。戸田市立戸田中学校の特別支援学級主任である中村直子さんは、「一般の学級と同じような言葉がけでは、なかなかうまくいかないところがあるので、そういうところで少しずつずれが生じていました。専門家にその時のその子に対して、適切な対応がとれるようになってきたかなと思います」と述べています。 まとめ 発達障がいを抱える子どもたちの通級指導に関する様々な問題が浮き彫りになりつつあります。教員の不足や検査待ちの長さなど、課題は多岐にわたりますが、専門家との協力や個別指導の充実が必要不可欠です。彼らの学びと成長を支えるため、教育現場と社会全体が連携して取り組むことが重要です。 参考 発達障がいの子ども「通級に入れない」相次ぐ 検査に1年待ちも 教員不足も深刻 | NHK -
障がい者のリアルに東大生が迫る 10年の挑戦と成長:すべての人が抱える生きづらさに
10年前、2013年に東京大学で始まった「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」が、10年の歳月を経て、記念のイベントを開催することになりました。このゼミでは、身体障がいや知的障がいなど、様々な障がいを持つ人々との対話を通じて、障がいの当事者としてのリアルな体験を学生たちは重ねてきました。 その過程で、難病や依存症などの患者とも向き合い、共に学び合ってきました。この記念のイベントでは、ゼミに参加した学生たちは、これまでの半年間の体験や学びを振り返りながら、障がいの当事者と向き合うことで自分自身を見つめ直す機会を得ることになりました。 「障がい者のリアル×東大生のリアル」と題したイベント 2023年12月、東京大学で開催された「障がい者のリアル×東大生のリアル」と題したイベントでは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者がゲストとして招かれました。ALSは全身の筋肉が次第に動かなくなる難病であり、多くの患者は2年から5年で自発呼吸ができなくなるとされています。 「周囲に“死なせてほしい”と言ってしまった」 イベントでは、参加者からこんな質問が投げかけられました。「周囲の友人から“死んだほうが楽、死にたい”という相談を受けることが少なくありません。そのような思いを抱いている人に対してどのような応答があり得るのでしょうか」。これに対し、ALS患者の岡部さんは代読で応えました。 「私はこの8月に体調を大きく崩してあまりにもつらくて、周囲に“死なせてほしい”と言ってしまいました。私は死に直面したときにそばにいてくれるだけでどんなに救われるかと思いました。」 なぜ生きづらさに向き合うのか 2013年に始まった学生が運営する自主ゼミ、「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」は、東京大学生がなぜ生きづらさに向き合うのかを問いかけます。 2年の佐藤万由子さんは、高校までの経験から、周囲で不登校や貧困などの生きづらさを目にしてきました。彼女は、誰もが抱える生きづらさに光を当て、語られていない声に耳を傾けることの重要性を感じています。 1年の榎本春音さんは、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダー男性です。彼は自らも生きづらさを感じており、自分の中にある障がいに対する偏見や不安を抱えてきました。榎本さんは、障がいに対する意識を再認識し、再構築する必要性を感じています。 思いや質問を投げかける 10年目の記念イベントでは、一般にもゼミを公開しようという試みが行われ、これまで講師役を務めてきたALS患者の岡部宏生さんと佐藤裕美さんに依頼が行われました。ALSは2年から5年で自発呼吸ができなくなるとされており、生きるか、亡くなるかの選択を迫られます。 学生たちは、岡部さんと佐藤さんに向けて思いや質問を投げかけました。「お二人とどう出会うかということを考えたときに、生きていてその先の話というか、お二人の現実というか、どのような現実・世界を生きているのか伺いたいと思って。」 避けて通れない問題があった 岡部さんは文字盤を使い、目の動きで会話します。彼はこう語りました。「私と裕美さんは死について話すことがとても多いです。死ぬことは誰にとっても前提だけど、それを身近に感じているのはかなり不自然だよね。」 ALS患者の2人にとって、避けて通れない問題がありました。2020年、京都市のALS患者の女性に対する嘱託殺人の疑いで、医師が逮捕された事件が発生しました。 