2024.03.29

障がいを持つ娘のために喫茶店を始める 親子でケーキ作り、接客に奮闘

多摩市から檜原村の小さな集落へ移り住んだ仲田美治さん(67)が、今年1月に喫茶店「茶房へんぼり」をオープンしました。長女の真由美さん(36)が聴覚障がいを持つため、家族全員での移住でした。仲田さんは、「障がいを持っていても、チャンスを生かせる場所を作りたい」と語っています。

 

内は畳敷きの座敷でレトロな雰囲気

店はJR武蔵五日市駅からバスで50分ほどの山あいにあり、空き家を改装しています。店内は畳敷きの座敷で、レトロな雰囲気が漂っています。

開店前、仲田さんは家族に向かって、「たくさん笑顔でお迎えしよう」と話していました。そして午前10時にオープンすると、男女3人の客が訪れました。笑顔で迎えた真由美さんに、客たちはメニュー表で指さし注文しました。彼らはケーキを楽しみ、仲田さんとの会話を楽しみながら、思い思いの時間を過ごしていました。

 

コロナ禍により失職

仲田さんは1979年に京王電鉄に入社し、広報などを経て、御岳登山鉄道(青梅市)の社長になりました。2018年に退職し、その後4年間は同社の相談役を務めました。

彼の長女である真由美さんは、ろう学校を卒業後、パンの製造会社で働いていました。しかし、コロナ禍により出荷先のレストランやホテルが休業し、職場の業績が悪化したため、2020年頃に失職しました。

 

「娘が働ける場所を自分でつくろう」

仲田さんは、「娘は再就職をしようにも、聴覚障がいという理由だけで門前払いされた」と振り返ります。真由美さんは、新しい職場が見つからず、家にこもりがちになってしまいました。

「娘が働ける場所を自分でつくろう」という思いで、仲田さんは決意しました。真由美さんは手先が器用で、ケーキ作りが得意でした。仲田さんは趣味でコーヒーを淹れることも好きで、「この二つを組み合わせるなら、喫茶店がいいんじゃないか」と思いつきました。

2021年から物件探しを始め、御岳登山鉄道時代に交流のあった人たちから建物の紹介を受けました。「水がおいしく、これなら良いコーヒーが淹れられる」と思い、周囲の自然も豊かな檜原村への移住を決めました。

 

「茶房へんぼり」がオープン

様々な準備を終え、今年1月28日に茶房へんぼりがオープンしました。仲田さんは「娘が1人で店の運営をできるように」と、ケーキ作りだけでなく、接客も真由美さんに任せています。

聴覚障がい者が接客していることを客に理解してもらうために、メニューに「聴覚障がいを持つスタッフが接客をすることがあります」と記載したり、真由美さんのエプロンに聴覚障がいを知らせる缶バッジを付けたりしています。

 

「移住してきて本当に良かった」

店は近所の人や登山者たちの憩いの場所にもなっています。人気メニューは、ドリンクと旬の食材を取り入れた真由美さんの作るケーキがセットとなった「ケーキセット」(900~1000円)です。真由美さんは「お客様が『おいしかったよ』『ありがとう』と手話で伝えてくれることもあって本当にうれしい」と笑顔を見せています。

仲田さんは「娘が楽しそうに働いていて、移住してきて本当に良かった」と目を細めます。店の経営がある程度落ち着いたら、さらに店の魅力を高めるために、一家で新しいメニューの創作に取り組んでいくつもりです。

聴覚障がいについて

聴覚障がいは、耳や聴覚系に障がいがあることによって聞こえ方が制限される状態を指します。これは、生まれつきのものである場合もありますし、後天的に発症することもあります。聴覚障がいは、人々の日常生活や社会参加に影響を与える可能性があり、適切な支援や理解が必要です。

 

先天性の聴覚障がい

先天性の聴覚障がいは、出生時から存在するものであり、胎児の発育過程で起こる遺伝的な要因や疾患が関与します。一般的な原因には、以下のようなものがあります。

 

  • 遺伝的な要因

聴覚障がいは遺伝的な要因によって引き起こされることがあります。親からの遺伝子の異常や変異が子供に伝わることで、聴覚器官の発達に問題が生じる場合があります。

 

  • 先天性感染症

母体が妊娠中に感染した特定の病原体(例: 風疹、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス)は、胎児の聴覚器官や神経系に障がいを引き起こす可能性があります。

 

  • 母体の病気や薬物の影響

妊娠中に母体が特定の薬物や有害物質にさらされることは、胎児の正常な発育に悪影響を与える可能性があります。また、母体の疾患や健康状態も胎児の聴覚器官の発達に影響を与えることがあります。

 

後天性の聴覚障がい

後天性の聴覚障がいは、出生後に獲得されるものであり、耳の感染症、怪我、騒音、加齢などが主な原因となります。

 

  • 耳の感染症

中耳炎や外耳炎などの耳の感染症は、耳内部の組織や構造にダメージを与え、聴覚障がいを引き起こす可能性があります。

 

