2024.04.23

障がい者基本法を見てみよう!平成16年6月に改正された障がい者基本法の主なポイントとは?

平成16年6月に改正された障がい者基本法は、平成16年5月12日に衆議院内閣委員会委員長の提案によって国会に提出され、5月28日に参議院本会議で可決されました。そして、同年6月4日に公布・施行されました(一部を除く)。この改正法の成立に際しては、参議院で附帯決議が付されました。

 

改正の趣旨

障がい者基本法の一部改正案の要綱によれば、この改正の趣旨は、現代の障がい者の状況や社会経済の変化に対応し、彼らの自立と社会参加を促進することにあります。このため、障がいを理由とする差別や権利侵害を禁止し、都道府県や市町村には障がい者のための基本的な施策計画の策定を義務付け、中央障がい者施策推進協議会を設立するなどの改正が行われます。

 

目的

第一条の目的は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進し、彼らの福祉を増進することです。第二条の目的は、障がい者の自立や社会への積極的な参加を促進するための取り組みを支援し、障がい者の福祉を向上させることを目的としています。第三条では、障がい者に対する差別や権利侵害を禁止する基本的理念が明確化されます。第四条では、国と地方公共団体に障がい者の権利擁護や差別防止、自立支援の責務が課されます。

 

改正案では新たに第五条が追加

また、改正案では新たに第五条が追加され、国民に障がい者の人権尊重と差別撤廃に貢献する責務が課せられます。自立への努力に関する規定は第六条で削除され、障がい者週間の規定が新たに追加されます。施策の基本方針も改められ、障がい者の自主性尊重と地域での自立した生活を営む支援が強調されます。

 

障がい者基本計画等に関する改正

障がい者基本計画等に関する改正は、都道府県、市町村、国、地方公共団体などに対する責務の明確化を図っています。都道府県は、障がい者基本計画を基本とし、障がい者の地域ごとの状況を考慮して、障がい者の施策計画である都道府県障がい者計画を策定しなければなりません。同様に、市町村も障がい者基本計画と都道府県の計画を基に、地域の状況に即した施策計画である市町村障がい者計画を策定しなければなりません。

 

閣議での決定が求められる

また、障がい者基本計画は内閣総理大臣が策定するものであり、その際には関係行政機関の長との協議や中央障がい者施策推進協議会の意見を踏まえ、閣議での決定が求められます。更に、地方自治体が地域において障がい者施策を推進する場合、地方障がい者施策推進協議会の設置が求められ、障がい者や関係者の意見を尊重した施策の策定が要求されます。障がい者基本計画や障がい者施策に関する計画が策定された場合は、都道府県知事や市町村長はそれを地方議会に報告しなければなりません。

 

障がい者の日常生活を支援するための様々な施策

医療や介護、福祉用具の提供、教育、職業相談、公共的施設のバリアフリー化など、障がい者の日常生活を支援するための様々な施策が、国や地方公共団体によって取られることが定められています。

第十四条では、情報の利用におけるバリアフリー化が要求されています。国や地方公共団体は、障がい者が円滑に情報を利用し、意思を表示できるようにするため、障がい者にとって利便性の高い電子計算機や情報通信機器の普及、電気通信や放送における障がい者の利便性の向上、そして障がい者向け情報提供施設の整備など、必要な施策を講じなければなりません。さらに、行政の情報化や公共分野における情報通信技術の活用に際しては、特に障がい者の利用を考慮し、配慮しなければなりません。

 

相談業務や成年後見制度、障がいの予防に関する基本的な施策

第十五条では、障がい者に関する相談業務や成年後見制度などの施策や制度が適切に行われ、また広く利用されるようにするための施策が求められています。

第十六条では、障がいの予防に関する基本的な施策が定められています。国や地方公共団体は、難病など障がいの原因となる疾病の予防や治療の困難さに鑑み、関連する調査や研究を推進し、その結果に基づいて障がい者への支援を行うよう努めなければなりません。

 

中央障がい者施策推進協議会の設置

第十七条では、中央障がい者施策推進協議会(中央協議会)の設置が規定されています。内閣府が中央協議会を設け、障がい者基本計画に関する重要事項を処理します。この協議会は、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験のある者からなる委員で構成され、彼らの意見を踏まえて政府の政策に対する助言や提言を行います。

第十八条では、法律の施行期日や検討事項に関する規定が述べられています。

 

  • 施行期日: この法律は、公布の日から施行されます。ただし、第十七条については、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。また、第九の一の2については、平成十九年四月一日から施行されることとなります。

 

  • 検討: 政府は、この法律の施行後五年を目途として、改正後の規定の実施状況や障がい者の社会経済情勢の変化などを考慮し、障がい者に関する施策の在り方について検討を行います。その結果に基づいて必要な措置を講じます。

 

  • その他の規定: 必要な規定が整備されることが求められています。

障がい者基本法の改正案の該当部分

  • 第四条

国及び地方公共団体の責務を定め、障がい者の権利擁護、差別防止、自立支援、社会参加促進等により障がい者の福祉を増進する責務を課します。第六条を削除します。

 