この事件は、"動かない体で生きる意味がない"という女性の訴えに同調し、「安楽死を認めるべき」という意見がネット上にも見られました。岡部さんはこの事件を振り返り、以下のように語りました。 「あんな姿なら死なせてあげた方がいいという典型でもあるけどね、ほっといてくれとも思うし、そんな発信ではだめだな、もっと社会に伝えたいと思うことと両方あるよ。」 「めちゃくちゃ怖いこと」 ゼミ生の佐藤さんは、かつて家族が意思疎通できない状態になった時の葛藤をぶつけました。「自分自身も脳梗塞のおじいちゃん、おばあちゃんがずっと病院にいて毎日通うっていう生活をしていて。悩んで、すごくいろんなことを考えさせられました。」 これに対し、ALS患者の佐藤さんは次のように述べました。「安楽死とか尊厳死とかが、何かあるとすぐ語られてしまう状況が耐えきれなくて。なるべく見ないように、聴かないように触れないようにしてきて。でもこれじゃだめだ、逆にどんどん向き合って考えなくちゃ行けないと思って。でもそれはそれは自分にとってめちゃくちゃ怖いことなので。」 「生死を二択で捉えられることに違和感を感じた」 榎本さんは、自らも性別のことで悩んだ経験があります。そんな彼女は、ALSと一緒に生きる岡部さんと佐藤さんの話を聞きたいと述べました。 10周年の記念イベントには、学内外から約130人が参加しました。東大生たちは、岡部さんと佐藤さんに向けて、著書やブログで触れられた「生死を二択で捉えられることに違和感を感じた」というお話について詳しく聞きたいと述べました。 岡部さんは次のように答えました。「『“あした生きますか?それとも死にますか?”という質問をみなさんが受けたときにどう思いますか。わたしは馬鹿なこと言わないでよって思っちゃう。生きるつもりでいますがと思っちゃう。けれど、それがいつか言えない時が来るのかなあという病気ではあります。」 「生物はもともと生きることを前提として存在している」 そして、岡部さんはリアルゼミでの経験を共有しました。「ある時のリアルゼミでのことである。生死についての話が出た時のことであったが、生きることと死ぬことが、まるでてんびんが釣り合っているかのような話し方がされているように思えて、私は強烈な違和感を感じた。生物はもともと生きることを前提として存在している。 もともとてんびんは生に大きく傾いている。そのてんびんをひっくり返して死を選ぶことがどんなに不自然かを考えるべきだと私は思う。私が発信したいことは、生存の上に立ってこそ“どうやって生きるか”が存在していること。どうやって生きるかは無限に選択肢があるということ。生きていけないような環境を作り出しているのは私たち自身であると言うこと。どうか私を殺さないで。」 受け止める側が考えること 佐藤さんは、このゼミで学生たちとの対話についての思いを述べました。彼女はこう語ります。「私自身『私はこう思う』っていうこと、そういうことを発信することが何の意味があるんだろう。それは意味をなさないことだから、言うのをやめてしまおうとか、真剣に聴いてくれている人がいるのだろうかとか思っていました。」 しかし、以前リアルゼミに参加した際に、学生たちが真剣に彼女の言葉を受け止め、質問や対話をしてくれたことで、彼女は大きな衝撃を受けました。「『私が』ということにどれだけ意味があるのかということは私が考えることではなくて受け止める側が考えればいいことなんだと気づかせていただいた。」 人との関わり方を深く考える 学生たちは、当事者たちが語った思いについて話し合いました。彼らは、生きると死ぬというテーマについて話を聞くことや、そのテーマについて話すことが、普通のことではないと感じました。 佐藤万由子さんは、「わたしたちに力になりたいと思ってくれているのかもしれないし、感じ取って欲しい、すごく優しい気持ちでしゃべってくれているんだろうな」と述べました。 また、榎本春音さんは、自分自身が選択を迫られていることについて言及し、「生きるかどうかの選択も、選ぶことの怖さや割り切れなさはお二人もずっと抱えてらっしゃったことだから、それを伝えてくれた」と述べました。 最後に、学生たちは、なんにもない人の話も同様に大切に聞くべきであり、人との関わり方を深く考えるべきだということに気づきました。 非常に愛情深いと感じられる 2月、ゼミ生たちは再び岡部さんと佐藤さんを訪ねました。学生の佐藤万由子さんは、佐藤裕美さんに向かって語りかけました。 