2024.03.27

大人の発達障がい「遺伝するの?」「受診を迷っている」悩みを解消

発達障がいに関する問題は複雑で、仕事や対人関係でのトラブルに直面することがあります。しかし、『大人の発達障がい 働き方のコツがわかる本』では、専門医が具体的な解決策を提案しています。

この本では、仕事の時間管理やミスを防ぐ方法、効果的なコミュニケーションの方法など、実践的なアドバイスが豊富に紹介されています。これにより、発達障がいのある人々が仕事や対人関係での課題に取り組む際の支援が行き届くことが期待されます。

 

発達障がいの原因は未だ解明されていない

発達障がいの原因は未だ解明されていないものの、脳の機能にかたよりがあることが一因とされています。特に、脳の発達に関わる遺伝子の影響が指摘されています。

ただし、発達障がいの発症には遺伝的要素だけでなく、環境要因も影響を与える可能性があります。そのため、家族内での発達障がいの存在がなくても、個人が発症する可能性があることが理解されています。

 

育て方が原因ではないという認識も広まっている

また、育て方が原因ではないという認識も広まっています。発達障がいのある人々は、自分の特性を受け入れ、適切なサポートを受けることで、自己実現や社会参加を図ることができます。

そのためには、社会全体が理解と支援を提供することが必要です。発達障がいに対する偏見や誤解を取り除き、包括的な支援体制を整備することが求められています。

 

健常者とは異なる活動の結合パターン

発達障がいのある人々の脳の研究からは、健常者とは異なる活動の結合パターンが明らかになりつつあります。特に、自閉スペクトラム症とADHDの特性が同じ脳の部位に関連していることが示唆されています。しかし、これらの特性を明確に区別することは困難であり、脳画像研究においてはまだ議論が続いています。

これらの脳の研究が医療にどのように結びつくかについては、まだ実用段階には至っていません。診断法においては、光トポグラフィやAIによるMRIの解析などが研究されていますが、個人差が大きいため、実用化までには時間がかかると考えられています。

 

実用化までにはさらなる研究が必要

治療法においても、うつ病に対する磁気刺激療法のように、発達障がいに対する具体的な効果的な治療法はまだ確立されていません。オキシトシンを薬として用いる研究も進んでいますが、実用化までにはさらなる研究が必要です。

発達障がいは目に見える障がいではなく、検査数値に明確に現れることもありません。そのため、診断は難しく、医療者は問診や心理検査の結果を踏まえながら診断を行います。例えば、自閉スペクトラム症の診断基準を満たすためには、特定のコミュニケーションの困難だけでなく、こだわりや興味の偏りなどの特性も必要です。同様に、ADHDの診断には不注意や多動性・衝動性の特性が必要です。

 

発達障がいの診断

発達障がいの診断には、生来のものであるかどうかや、症状が子どものころから存在するか、問題が生じる場所などの要因も考慮されます。これらの情報を総合的に判断することで、適切な診断と支援が提供されることが期待されます。

症状の背後にある原因に注目することは、発達障がいの診断や支援において重要です。同じ症状が現れても、その背景には異なる理由が存在します。その違いを理解することで、より適切な対応が可能となります。

 

場にそぐわない発言をする場合

  • 自閉スペクトラム症

状況を把握する力が不足しており、適切な発言が難しい可能性があります。

 

  • ADHD

状況を理解していても衝動的に発言してしまうことがあります。

 

視線を合わせない症状

  • 自閉スペクトラム症

非言語コミュニケーションを理解する能力が不足している可能性があります。

 

  • ADHD

注意力散漫で視線が定まらないことが原因となることがあります。

 

忘れ物が多い症状

  • 自閉スペクトラム症

予測的に物事を考える能力が不足しているため、必要なものを持っていくことが難しい可能性があります。

 

  • ADHD

不注意が原因となって忘れ物が増えることがあります。

 

動き回る症状

  • 自閉スペクトラム症

状況に応じた行動が難しく、不安や落ち着きの欠如が動き回る原因となることがあります。

 

  • ADHD

衝動性や多動性が原因でじっとしていられないことがあります。

 

これらの違いを理解し、症状の背後にある原因に焦点を当てることで、より効果的な支援や介入が可能となります。

 

鑑別が難しい場合がある

発達障がいと精神疾患の間には、鑑別が難しい場合があります。特に、発達障がいと症状が類似している精神疾患が存在し、これらが併存することもあります。

双極性障がいは、気分の上下や気が散りやすい、軽はずみな行動などの症状が見られ、これらはADHDと類似しています。このため、双極性障がいとADHDを鑑別する際には、症状の特徴や経過などを慎重に考慮する必要があります。

また、強迫性障がいでは、手洗いなどの強迫的な行動が見られることがあり、これは自閉スペクトラム症のこだわりに似ているとされます。このため、これらの疾患を鑑別する際には、症状の内容や背景を詳細に把握することが重要です。

境界性パーソナリティ障がいでは、大切な人から見捨てられるのではないかという不安から自傷行為に及ぶことがあります。このような行動は、ADHDにおける衝動性に基づく自傷行為と類似しています。したがって、これらの疾患を鑑別する際には、症状の背景や動機を考慮することが重要です。

精神疾患と発達障がいの鑑別は、症状の類似性や併存する可能性を考慮しながら行われる必要があります。綿密な評価と適切な診断を行うことで、適切な治療や支援が提供されることが期待されます。

