2024.04.23

増えるタッチパネル、視覚障がい者には何も伝わらず…デジタル化の進展と視覚障がい者への課題

タッチパネルの普及により、セルフレジや飲食店での注文が増えていますが、目の見えない人にとっては課題が生じています。凹凸のないパネルではどこを押せばいいのか分からず、利用が難しい状況です。このデジタル化の推進は人件費削減や人手不足解消には役立つ一方で、視覚障がい者の暮らしに新たな壁を生んでいることが指摘されています。

 

かつては自分でできていたことが、今ではできなくなる

「店員や駅員を呼べば良いと言われればそうだけど…」。この言葉には、便利さと自立の間で揺れ動く心情がにじみ出ています。東京都荒川区視力障がい者福祉協会の長島清会長(62)は、かつては自分でできていたことが、今ではできなくなり、「自立を阻まれている」と感じています。

 

タッチパネルの弊害

荒川区町屋の職場近くのスーパーでは、支払い方法をタッチパネルで選ばなければなりません。全盲の長島さんは店員に手助けをしてもらっています。カードの暗証番号を知られたくないため、スマートフォンのバーコード決済を利用していますが、混雑時は店員に手間をかけることを避け、買い物に行かないこともあります。

 

タッチパネルで暗証番号を入力することに困っている

銀行のATMでは、一部の操作がタッチパネルでしかできないため、行員に口頭で暗証番号を伝えてもらう必要があります。視覚障がいのある仲間も同様に、マイナ保険証を利用する際にタッチパネルで暗証番号を入力することに困っています。「信用はしているが、個人情報が守られているだろうか」という不安は消えることがありません。

 

無人化の流れは避けられない

「無人化」の流れが止まらない中、恐怖感が広がっています。タッチパネルではなく、突起のあるボタンがあれば自分で操作できるかもしれませんが、対応できるスタッフがいない場所では不安が募ります。特に、利用者の少ない駅や店舗では無人化の流れが避けられないと感じられています。

 

「より無人化が進むのはおそろしい」

「今後、より無人化が進むのはおそろしい。世の中は便利になるかもしれませんが、われわれにはバリアーが増えてくると知ってほしい。バリアフリーと人手不足の問題の折り合いを付けなければ、世の中が成り立っていかない」との訴えがあります。このような声を無視せず、バリアフリーと人手不足の問題の解決に向けて努力が必要です。

 

盲導犬の「拒否」

盲導犬の「拒否」が44%にも上ることが、日本盲導犬協会の調査で明らかになりました。そのうち半数以上が飲食店での出来事でした。調査に参加した視覚障がい者の34%が、タッチパネルの操作ができないと回答し、スマートフォンのアプリも「使いづらい」と感じる声がありました。このデジタル化の流れによって、目の見えない人々が取り残されている現状が浮かび上がります。

 

タッチパネルの難しさについて指摘

協会の担当者は、タッチパネルでの暗証番号入力の難しさについて指摘し、「数字の並びが毎回変わるものもあるため、目が見えない人にとっては対応が難しい」と述べました。民間業者に合理的配慮が義務付けられる改正障がい者差別解消法の施行により、配慮と理解が広がることが期待されています。

調査では、236人が社会参加への障壁などを報告しました。また、盲導犬を伴っての受け入れ拒否も後を絶たず、その中で最も多かったのは飲食店での114件(55%)でした。

盲導犬と社会のハードル:障壁と課題

盲導犬は、視覚障がい者の生活を支援し、自立した社会参加を可能にする重要な存在です。しかし、彼らとその盲導犬が直面する障壁や課題は、現代社会においても依然として存在しています。最新の日本盲導犬協会の調査によれば、盲導犬を利用する視覚障がい者の44%が、盲導犬を伴っての受け入れ拒否を経験しています。そのうちの半数以上が飲食店での出来事であり、これはまさに社会的な差別や無理解の表れと言えます。

