2024.04.19

「障がい者週間」と「共生社会の構築」障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり

障がい者基本計画(第4次)に基づき、障がいのある人との共生社会を推進するため、広報・啓発活動が重要視されています。内閣府が発行する障がい者白書の第2章では、障がい者週間を活用して、国民の理解を深める取り組みが行われています。本記事ではどのような事が行われているのか見ていきたいと思います。

 

毎年12月3日から9日までの1週間「障がい者週間」

障がい者週間は、毎年12月3日から9日までの1週間が指定され、共生社会の理念の普及と障がいに対する理解を促進することを目的としています。政府は、障がい者週間に向けて様々なイベントを展開しています。

例えば、小・中学生などから障がいのある人とのふれあいをテーマにした作文やポスターの募集が行われ、最優秀作品が選定されます。また、関連行事では、一般国民を対象に障がい者に関するセミナーが開催され、障がい者関係団体との連携も図られています。

障がい者週間の関係表彰式では、最優秀作品や功労者に内閣総理大臣表彰が授与され、その功績が称えられます。これらの取り組みを通じて、障がい者との理解を深め、共生社会の実現に向けた一助となることが期待されています。

 

各種の広報・啓発活動が行われ障がいのある人への理解を促進

様々な週間・月間の取り組みが行われています。例えば、9月は「障がい者雇用支援月間」、10月は「第65回精神保健福祉普及運動」、12月は「人権週間」となっており、これらの期間を通じて障がいに関する理解を深めるための活動が展開されています。また、4月には「発達障がい啓発週間」があり、地方公共団体や関係団体による啓発活動が行われています。

 

バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰

バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰も行われています。高齢者や障がいのある人、妊婦、子供連れの人々が安全かつ快適な社会生活を送るために、バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進が重要視されています。内閣総理大臣表彰等を通じて、顕著な功績や功労を持つ個人や団体が表彰され、その取り組みが称えられています。平成29(2017)年度には、9団体が表彰されました。

 

障がい者政策委員会は会議の情報提供を行う

障がい者政策委員会では、会議の情報提供に積極的で、インターネットを通じて会議の全状況を動画や音声、手話、要約筆記の文字情報として一定期間提供しています。

障がい者白書は、障がい者基本法第13条に基づき、政府が毎年提出する報告書です。平成28年版からは、視覚障がい者や印刷物を読むことが難しい人々のためにデジタル録音図書である「マルチメディアデイジー」版が作成され、内閣府のホームページで公表されています。

 

福祉教育の推進

福祉教育の推進では、学校教育において交流や共同学習の機会を設けることが規定されています。教育委員会が主体となり、各学校で様々な交流や共同学習が行われ、障がい者理解の推進が図られています。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、「心のバリアフリー学習推進会議」が設置され、交流や共同学習の推進方策についての提言がまとめられています。

地域住民への広報・啓発活動も行われており、社会教育施設や精神保健福祉センターでは、障がいのある人に対する理解を深めるための学習活動や知識の普及・啓発が行われています。これらの取り組みを通じて、障がい者への理解が広がり、共生社会の実現に向けた一助となっています。

 

ボランティア活動の推進

学校におけるボランティア教育では、学習指導要領に基づき、道徳や総合的な学習の時間などで思いやりの心や助け合いに関する指導やボランティア活動の充実を図っています。特に高等学校では、生徒が行うボランティア活動などの学校外での学修が認められ、単位として認定される場合もあります。

地域福祉等ボランティア活動の促進に向けて、内閣府では「地域コアリーダープログラム」を実施し、共生社会の実現に向けた人材育成を行っています。また、障がい者関連分野では、国内外での青年の交流やリーダー育成を促進しています。

 

公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進

公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進では、警察や刑務所、更生保護官署、法務省の人権擁護機関などで障がい者理解の研修や教育が行われています。警察学校や矯正研修所では、障がいのある人への配慮やコミュニケーション方法などについての研修が実施され、社会福祉施設での体験実習も行われています。

法務省では、国家公務員や地方自治体職員を対象にした研修が行われ、障がい者に関する理解と認識の向上が図られています。また、日本司法支援センターでは、障がい者支援の知識を持つ担当職員が研修を通じて全国の職員に知識を伝え、利用者の立場を理解した適切な対応が行われるよう支援しています。

