2024.03.28

65歳未満でも受給可能な「障がい年金」を利用して 不安と負担を軽減

日本では、がんとの闘いが現代の国民病とも言われ、その深刻さがますます浮き彫りになっています。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人にも上り、そのうち5人に1人ががんで亡くなるという厳しい現実があります。

しかし、このような状況にも関わらず、がんによる社会的・経済的影響についての理解は十分ではありません。特に、がんと診断された場合の社会保障制度についての知識は乏しいと言わざるを得ません。

 

がん治療と仕事の両立が困難

がん治療は現代医学の進歩によって多くの進展があり、生存率が向上しています。しかし、その一方で、治療費の高額化や副作用による生活や仕事の制限といった課題も浮かび上がっています。

実際、2023年10月に内閣府が発表した世論調査によれば、がん患者の53.5%ががん治療と仕事の両立が困難だと感じているという結果が示されました。

このため、約4割のがん患者が仕事を辞めるという現実がありますが、それでも約45万人もの人々ががん治療と仕事を両立させています。

 

日常生活や仕事に制限が生じた場合に受給できる

その中で、特に重要な支援手段として挙げられるのが「障がい年金」です。がんの病状の進行や治療によって、心身に障がいが出たり、日常生活や仕事に制限が生じた場合に受給できるこの制度は、多くのがん患者やその家族にとって心強い支えとなっています。

しかし、残念ながら、この制度については一般に知られている程度ではありません。そのため、がん患者やその家族が適切な支援を受けるためには、このような社会保障制度についての理解が必要不可欠です。

 

障がい年金を受給している人の割合は非常に少ない

年金制度は、働くことが難しくなった場合の所得保障であり、高齢者だけでなく、がんやその治療によって生活や仕事に制限が生じた場合にも適用されます。特に、がんによる機能障がいや全身の衰弱、抗がん剤の副作用などが生じた場合には、年金を受給することができます。

障がい年金は、老齢年金や遺族年金と同様に公的な年金制度の一環です。初診日から1年6カ月以上経過し、かつ直近1年間に年金保険料の未納がないなどの条件を満たせば、現役世代でも受給できます。しかし、がんの患者の中でこの障がい年金を受給している人の割合は非常に少ないのが現状です。

その理由の一つは、障がい年金についての理解が不足していることです。さらに、申請手続きが複雑であることや、申請しなければ受給できないことも要因となっています。職場や家庭の支援を受けて仕事や家事を続けている場合でも、障がい年金の申請が重要です。

 

局所的な障がいでも障がい年金の受給が可能

障がい年金は障がい基礎年金と障がい厚生年金に分かれ、障がいの程度に応じて受給額が異なります。身体障がい者手帳の等級とは異なる障がい等級が設定されており、局所的ながんの障がいも対象です。

例えば、副作用によって仕事が続けられなくなった場合や、がんによって生じた局所的な障がいでも、障がい年金の受給が可能です。障がい年金の申請を検討する際には、専門家や関係機関のサポートを利用することが重要です。

職場や家庭の支援や配慮を受けている場合でも、障がい年金の受給が該当することがあります。例えば、毎日の出社が難しい場合でも、会社が在宅ワークへの切り替えを許可してくれたり、出勤時には休憩室で休息を取りながら業務を続けたりすることができます。また、家事においても、重い洗濯物を持ち上げることが難しい場合は家族に手伝ってもらったり、買い物に行く際には家族がサポートしてくれることもあります。これらのケースでも、障がい年金の受給が可能な場合があります。

 

障がい年金の仕組み

障がい年金の仕組みは、厚生年金に加入している場合は障がい基礎年金と障がい厚生年金の2つがあります。障がいの等級が2級以上であれば、障がい基礎年金に上乗せして障がい厚生年金を受給することができます。障がい基礎年金には子の加算があり、障がい厚生年金には配偶者の加給年金も支給されます。

受給額は、障がい等級や家族の状況によって異なりますが、毎月の受給額が相応に増えることで治療費や生活費の不安が和らぐことになります。また、最大5年分を遡って受給することも可能です。

請求手続きは、必要書類を揃えて年金事務所や年金相談センターに提出します。自身が受給の対象かどうかは、医師やがん相談支援センター、市町村役場の窓口、年金事務所や年金相談センターなどで相談することができます。特に、喉頭全摘手術などの場合は初診から1年6カ月を待たずに受給申請が可能です。

 

厳しい審査を受けることもある

障がい年金の申請手続きは、書類審査だけで行われますが、結果の通知までに3〜4カ月かかり、その後の手続きにも50日間の時間が必要です。特にがんの場合は、「就労もできているのだから障がいの程度が軽いのではないか」という見方がされやすく、厳しい審査を受けることもあります。

このような状況で、社会保険労務士に相談することが良い選択肢です。申請したからといって必ずしも認められるわけではなく、手続きのやり直しや再審請求もできますが、社会保険労務士に依頼することでスムーズな手続きが期待できます。全国社会保険労務士会連合会のホームページや、がん診療連携拠点病院などでの相談も有益です。

