2024.03.04

「障がいがあっても高校で学びたい」高校進学を目指す脳性まひのある男性

高校進学を目指す脳性まひの男性、芹澤怜誠さん(16歳)は、富士市に住んでいます。彼は知的障がいと身体障がいを抱えていますが、「障がいに関係なく学びたい」という意志を持っています。

 

感情などを選択肢から選ぶ方法で会話

芹澤さんはコミュニケーションが難しいため、感情などを選択肢から選ぶ方法で会話しています。彼の趣味は俳句で、母親や介助者が提示する季語などの選択肢から身の回りのことを詠んでいます。

芹澤さんの母親、恭子さん(44歳)によれば、彼は1歳の時に脳性まひと診断され、「一生寝たきり」とまで言われたとのこと。

 

勉強したがテストの点数は十分ではなかった

幼少期から受け入れの姿勢があった地元の幼稚園に通い、小中学校の9年間も普通学級で過ごした芹澤さんは、昨年の春、特別支援学校ではなく普通高校への進学を希望しました。

地元の公立高校の受験を経て、介助者がサポートし、自作のカードを使って作文や面接に臨みましたが、努力にもかかわらずテストの点数は十分ではありませんでした。結果的に、1次・2次募集ともに合格には至りませんでした。

 

都道府県によって異なる方針

芹澤さんは結果を知った後、今年の入学を目指して浪人することになりました。恭子さんは、情報収集のために県内外のさまざまな場所を訪れました。

その過程で、障がいのある子どもが普通高校に進学することを支援する全国の団体と連携し、他の都道府県の状況も知ることができました。

恭子さんが不思議に感じたのは、定員に余裕がある場合に不合格者を出すかどうかの方針が、都道府県ごとに大きく異なることです。知的障がいがあり、試験の問題を解くことが難しい人でも、高校に入学できる場所があることに気付いたのです。

 

静岡県では合計70人が不合格

その1つが東京都です。都立の商業高校に通う1年生、松山正宗さんはダウン症で知的障がいがあります。授業中は支援員が付き添い、教員が松山さんの理解度に応じて課題を出したり、拡大したプリントを使用したりしています。彼が特に楽しみにしているのは、休み時間に同級生と交わす普通の会話です。

昨年の入試では、静岡県では芹澤さんを含めて合計70人が、定員に余裕があるにも関わらず不合格となりました。

 

学習の基本的な条件を満たしている人

静岡県の教育長に直接話を聞いたところ、高等学校においては、その学校が求める学習の基本的な条件を満たしている人を受け入れるという考え方があり、能力と適性を判断することが重要だと述べました。県内には多様な学びの場が用意されており、普通高校で学ぶ機会が得られなかった場合でも、特別支援学校など他の選択肢があるとの見解を示し、現時点で制度の変更を検討していないと述べました。

 

同じ教室で学ぶことの重要性

静岡県の政策を変えたいという芹澤さんたちは、障がいの有無にかかわらず同じ教室で学ぶことの重要性を訴える活動を展開しています。

この日は、小中学校時代の同級生も駆けつけ、過去の学校生活を振り返りました。彼らは地道な活動を続け、活動内容をまとめた新聞を作成して配布しています。

脳性まひとは?

脳性まひは、出生時や幼児期に脳に損傷が生じることによって引き起こされる障がいの一種です。この状態は、筋肉の制御や運動能力に影響を与え、しばしば身体の一部、または全身の麻痺や筋肉の緊張、姿勢の不安定さなどを引き起こします。

脳性まひは個々の症状や重症度によって異なり、一般的に知的障がいを伴うこともありますが、必ずしもそうとは限りません。

 

その要因は多岐にわたる

このような状態は、脳に損傷が生じることで発症しますが、その要因は多岐にわたります。妊娠中の母体への感染症や薬物の摂取、出産時の窒息、早産、出生時の事故、乳幼児期の感染症や頭部外傷などがその主な要因として挙げられます。

このような状態は、早期の発見と適切な治療が重要です。治療やリハビリテーションは、個々の症状や障がいの程度に応じて行われ、患者の生活の質を向上させることが目指されます。

そのため、脳性まひを持つ人々やその家族は、専門の医療機関や支援団体との連携が欠かせません。啓発活動も重要であり、社会全体が障がいを持つ個人を理解し、支援することで、彼らの生活の質と社会的な包摂を促進することができます。

 

出産時の合併症も脳性まひのリスク要因

脳性まひは、様々な要因によって引き起こされますが、出生前、出生時、出生後のいずれかの段階での脳の損傷が主な原因です。

妊娠中の母体への感染症や薬物の摂取、出産時の窒息、早産、出生時の事故、乳幼児期の感染症や頭部外傷などがその要因として挙げられます。

出生前の段階での脳の発達に影響を与えることがあるので、妊娠中の母親の健康管理や妊娠期間中のリスク管理が重要です。

また、出生時のトラウマや早産などの出産時の合併症も脳性まひのリスク要因となります。乳幼児期に起こる感染症や事故も、脳の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、予防策や安全対策の徹底が必要です。これらの要因によって脳に損傷が生じることで、神経細胞の通信が妨げられ、運動機能や感覚機能に障がいが生じる可能性が高まります。

