2024.03.26

発達性協調運動障がいの息子にかけた言葉に後悔「どうしてできないの」

オチョのうつつさんは、東京都に住む42歳の漫画家であり、現在は小学校6年生の男の子、ウノくん(12歳)を育てるママです。ウノくんが発達性協調運動障がい(DCD)と診断されるまでの経緯を振り返ると、彼が乳幼児の頃から発達に関して異変を感じていたそうです。

 

心配事は無かった

2011年、ウノくんは予定日の10日ほど前に自然分娩で誕生し、健康な赤ちゃんとして3250gの体重で生まれました。オチョさんはその瞬間、幸福感に包まれ、生まれたばかりのウノくんを抱く喜びを感じたそうです。育児に関しては、「たまひよ」の育児新百科を参考にし、赤ちゃんの成長や発達について手掛かりを得ていたと述べました。

ウノくんは幼少期にはぐずることなく、夜に起きてもおっぱいをあげればすぐに眠りにつくおとなしい子でした。首すわりやはいはい、おすわり、喃語(なんご)、発語の発達も順調で、母子健康手帳の目安通りだったため、オチョさんにとっては心配事はありませんでした。

 

違和感を覚えた遊びの様子

しかし、食事の際にむせたりえずいたりすることが頻繁にあったため、「空気を飲んじゃってるのかな?」という疑問が生じました。後で動画を見返してみると、それが意外にも頻繁であったことに気付き、少し心配になったそうです。

ウノくんが10カ月の頃にはいはいができるようになりましたが、彼のやる気はあまり感じられず、祖母の手助けが必要でした。オチョさんは彼が1歳を過ぎてからの公園遊びの様子を見て、違和感を覚えました。

彼は歩けるようになったものの、自発的に走り出すことは少なく、「抱っこ」とせがむことが多かったと述べました。

 

他の子どもたちとの差異がより明らかに

オチョさんは、自分の幼児期を振り返ると、ウノくんの発達とは異なることに気付きます。たとえば、すべり台で遊ばせると、普通の座り方ではなく、体幹を支えられずに横に倒れることがよくありました。また、ジャンプの仕草は楽しそうに見えるものの、実際には浮いていないこともありました。

夫に相談すると、「まだ小さいんだから、こんなものだよ。気にしすぎじゃない?」と返ってきたそうです。しかし、ウノくんが3歳を過ぎて幼稚園に入園すると、他の子どもたちとの差異がより明らかに感じられるようになりました。

 

4歳頃からは運動の苦手さがますます顕著に

ウノくんは3月生まれであるため、少しは他の子との年齢差があるとしても、運動能力に関しては2年ほどの遅れを感じるようになったと述べます。特に目立ったのはボールの扱いで、ドッジボールではボールを捕ることもままならず、投げても相手に届かず、全く逆方向に飛んでしまうこともありました。

4歳頃からは、運動の苦手さがますます顕著になりました。キックバイクに乗れず転倒したり、ブランコをこげなかったり、なわとびができなかったりしました。指先を使う遊びも苦手で、折り紙や粘土などに興味を示さず、すぐに飽きてしまうことがありました。

 

発達支援センターに電話するものの…

自治体の集団健診ではウノくんの発達の遅れは指摘されませんでしたが、オチョさんは幼稚園の保護者会で発達障がいの子どもを持つママの話を聞いたことがあり、発達支援センターに電話してみることにしました。当時、ウノくんは年長の1月でした。

ウノの様子は単に運動が苦手というだけではないように感じました。もし運動面での発達障がいのようなものがあるとしたら、ウノはその一部かもしれないと思ったんです。

発達支援センターに電話をしようと思ったのは、生活が困難なわけではないけれど、子どもの発達について心配なことがある場合、どう対処すればいいのか知りたかったからです。心臓がバクバクしながらも、思い切って電話をかけました。

ところが、その支援センターは半年先まで予約がいっぱいでしたし、対象は未就学児のみとのことでした。半年後にはウノくんは小学生になるため、対象外と言われてしまいました。小児リハビリテーションの病院への紹介もありましたが、その時は病院にかかる必要性を感じておらず…。

何よりも、話を聞いてもらえず断られてしまったことがショックでした。あんなに緊張して、勇気を振り絞って電話をかけたのに、拒絶されたような気持ちでした」とオチョさんは振り返ります。

 

厳しく叱る時もあり「後悔」

だれにも相談できず、頼る先もないとショックを受けたオチョさんは、「それなら親の自分が頑張るしかないと決意した」と語ります。地域の小学校に進学したウノくんは、入学後に文字を書くことやお友だちとの外遊びについていけないことに苦労しました。

「学校生活が始まった当初、一番大変だったのは文字の練習でした。最初はウノの字は個性的でかわいいと思っていましたが、担任の先生から『もっとちゃんと練習してください』と言われ、とてもショックでした。

クラスメイトたちの綺麗な字を見て『ウノにも練習させなくては』と厳しくなってしまいました。文字の宿題がうまくいかないと、厳しくしかって書き直させることもありました。今思うと、ウノがとてもつらそうだったことを思い出して、後悔しています」とオチョさんは振り返ります。

学校を休まずに頑張っていた

運動に苦手さを持つウノくんは、友だちとの遊びについていけず、一人で帰ってくることも多かったそうです。

「ウノは明るい性格でしたが、小学校に入ってから消極的になり、学校に行きたくないと言うこともありました。先生からは、友だちからからかわれることがあるという報告もありました。

