2024.04.23

障がい者基本計画を見てみよう!第4次計画の基本理念と原則とは?

障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づき、平等、無差別、合理的配慮の原則を重視して策定されました。

障がい者基本計画(第4次)における基本的な考え方について、以下の要点をまとめました。

 

基本理念と基本原則

  • 基本理念:障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援することを基本理念とします。
  • 基本原則:平等、無差別、合理的配慮の原則を重視します。すべての人に対し、差別なく適切な支援を提供します。

 

昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まる

我が国の障がい者施策は、昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まりました。この法律は、心身障がい者の福祉に関する施策を基本的なものとして定め、当時は心身障がい者という表現が用いられていました。

平成5年には、この法律が障がい者基本法に改正され、心身障がい者だけでなく精神障がい者も含めた「障がい者」として位置付けられました。法の目的も、障がい者の自立とあらゆる分野の活動への参加の促進に変更されました。

 

着実に取り組みが進められている

その後の改正では、障がい者差別を禁止する基本的理念が盛り込まれ、中央障がい者施策推進協議会が設立されました。平成23年には、我が国が署名した障がい者の権利に関する条約の批准に向け、法の改正が行われました。社会モデルの考え方や合理的配慮の概念が導入され、障がい者政策委員会が新たに設置されました。

障がい者基本計画の策定も進み、平成25年には第4次の基本計画が閣議決定されました。これまでの取組では、障がい者の自己決定の尊重や意思決定支援、当事者本位の総合的な支援、障がい特性に配慮した支援、アクセシビリティの向上などが重視されてきました。これらの施策分野において、障がい者政策委員会による監視を経て、着実に取り組みが進められています。

 

施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われた

障がい者政策委員会は、平成28年10月以降、本基本計画の策定に向けた熱心な調査と審議を行ってきました。この間、障がい者施策の分野では、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や障がい者差別解消法の施行など、大きな変化がありました。委員会では、これらの動向を踏まえつつ、障がい者施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われました。

その結果、計11回の審議を経て、平成30年2月に「障がい者基本計画(第4次)の策定に向けた障がい者政策委員会意見」がまとめられました。政府は委員会の意見に基づき、本基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、平成30年3月に閣議決定しました。

 

共生社会の実現やさまざまな社会的目標に貢献する期待

本基本計画は、障がい者基本法の目的である障がい者の自立と社会参加の支援に加えて、共生社会の実現や2020年東京オリンピック・パラリンピックでの活躍、障がい者施策の社会的意義など、さまざまな社会的目標に貢献することが期待されています。これらの目標を達成するためには、本基本計画に基づいた施策の策定と実施が重要であり、常にこれらの目標を念頭に置いて取り組んでいくことが必要です。

 

障がい者の自立と社会参加を支援する施策

障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進するために策定されました。これは、基本法第11条第1項に基づくものであり、政府が行う障がい者支援施策の中核的な計画です。

対象期間は平成30年度からの5年間です。構成は、障がい者基本計画(第4次)に関するⅠ、基本的な考え方に関するⅡ、各分野における障がい者施策の基本的な方向に関するⅢの3つの部分から成り立っています。

 

障がい者の権利を保護する国際的な動き

条約との関係においては、障がい者の権利を保護する国際的な動きがありました。国際連合総会では、障がい者の権利に関する宣言が採択され、障がい者の人権の重要性が認識されました。その後、障がい者の権利を包括的かつ総合的に保護する国際条約の検討が行われ、平成18年に条約が国連総会で採択されました。

障がい者の権利に関する国際条約は、障がい者の人権と基本的自由の享有を確保し、彼らの固有の尊厳を促進することを目的としています。その主な内容は以下の通りです。

 

  • 一般原則:障がい者の尊厳、自律、自立の尊重、無差別性、社会参加と包摂が挙げられます。
  • 一般的義務:合理的配慮の実施、全ての障がい者の人権と基本的自由の完全な実現と促進が含まれます。
  • 障がい者の権利実現のための措置:身体の自由や拷問の禁止などの自由権と、教育や労働などの社会権に関する締約国の取るべき措置が含まれます。
  • 条約の実施のための仕組み:国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が含まれます。

 

日本はこの条約に署名し、国内法の整備を進めてきました。障がい者基本法や障がい者自立支援法、障がい者差別解消法などが整備され、平成26年に批准されました。その後、障がい者政策委員会による監視を経て、政府報告が作成され、障がい者権利委員会に提出されました。

 

障がい者に関する基本的な考え方が明確に示されている

障がいの捉え方に関して、従来の医学モデルでは心身の機能の障がいのみが問題視されていましたが、条約では社会モデルの考え方が採用され、障がい者が直面する制限は心身の機能の障がいだけでなく、社会的な障壁によっても生じるとされています。