 

治療や管理

脳性まひの治療や管理には、さまざまなアプローチが取られます。その中には、早期からのリハビリテーションや理学療法、作業療法が含まれます。

これらのプログラムは、患者の個々の症状や障がいの程度に応じてカスタマイズされます。例えば、筋肉の強化や柔軟性の向上を目指すエクササイズ、日常生活の動作や自立を支援する技術の訓練などが行われます。

また、薬物療法や手術が必要な場合もあります。薬物療法では、痙攣や筋肉の緊張を緩和するための薬が処方されることがあります。

手術は、特定の症状や合併症を緩和するために行われる場合があります。治療法は、患者の状態に応じて個別化され、専門の医療チームによって継続的に評価されます。

早期の介入や適切なケアは、患者の生活の質を改善するのに役立ちます。特に幼い年齢からリハビリテーションを受けることが重要であり、脳の可塑性を最大限に活用して機能の向上を図ることが目指されます。家族や介護者も、患者の治療やケアに積極的に参加し、継続的なサポートを提供することが重要です。

 

身体的な困難や社会的な偏見

脳性まひを持つ人々やその家族は、身体的な困難や社会的な偏見に直面することがあります。障がいによって、日常生活のさまざまな側面において課題が生じることがあり、そのためには適切な支援や理解が必要です。例えば、身体的な移動や日常の活動に支援が必要な場合もありますし、コミュニケーションや学習においても特別なサポートが必要なことがあります。さらに、就学や職場での社会的な関係や機会においても、偏見や差別に直面することがあります。

 

適切な支援や啓発活動

適切な支援や啓発活動によって、障がいを持つ個人が社会において完全な参加を果たすことができるよう促進されています。これは、社会全体が障がいを持つ人々を理解し、受け入れ、サポートすることで実現されます。特に教育や雇用の分野において、適切な支援やアクセシビリティの確保が重要です。また、一般の人々や専門家、政策立案者が、障がい者の権利を尊重し、包括的な取り組みを推進することも必要です。

教育と支援やサービスの充実

脳性まひに関する研究や啓発活動は、この障がいを持つ人々の生活の質を向上させ、社会的な包摂を促進するために重要です。これらの活動は、一般の人々に対する情報提供や教育だけでなく、障がい者自身やその家族に対する支援やサービスの充実も含まれます。また、障がい者の権利やニーズを理解し、彼らが社会の中で自己実現し、持続可能な生活を送ることができるようにするために、政策や法制度の見直しも必要です。

 

学校における脳性まひや身体障がい者の受け入れの重要性

障がいを持つ人々が学校に行くことは、彼らの生活の質を向上させ、社会的な包摂を促進するために極めて重要です。特に脳性まひや身体障がいを持つ人々にとって、学校での教育は、自己実現や社会参加の重要な手段となります。

 

知識やスキルを習得する場

まず第一に、学校は知識やスキルを習得する場であり、障がい者も同様に教育を受ける権利があります。障がいを持つ人々が学校に通うことで、彼らの知的、感情的、社会的な発達が促進され、自己肯定感や自己効力感を高めることができます。また、教育を受けることで、将来の職業や社会的な役割に備える準備ができます。

 

交流でコミュニケーション能力が育つ

さらに、学校は社会化の場でもあります。障がいを持つ人々が学校に通うことで、他者との交流やコミュニケーション能力が向上し、社会的なつながりを築くことができます。これは、将来の職場やコミュニティでの関係構築において重要な役割を果たします。

 

支援やアクセシビリティを確保する必要

学校は包括的な教育を提供する場でもあります。脳性まひや身体障がいを持つ人々が学校に通うことで、彼らの特性やニーズに合わせた支援が提供されることが期待されます。適切な支援やアクセシビリティが確保された学校環境は、障がいを持つ人々が学習し、成長するための安全な場を提供します。

 

多様性を受け入れる姿勢が育まれる

学校における脳性まひや身体障がい者の受け入れは、社会全体にとっても意義深いものです。彼らが学校で活躍し、成功する姿を見ることで、他の人々も彼らを尊重し、多様性を受け入れる姿勢が育まれます。これによって、包括的な社会が形成され、全ての人々が自己実現を果たし、幸せな生活を送ることができるようになります。

 

まとめ

脳性まひや身体障がい者が学校に通うことは、彼ら自身の成長や発展だけでなく、社会全体の包括性や多様性を促進する上で極めて重要な要素です。そのため、彼らの受け入れと支援が、教育システムや社会の中で十分に確保されることが求められます。

 

参考

“障がいに関係なく学びたい” 高校進学目指す脳性まひの男性 | NHK

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