2024.03.27

テレワークで労災 長時間労働で適応障がい 極めて異例の認定

長時間労働によって精神疾患を発症し、それが労災認定された事例は、近年の労働環境の変化と、それに伴う労働者の健康問題の深刻化を象徴しています。特に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが急速に普及したことで、労働構造や労働時間の変化が顕著になっています。

 

外資系補聴器メーカーで働く50代の女性

横浜市に本社を構える外資系補聴器メーカーで働く50代の女性のケースは、テレワーク増加に伴う業務量の増加が精神疾患を引き起こした典型的な事例と言えます。この女性は経理や総務を担当する正社員であり、テレワークが導入されたことで業務が増加しました。

特に、新たな精算システムの導入などにより、残業時間が急増したという背景があります。こうした状況が適応障がいを発症させ、労災認定に至ったとされています。

 

労働時間の管理やストレス対策が不十分

この事例は、労働者の健康と労働環境の関係性を再考させるものとして注目されています。従来の労働形態からテレワークへの移行により、働き方や労働時間が大きく変化しました。

しかし、その一方で、テレワークにおける労働時間の管理やストレス対策が不十分である場合、労働者の健康問題が深刻化する可能性があります。このような問題に対処するためには、労働者と企業が協力して、適切な労働環境を整備することが不可欠です。

 

労働者の健康と安全を確保

労働基準監督署が女性の残業時間を過労死ラインを超えると指摘し、会社に是正勧告を行ったことは、労働者の健康と安全を確保する上で重要な一歩です。企業側も、テレワークにおいて長時間労働が生じないよう、上司への申請を義務付けるなどの措置を講じる必要があります。

それに加えて、法的な規制や指針の整備も欠かせません。労働者の健康を守るためには、労働環境の改善と労働法の適切な運用が求められます。このケースが、長時間テレワークによる労災認定という異例の事例となったことは、今後の労働環境の改善や労働法の見直しに向けての重要な契機となるでしょう。

労働者の健康と安全を守りながら、テレワークなどの柔軟な働き方を実現するためには、法規制の見直しや企業の取り組みが必要不可欠です。

 

リモート環境下で上司の監督が難しくなる

テレワークの普及に伴い、労働環境の変化が浮き彫りになっています。神戸大学の大内伸哉教授は、テレワークが普通の労働と変わらず、原則に沿った認定が適切だと述べています。

しかし、リモート環境下で上司の監督が難しくなるという特殊性があるため、企業は従業員の健康配慮義務を果たし、行政は企業を適切に監督することが求められます。テレワークの利点は確かにありますが、労働者の健康や適切な労働管理を確保するためには、社会的な議論と法整備が不可欠です。

 

テレワークの普及

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークは急速に普及しました。総務省の通信利用動向調査によれば、テレワークを導入している企業の割合は年々増加しており、2022年には51.7%に達しています。

この数字はテレワークが今後も一般的な労働形態として定着していくことを示唆しています。しかし、テレワーク導入に伴って長時間労働や仕事とプライベートの時間の区別がつかなくなると感じる従業員が増えており、これが労働管理の課題となっています。

労働者がテレワークを行う場合、自宅や外出先などの非オフィス環境で仕事を行うため、従来のオフィス勤務とは異なる課題が浮かび上がってきます。例えば、家庭や生活の中での雑音や他の家族の存在などが、労働効率や集中力に影響を与える可能性があります。

また、労働者が自ら労働時間を管理することが求められるため、業務とプライベートのバランスを保つことが難しくなるケースもあります。

 

適切な労働時間の確保

このような状況下で、適切な労働管理を実現するためには、企業が労働者の健康を最優先に考え、適切な労働時間や休息を確保することが不可欠です。また、労働者自身も自己管理能力を高め、適切な労働時間の確保やリラックスする時間を持つことが重要です。さらに、労働者と企業のコミュニケーションを円滑にし、労働環境の改善に向けた取り組みを促進することも必要です。

テレワークが広がる中で、労働者の健康と労働環境の保護がますます重要となっています。適切な労働管理の実現に向けては、企業や行政、労働者が連携し、様々な対策を講じることが必要です。これによって、テレワークが労働者と企業の両方にとって健康で持続可能な働き方となることが期待されます。

 

精神障がいによる労災認定の増加

精神障がいによる労災認定の増加は、過重労働やストレスが背景にあるとされています。2014年に制定された過労死防止法やその後の働き方改革関連法は、長時間労働の抑制を図ったものの、一方で精神障がいによる労災認定は増加傾向にあります。

厚生労働省の調査によれば、過去10年間では脳出血や心筋梗塞による労災認定は減少していますが、精神障がいによる認定は増加しています。2023年の調査によれば、全国で労災と認められた精神障がいのケースは710人に上り、前の年度より81人増加しています。これは1983年度以降で最も多い数字です。

 

労災認定の職種

労災認定の職種別にみると、「専門的・技術的職業従事者」や「事務従事者」「サービス職業従事者」などが主な対象となっています。これは、高度な専門性を要求される仕事やオフィスワーク、接客業などでストレスや過労が蓄積されやすいためと考えられます。

