2024.04.24

「障がいがあっても普通に働く」輝く笑顔が織りなす物語:夢を見つけたダウン症の女性

大阪の中心部に位置する「ヒカルコーヒーロースター」は、障がいがあってもなくても誰もが普通に働くことを応援するカフェです。その中で、26歳の美帆さんが輝く夢を見つけました。

店内では、こだわりの豆で淹れたドリップコーヒーや自家製のチーズケーキが人気を集め、観光客や地元の人々が訪れます。アルバイトとして美帆さんが働く姿は、いつも笑顔で包まれています。

 

優しさと丁寧な接客で多くのお客さんを魅了

美帆さんはダウン症という障がいを持ちながらも、その優しさと丁寧な接客で多くのお客さんを魅了しています。「イチゴのチーズケーキどうぞ」と美帆さんが優しく声をかけると、お客さんからは「10月のパンプキンのケーキめっちゃおいしかった」という感想が返ってきます。美帆さんは笑顔で「かぼちゃのチーズケーキですね」と返答し、お客さんとの会話が店内に温かい雰囲気を広げます。

 

一人でコーヒーを淹れることができるまでに成長

美帆さんの存在は、障がいがあっても夢を追い求め、誰もが自分らしく働ける社会を象徴しています。その笑顔が、店内にいる誰もが心温まるひとときを提供してくれます。

美帆さんは、自身の仕事がしんどいと感じることはないそうです。練習を重ねた結果、今では一人でコーヒーを淹れることができるまでに成長しました。

 

日常生活の中で普通に働ける環境を作りたいという思い

このカフェを立ち上げたオーナーの山中英偉人さんは、特別な思いを込めてこの店を作りました。「ヒカルコーヒーロースターの『光』というのが、僕の弟の名前なんです。彼がダウン症で生まれたことが、ダウン症というテーマに取り組み始めたきっかけです。弟が生きていて、誰が面倒を見ていたんだろうか、とか」と山中さんは語ります。

1歳で亡くなった弟が生きていたら社会人になり、彼がどこで働いていたのか、という疑問から、山中さんはダウン症の人々が日常生活の中で普通に働ける環境を作りたいという思いを強く抱きました。

 

時給や待遇を一般就労と同じ

そのため、時給や待遇を一般就労と同じに設定し、美帆さんを1人の従業員として雇い入れました。彼女は障がいを持ちながらも、同じ仕事をこなす他の従業員と同じような待遇で働くことができる環境を提供されています。

美帆さんは支援学校を卒業した後、福祉事業所で7年間働いてきました。しかし、家族と一緒にヒカルコーヒーを初めて訪れ、「ここで働きたい」と話したといいます。

 

なかなか受け入れ先がない

美帆さんの母は、「一度、就職したいというので、色んな所へ実習に行かせていただいたんですけど、なかなか受け入れ先がない。(ここで働いて)笑顔が増えた。写真を向けられたときに『笑って』って言われて、なかなか自然に笑えなかったのが、普通にここでは笑っている」と語ります。

美帆さんのお母さんが語るように、美帆さんが普通に働ける場所がなかなか見つからず、受け入れ先がない現実があることがうかがえます。しかし、ヒカルコーヒーでの働き始めをきっかけに、美帆さんの笑顔が増え、自然に笑顔でいられる環境が提供されています。

 

一般就労はわずか2%

ダウン症の当事者らが集まるイベントに参加した際に、美帆さんは自信を持ってコーヒーを淹れました。山中さんが尋ねます。「大丈夫、提供できる?」美帆さんは自信を持って答えます。「できます」。

生き生きと輝ける仕事との出会いを経験した美帆さん。しかし、日本ダウン症協会などの調査によると、企業の障がい者雇用枠で働いているのは約6%。一般就労はわずか2%で、半数が福祉作業所で働いているのが現実です。

 

自分でちゃんと生活を立てていってほしい

イベント参加者の親たちに聞くと、それぞれが悩みを抱えています。ダウン症の娘(21)を持つ母親は、心配しながらも語ります。「私がやっぱり死ぬじゃないですか、先に。自分でちゃんと生活を立てていってほしい。(決まった)時間に、ちゃんと行って、時間の間きちんとお仕事して、時間になったら帰るルーティーンが、なかなか身につかないタイプなので、お仕事できればいいなって思うけど、なかなか難しい」。

もう一人の親は、息子を持つ親の立場から語ります。「知的(障がい)の子たちの一般就労は現実問題、難しい。一回言って(頭に)入る子ではないことが多いので、(企業が)そこにどれだけ時間を使えるか」。

 

1回の勤務時間を短くし、出勤回数を多くする

美帆さんがコーヒーを淹れている最中、大きく背伸びをしました。野々村店長が声をかけます。「まだ気ぬくの早いで、仕事中やで」。美帆さんは謝ります。「はーい、すみませーん」。こうした個別の特性に合わせたサポートが、ダウン症の方々が働くことを可能にしています。

