2024.03.29

障がい者に仕事体験 自信を深めて仕事の定着図る NPO法人や自治体で行われる

NPO法人や自治体では、働きたいという希望を持つ障がい者に向けて、短時間の仕事体験プログラムを実施しています。学校を卒業した後、施設に入所したり自宅で過ごしたりしている障がい者にとって、仕事に触れる機会が少ないことが課題です。このようなプログラムを通じて、参加者が実際の職場で働くことに自信を持つことができるようです。

 

就労体験プログラム

「ご来場ありがとうございます。こちらがイベントの案内パンフレットです」

3月5日、地元の公園で行われたピクニックイベントに、障がい者支援団体が主催する就労体験プログラムに参加した障がい者とその家族ら約40人が、来場者にパンフレットやチラシを配布していました。

このプログラムは、NPO法人「未来への一歩」が推進しており、障がい者が仕事に触れる機会を提供しています。参加者は、6つのグループに分かれて、各エリアでの活動を行いました。

 

「たくさんの人と交流できて楽しかった」

地元の特別支援学校に通う女子学生(16)は「初めての体験でドキドキしましたが、たくさんの人と交流できて楽しかったです。これからの進路について考えるきっかけになりました」と笑顔で話しています。彼女の母親も「子どもたちが実際の仕事を経験することで、将来の選択肢を広げることができるのは素晴らしいですね。このような機会を提供してくれる団体に感謝しています」と述べています。

2012年に開始された同研究所の就労体験プログラムは、北海道、東京、京都、島根など全国10都道府県で展開されています。サッカーやバスケットボールの試合、マラソン大会、プロレスの巡業などで、参加者は3~4時間の体験が可能です。交通費として2000円が支給され、これまでに延べ4000人以上が参加しています。

 

体力や自信をつけるだけでなく社会参加のきっかけ

実施の際には、研究所のスタッフが事前に現地を訪れ、1日の流れを確認し、参加者に適した仕事を選定します。清掃やゴミ分別の声かけ、募金活動など、さまざまな仕事を担当しています。また、活動を継続するために企業スポンサーの募集やクラウドファンディングを行っています。このプログラムでは、引きこもりの人や不登校の子どもたちなども受け入れており、参加者は体力や自信をつけるだけでなく、社会参加のきっかけとしても活動しています。

同研究所の田中真宏代表(45)は、「障がいがあるとアルバイトをするのが難しいため、働く機会や選択肢が限られがちです。しかし、このプログラムを通じて、参加者がワクワクするスポーツの場でサービスを提供する側に立つことができます。参加者には新たな可能性を発見し、次のステップに進むきっかけとなることを願っています」と述べています。

 

神奈川県鎌倉市での取り組み

神奈川県鎌倉市では、2017年度に約2700人の18〜64歳の障がい者が生活しており、そのうち1245人が働いていると推定されています。市は働く意欲のある障がい者の雇用を促進するため、障がい者の雇用を2000人に増やす目標を掲げており、2024年1月時点で2024人が働いています。

市は2020年から藤沢市のNPO法人「農スクール」に委託し、障がい者向けの就農体験プログラムを実施しています。この3年間で、就労や自立に不安を感じる約250人が参加しています。

農業は作業を細分化しやすく、それぞれの特性に合った働き方ができるため、障がい者にとって適した職場と言えます。例えば、体力に自信があれば根菜類の運搬などの仕事ができます。昨年、参加した男性(47)は「雑草から肥料を作ったりして興味が増した」と話しています。同法人によると、得意な分野や長所を伸ばす形で就労に結びつけやすいということです。

 

農業での就職を目指す「就労特化コース」

現在、居場所やつながり作りのための「体験コース」だけでなく、2022年からは新たに設けた農業での就職を目指す「就労特化コース」があります。このコースでは、農作業の基本や体力作りを行う導入編に続き、複数の農家を実習して回る基礎編を設けています。職場内のコミュニケーションが苦手だったり、体調を崩して長期間働いていなかったりする人でも、就労の準備をしやすくしています。

同法人代表の小島希世子さん(45)は「障がい者が就労に向けて慣れる場が少ない。就労特化コースは徐々に作業負荷が上がり、気付けば色々なことができるようになっている。そういう場が増えれば、働ける人は増える」と述べています。

 

働きたいという希望を持ちながら就労できていない人もいる

近年、障がい者の雇用者数は増加していますが、まだまだ働きたいという希望を持ちながら就労できていない人も多く存在しています。

厚生労働省のデータによれば、2023年6月時点で民間企業に雇用されている障がい者は過去最高の642,178人でした。このうち、身体障がい者が56%を占めており、微増ですが知的障がい者は3.6%増、精神障がい者は18.7%増と増加率が大きいです。

障がい者の就職先としては、特別支援学校から一般企業への就職や就労移行支援などの障がい福祉サービスを利用するケースがあります。特に、障がい福祉サービスから一般企業への就職者数が増加しており、21年には10年前の約3.8倍にあたる21,380人に上っています。

 

就労機会の不足が課題

しかし、一方で約1160万人の障がい者のうち、在宅で過ごしている人は18~64歳で約480万人に上ります。この中には働きたいと願っている人も多く含まれており、就労機会の不足が課題となっています。また、職場への定着も課題であり、発達障がい者の場合、1年後の定着率が71.5%、精神障がい者の場合は49.3%という結果が出ています。

高松大学の山口明乙香教授は、「安定的に働くためには、自分の力を発揮できる職場環境を理解し、適切なサポートや配慮が必要です。そのためには、就労体験などを通じて自己理解を深め、自身の強みや必要な工夫を知ることが重要です」と指摘しています。