 

スマートフォンのアプリも使用しにくい

また、デジタル化の流れが加速する中で、盲導犬利用者にとって新たなハードルが浮かび上がっています。調査によれば、視覚障がい者の34%がタッチパネルの操作が難しいと感じ、スマートフォンのアプリも使いづらいとの声がありました。暗証番号を入力するタッチパネルの難しさは特に顕著であり、これは盲導犬利用者にとって大きな困難となっています。

 

社会参加がさらに難しくなる状況

盲導犬を利用する人々にとって、これらの問題は日常生活における大きな障壁となっています。たとえば、盲導犬利用者が飲食店で受け入れを拒否されるという経験は、その人の尊厳を傷つけるだけでなく、社会とのつながりを断ち切ることにもつながります。また、デジタル化の進展によって、本来の目的である自立した社会参加がさらに難しくなるという状況は、深刻な問題と言えます。

 

盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするために

法律で盲導犬の受け入れを義務付けているにも関わらず、受け入れ拒否の事例が後を絶たないのは明らかな事実です。この問題の根本には、社会全体での理解と配慮の不足があります。盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするためには、法律だけでなく、教育や啓発活動が重要です。特に、飲食店や交通機関など、日常生活で利用する場所での盲導犬への対応について、関係者の意識を高める取り組みが求められます。

 

情報にアクセスすることが困難

また、デジタル化による障壁も深刻な問題です。タッチパネルやスマートフォンの操作が困難な場合、盲導犬利用者は情報にアクセスすることが難しくなります。このような問題に対処するためには、アクセシビリティを考慮したデザインや技術の開発が不可欠です。また、デジタル化が進む中で、人間と機械の調和を図ることも重要です。各々のニーズに合わせた技術の開発や、人間と機械が協調して作業を行う仕組みの構築が求められます。

 

社会のバリアフリー

社会がバリアフリーであることは、すべての人々が自由に社会に参加し、生活するための基本的な条件です。盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするためには、法律の遵守だけでなく、社会全体での理解と配慮が必要です。これは、盲導犬利用者だけでなく、あらゆる障がいを持つ人々が自立した生活を送るための基本的な要請であり、社会の課題として真剣に取り組むべき課題です。

 

障がい者差別解消法

2016年4月に施行された障がい者差別解消法は、障がいを理由とした不当な差別を禁止し、障がい者の生活上の困りごとや障壁を取り除くための「合理的配慮」を国や自治体に義務付けました。

この法律は、障がい者が社会参加する上でのハードルを下げるために重要な役割を果たしています。特に、2016年4月からの民間事業者への義務の拡大は、社会全体におけるバリアフリーの実現に向けた重要な一歩となりました。

 

合理的配慮とは

合理的配慮とは、障がい者が日常生活や社会活動を行う際に、その障がいに合わせた配慮を行うことを指します。

例えば、車いす利用者のための段差スロープの設置や、視覚障がい者のための点字案内や音声案内、手話通訳サービスの提供などが挙げられます。これらの配慮が行われることで、障がい者も他の人々と同じように社会に参加し、生活を送ることができるようになります。

 

従業員や経営者の間での認識の差

しかしながら、法律が整備されているにもかかわらず、実際の現場ではまだまだ障がい者に対する理解不足が見られます。特に、民間事業者における合理的配慮の実施は、まだまだ課題が残されています。例えば、飲食店や小売店などの民間事業者では、障がい者が利用しやすい環境を整備することが求められますが、実際にはその実施が不十分な場合があります。また、合理的配慮の必要性や方法について、従業員や経営者の間での認識の差も問題となっています。

 

社会全体での意識改革や教育

そのため、法律だけでなく、社会全体での意識改革や教育が必要です。障がい者への理解を深め、合理的配慮の実施を促進するためには、企業や学校、地域社会など様々なレベルでの取り組みが求められます。特に、民間事業者においては、障がい者やその支援者との協力体制の構築や、必要な設備やサービスの提供に向けた取り組みが重要です。