 

がん診療連携拠点病院や患者会などの支援活動も役立つ

また、がん診療連携拠点病院や患者会などの支援活動も役立ちます。先輩の体験談や専門家のアドバイスを受けることで、治療と仕事の両立についての悩みが解消されることもあります。

障がい年金を受給しながら働くことで、無理せずに体調管理ができ、働き方を見直すことも可能です。がんと共に生きるためには、公的支援制度を活用することが重要です。障がい年金を含むさまざまな支援制度を適切に利用し、健康な生活を送るための支えとしてください。

障がい年金がもらえる病気について

障がい年金は、健康上の理由により働くことが難しくなった場合に支給される年金制度です。この障がい年金がもらえる病気には、さまざまな種類があります。以下に、主な障がい年金の受給対象となる病気について解説します。

 

  • がん(癌)

がんは、体内の細胞が異常増殖して腫瘍を形成する疾患です。患者の多くは治療のために仕事を休む必要があり、その場合に障がい年金の受給対象となります。がんの種類や進行度によって受給額が異なりますが、がんの診断が確定し、治療や手術が必要な場合には、障がい年金の受給が可能です。

 

  • 糖尿病

糖尿病は、血糖値の異常によって引き起こされる代謝異常の疾患です。糖尿病が進行すると、重大な合併症が発生する場合があり、それによって生活や仕事に支障が出る場合に障がい年金の対象となります。合併症の進行度や影響範囲に応じて、受給額が決定されます。

 

  • 精神疾患(うつ病、統合失調症など)

精神疾患は、心の状態に関する疾患であり、その症状が日常生活や労働活動に大きな制限を与える場合に障がい年金の対象となります。うつ病や統合失調症などの精神疾患は、症状の程度や治療の効果に応じて受給額が決定されます。

 

  • 脳血管障がい(脳梗塞、脳出血など)

脳血管障がいは、脳の血管に異常が生じることで脳に障がいが生じる疾患です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障がいが進行すると、身体機能や認知機能に障がいをきたし、その影響で生活や労働活動に支障が出る場合に障がい年金の対象となります。

 

これらの疾患は、障がい年金の受給対象としてよく知られていますが、その他にも多くの病気が障がい年金の対象となる場合があります。障がい年金を受給するためには、医師の診断書や病歴などの書類が必要です。また、手続きや審査には時間がかかることがありますが、適切なサポートを受けながら申請を行うことで、受給のチャンスを広げることができます。

 

障がい年金について:条件、手続き、受給のメリット

障がい年金は、健康上の理由により労働力を喪失したり、労働能力が減少した場合に支給される年金制度です。この制度は、生活の安定や医療費の負担軽減など、障がいを抱える人々の生活を支える重要な存在です。以下では、障がい年金について、その条件や手続き、受給のメリットについて解説します。

 

障がい年金の条件

障がい年金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

 

  • 健康状態の規定:障がいが労働力の喪失や減少を引き起こす程度であることが求められます。

 

  • 障がいの程度:厚生労働省や年金機構によって定められた基準に基づいて、障がいの程度が判断されます。

 

  • 医師の診断書:障がいの種類や程度、影響範囲などが記載された医師の診断書が必要です。

 

  • 保険料の納付:一定期間以上の年金保険料の納付が必要です。

 

  • 年齢条件:一般的に18歳以上であることが求められます。

 

障がい年金の手続き

障がい年金の申請手続きは、次のような流れで行われます。

 

  • 申請書の提出:障がい年金の申請書を年金事務所やインターネットで提出します。

 

  • 医師の診断書の提出:医師の診断書や検査結果などの医療関係の書類を提出します。

 

  • 審査:提出された書類をもとに、年金事務所で審査が行われます。

 

  • 受給決定:審査の結果、障がい年金の受給が決定されます。

 

障がい年金の受給のメリット

障がい年金の受給には、以下のようなメリットがあります。

 

  • 生活の安定:収入の補填により、生活の安定が図れます。

 

  • 医療費の負担軽減:障がいに関連する医療費の負担が軽減されます。

 

  • 労働への負担軽減:労働が困難な状況でも、生活を維持できるため、ストレスが軽減されます。

 

障がい年金は、障がいを抱える人々の支えとして重要な役割を果たしています。適切な手続きを行い、必要な支援を受けることで、より快適な生活を送ることができるでしょう。

まとめ

障がい年金は、健康上の理由で働けない人々の生活を支えます。条件を満たし手続きを進めると、生活の安定や医療費の負担軽減が期待されます。経済的な不安を和らげ、精神的な安定をもたらす重要な制度であり、社会の福祉を向上させる一翼を担っています。

 

参考

65歳未満でも受給できる「障がい年金」を利用して #東洋経済オンライン Toyokeizai 

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