2024.04.10

認知症か?単なる物忘れか?とある「質問」で分かる方法とは?

物忘れが増えると、認知症の兆候と思われがちですが、藤田医科大学の今井伸二郎さんによれば、単なる物忘れは年齢とともに増えるもので、必ずしも認知症と関連しているわけではないそうです。

物忘れは単なる病気によるものだけでなく、一般的なものであるとも述べられています。認知症との違いは、物忘れではなく、脳の神経細胞が失われてしまうことであり、その結果、出来事全体の記憶が消失してしまうという点です。

 

神経は知的活動に関与しているが役割はまだ解明されていない

脳と神経は身体のあらゆる機能をコントロールし、維持するために極めて重要です。運動だけでなく、感情や理性などの精神活動にも大きな役割を果たしています。しかし、老化により脳や神経の機能が衰え、認知症などの疾患が発症することがあります。

神経は知的活動に深く関与していますが、具体的な役割はまだ解明されていません。そのため、認知症やうつ病などの神経疾患に対する有効な医薬品が限られています。評価方法が少なく、特に細胞を用いた評価系が不足しているため、製薬会社も神経疾患に対する新薬の開発に慎重な姿勢をとっています。

神経疾患の評価には動物モデル試験が用いられます。行動薬理試験では、動物の記憶や学習能力を追跡し、その変化を評価します。

しかし、動物モデル試験は手間と時間がかかり、評価には経験が必要です。そのため、食品成分による神経疾患の予防効果を評価することは難しいとされています。それでも、一部の研究者は食品成分による神経疾患の予防に期待し、その可能性を探求しています。

 

脳神経疾患についての概要

脳神経疾患についての概要を見ていきましょう。神経系は、神経細胞(ニューロン)が連続して形成される神経を通じて、外部情報の伝達と処理を行う動物の器官の総称です。

脳神経は、脊椎動物の神経系の器官であり、脳から直接伸びる末梢神経の総称です。一方で、脊髄から伸びる末梢神経は脊髄神経と呼ばれます。哺乳類の場合、脳神経は左右12対あり、それぞれに固有の名称が与えられています。これらの神経系に異常が生じると、精神活動に影響を及ぼす脳・神経疾患が発症します。

 

機能性疾患と脳血管障がい疾患がある

脳・神経疾患には、機能性疾患と脳血管障がい疾患があります。機能性疾患には認知症、パーキンソン病(本書では認知症に含まれます)、うつ病、てんかんなどがあります。脳血管障がい疾患には脳梗塞、頸部けいぶ頸動脈狭窄きょうさく症、くも膜下出血、もやもや病などが挙げられます。

認知症の代表的な疾患であるアルツハイマー型認知症は、男性よりも女性に多く見られます。脳血管障がい性認知症と比べるとアルツハイマー型認知症の患者数は増加しており、発症年齢によって早期型と晩期型に分かれます。

早期型には若年期認知症(18歳~39歳)と初老期認知症(40歳~64歳)があり、特に家族性アルツハイマー型認知症は遺伝性の疾患であります。

 

単なる物忘れは認知症の初期症状ではない

テレビコマーシャルの一場面で、初老の夫人が買い物をしてお金を支払った後に商品を受け取らずに帰ろうとする場面が気になりました。ナレーションが「うっかり」と入ることで、単なる物忘れが認知症に進行してしまうかのようなイメージが与えられますが、実際には単なる物忘れは認知症の初期症状ではありません。

単なる物忘れは年齢とともに増える傾向がありますが、その多さが認知症に移行しやすいという科学的なデータはありません。単なる物忘れは脳の器質的な異常から生じる現象ではないので、一定の年齢に達した人々が心配しすぎる必要はありません。代わりに、物忘れを防ぐための対策を立てることが重要です。メモを取ったり、写真を撮ったりして忘れないようにすることが有効です。

ただし、一般の人々は病的な物忘れと普通の物忘れを区別するのは難しいかもしれません。日常生活に支障をきたすような場合や、進行が速い場合は、医師に相談して認知症などの病的な物忘れを疑う必要があります。それによって、適切な対処法を見つけることができます。

 

認知症と単なる物忘れを判別するためのテクニック

認知症と単なる物忘れを判別するためのテクニックを紹介します。まず、認知症による記憶障がいは単なる物忘れとは異なり、体験全体の記憶を喪失する傾向があります。また、認知症の場合、記憶障がいに対する自覚がないことが特徴です。

テクニックとして、「最近のニュースで大きな出来事を教えてください」と尋ねる方法があります。単なる物忘れの場合、何らかの回答があるはずです。しかし、認知症の場合は、「最近はニュースを見ない」といった取り繕った話が多いとされています。

以下は認知症による特徴の一部です。これらの項目に多く当てはまる場合は、医療機関での検査を受けることが重要です。

 

  • やる気がなく、だらしなくなった
  • ささいなことで怒りっぽくなった
  • 同じことを何度も聞いたり話したりする
  • テレビを見ても内容が理解できない
  • 約束をすっぽかす
  • 近所でも迷子になることがある
  • 趣味や日課に興味を示さなくなった
  • 今日が何月何日か分からない
  • 料理、計算、運転などのミスが目立つ
  • ついさっき電話で話した相手の名前が分からない
  • 置き忘れや片付けたことを忘れ、常に探し物をしている
  • 財布を盗まれたなどと人を疑うことがある

 

これらの特徴に注意しながら、認知症を疑う場合は医療機関での検査を受けるようにしてください。

 

コンピューターでのメモリーの動作に似ている

記憶は脳内で複雑なプロセスを経て形成されます。神経細胞が情報を処理し、その情報をネットワーク上に保持することで、記憶が作られます。このプロセスは、コンピューターでのメモリーの動作に似ています。コンピューターのメモリーチップがプラスとマイナスの信号を二進法で記録し、それを言葉やイメージなどの形に変換するのと同様、脳内でも情報が暗号化され、再構成されるのです。

