2024.04.24

障がい者基本計画を見てみよう!障がい者施策の総合的推進とアクセシビリティの向上

前回に続き、障がい者基本法を詳しく見ていきましょう。政府は障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、横断的な視点から施策を展開しています。この法律は、障がい者が社会の中で自立して活動し、自己実現することを支援し、彼らが快適に暮らせる環境を整えることを目指しています。

そのために、法律ではさまざまな分野にまたがる施策が提案されており、バリアフリーな社会を築くための具体的な取り組みが示されています。こうした横断的なアプローチによって、障がい者の社会参加を実現するための基盤が整備されています。

 

各分野に共通する横断的視点

条約の理念の尊重及び整合性の確保

障がい者に関する施策や制度を策定・実施する際には、条約の理念を尊重し、整合性を保つことが不可欠です。障がい者を社会の一員として捉え、彼らが自らの決定に基づき社会に参加する主体として尊重することが重要です。

そのためには、障がい者の視点を施策に反映させ、彼らが意思決定過程に参画する機会を提供する必要があります。さらに、障がい者の委員選任に配慮し、障がい特性に応じた適切な情報保障や合理的配慮を行うことが求められます。

 

社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上

社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れ、障がい者の社会参加を実質的なものとすることが必要です。社会的障壁の除去や障がい者差別の解消に向けた取り組みを強化し、障がい者が安心して生活できる環境を整備することが重要です。

また、広報・啓発活動や企業・市民団体の支援を通じて、アクセシビリティの向上と心のバリアフリーを推進する必要があります。さらに、情報公開やパブリックコメントの際には、障がい特性に配慮した適切な情報保障を実施することが求められます。

 

アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進

社会のあらゆる場面で情報通信技術(以下「ICT」という。)が浸透しつつあります。新たな技術を活用した機器やサービスは、社会的障壁を生み出す可能性がありますが、同時にアクセシビリティに配慮したものも存在します。

このようなICTを含む新たな技術の利活用は、障がい者への移動支援や情報提供など、様々な場面でアクセシビリティを高める上で重要です。そのため、積極的な導入を推進する必要があります。

 

市場創出が課題

また、中小・ベンチャー企業が先進的な技術を開発する際には、市場創出が課題となります。この課題に対処するため、国が需要側の視点に立った施策の充実が必要です。

具体的には、公共部門における新技術の調達において、透明性と公正性を確保しつつ、中小・ベンチャー企業の入札機会を拡大することが重要です。さらに、政府調達においてアクセシビリティに配慮した機器・サービスを推進するため、国際規格に基づいた技術仕様の定め方を検討することも必要です。

 

倫理的・法制度的な課題

そして、科学技術の社会実装には倫理的・法制度的な課題が伴います。遺伝子診断や再生医療などの分野で見られるように、社会としての意思決定が必要です。これらの課題に対処しながら、アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用を推進していくことが求められます。

 

当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援

障がい者の尊厳と自律、自立の尊重を目指す条約の趣旨に基づき、障がい者が各ライフステージで適切な支援を受けられるよう、教育、文化芸術、スポーツ、福祉、医療、雇用などの分野を有機的に連携させ、切れ目のない支援を提供します。

この支援は、障がい者が直面する困難に対処するだけでなく、自立と社会参加の観点から行われ、障がい者やその家族への支援も重視します。複数の分野にまたがる課題に対処するためには、関係する機関や制度の連携が必要です。

 

障がい特性等に配慮したきめ細かい支援

障がい者一人ひとりの尊厳を重視し、障がい者の個別的な支援を障がい特性や状態、生活実態に応じて提供します。外見からは分からない障がいや状態の変動する障がいに対しても、配慮が必要です。

また、発達障がいや難病、高次脳機能障がいなどについては、社会全体の理解を促進し、施策の充実を図ることが重要です。特に発達障がいについては、社会全体での理解促進と、家族支援、福祉、労働、教育、医療の分野での総合的な取り組みが必要です。

 

障がいのある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援

障がい者施策は、障がいのある女性や複合的な困難に直面する障がい者に対して、特にきめ細かい支援を提供する必要があります。

障がいのある女性は、障がいの種類や状態によって異なる支援が必要であり、また女性であることがさらなる困難を引き起こす場合もあります。同様に、障がいのある子供や高齢者についても、それぞれに適した支援が必要です。高齢者施策との整合性を考慮しながら、条約の理念に基づいた支援を提供していくことが重要です。

 

PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進

政策立案の確かな根拠に基づくために、障がい者施策では、必要なデータ収集や統計の充実を図り、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを構築し、着実に実行していきます。このサイクルを通じて、施策の見直しや改善を継続的に行い、実効性のある取り組みを推進していきます。

 

  • 企画 (Plan)

確かな根拠に基づく政策立案を実現するためには、障がい者の実態や社会環境を適切に把握することが重要です。各府省は、障がい者の性別、年齢、障がいの種類などの観点を考慮しながら、必要なデータ収集や統計の充実を図ります。具体的な成果目標を設定し、総合的な施策を企画することで、効果的な施策を展開します。

 

  • 実施 (Do)

各府省は、障がい者やその関係者の意見を聴取しながら、計画的な施策の実施に努めます。障がい者の状況や施策に関する情報を収集し、分析することで、効果的な施策を展開します。他の施策や計画との整合性を図り、総合的な支援を提供します。

 

  • 評価 (Check)