  • 第五条

国民の責務として、社会連帯の理念に基づき、障がい者の人権尊重と差別なき社会参加の実現に努めることを規定します。

これに伴い、既存の第五条を第六条とし、新たに国民の理解に関する規定を加えます。

 

  • 第二章

既存の第九条を第十一条に変更し、その後に新たに障がい者の福祉に関する基本的施策を規定した第二章を追加します。

 

  • 第十二条(医療、介護等)

国及び地方公共団体に、障がい者の医療の提供やリハビリテーションの実施など、福祉を増進するための施策を講じる責務を課します。

医療やリハビリテーションの研究・開発・普及の促進、障がい者が必要な支援を受けられるよう施策を講じることが求められます。

専門的技術職員の育成や福祉用具・身体障がい者補助犬の提供に関する施策も行われるよう努めなければなりません。

 

  • 第十三条(年金等)

障がい者の自立と生活の安定を支援するために、国や地方公共団体は年金や手当などの制度に関する施策を講じなければなりません。

 

  • 第十四条(教育)

障がい者が適切な教育を受けられるように、国や地方公共団体は教育の内容や方法の改善・充実を図るとともに、教育に関する調査や研究、学校施設の整備を促進しなければなりません。

 

  • 第十五条(職業相談等)

障がい者が適切な職業に就けるように、国や地方公共団体は障がい者の能力や状態に応じた職業相談や訓練、紹介などの支援を行う必要があります。

 

  • 第十六条(雇用の促進等)

障がい者の雇用を促進するために、国や地方公共団体は適した職種や職域に対する障がい者の優先雇用の施策を講じるとともに、事業主に対して雇用の安定を図るための支援を行う必要があります。

 

  • 第十七条(住宅の確保)

障がい者の生活の安定を図るため、国や地方公共団体は障がい者向けの住宅を確保し、日常生活に適した住宅の整備を促進する必要があります。

 

  • 第十八条(公共的施設のバリアフリー化)

官公庁施設や交通施設などの公共的施設において、障がい者が利用しやすいような施設の構造や設備の整備を国や地方公共団体、そして事業者が推進する必要があります。

 

  • 第十九条(情報の利用におけるバリアフリー化)

電子計算機や情報通信機器などの普及、電気通信や放送サービスの利用の障がい者向けの利便性の増進、障がい者向けの情報提供施設の整備など、障がい者が情報を円滑に利用できるようにするための施策が必要です。

 

  • 第二十条(相談等)

障がい者に関する相談業務や権利保護制度などが適切に行われ、広く利用されるように国や地方公共団体が努める必要があります。

 

  • 第二十一条(経済的負担の軽減)

障がい者やその扶養者の経済的負担を軽減し、自立を促進するために、税制上の措置や公共施設の利用料の減免などの施策が必要です。

 

  • 第二十二条(文化的諸条件の整備等)

障がい者の文化的活動やレクリエーション、スポーツ活動の支援のために、施設や設備の整備など必要な施策が講じられるべきです。

 

  • 第七条の改正

障がい者計画の策定に関する規定や、施策の推進に必要な行政機関間の連絡調整についての改正が行われています。さらに、障がい者施策における地方の意見や関係者の意見を尊重する方針が盛り込まれました。

 

  • 第六条の二(障がい者週間)

障がい者週間の期間や日付が具体化され、12月3日から12月9日までの1週間とされることが提案されています。

 

  • その他の改正

さまざまな条項や見出しの修正が行われ、障がい者基本法の体系や内容が整理されています。特に、地方障がい者施策推進協議会に関する規定の改正や、中央障がい者施策推進協議会の名称変更などが含まれています。

 

障がい者基本計画に関連する事項

中央障がい者施策推進協議会は、障がい者基本計画に関連する事項を処理するために内閣府に置かれる組織です。以下に、この改正案の主なポイントをまとめます。

 

組織と人員

中央協議会は最大で30人の委員で構成され、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験者などが内閣総理大臣によって任命されます。彼らの委員会の構成は、様々な障がい者の意見を考慮して行われることが求められます。委員は非常勤であり、中央協議会の組織や運営についての詳細は政令で定められます。

 

法改正内容

障がい者基本法の改正では、基本計画の策定について「策定しなければならない」という義務が明記されています。

 

  • 施行期日

この法律は公布の日から施行されますが、内閣府設置法の改正に関する規定は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定められる日から、障がい者基本法の改正規定は平成19年4月1日から施行されます。

 

  • 検討

施行後5年を目途に、この法律の実施状況や障がい者を取り巻く社会経済情勢の変化などを勘案して、障がい者に関する施策の在り方について検討を行い、必要な措置を講ずることが政府に求められています。

 

この法律改正案は、障がい者に対する差別や権利の侵害を防止し、障がい者の福祉を向上させるための包括的な取り組みを進めるためのものです。

まとめ

障がい者基本法の改正は、障がい者の自立と社会参加を促進するための包括的な取り組みを進めるものであり、施行後の効果検証や社会の変化に応じた柔軟な対応が求められます。障がい者の権利擁護や福祉増進に向けたこの法律は、日本社会の包摂性と共生性を高める重要な一歩となるでしょう。

 

参考

障がい者基本法の改正について(平成16年6月)

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