さらに、合理的配慮の実施にはコストや労力が必要となる場合がありますが、その負担が適切かどうかも重要なポイントです。合理的配慮の範囲内で、障がい者にとっての利便性や安全性を確保しつつ、事業者側の負担が過度にならないようにバランスを取ることが求められます。

 

効果や課題の解決には時間がかかる

最後に、障がい者差別解消法の施行からまだ数年しか経っていないため、その効果や課題の解決には時間がかかることも考慮しなければなりません。しかし、この法律が障がい者の社会参加を促進し、バリアフリーな社会の実現に向けた一歩となることを期待しています。

 

視覚障がい者への支援:バリアフリーな社会の実現への一歩

視覚障がい者が社会で自立して活動するためには、バリアフリーな環境が必要不可欠です。彼らが安心して社会に参加し、生活を送るためには、身体的な障壁だけでなく、社会的な障壁も取り除く必要があります。そのためには、視覚障がい者への支援が欠かせません。

 

周囲の理解と配慮

まず、視覚障がい者にとって最も重要なのは、周囲の理解と配慮です。視覚障がい者が安全かつ円滑に日常生活を送るためには、周囲の人々が彼らの状況や必要性を理解し、適切な支援を提供することが重要です。

例えば、視覚障がい者が道路を横断する際には、周囲の人々が彼らの存在に気付き、安全な通行をサポートすることが必要です。また、公共施設や交通機関などの利用においても、視覚障がい者に対する丁寧な案内や支援が求められます。

 

技術の活用

次に、技術の活用が視覚障がい者の支援に大きな役割を果たします。近年では、音声案内や点字表示などのアシストテクノロジーが進化し、視覚障がい者が情報にアクセスする手段が大幅に向上しました。

スマートフォンやタブレットを活用したアプリケーションも、視覚障がい者の生活を豊かにするツールとして注目されています。こうした技術の普及と活用は、視覚障がい者が社会とのつながりを強化し、より自立した生活を送るための支援となります。

 

法律や政策の整備

また、法律や政策の整備も視覚障がい者への支援に不可欠です。障がい者差別解消法をはじめとする法律は、視覚障がい者の権利を保護し、バリアフリーな社会の実現に向けた基盤を整備しています。さらに、地方自治体や関連団体が実施する支援プログラムや啓発活動も、視覚障がい者の社会参加を促進する上で重要な役割を果たしています。

しかし、現実にはまだまだ課題が残されています。視覚障がい者が日常生活や社会参加を行う際に直面する障壁は多岐にわたり、その解決には時間と努力が必要です。例えば、公共施設や交通機関におけるバリアフリー化の進展や、就労支援の強化などが求められています。

 

様々なレベルでの連携と協力が不可欠

最後に、視覚障がい者への支援は個々の取り組みだけでなく、社会全体での取り組みが不可欠です。視覚障がい者とその支援者、地域社会や企業など、様々なレベルでの連携と協力が求められます。これにより、バリアフリーな社会の実現に向けた一歩が踏み出され、視覚障がい者がより豊かな生活を送ることができるでしょう。

まとめ

視覚障がい者にとって、デジタル化の進展は新たな課題を生み出しています。タッチパネルの普及や無人化の流れは、彼らが自立して社会に参加する際のハードルを高くしています。

しかし、この課題に立ち向かうことで、よりバリアフリーな社会の実現に向けた一歩を踏み出すことができます。法律や技術の進化、そして社会全体での理解と協力が重要です。我々は、視覚障がい者の声に耳を傾け、彼らが安心して社会に参加し、豊かな生活を送ることができるように努力を続けなくてはいけません。

 

参考

増えるタッチパネルに困ってます 視覚障がい者には何も伝わらず 「世の中は便利になるけど」増す生きづらさ:東京新聞 TOKYO Web

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