佐藤万由子さんは、佐藤裕美さんが自分が語ることに抵抗を感じていることについて言及しました。しかし、それでも彼女が今回のゼミに参加してくれて、何かを感じてもらえることを願って話してくれたことは、非常に愛情深いと感じられると述べました。「返したいというか、いただいたものは返したい。」 それに対し、佐藤裕美さんは次のように返答しました。「受け止める人が確かにいて、なんて貴重な今の瞬間なんだろうと思っていて、それがたまっていくことが多分、生きていきたいなみたいなことにつながっている。」 「一緒に生きようね」 榎本春音さんは、「みんな違うっていうこと。みんな違う経験を持っているということ。それはなんか自分はすごくわくわくするんですよね。こんなに違うのにみんな一緒に生きてんじゃんって思うんですよね。悩むっていうことがそんなに悪いことじゃないかもしれないってすごく考えるようになって、悩むっていうことが生きることだってすごく思って。もやもやしながら生きていくっていうこと。それがいいなって思っています。」 一方、岡部宏生さんは、「“生きる”か“死ぬ”かはたった2通り。でもどうやって生きるかは70億通り。しっかり生きようね。一緒に生きようね。」と述べました。 共生の重要性や自己実現の大切さ 彼らが自主ゼミで学んだことが、自らの人生や生き方に大きな影響を与えたことが窺えます。 最初は「東大生」と「障がい者」という枠組みの中で対話していた学生たちが、ゼミを通じてその枠組みから解き放たれ、肩書きや属性にとらわれることなく自由な発想や行動ができるようになったということは、このゼミが与える価値の大きさを示しています。 多様な人々との対話を通じて、自分自身や他者、そして社会に対する理解が深まり、共生の重要性や自己実現の大切さを実感した学生たちは、これからの未来をどう作っていくのかという問いに向き合っている様子が伝わってきます。彼らの成長と展望に期待が寄せられると感じられます。 まとめ 自主ゼミナール「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」が10年の歳月を経て、その記念のイベントを開催しました。このゼミは、学生たちが枠組みにとらわれず、多様な人々との対話を通じて成長し、共生の重要性や自己実現の大切さを実感する場となっています。10年目の今、彼らの挑戦と成長、そして未来への展望が明るく照らされています。 参考 東大生が障がい者のリアルに迫るゼミ すべての人が抱える生きづらさに | NHK
Movieみんなの障がい動画
みんなの障がい動画は、障がいに関する基礎知識などを、動画でわかりやすくお伝えしていきます。
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【大人の障がい】離人症とは?動画で詳しく解説!
『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、離人症について詳しく紹介します。 離人症とは 離人症とは、解離性障害の一種であり、自分の意識や体が自分の物ではないように感じたり、物事がすべて現実ではないように感じたりする状態のことです。 離人症は人口の約2%に発生するといわれており、男女の割合は関係なく、10代から20代の発症が最も多いです。強いストレスや不安、激しい疲労、うつ病など精神疾患、違法薬物の使用などから引き起こされます。 脳科学の観点では、脳内のドーパミン物質の分泌が少ないと、離人症の症状につながりやすくなることがわかっています。離人症の症状は数時間で治まるものから、数日、数か月、重い場合は数十年にもわたって悩まされる方もいます。 主な症状 離人症の主な症状は「外界の見え方の変化」「感情の喪失」「自分の体への意識の変化」の3つです。 「外界の見え方の変化」の症状の現れ方は人それぞれであり、物や人が色あせて見える、物や人がぼやけて見える、ベールのように薄い膜ごしに物や人を見ているように感じる、夢を見ているように感じる、などです。 「感情の変化」は、感情が無くなったように思い、何かをしたりされたりしても、その意味をとらえることができなくなるという症状です。「自分の体への意識の変化」は、自分の体が自分の物ではなく、ロボットのように感じる、身体がまひしているように思う、自分の体の大きさや形がちがって感じる、自分のことを遠くから観察しているように感じる、などの症状があります。 これらの症状がありながらも、離人症の患者は「自分はおかしい状態だ」と気づくことができます。