年代別に見ると、40代が最も多くの労災認定を受けています。これは、キャリアや家庭の責任が重くなる中での働き方やストレスが影響している可能性があります。次いで20代が続き、若年層でも精神障がいによる労災認定が増加しています。

また、50代も一定数の労災認定があり、年齢が上がるにつれて仕事の負荷が増加することが背景にあると考えられます。

これらのデータは、労働者の心身の健康を考慮した労働環境の整備が喫緊の課題であることを示しています。適切な労働時間の確保やストレス対策の充実、心理的なサポート体制の構築が求められます。また、労働者と企業の双方が協力して、健康な労働環境を実現するための取り組みが必要です。

テレワークの注意点:健康と効率を両立させるためのポイント

新型コロナウイルスの影響により、テレワークが一般的な働き方となりつつあります。しかし、自宅や外出先での作業は便利で柔軟性が高い一方で、健康や効率面での課題も潜んでいます。ここでは、テレワークを行う際に注意すべきポイントをいくつか挙げてみましょう。

 

  • 適切な作業環境の整備

自宅での作業環境を整えることは非常に重要です。静かな場所で、快適な椅子とデスクを用意し、良好な姿勢を保つよう心がけましょう。また、十分な照明や適度な空調も効率的な作業に欠かせません。

 

  • 定期的な休憩の取得

テレワークでは、オフィスでのような定時の休憩が難しくなることがあります。しかし、長時間の画面作業や座りっぱなしの状態は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。こまめな休憩を取り、ストレッチやウォーキングなどの運動を取り入れることが大切です。

 

  • 作業とプライベートの区別

テレワークを行う際には、作業とプライベートの時間を明確に区別することが必要です。特に、自宅での作業では仕事と家庭の境界が曖昧になりがちですが、これがストレスや疲労の原因となることがあります。仕事が終わったら、意識的に仕事から離れる時間を設けるよう心がけましょう。

 

  • コミュニケーションの維持

テレワークでは、直接顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーションの維持が難しくなることがあります。しかし、チームメンバーや上司との円滑なコミュニケーションは業務の円滑な進行に不可欠です。定期的なビデオ会議やチャットツールを活用して、コミュニケーションを密に保つよう努めましょう。

 

  • 目標設定と時間管理

自宅での作業環境は、外部の刺激が少なくなりがちです。そのため、目標設定や時間管理がより重要になります。作業時間やタスクの優先順位を明確にし、効率的に作業を進めるための計画を立てることがポイントです。

 

これらの注意点を意識しながら、テレワークを行うことで、健康や効率性を両立させることが可能です。自分に合った働き方を見つけ、バランスの取れた生活を送るために、日々努力していきましょう。

 

適応障がいを予防するための方法

適応障がいは、長期間にわたるストレスや心理的負荷によって引き起こされる心の健康上の問題です。このような状態になる前に、適応障がいを予防するためには以下のような方法があります。

 

  • ストレス管理の重要性を認識する

ストレスは日常生活において避けられないものですが、その管理方法を学び、積極的に実践することが重要です。ストレスの原因を特定し、対処方法を見つけることで、適応障がいのリスクを軽減することができます。

 

  • 適切な休息とリフレッシュの時間を確保する

忙しい日々の中で、自分自身に時間を与えることが重要です。定期的な休息やリラックスする時間を確保し、ストレスから解放されることで心身のリフレッシュが促進されます。

 

  • 健康的なライフスタイルの維持

適切な栄養摂取、十分な睡眠、適度な運動は、心の健康を維持するために不可欠です。バランスの取れた食事や適度な運動は、ストレスへの抵抗力を高めることに役立ちます。

 

  • ソーシャルサポートの活用

家族や友人、信頼できる同僚など、身近な人々とのコミュニケーションはストレスを軽減し、心の安定を保つのに役立ちます。困難な状況に直面した際には、ソーシャルサポートを受けることで心の負担を分かち合うことができます。

 

  • 仕事とプライベートのバランスを保つ

仕事とプライベートの時間を適切に配分し、過度な労働や仕事へのストレスが生じないように注意しましょう。定期的な休暇や趣味に時間を割くことで、心のリフレッシュとストレスの解消が促進されます。

 

  • 心理的なセルフケアの実践

自己肯定感を高め、ポジティブな思考を持つことは、ストレスへの抵抗力を高めるうえで重要です。自己肯定感を高めるためには、自己肯定の練習やセルフコンパッションの実践が有効です。

 

これらの方法を積極的に取り入れることで、適応障がいを予防し、心の健康を維持することができます。常に自分の心身の状態に気を配り、適切なケアを行うことが大切です。

まとめ

適応障がいの予防には、ストレス管理や健康的な生活習慣の確立が不可欠です。適切な休息やリフレッシュの時間を確保し、心身のリフレッシュを図りましょう。また、ソーシャルサポートを活用し、困難な状況における心の負担を分かち合うことが重要です。

仕事とプライベートのバランスを保ち、心の健康を維持するために、心理的なセルフケアも大切です。自己肯定感を高め、ポジティブな思考を持つことで、ストレスへの抵抗力が向上し、適応障がいのリスクを軽減できます。

 

参考

テレワークで異例の労災認定 長時間労働で適応障がいに 横浜 | NHK

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