障がい者の意思決定過程への参画を促進し、施策の実施状況を継続的にモニタリングします。数値やデータに基づき、施策の実施状況や効果を評価し、必要に応じて課題や支障を解消するための分析を行います。障がい者政策委員会も、実施状況の評価や監視を行います。

 

  • 見直し (Act)

施策の実施状況や評価結果に基づき、各府省は施策の見直しを行います。必要に応じて法制度の整備なども検討します。障がい者政策委員会は、政府全体の見地から施策の実施状況を評価し、必要に応じて勧告を行います。また、社会情勢の変化に柔軟に対応するため、本基本計画の見直しを行います。

施策の円滑な推進

(1) 連携・協力の確保

政府の障がい者施策を一体的に推進するために、各府省間で緊密な連携・協力を図ります。地方公共団体との連携も重要であり、役割分担のもとで連携体制を強化します。障がい者団体や専門職の協力も得ながら、施策を展開していきます。さらに、国際機関や他国政府との連携も努め、持続可能な開発目標の実施を総合的かつ効果的に推進します。

 

(2) 理解促進・広報啓発に係る取組等の推進

① 重点的な理解促進事項

社会全体で障がいの有無によらず支え合う共生社会の理念を普及させ、共生社会の実現に向けて啓発活動を展開します。2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会のイメージを広め、障がい者施策の意義について理解を深めます。さらに、知的障がいや精神障がいなど、理解が必要な障がいについても啓発活動を行います。

 

② 理解促進に当たり配慮する事項

行政や民間団体との連携による広報・啓発活動を計画的かつ効果的に展開し、国民の理解を深めます。地域社会における障がい者との交流を促進し、障がい者週間などの行事を通じて啓発活動を推進します。また、幼児や児童生徒を対象とした理解促進の取り組みも重要です。

 

各分野における障がい者施策の基本的な方向:安全・安心な生活環境の整備

【基本的考え方】

障がい者が地域で安全かつ安心して生活できる環境を整備することを目指します。そのために、バリアフリーな住環境や移動しやすい環境、アクセシビリティを考慮した施設の普及などを推進し、社会的な障壁を取り除き、アクセシビリティを向上させます。

 

(1) 住宅の確保

  • 公営住宅の整備や改修を通じてバリアフリーな環境を提供し、障がい者向けの公共賃貸住宅の供給を増やします。
  • 民間賃貸住宅の活用やバリアフリーな改修を促進し、障がい者の入居をサポートするための制度を導入します。
  • 障がい者の日常生活を支援するため、日常生活用具の給付や住宅改修に対する支援を行います。
  • グループホームや地域生活支援拠点の整備を推進し、障がい者の地域での生活を支援します。
  • 非常時における防火安全体制の強化を図り、障がい者が安心して福祉サービスを利用できる環境を整えます。

 

(2) 移動しやすい環境の整備等

  • 駅や旅客施設において段差解消や転落防止設備の整備、障がい者に配慮した車両の整備を促進し、公共交通機関のバリアフリー化を推進します。
  • 公共交通機関内外での案内表示や情報提供の充実を図り、障がい者の利用しやすさを高めます。
  • 交通事業者に対して、障がい者に適切な対応を確保するための教育訓練を促進します。
  • 障がい者に対する個別の輸送サービスを提供するため、福祉タクシーやスペシャル・トランスポート・サービス(STS)の普及を促進します。
  • 過疎地域や地方での移動手段の確保や、高齢者や障がい者の安全な移動を支援するため、ITSの研究開発や高度自動運転システムの導入に取り組みます。

 

(3) アクセシビリティに配慮した施設、製品等の普及促進

  • バリアフリー法に基づく建築物のバリアフリー化を促進するため、地域の実情に合わせた取り組みを行い、建築物のバリアフリー化を進めます。
  • 官庁施設においても、バリアフリー法に基づく整備水準を確保することで、窓口業務を行う施設のアクセシビリティを向上させます。
  • 都市公園や河川の整備においても、障がい者や高齢者が利用しやすい環境を整備し、安全で安心した利用を促進します。
  • 日常生活製品や設備のユニバーサルデザイン化を推進し、障がい者や高齢者の利用に配慮した製品の普及を図ります。

 

(4) 障がい者に配慮したまちづくりの総合的な推進

  • 高齢者や障がい者の社会参画の拡大とバリアフリーのまちづくりを促進するため、バリアフリー法や関連施策の見直しを行います。地域連携を強化し、ハード・ソフトの両面から取り組みます。
  • 福祉・医療施設の適正な立地や公園との一体的整備、生活拠点の集約化などを通じて、バリアフリーに配慮したまちづくりを推進します。
  • 市町村が定める重点整備地区内での生活関連経路の整備や公共交通機関のバリアフリー化を促進し、幅広い歩道や視覚障がい者誘導用ブロックの整備を行います。
  • 国立・国定公園の主要利用施設のバリアフリー化を実施し、生活関連経路を構成する道路においてもバリアフリー対応型信号機や道路標識の整備を推進します。
  • 自動車の運転においても障がい者の安全を考慮し、信号灯器の改善や速度規制などの対策を講じます。
  • 駐車区画の適正利用を促進するため、地方公共団体における「パーキングパーミット制度」の普及を図ります。
  • ユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進を行い、屋内外でのストレスない活動を実現します。
  • 「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、具体的な取り組みを実施します。

まとめ

障がい者の社会参加を促進し、アクセシビリティを向上させるために、政府は横断的な視点から施策を展開します。連携強化や新技術の活用を通じて、障がい者が安心して生活できる社会の実現に向け、着実な一歩を踏み出しています。

 

参考

障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度)

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