 

何らかの対策を考える必要がある

発達障がいに関する病院受診に迷う人も多くいますが、生きづらさを感じているならば何らかの対策を考える必要があります。まずは、『大人の発達障がい 働き方のコツがわかる本』に記載された工夫や考え方の修正を試してみることが一つの方法です。

例えば、睡眠不足でミスが増えている場合は、生活リズムや職場、家庭の環境の見直しを考えることが重要です。職場の環境を変えることも可能であり、上司に相談してみることで、働きやすい環境の整備が期待できます。発達障がいの診断がなくても、自分の苦手な点について相談することは全く違和感のないことです。

 

つらさが続く場合は医師や専門家の助言を受ける

また、専門病院でなくても受診することは可能です。精神科クリニックなどの医療機関でも、発達障がいに関する診療が行われています。実際、発達障がいと診断される受診者は全体の4割程度であり、残りの6割は別の精神疾患や診断名のつかない状態であることが報告されています。

心の症状には薬物療法が有効な場合もあります。自己の努力だけでは改善しない、つらさが続く場合は、一度受診を検討してみることが大切です。医師や専門家の助言を受けることで、より適切な支援や治療を受けることが可能となります。

自閉スペクトラム症とADHD

自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動性障がい(ADHD)は、両者とも神経発達症の一種ですが、それぞれ異なる特徴を持ちます。以下では、両者の主な違いについて説明します。

 

注意力と衝動性の特徴

  • ADHD

注意力の欠如や衝動性が主な特徴です。注意散漫で集中力を維持することが難しく、衝動的な行動が見られることがあります。また、多動性も頻繁に見られます。

 

  • ASD

注意力の欠如や衝動性は主な特徴ではありません。むしろ、繊細な注意力や特定の興味や活動に対する強い関心が見られることがあります。また、多動性も一般的には観察されません。

 

社会的相互作用とコミュニケーション

  • ADHD

社会的な関係やコミュニケーションに問題がある場合もありますが、それは主に注意力や衝動性の問題に関連しています。

 

  • ASD

社会的な相互作用やコミュニケーションにおける困難がASDの主な特徴です。典型的な症状には、他者との適切な目線の交換や感情の表現の困難、非言語コミュニケーションの理解の困難などが挙げられます。

 

興味や活動の範囲

  • ADHD

興味や活動の範囲は広く、一時的な興味が短期間で変化することがよくあります。

 

  • ASD

特定の興味や活動に強い関心を持ち、それに集中する傾向があります。また、ルーチンや繰り返しの活動に執着することがあります。

 

発達のパターン

  • ADHD

発達のパターンは一般的に均一で、知的能力や言語の発達に大きな変化が見られることはありません。

 

  • ASD

発達のパターンは個人によって大きく異なり、知的能力や言語の発達に幅広いバリエーションが見られます。

 

ADHDは注意力の欠如や衝動性が主な特徴であり、社会的相互作用やコミュニケーションにも影響を与えることがあります。一方、ASDは社会的相互作用やコミュニケーションの困難が主な特徴であり、特定の興味や活動に強い関心を持つことが特徴です。

 

双極性障がい、強迫性障がい、境界性パーソナリティ障がい

双極性障がい、強迫性障がい、および境界性パーソナリティ障がいは、精神疾患の一種であり、それぞれ異なる特徴を持っています。

 

  • 双極性障がい(躁うつ病)

特徴:双極性障がいは、気分の極端な変動が特徴的です。躁状態では興奮や多弁、無謀な行動が見られ、抑うつ状態では憂鬱や無気力感、自殺念慮などが現れます。躁状態と抑うつ状態が交互に現れることがあります。

 

治療:薬物療法や心理療法が一般的に用いられます。気分安定剤や抗うつ薬などの薬物が使用され、認知行動療法などの心理療法が行われることがあります。

 

  • 強迫性障がい

特徴:強迫性障がいは、強迫観念と強迫行動が中心的な症状です。強迫観念とは、不安や恐怖を引き起こす強い思い込みや考えであり、それに対して特定の行動や儀式を繰り返すことが特徴的です。

 

治療:薬物療法や認知行動療法が一般的に用いられます。抗不安薬や抗うつ薬などの薬物が処方され、認知行動療法では、強迫観念に対する認知の修正や儀式行動の減少を目指します。

 

  • 境界性パーソナリティ障がい

特徴:境界性パーソナリティ障がいは、情緒の不安定さ、自己イメージの不安定さ、対人関係の不安定さが主な特徴です。強い恐れや怒り、自己傷害や自殺念慮などが見られることがあります。

 

治療:境界性パーソナリティ障がいの治療には、心理療法が中心的な役割を果たします。認知行動療法、ダイアレクティカル・ビヘイビアル・セラピー(DBT)、スキーマ療法などが一般的に用いられます。

まとめ

双極性障がいは気分変動が、強迫性障がいは強迫観念・行動が、境界性パーソナリティ障がいは不安定な情緒や自己イメージが特徴です。治療には薬物療法や心理療法が用いられます。

自己の努力だけでは問題が解消しない場合は、専門家に話を聞き一人で抱え込まないようにしましょう。

 

参考

大人の発達障がい「発達障がいは遺伝?」「受診するかどうかを迷っている」の悩みを解決!(現代ビジネス)Yahooニュース

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