たとえば、ハンカチを返してと言っても、友だちが取れないようにひらひらさせてほかの子に投げてしまうことがあったそうです。一度は全員が集められてウノに謝らせられたそうです。いじめられていたわけではないと思いますが、ウノにとってはつらかったようです。

ある時には『僕がいじめられてたらどうする?』と相談され、ウノは淡々と『いじめがあったら訴訟します』と冷静に答えていました。

その後、『そんなことがあったら、学校なんか行かなくてもいいんじゃない』と伝え、お母さんが守ってくれると伝わったそうです。それでもウノは学校を休まずに頑張っていました」とオチョさんは語ります。

 

頑張る姿を見て考えが変わる

ウノくんは運動が苦手でも、ピアノや水泳のほかにスポーツ教室の習い事にも通っていました。オチョさんは週に3回の送迎や宿題のチェックなど、自分の仕事以外にも大忙しでした

「発達支援センターにも断られて『自分が頑張るしかない』と一生懸命でした。でも、ウノの小学校3年生の運動会で徒競走をする姿を見て、考えが変わりました。

運動会の演目では徒競走とダンスがありました。『運動会イヤだなぁ』と渋るウノに、なんとか徒競走を頑張れるようにと『前を見て腕を振るんだよ』『体を少し前に倒すんだよ』と教えました。でもウノにはあまり響かないんです。

そして、教えたこともすぐ忘れちゃうんです。運動会当日の徒競走で、ウノは教わったことがスッポ抜け、よそ見をしながらにこにこして走っていました。

その姿を見て、どんなに私が一生懸命教えても、これ以上ウノをよくしてあげることはできないんじゃないか、と思いました。もう自分はこれ以上頑張れないな、と。

私はウノに結果を求めすぎていたのかもしれません。それに、運動が苦手でも字が下手でも元気で笑顔で育っている、それだけで十分じゃないかなとも思いました」とオチョさんは振り返ります。

勉強や運動を頑張る意欲を失いつつあったオチョさんとウノくん。ウノくんが4年生になったある日、オチョさんは当時のTwitter(現X)でDCDについて書かれた記事を目にしました。

 

DCDの特徴に当てはまる

「記事に書いてあったDCDの特徴は『字が下手』『手先が不器用』『運動が苦手』『ボールやなわとびができない』『周囲から理解されず努力不足だと思われるため自己評価が下がる』とありました。それを見て、『これ、ウノに全部当てはまる!』と驚きました。そしてずっと困っていたことの解決方法がやっと見つかるかもしれない!とすごく感動しました」とオチョさんは述べます。

 

DCDついて知識がある先生に出会い変わる

その後、オチョさんは小学校の保健室の先生に相談しました。先生はDCDという発達障がいについて知識があり、適切な相談先の紹介や今後の対応について検討してくれました。オチョさんは、悩んでいたことに光が見えたと感じたそうです。

うつつ家では実は両親とも運動が苦手でした。「夫は、自分が運動ができなくても乗り越えて生きてきた経験から、子どもが運動ができなくてもそんなに問題ではない、と思っていたようです」とオチョさんは語ります。

 

発達性協調運動障がい(DCD)とは

発達性協調運動障がい(Developmental Coordination Disorder、DCD)は、子どもや成人の日常生活における運動や協調能力に影響を与える発達障がいの一種です。DCDは、運動技能の獲得や実行、統合に関連する困難を特徴とします。この障がいは、身体的な問題や知的障がいとは異なり、脳の発達に関連した問題が原因です。

 

特徴と症状

DCDを持つ人々は、以下のような特徴や症状を示すことがあります。

 

  • 運動技能の困難

例えば、走る、跳ぶ、投げる、キャッチするなどの基本的な運動技能に苦労することがあります。また、自転車に乗る、縄跳びをするなどの複雑な運動にも問題を抱えることがあります。

 

  • 不器用さ

手先の不器用さや筋力のコントロールの難しさがあります。細かい作業や手先を使った活動に苦労することがあります。

 

  • 空間認識の困難

身体の位置や動きを正確に把握することが難しい場合があります。これは、周囲の環境での移動や物理的な活動に影響を与える可能性があります。

 

  • 社会的な影響

DCDを持つ人々は、運動技能の困難や不器用さからくる挫折や不安を経験することがあります。これにより、学業や社会的な活動において自己評価が低下し、ストレスや不安が生じる場合があります。

 

支援と治療

DCDの早期発見と適切な支援が重要です。支援の方法は個々に異なりますが、以下のようなアプローチが一般的です。

 

  • 運動療法

物理療法士や作業療法士による運動療法やリハビリテーションが効果的です。運動技能の向上や身体的なコントロールの向上を促すためのプログラムが提供されます。

 

  • 学校や家庭での支援

教育者や保護者が子どものニーズを理解し、適切な環境を提供することが重要です。柔軟な学習環境や適切な支援が与えられることで、子どもの自己評価や学業成績が向上することがあります。

 

  • 認知行動療法

不安やストレスの管理に役立つ認知行動療法が有効な場合があります。個々のニーズや症状に応じて、心理療法士によるカウンセリングが提供されます。

まとめ

DCDは治癒する疾患ではありませんが、適切な支援や治療により、日常生活や学業、社会参加における障がいを軽減することが可能です。社会全体での理解と支援の向上が、DCDを持つ人々の生活の質を向上させる鍵となります。

 

参考

発達性協調運動障がいの息子、「どうしてできないの!」思わず出た言葉に後悔も。キックバイクがこげない、ボールが投げられない、字が下手、すべてが当てはまり…【DCD体験談】(たまひよONLINE)Yahooニュース

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