意識の混濁などはなく、妄想と現実の区別がしっかりついていることが、離人症の大きな特徴です。 治療方法について 離人症の根本的な治療法は確立されていません。そのため、精神科や心療内科では、「原因の除去」「心理療法」「薬物治療」などをおこない、離人症の症状を緩和することを目的とします。 強いストレスが原因の場合、ストレスを感じているものや環境から離れる、または問題の解決法を見つけることで、離人症の症状の改善を目指します。また、うつ病などその他の精神疾患から起こっているときは、うつ病など精神疾患の治療をおこないます。 心理療法には、認知行動療法や曝露療法などが用いられます。認知行動療法とは、物事のとらえ方を変えて、ストレスへの耐性を高める療法です。曝露療法とは、不安を感じる場面をあえて体験し、不安感に慣れていく療法です。 まずはカウンセラーと一緒に、不安を感じる場面を小さなことから体験し、少しずつ不安感をへらしていきます。しかし、離人症が心理療法で改善されることはむずかしく、多くは薬物治療が有効になります。薬物治療は、抗不安薬や抗うつ薬が主に使われます。" -
【大人の障がい】睡眠障がいとは?動画で詳しく解説!
『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、睡眠障がいについて詳しく紹介します。 睡眠障害とは "睡眠障害とは、睡眠をとるときに問題があり、からだに適した睡眠をとることができない状態のことです。統計によると、5人に1人が睡眠障害に悩まされています。 睡眠障害には複数の種類があります。代表的なものは、「不眠症」「過眠症」「概日リズム障害」「睡眠時呼吸障害」です。 そのほか、「むずむず脚症候群」「周期性四肢運動障害」「睡眠時随伴症」や、身体や精神疾患が引き起こす睡眠障害があります。睡眠障害の原因は、「ストレス」「精神疾患」「加齢」「体型」「不規則な生活習慣」「音など環境」「薬の副作用」「カフェインやアルコール」など、多くの原因があり、原因ごとに症状が変わります。" 主な症状 "主な症状は、「入眠困難」「中途覚醒」「早期覚醒」「過眠」の4つです。布団に入ってから1時間以上眠りにつけない「入眠困難」夜中に何度も起きてしまう「中途覚醒」、予定より早く起き、その後眠ることができない「早期覚醒」 睡眠時間は十分なのに熟睡した感じがしない、日中に激しい眠気が生じる「過眠」以上、4つの症状から、「頭痛やめまい」「適切な時間に起きられない」「集中力の低下」「疲れやすくなる」といった体の不調が起こります。" 治療方法について "睡眠障害は基本的に内科に受診し、治療を始めます。しかし、睡眠障害の原因がわかっている場合は、原因に合った診療科を受診しましょう。 ストレスが原因の場合は、精神科や心療内科に受診します。睡眠時の呼吸が原因だと思う場合は、呼吸器科内科が合っています。睡眠中に足がつる、手足がむずむずする、など身体的な問題で睡眠ができなくなっている場合は、脳神経内科の受診をすすめます。 睡眠障害の治療は、症状によって異なりますが、睡眠の質を高める、または睡眠を妨げる原因に作用する薬を使う「薬物治療」、医師による睡眠・生活習慣の見直し、照明を使って体内時計を整える「高照度光療法」などが主に用いられます。" -
【大人の障がい】適応障がいとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい「適応障がい」って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、適応障がいについて詳しく紹介します。 適応障害とは "適応障害とは、特定の環境や状況に慣れることができず、気分や行動に重度の障害が起こることです。転勤や転職、結婚、引っ越し、新しい人間関係など、環境が大きく変わるときに発症しやすいです。 適応障害の原因はストレスです。ストレスになることがあってから3か月以内に症状があらわれた場合は、適応障害の疑いがあります。また、ストレスの感じ方は人それぞれのため、同じ環境の変化があっても、適応障害になる人と、ならない人がいます。そのため、本人の内面が適応障害の要因になることも考えられます。 適応障害になりやすいとされている人は、「ストレスが溜まっていることに気づかない」「心配性」「繊細で傷つきやすい」「まじめで几帳面」「完璧主義」などの特徴があります。" 主な症状 "症状は「身体」と「情緒」の2つに現れます。