次に、平等・無差別及び合理的配慮について、条約は全ての障がい者に対する平等な権利と基本的自由の確保を促進し、合理的配慮の提供を求めています。合理的配慮は、障がいに基づく差別を禁止し、障がい者の権利を保護するための重要な要素です。また、障がい者の意思決定過程への積極的な参加も求められています。

最後に、条約の実施に関する仕組みについて、国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が規定されています。障がい者権利委員会は、専門家によって構成され、締約国の報告を審査し、提案や勧告を行う役割を担っています。このような仕組みにより、締約国は条約の実施について国際的に監視されることになります。

 

障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に

障がい者基本計画(第4次)は、条約の批准後に策定される初めての計画であり、その整合性が非常に重要です。本基本計画では、条約の理念を反映し、各分野の施策と条約の各条項との対応関係を明示しています。これにより、計画の実施状況と条約の国内実施の状況を対応させ、効果的かつ適切な取り組みを進めることが期待されます。

さらに、障がい者政策委員会による条約の実施状況の監視を円滑化するために、本基本計画には、条約の実施状況に関する障がい者権利委員会からの勧告や意見を取り入れる機構が組み込まれています。これにより、計画と条約に関連する取り組みの連携が適切に行われ、障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に推進されることが期待されます。

オリンピック・パラリンピック競技大会

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、障がいの有無にかかわらず、世界中から多くの人々が集まり、パラリンピック競技大会では障がいのある選手が圧倒的なパフォーマンスを披露することで、共生社会の実現に向けた大きな機会となります。

政府は、この大会に向けて心のバリアフリーやまちづくりの施策を推進し、障がい者の視点を反映させながら取り組みました。具体的には、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れて施策を展開し、公共交通機関のバリアフリー化や移動しやすい環境の整備、障がい者に配慮したまちづくりを進めています。

 

心のバリアフリーへの理解

また、本基本計画では、文化芸術活動・スポーツの振興を独立した施策分野として格上げし、パラリンピック競技大会を念頭に置いた施策を強化しています。障がい者スポーツの競技性の高さに焦点を当て、アスリートの育成強化や地域でのスポーツ環境整備などに力を入れています。

さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会の姿を広く発信し、心のバリアフリーへの理解を深め、社会全体で推進することも重要視されています。

 

基本的な考え方

  • 基本理念

条約は、障がい者の人権と基本的自由を確保し、彼らの固有の尊厳を尊重することを目指しています。基本法の改正においても、この理念に基づき、障がいの有無にかかわらず、すべての国民が等しく基本的人権を享有し、障がいの有無による分け隔てがない共生社会を実現する必要があります。本基本計画は、この社会の実現に向け、障がい者を支援しながら自己決定の主体として捉え、彼らの能力を最大限発揮できるよう支援し、社会的な障壁を除去する方向性を定めています。

 

  • 基本原則

政府は、障がい者を支援しながら自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として捉え、条約の理念に基づいて改正された基本法の基本原則に従って、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に実施します。

 

地域社会における共生等

基本法第3条や条約の理念に基づき、本基本計画では障がい者が尊厳を持ち、尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としています。障がい者施策の実施においては、以下の点に重点を置きます。

 

  • 社会参加の機会の確保:障がい者が社会、経済、文化などあらゆる分野で活動に参加できるよう機会を提供します。
  • 共生の機会の確保:障がいの有無にかかわらず、地域社会で他者と共生できる環境を整え、生活の選択肢を提供します。
  • コミュニケーション手段の選択の機会:障がい者が意思疎通に適した手段を選択できるよう、言語や手話などのコミュニケーション手段を提供します。
  • 情報取得の機会の拡大:障がい者が情報を取得し、利用する手段を選択できるよう、情報へのアクセスの機会を拡大します。

 

差別の禁止

基本法第4条や条約、障がい者差別解消法に基づき、障がい者差別やその他の権利利益の侵害行為を禁止し、合理的配慮を提供する必要があります。具体的には、以下の点に注意を払います。

 

  • 差別の禁止:障がい者差別や権利利益の侵害を禁止します。
  • 合理的配慮の提供:社会的障壁を除去するために、合理的配慮を提供します。障がい者差別解消法の実効性を確保するため、施行状況を定期的に検討し、必要に応じて見直しを行います。

 

国際的協調

基本法第5条や条約第32条に基づき、共生社会の実現は国際的な協調の下で行われる必要があります。障がい者の自立や社会参加の支援は国際社会と密接に関係しており、以下の点に注意を払います。

 

  • 国際協力の重要性:共生社会の実現に向けた施策は国際協力に基づいて行われるべきです。
  • 条約の遵守と報告:条約を批准し、障がい者権利委員会に政府報告を提出するなど、国際的な枠組みとの連携を強化します。

まとめ

障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づいています。平等、無差別、合理的配慮の原則を重視し、すべての人に対し差別なく適切な支援を提供します。この計画は国際的な協調の下で推進され、障がい者の権利を保護し、共生社会の実現に向けた取り組みがさらに強化されることが期待されます。

 

参考

障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度)

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