障がい者雇用の重要性と取り組み

障がい者雇用は、社会的包摂を促進し、多様性を尊重する社会の実現に向けた重要な一環です。障がい者もまた、豊かな能力や経験を持ち、自立した生活を送る権利を持っています。

しかし、彼らが十分な雇用機会にアクセスできず、社会から排除されることがある現実もあります。近年、多くのNPO法人や自治体が、障がい者雇用の促進に取り組んでいます。その中には、以下のような取り組みが挙げられます。

 

  • 仕事体験プログラム

NPO法人や自治体が主催する短期の仕事体験プログラムは、障がい者が実際の職場で働く経験を積む機会を提供します。これにより、雇用に関する自信を得るだけでなく、実践的なスキルを身につけることができます。

 

  • 障がい者雇用の目標設定

地方自治体や企業などが、障がい者の雇用を増やすための目標を定めることが重要です。これにより、雇用機会の拡大と雇用率の向上が図られます。

 

  • 就労支援プログラムの充実

就労移行支援や職業訓練などのプログラムの拡充も重要です。障がい者が職場で必要なスキルや知識を習得し、社会での活動を支援することが目的です。

 

  • 職場のアクセシビリティ向上

職場環境のアクセシビリティを向上させることも重要な取り組みの一つです。障がい者が円滑に仕事を遂行できるよう、バリアフリーな環境を整備することが求められます。

 

障がい者雇用の促進には、社会全体の協力が必要です。政府、企業、地方自治体、そして個々の市民が連携し、障がい者が自立した生活を送るための支援を行うことが重要です。これにより、多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現が期待されます。

 

障がい者のための就業施設:社会参加と自立を支援する場

障がい者の雇用促進や社会参加の一環として、就業施設が重要な役割を果たしています。就業施設は、障がいを持つ人々が働きながらスキルを磨き、自立した生活を送るためのサポートを提供する場です。以下では、就業施設の概要やその重要性について説明します。

 

就業施設の概要

就業施設は、障がい者が就労や社会参加を促進するために提供される支援施設です。これらの施設では、障がい者が自分の能力や興味に合った仕事を見つけ、スキルを向上させることができます。また、施設内では職場環境や社会生活に必要なスキルを身につける機会も提供されます。

 

就業施設の役割

  • 雇用機会の提供

就業施設は、障がいを持つ人々に雇用機会を提供することで、自立した生活を支援します。施設内での仕事を通じて、障がい者は社会での役割や責任を実感し、自己成長を促進します。

 

  • スキルトレーニング

就業施設では、仕事に必要なスキルや知識を習得するためのトレーニングが提供されます。これにより、障がい者は自信を持って仕事に取り組むことができます。

 

  • 社会参加の促進

就業施設は、障がい者が社会に参加し、自分の力を社会に貢献することを支援します。施設内での仕事や交流活動を通じて、障がい者は社会的つながりを築き、自己実現を図ることができます。

 

  • 生活支援

就業施設では、生活面での支援も提供されます。障がい者が安心して仕事に取り組むための環境整備や生活相談などが行われ、安定した生活の実現を支援します。

 

職業訓練:スキル向上と雇用促進のためのプログラム

職業訓練は、仕事に必要なスキルや知識を身につけるためのプログラムです。特に、雇用を希望する人々や職場でのキャリアアップを目指す人々にとって重要なサポートとなります。以下では、職業訓練の概要やその重要性について説明します。

 

職業訓練の概要

職業訓練は、仕事に必要な技術や能力を習得し、雇用を見つけたり、職場での能力を向上させたりするためのプログラムです。一般的に、専門的なトレーナーが指導し、実践的なトレーニングや教育を提供します。多くの場合、職業訓練は特定の業界や職種に焦点を当てて行われ、参加者がその分野でのスキルを磨くことができます。

 

職業訓練の重要性

  • 雇用促進

職業訓練を受けることで、参加者は職場で求められるスキルや知識を習得し、雇用に向けての準備ができます。また、新たな職種に挑戦したり、職場でのキャリアアップを目指す際にも役立ちます。

 

  • スキル向上

職業訓練は、参加者のスキルを向上させる機会を提供します。新しい技術や作業方法の習得や、業界でのトレンドや規制についての理解を深めることができます。

 

  • 自信の向上

職業訓練を通じて、参加者は自分の能力や可能性について新たな発見をすることができます。これにより、自信を持って職場での業務に取り組むことができるようになります。

 

社会的つながりの構築

職業訓練は、同じ目標を持つ仲間との交流や協力の機会も提供します。これにより、参加者は社会的なつながりを構築し、新しい人間関係を築くことができます。

まとめ

障がい者の雇用促進と社会参加を支援する就業施設は、彼らが自立した生活を送るための重要な拠点です。施設内での仕事やトレーニングを通じて、障がい者は自己成長を促し、社会とのつながりを深めることができます。これらの取り組みは、社会全体の多様性と包摂を促進し、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現に向けた重要な一歩となります。

職業訓練は、参加者が職場での成功を目指すための重要なステップです。スキルの習得や自信の向上、社会的なつながりの構築など、さまざまな面での成長を支援します。そのため、政府や企業、NPO法人などが積極的に職業訓練プログラムを提供し、雇用促進や労働力の向上に貢献しています。

 

参考

障がい者に仕事を経験してもらう取り組みNPO法人や自治体で…自信深めて就労や職場への定着図る狙い | ヨミドクター(読売新聞) 

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