「身体」に現れる症状は、「眠れなくなる・眠りが浅くなる」「食欲不振」「涙が出やすくなる」「のどに異物感がある」「過呼吸」「動悸が激しくなる」「肩こり」「腰痛」などがあります。 「情緒」に現れる症状は、「イライラしやすくなる」「緊張や不安が続く」「むなしい気持ちになる」「集中力が下がる」「物事に敏感に反応する」などです。 このような症状から、「無断遅刻・無断欠勤を繰り返す」「ひきこもりになる」「暴飲暴食」「ギャンブルやアルコールに依存する」など、仕事だけでなく、健康生活にも支障をきたしてしまいます。" 治療方法について "適応障害の治療方法は、「環境調整」「心理療法」「薬物療法」の3つです。適応障害は、ストレスの原因がなくなると約6カ月以内に症状がなくなることが、大きな特徴です。そのため、適応障害の治療には、まずストレスの原因をなくす「環境調整」がよくおこなわれます。 たとえば、ストレスの要因が「職場」のときは、「休職する」「異動・役職の変更」「転職」になります。心理療法は、「認知行動療法」や「問題解決療法」が使われます。認知行動療法とは、物事のとらえ方や考え方のゆがみを治し、ストレスにたいして適切な行動がとれるようにして、本人の適応力を高める療法です。 問題解決療法は、本人が抱えている問題や症状に最も有効な解決策を見つけ出す療法です。薬物療法は、適応障害の症状が重いときに、その症状を緩和するために使用されます。薬物療法で適応障害が治るわけではないので、薬の使用には慎重になる必要があります。" -
【大人の障がい】DCDとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい「DCD」って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、DCDについて詳しく紹介します。 DCDとは? "ディーシーディーとは、「発達性協調運動障害」といい、身体に問題がないにも関わらず、協調運動をおこなうことに困難がある障害です。協調運動とは、手や足、目など複数の部位を動かす運動のことです。 たとえば、「歩く」は、足を交互に前に出すという複数の動作があります。「字を書く」は「ノートを見る」「鉛筆をもつ」「動かす」、「縄跳び」は「縄を回す」「飛ぶ」など、複数の部位を動します。 このように全身運動や、手先を動かすことに困難が生じるので、日常生活や仕事にも支障をきたすケースがあります。ディーシーディーは小脳の機能不全によって起こることがわかっています。生まれつき脳機能に偏りがある「発達障害」と併発し、「ADHD」や「ASD」とともに、ディーシーディーの症状が見られることが多くあります。 そのほか、「ビタミンE欠乏症」や「熱中症」で小脳の機能に異常が起きて、ディーシーディーの症状が現れるケースもあります。ディーシーディーの発症頻度は6~10%とされており、とくに「男児」がディーシーディーになりやすいと考えられています。" 主な症状 主な症状は、運動に関する感覚に障害が起こること、細かな動作や全身運動に重い困難が生じることです。日常生活では、「字をすらすらと書けない」「ひもを結ぶことに時間がかかる」「箸を正しく動かせない」などがあります。また、ディーシーディーは運動に関する「平衡感覚」や「固有感覚」にも影響します。 平衡感覚とは、身体のバランスを保つ感覚のことです。平衡感覚に障害があると、「まっすぐ歩けない」「姿勢が崩れやすい」「めまいがよく起こる」などの症状があります。固有感覚とは、自分の体の動きや位置の把握、力に関わる感覚のことです。 固有感覚に障害があると、「よく物を落とす」「転びやすくなる」「力加減ができない」などがあり、自分の思うとおりに体を動かせにくくなります。仕事では、「化粧ができない」「自動車を運転できない」「料理ができない」「メモをとれない」「パソコンのタイピングができない」など、広く困難が生じます。 ディーシーディーは「不器用」「重度の運動音痴」だと思われやすいので、障害に気づかないと、自信をなくしたり、いじめの対象になったりして、ほかの精神疾患を引き起こすこともあります。" 治療方法について ディーシーディーの根本的な治療はないため、「理学療法」「作業療法」「感覚統合療法」などの3つを組み合わせて症状を改善します。理学療法士や作業療法士の支援を受けながら、感覚を意識ながら体を動かすトレーニングをします。 指先の細かい作業が苦手な方は、細かな作業に集中して訓練し、困難をへらしていくことを目標にします。 -
【大人の障がい】LD(学習障がい)とは?動画で詳しく解説!