  • 怪我

耳への外傷や頭部の怪我は、聴覚神経や内耳の損傷を引き起こし、聴覚機能に影響を与えることがあります。

 

  • 騒音

長期間にわたる高レベルの騒音や爆発音などは、聴覚器官に損傷を与え、聴覚障がいを引き起こす可能性があります。

 

  • 加齢

加齢によって、耳の構造や聴覚器官に変化が生じ、高音域の聞き取りや音の明瞭さに影響を与えることがあります。これは高齢者に見られる一般的な現象であり、高齢性聴覚障がいとして知られています。

 

これらの種類と原因を理解することは、聴覚障がいを予防し、適切な支援や治療を提供する上で重要です。

 

症状

聴覚障がいの症状は、その程度によってさまざまです。軽度の場合は、静かな環境での会話や音楽の聞き取りに苦労することがあります。例えば、他の音に混ざってしまいやすく、会話の中で言葉や音の一部を逃すことがあります。また、高い周波数の音に特に敏感でないため、鳥のさえずりや子供の声を聞き逃すことがあります。

一方、中等度から重度の聴覚障がいの場合は、より深刻な影響が見られます。言葉の理解が難しくなり、周囲の会話や音楽をほとんど聞き取れなくなることがあります。これにより、日常生活でのコミュニケーションが困難になり、社会的な孤立や不適応が生じる可能性が高まります。

 

影響

聴覚障がいは、個人の生活全般に大きな影響を与える可能性があります。例えば、次のような影響が考えられます。

 

  • 社会的孤立

聴覚障がいがある人は、コミュニケーションや交流が難しくなる場合があります。そのため、友人や家族との関係が希薄になることがあり、社会的な孤立感を感じることがあります。

 

  • 不適応

聴覚障がいによってコミュニケーションが制限されると、自己肯定感や自信が低下し、社会に適応するのが難しくなることがあります。これは、心理的な側面からの影響です。

 

雇用や教育の機会の制限: 聴覚障がいがある人は、職場や学校でのコミュニケーションや情報の受け取りが困難になることがあります。そのため、雇用や教育の機会が制限される可能性があります。

聴覚障がいは個人の生活や精神的な健康、さらには社会的経済的な状況にも大きな影響を与える可能性があります。そのため、適切な支援や理解が必要とされます。

 

支援と対応

聴覚障がい者が健康で幸福な生活を送るためには、適切な支援と対応が重要です。これには、聴覚補助技術(補聴器、人工内耳など)、手話や筆談などのコミュニケーション手段の提供、聴覚障がい者向けの教育プログラムや職業訓練、職場や公共施設でのアクセシビリティの向上などが含まれます。

 

聴覚補助技術の提供

補聴器や人工内耳などの聴覚補助技術は、聴覚障がい者が周囲の音をより良く聞き取るのに役立ちます。これらの技術は、個々の聴力の状態やニーズに合わせて選定され、適切な調整やメンテナンスが提供されることが重要です。

 

コミュニケーション手段の提供

聴覚障がい者にとって、手話や筆談などのコミュニケーション手段が重要です。これにより、聴覚障がい者は他の人と効果的にコミュニケーションを取ることができ、情報の受け渡しや相互理解が促進されます。

 

教育プログラムや職業訓練の提供

聴覚障がい者向けの特別な教育プログラムや職業訓練は、彼らが自己成長し、社会での自立を実現するのに役立ちます。教育機関や職業訓練機関は、聴覚障がい者の学習ニーズに適切に対応し、彼らがスキルや能力を発展させるための環境を提供する必要があります。

 

アクセシビリティの向上

職場や公共施設でのアクセシビリティの向上は、聴覚障がい者が日常生活や社会活動に積極的に参加できるようにするための重要な要素です。これには、手話通訳者の提供、聴覚障がい者向けの情報提供や看板表示、無障がい設計の施設などが含まれます。

 

偏見や差別の撤廃

聴覚障がい者への偏見や差別をなくすことは、包括的で理解ある社会を築く上で不可欠です。これには、聴覚障がい者の権利を尊重し、彼らが自由に生きることができる社会的な環境の構築が必要です。教育キャンペーンや啓発活動、法的な保護措置の強化などが有効な手段となります。

まとめ

聴覚障がい者の支援は、補聴器や手話、教育プログラムの提供、アクセシビリティの向上など、多岐にわたります。偏見や差別の撤廃も重要です。これらの取り組みが、聴覚障がい者の自立と社会参加を促進します。

支援と対応策が、聴覚障がい者が豊かな生活を送り、社会で充実した役割を果たすための基盤を提供します。それぞれの支援が連携して、聴覚障がい者とその周囲の人々が共に支え合う社会を築いていくことが重要です。

 

参考

障がい持つ娘のために喫茶店 檜原に移住の仲田さん 娘、ケーキ作りや接客に奮闘 : 読売新聞オンライン

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