物忘れは、脳の一部の神経細胞が失われることによって起こります。このような場合、特定の出来事や情報を思い出せなくなりますが、他の記憶は保持されます。一方、認知症では、脳の多くの細胞が損失するため、全体的な記憶の喪失が生じます。これにより、日常生活に必要な情報や体験を思い出せなくなります。

 

物忘れと認知症では症状が違う

物忘れは通常、一時的な状態であり、特定の出来事や情報を忘れることがありますが、重要な記憶は保持されます。しかし、認知症では、記憶の喪失が進行し、日常生活に支障をきたすほどの影響が現れることがあります。

また、アルコールの過剰摂取によっても記憶が喪失することがあります。アルコールは脳の神経細胞に損傷を与え、記憶の形成や保持を阻害するため、記憶が失われることがあります。このような場合、一時的な記憶の喪失が起こることがありますが、神経細胞が死滅することで永続的な影響が生じることもあります。

記憶障がいについて

人間の脳は、数千億もの神経細胞で構成された複雑なネットワークです。この神経回路は、情報の受け取り、処理、保存、そして取り出しを行います。情報は神経細胞間の電気信号と化学信号の組み合わせで表現され、神経細胞同士が相互作用して、記憶の形成と保持を担っています。

しかし、この複雑な記憶システムには時に障がいが生じます。これによって、個々の日常生活に支障をきたすだけでなく、人々の生活の質や日常機能にも大きな影響を与える可能性があります。例えば、記憶障がいに苦しむ人々は、仕事や学業、日常のタスクの遂行に困難を抱え、社会的な関係や心理的な健康にも影響を及ぼすことがあります。

 

周囲の人々にも負担がかかることがある

記憶障がいの影響は、個人だけでなく家族や介護者にも及びます。介護負担の増加や家族間のコミュニケーションの困難化など、周囲の人々にも負担がかかることがあります。また、経済的な負担や社会的孤立など、さまざまな問題が生じる可能性があります。

したがって、記憶障がいの予防や管理は重要な課題です。早期の診断と適切な治療、生活習慣の改善、社会的サポートの提供などが、記憶障がいの影響を軽減するために必要です。また、認知症などの進行性の記憶障がいに対する研究と治療法の開発も急務となっています。

 

  • 失念症(物忘れ)

失念症(物忘れ)は、日常生活で最もよく見られる記憶障がいの一つです。特定の出来事や情報を忘れることが特徴であり、これは通常、脳の一部の神経細胞が失われることによって引き起こされます。

例えば、家の鍵の場所や友人の名前、予定の日付など、日常的に必要な情報を思い出せなくなることがあります。失念症は、加齢やストレスなどの要因によっても引き起こされることがありますが、通常は一時的なものであり、重大な影響を与えることはありません。

 

  • 認知症

認知症は、脳の機能が大きく損なわれ、日常生活に支障をきたす状態です。認知症は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管性認知症などの病気の一種であり、記憶障がいの他にも判断力や言語能力、社会的行動にも影響を与えます。

認知症の患者は、自分の身の回りのことを忘れたり、時間や場所の感覚を失ったり、人々の名前や顔を認識できなくなることがあります。認知症は、進行性の疾患であり、徐々に症状が悪化し、日常生活における機能の喪失につながります。

 

  • 軽度認知障がい(MCI)

軽度認知障がい(MCI)は、認知症と一般の忘却症の中間に位置し、個々の日常生活にはまだ大きな支障がないが、記憶や認知機能の一部に問題がある状態です。MCIは、将来的に認知症に進行するリスクが高いとされています。

 

  • アルコール関連記憶障がい

アルコール関連記憶障がいは、長期間のアルコールの過剰摂取によって引き起こされる記憶障がいです。アルコールは神経系に直接影響を与え、脳の神経細胞に損傷を与えることがあります。

その結果、一時的なものから永続的なものまでさまざまな症状が生じます。特に、過度な飲酒は、記憶の形成や保持を妨げ、一時的な記憶喪失や永続的な脳損傷を引き起こす可能性があります。

 

記憶障がいの原因は多岐にわたります。脳の損傷、神経変性、血管障がい、化学物質の影響、ストレス、睡眠障がいなどが挙げられます。また、加齢によっても記憶機能が低下し、物忘れが増えることがあります。

 

記憶障がいの診断とトレーニング

記憶障がいの診断は、専門家による詳細な評価と検査が必要です。治療法は、原因によって異なりますが、早期の診断と適切なケアが重要です。認知症などの進行性の記憶障がいには、薬物療法や認知行動療法などの治療法がありますが、失念症や一時的な記憶障がいには、生活習慣の改善や認知リハビリテーションが効果的な場合があります。

記憶障がいは日常生活に深刻な影響を与える可能性があるため、早期の対処と適切なケアが重要です。予防のためには、健康な生活習慣の維持、ストレス管理、脳トレーニングなどが役立ちます。

まとめ

記憶障がいは、個々の日常生活や社会的関係に大きな影響を与える可能性があります。しかし、早期の診断や適切な治療、健康な生活習慣の維持など、適切な対処法を取ることで、その影響を軽減することができます。

また、記憶障がいに苦しむ人々とその家族や介護者に対する支援や理解も不可欠です。これによって、記憶障がいの人々がより良い生活を送り、社会的なつながりを維持できるようになることを願っています。

 

参考

質問「最近のニュースで大きな出来事は?」の答えでわかる…単なる物忘れか重大な認知症か見分ける科学的方法 物忘れが多い人が認知症に移行しやすいという学術的データはない #プレジデントオンライン

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