大人の障がい LD(学習障がい)って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、LD(学習障がい)について詳しく紹介します。 LDとは LDとは、学習障害と呼ばれ、「読み書き」や「計算・推論」に困難が見られる状態のことをいいます。LDは発達障害の一種であり、生まれつき脳機能に偏りがあることから症状が現れます。しかし、子どものころにLDがまわりに気づかれず、大人になってからLDが発覚する「大人のLD」があります。 「大人のLD」は子どものLDより複雑であり、二次障害を発しているケースが多く見られます。二次障害とは、LDのような発達障害が原因で、不安障害や睡眠障害など他の障害が引き起こされることです。LDは見た目からすぐわかる障害ではないので、まわりからは怠けていると評価されたり、勉強や仕事ができないため自信をなくしたりして、働くことをやめてしまう方もいます。 主な症状 LDの主な症状は、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つがあります。読字障害は、読むことに困難がある障害です。「読むことに多くの時間がかかる」「文末を読み違える」「文や行を読み飛ばす」など、読むことに困難が見られます。 書字表出障害は、書くことに困難がある障害です。「鏡文字を書いてしまう」「似ている文字の判別ができない」「書き写すことができない」など、書くことに困難が見られます。 算数障害は、計算や推論することに困難がある障害です。「数を数えることが苦手」「時計を見て時間を知ることがむずかしい」「数を使って推論することがむずかしい」など、数字に関することで困難が見られます。このような症状が6カ月以上続くと、LDの疑いがあると診断されます。 治療方法について 学習障害を根本的に治療する方法は現在ありません。自分やまわりの環境を整えて、学習障害による困りごとを減らす方法になります。 読字障害の場合は、「資料には文章だけではなく図や画像をつかう」「読み上げアプリを使用する」 書字障害の場合は、「メモではなく写真を撮って記録する」「ボイスレコーダーを使う」「指示をあらかじめ文書でもらう」 算数障害の場合は、「電卓を使用する」「自分で計算をおこなうときは合っているかどうかを確認する」 このように、便利なアプリやツールの使用と、周囲の理解・協力が必要になります。自分の苦手な仕事を把握し、アプリやツールの利用の許可をとるなど、周囲へ協力を求めましょう。 -
【大人の障がい】ADHDとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい ADHD自閉スペクトラムって? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、ADHDについて詳しく紹介します。 ADHDとは? ADHDとは、発達障害の一つであり、生まれつき脳機能に偏りがある障害のことです。 生まれつきとされていますが、近年では「大人のADHD」と呼ばれており、大人になってからADHDの症状で病院を受診する方が増えています。 とくにADHDは近年、最も急増している発達障害です。芸能人がADHDであることを告白するなど、認知度も高くなっています。ADHDは生まれつきのため、直接的な原因は明らかになっていません。しかし、睡眠障害や愛着障害、虐待など生育環境により、ADHDと同じ症状が引き起こされることがわかっています。 主な症状 ADHDの主な症状は、「不注意」「多動性」「衝動性」の三つがあります。 「不注意」があると、集中力を維持することができず、「人の話を聞いていないように見られる」「ケアレスミスが多くなる」「大事な会議に事前連絡なしに遅刻または欠席する」など、大きく仕事に影響します。 「多動性」があると、じっとしていることができず、「会議中に席を立ってしまう」「人の話を遮って一方的に話してしまう」「集団のペースに合わせて仕事することができない」などが見られます。 「衝動性」があると、我慢することができず、「思ったことを衝動的に言ってしまう」「順番を守れない」「金銭管理ができない」などが見られます。 ADHDの症状の現れ方は三つあります。 「不注意」が強く現れる「不注意優勢型」 「多動性」や「衝動性」が強く現れる「多動性・衝動性優勢型」 「不注意」「多動性」「衝動性」すべての症状が見られる「混合型」の三つです。 