ヒカルコーヒーでは、注ぐお湯の量やドリップする時間を定めたレシピがあります。何度も繰り返すことで覚えられるよう、1回の勤務時間を短くし、出勤回数を多くしました。

山中さんが指導します。「自分の手の方に引いたらつくやん、なるべく逆の方向に引くようにして…」

ケーキ作りで、ボールの中のクリームチーズに苦戦する美帆さん。しかし、山中さんが教えてくれたように、美帆さんがやってみます。山中さんが称賛します。「そうそう、上手上手」

 

家でも振り返ることができるようにノートに記す

スタッフはイラストを使って、その日教えたことをノートに記します。家でも振り返ることができるようにしています。

美帆さんは笑顔で語ります。「野々村店長と山中さんと、一緒にお仕事をするのが楽しみで、スイーツ作りやドリップコーヒーをお客さんに飲んでほしい」

 

美帆さんの成長

山中さんは、知り合いのカフェとコラボイベントを行うことにしました。異なる環境でコーヒーを淹れることで、美帆さんの成長に期待を寄せています。

美帆さんは意気込みを求められましたが、緊張している様子です。地元の人やヒカルコーヒーの常連客など、訪れた人に無料でコーヒーをふるまいます。「ごゆっくりどうぞー」と美帆さんが声をかけます。

美帆さんのお母さんもやってきました。「美帆って四つん這(ば)いしてないから、肩の周りの筋肉が弱くて、最初は250ccのポットも重くて、500㏄でもできるようになったんだなって思ってみてました」と母親が語ります。

 

「“当たり前にいる”って結構、実現できる」

山中英偉人さんは、「1人1人の特性が違うので、得意や好きを中心にできるお店の設計をする方が、当人にとって居場所や活躍の場所になる」と語ります。「働いている様子を見てもらって、1つでもこれまでと違った考え方になったり、(ダウン症の人が)“当たり前にいる”って結構、実現できる」とも述べます。

 

「自分が淹れたコーヒーでたくさんの人を笑顔にすること」

疲れを感じさせず、2時間にわたってコーヒーを淹れ続けました。山中英偉人さんが尋ねます。「どうだった?」美帆さんは満足そうに答えます。「楽しかったです」これからも働きたい?という問いに、美帆さんは自信を持って「はい!」と答えます。

二人は記念写真を撮ることになりました。カメラマンが言います。「めっちゃいいやーん。いつもいい笑顔やな」

美帆さんの夢は、「自分が淹れたコーヒーでたくさんの人を笑顔にすること」です。ここには、誰もが輝ける環境があります。

ダウン症についての理解と社会への包括的な取り組み

ダウン症は染色体異常によって引き起こされる疾患で、主な特徴として知的障がい、特徴的な顔貌、身体的な発達の遅れが挙げられます。

通常、21番目の染色体に三本目の染色体が追加されることによって生じます。この症状は生涯続くもので、現在の医学では治療法は存在しません。

 

社会的な課題

ダウン症の人々が直面する課題の一つは、社会的な理解の不足です。過去には、ダウン症の人々が社会から隔離され、差別や偏見に苦しむことが少なくありませんでした。また、教育や雇用の機会が不十分であったり、適切な医療やサポートを受けられない場合もあります。

 

包括的なアプローチ

近年、ダウン症に対する社会の理解が向上してきています。多くの国や地域で、ダウン症の人々が自立した生活を送るための支援やサービスが提供されています。

教育機関や職業訓練機関では、個々の能力や興味に合わせたプログラムが提供され、社会参加の機会が広がっています。また、企業や雇用主もダウン症の人々を積極的に雇用する取り組みを進めており、彼らが自立した生活を送るための重要な一歩となっています。

 

社会へのメッセージ

ダウン症の人々は、私たちと同じように多様な能力や個性を持っています。彼らが生き生きとした社会の一員として受け入れられることは、社会全体にとって豊かさをもたらすものです。

私たちは彼らを包括的にサポートし、彼らが持つ可能性を最大限に引き出すための取り組みを続けることが重要です。ダウン症の人々との協力と連携により、より公正で包括的な社会を築いていくことができるでしょう。

 

まとめ

ダウン症の美帆さんが、ヒカルコーヒーロースターでの一日を通して、自らの夢と希望を追い求める姿が、社会への理解と共に歩む一歩となっています。彼女の明るい笑顔は、障がいがあっても誰もが普通に働ける社会の実現を象徴しており、その輝きが周囲に広がる温かな場所がここにあります。

ダウン症は知的障がいや身体的な特徴を持つ染色体異常によって引き起こされる疾患です。社会的な課題に直面しながらも、ダウン症の人々は個々の能力や個性を持っており、包括的な支援と理解によって彼らが持つ可能性を最大限に引き出すことが重要です。

彼らが生き生きと社会の一員として受け入れられることは、社会全体にとっての豊かさとなります。私たちは、ダウン症の人々との連携を通じて、より公正で包括的な社会を築いていくことが求められています。

 

参考

「障がいがあっても普通に働く」思いを込めたカフェ 特性に合わせたやり方で夢を見つけたダウン症の女性(関西テレビ)#Yahooニュース

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