障がい者差別解消法の制定経緯と概要

障がい者差別解消法の制定経緯

障がい者の権利を保障するために、国際的な取り組みとして「障がい者の権利に関する条約」が採択され、日本も2007年に署名し、2014年に批准しました。これに基づき、障がい者基本法が改正され、差別の禁止が規定されました。その後、障がい者差別解消法が2013年に成立し、2016年に施行されました。

 

障がい者差別解消法の概要

(1)対象となる障がい者

身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)など、障がいによって日常生活や社会生活に制限を受ける者が対象です。障がい者手帳の所持者に限定されず、広範な障がい者が含まれます。

 

(2)対象となる事業者及び分野

行政機関や事業者が対象で、商業や非営利活動など様々な分野が含まれます。特に教育、医療、福祉、公共交通、雇用など、障がい者の自立と社会参加に関わる分野が重視されています。

 

(3)不当な差別的取扱いの禁止

障がいを理由とした財・サービスの拒否や条件付けなどは不当な差別とされ、法律で禁止されています。ただし、客観的に正当な理由がある場合は例外とされます。

障がい者差別解消法は、障がい者の権利を保障し、差別をなくすための具体的な措置を講じることで、社会の多様性と包摂性を実現するための重要な法律です。

 

(4)合理的配慮の提供

障がい者や関係者から配慮を求められた場合、負担が過重でない範囲で、社会的障壁を取り除くための必要かつ合理的な配慮を行います。負担の有無は、事案ごとに具体的に判断され、事務・事業の影響や実現可能性、費用などを総合的に考慮します。ただし、行政機関には義務が課される一方で、事業者には努力義務があります。

 

(5)環境の整備

公共施設や交通機関のバリアフリー化、サービス・介助者の提供、情報アクセシビリティの向上など、不特定多数の障がい者を対象とする事前的改善措置を行います。これには、ハード面だけでなく、職員の研修などのソフト面の対応も含まれます。

 

(6)障がい者差別解消法

「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を定め、行政機関等は対応要領を定めます。これに加え、各主務大臣は対応指針を定め、事業者が適切に対応するための指針を提供しています。

 

障がい者差別解消法

内閣府では、関係省庁や地方公共団体、障がい者団体などから障がい者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を収集し、「合理的配慮の提供等事例集」としてまとめています。

障がい者差別解消法に基づき、地域協議会の設置が促進されています。地域協議会は、相談事例の共有や協議を通じて、事案解決や類似事案の発生防止を図るためのネットワークです。未設置の地域に対しては、有識者をアドバイザーとして派遣するなどの支援が行われています。

 

地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取

地域フォーラムが開催され、地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取し、障がい者差別解消法の円滑な施行を目指し、地域における取り組みの促進と気運の醸成を図っています。

事業者における障がい者差別解消に向けた取り組みが期待されますが、必要に応じて主務大臣や地方公共団体の長が、事業者に対し報告を求めたり、助言・指導・勧告を行ったりすることができます。

 

2020年東京オリンピック・パラリンピックの基本方針

2015年に閣議決定された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」では、東京大会を契機に、障がいの有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、ユニバーサルデザインの街づくりを進めることが位置づけられました。その基本方針に基づき、2017年には「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が決定されました。

 

行動計画

行動計画では、以下の2つの観点から具体的な取組が行われています。

 

  • 「心のバリアフリー」の推進:障がいのある人への社会的障壁を取り除く社会の責務を理解し、差別をなくし、異なる条件を持つ他者とコミュニケーションを取る力を養い、共感する力を培うことが重要視されています。

 

  • ユニバーサルデザインの街づくり:東京大会に向けたバリアフリー化と全国各地でのユニバーサルデザインの推進が行われ、幅広い施策がとられています。

 

共生社会を実現するために必要な取り組み

2020年パラリンピック大会まで1000日を切った2018年1月に、「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第2回)」が開催されました。この会議では、ユニバーサルデザインを推進する上での重要な要素である「心」と「街」の両分野における取り組みが共有され、更なる施策の進展が図られました。特に、共生社会を実現するために必要な取り組みの加速化が確認されました。

まとめ

障がい者週間や関連する取り組みは、障がいのある人々と社会全体の理解を深め、共生社会の実現に向けた重要な一歩となっています。これらの活動を通じて、社会の多様性と包摂性を促進し、障がい者の活躍と尊重を推進していくことが期待されます。障がい者週間を通じて展開されるイベントや関連行事は、多様な人々に障がい者とのふれあいや理解を深める機会を提供し、その結果、社会全体がより包括的かつ温かい場所となることが期待されます。

 

参考

第2章 障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり|内閣府

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