治療方法について ADHDを根本的に治療する方法はありません。ADHDの治療は症状を改善することが目的になります。治療法として使われているのは、「心理療法」「環境調整」「薬物療法」の3つです。心理療法は、認知行動療法がよく用いられます。 認知行動療法とは、物事の受け止め方や考え方を整えて、その場面にふさわしい行動がとれるように変えていく療法です。環境調整とは、ADHDの特性による困りごとをへらすために、自分やまわりの環境を整えることです。 集中力が持続しない場合は、気が散る原因をなくすために「スマホや気が散るものは目に入らないところに置く」「耳栓などを使用して雑音をへらす」「間仕切りを使う」 忘れっぽく、ミスが起こる場合は、「メモをとって身につける」「カレンダー機能やリマインダー機能を使う」「タスク管理アプリを使う」 衝動性が強く、衝動買いをよくしてしまう方は、「買い物に行く前に必要なものをメモにとり、そのメモにあるものを買う」ことを徹底しましょう。 症状が重い場合は、医師の判断で薬物療法が使われます。脳機能を整える薬を服用し、不注意や衝動性、多動性を減らすことができます。ただし、薬の服用は依存性が生じることがあるので、医師とよく相談して決めましょう。 -
【大人の障がい】ASD(自閉スペクトラム症)とは?動画で詳しく解説!
大人の障がい ASD 自閉スペクトラム症って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、ASD(自閉症スペクトラム障害)について詳しく紹介します。 ASDとは? ASDとは、発達障害の一つであり、自閉スペクトラム症といいます。発達障害は生まれつき脳機能に偏りがあり、得意な分野と苦手な分野に大きな差が生じるのが一つの特徴です。生まれつきといわれていますが、現在は「大人の発達障害」という言葉もあり、大人になってからASDの症状で病院を受診する方が増えています。 ASDは、コミュニケーション障害や、非常に強いこだわりが見られたりします。人によっては「感覚過敏」という特性もあり、聴覚や視覚などが過敏に反応して、通常の生活を送れない方もいます。大人のASDの原因は明らかになっていません。生活習慣の乱れや過剰なストレスが、ASDと似た症状を引き起こすことはあります。 主な症状 主な症状は「コミュニケーションの障害」と「非常に強いこだわり」です。コミュニケーションの障害は、「相手との距離がわからない」「あいまいなことがわからない」「冗談が理解できない」などがあります。あいまいなことがわからないので、「少し」「しばらく」という言葉や、空気を読むことがむずかしいです。 コミュニケーションが仕事で必要になってくると、指示が伝わらなかったり、暗黙のルールを守れなかったりして、仕事に支障をきたしてしまいます。「非常に強いこだわり」には、「同じ行動を繰り返す」「集中するとまわりが見えなくなる」「物事をおこなう順番にルールがある」などがあります。 臨機応変な対応ができないため、集団行動が苦手である方が多いです。強いこだわりにより、同じものばかり食べる「偏食」になったり、聴覚や視覚などの五感が敏感になり、外を歩けなくなり、健康生活そのものに影響をおよぼすケースがあります。 治療方法について ASDなど発達障害は生まれつきのものとされており、根本的な治療はありません。ASDによる困りごとを改善するために、「環境調整」「心理療法」「薬物療法」の3つをおこないます。 環境調整とは、自分の得意・苦手を知り、苦手なことが起こらないように環境を整えることです。「苦手なことが起こる状況を避ける」「ASDの特性を家族や周囲に伝えて配慮をお願いする」などがあります。ASDの心理療法には「認知行動療法」がよく使われます。認知行動療法は、物事にたいしての感じ方や考え方を改善し、ストレスをへらしていく方法です。薬物療法は、ASDを根本的に治すものではなく、ASDによる困りごとを薬で改善するものになります。 ASDにより不安障害や睡眠障害が起こっている場合は、不安障害や睡眠障害の治療を目的に薬を使用します。あくまで薬は最後の手段であり、基本的な治療は「環境調整」と「心理療法」が中心です。
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