2024.03.11

2024年4月障がい者の雇用率引き上げ:どのような対応が必要?無理な雇用で障がい者に負担?

2024年4月から「障がい者雇用促進法」改正

2024年4月からの「障がい者雇用促進法」の改正は、日本の企業にとって極めて重要な変更をもたらします。

この法改正には、法定雇用率の引き上げ、対象企業の拡大、雇用率算定対象となる障がい者の範囲の拡大、障がい者雇用報奨金・助成金の見直しなどが含まれています。

これらの変更は、企業の雇用政策や社会責任活動に大きな影響を与えるものとなります。

 

法定雇用率の引き上げ

まず、最も注目すべき改正点は法定雇用率の引き上げです。現行の法定雇用率が2.3%から、2024年4月には2.5%に引き上げられ、2026年7月には更に2.7%へと段階的に引き上げられます。この引き上げにより、企業は障がい者を雇用する割合をより高く維持することになります。

また、雇用を義務付けられる対象企業の基準も変更され、従業員数が43.5人以上から40人以上に引き下げられます。これにより、より多くの企業が障がい者の雇用に責任を負うことになります。

 

障がい者の範囲の拡大も含まれている

この法改正には、雇用率算定対象となる障がい者の範囲の拡大も含まれています。これにより、より多くの障がい者が雇用の対象となります。

さらに、障がい者雇用報奨金や助成金の見直しも行われ、企業が障がい者を雇用する際の負担を軽減する措置が取られます。

 

対応するための具体的な対策を講じる必要

このような法改正により、障がい者雇用の実務に関わる重要な事項が明確化され、企業はこれに対応するための具体的な対策を講じる必要があります。

具体的には、障がい者雇用の促進策を強化し、雇用環境を整備することが求められます。これには、障がい者のニーズに合った職場環境の整備や、適切なサポート体制の構築が含まれます。

また、法定雇用率の引き上げに対応するために、新たな雇用プログラムや支援施策を導入することが不可欠です。

 

段階的な引き上げに備える必要

さらに、法定雇用率をクリアしている企業でも、今後の段階的な引き上げに備えて、積極的な対策を講じる必要があります。

これには、障がい者雇用の促進や職場環境の改善などが含まれます。企業は、障がい者の採用や定着を支援するために、さまざまな取り組みを検討することが重要です。

 

障がい者雇用の促進に向けた重要な一歩

2024年4月からの「障がい者雇用促進法」の改正は、企業にとって大きな課題となりますが、障がい者雇用の促進に向けた重要な一歩でもあります。

企業は、これらの変更に迅速かつ適切に対応することで、社会的責任を果たし、持続可能な雇用環境の構築に貢献することが期待されます。

 

ハローワークに報告する義務

障がい者の雇用義務対象企業は、毎年6月1日に障がい者の雇用状況を所管のハローワークに報告する義務があります。この報告で法定雇用率が未達成の場合、行政は次のような対応を行います。

 

不足人数1人当たり月額50,000円の障がい者雇用納付金を徴収

この納付金は、企業が法定雇用率を達成するための支援策として導入されています。また、ハローワークから行政指導が行われます。この指導は、障がい者雇用納付金を収めているかどうかに関わらず、未達成の企業に対して行われます。

 

2年間で障がい者を雇用するための計画の提出が求められる

指導を受けている企業でも、厚生労働省が定める基準を満たせない場合、ハローワークより2年間で障がい者を雇用するための計画の提出が求められることがあります。これは、障がい者の雇用を促進するための支援措置の一環です。

具体的には、以下のような場合に計画の提出が求められます。

  • 実雇用率が全国平均未満でかつ5人以上不足している場合
  • 10人以上不足している場合
  • 法定雇用率3~4名で障がい者を全く雇用していない場合

また、計画の提出後は、計画の進捗確認が行われます。計画1年目の12月に進捗確認が行われ、実施状況が芳しくない企業には、計画の適正実施を勧告する場合があります。

最終的に、計画に基づいた雇用状況の改善が見られない場合、企業名の公表を前提とした特別指導が行われます。

そして、最も大きなリスクとして、企業名の公表が行われる可能性があります。これは、企業の社会的信用や評判に大きな影響を与える可能性があります。

これまでの改正と比べて大幅な引き上げ

障がい者の雇用促進に向けた法定雇用率の引き上げは、これまでの改正と比べて大幅なものであり、国としての障がい者雇用への取り組みが強化されていることが明らかです。これにより、企業には今後ますます高い法定雇用率の達成が求められることが予想されます。

さらに、2026年以降も法定雇用率の引き上げが行われる可能性があり、障がい者雇用における企業の社会的責任が拡大することが期待されます。

 

  • 戦略的かつ継続的な障がい者雇用に向けた取り組み

今回の改正に対する対応は一時的なものではなく、戦略的かつ継続的な障がい者雇用に向けた取り組みが求められます。そのためには、以下の3つのポイントに焦点を当てる必要があります。

 

  • 中期的な人員計画に障がい者雇用を組み込む

企業は、今後の3〜5年間の人員需給を見据えて、障がい者の採用計画を立てる必要があります。従業員の予測人数に基づき、必要な障がい者の雇用人数を算定し、計画的に採用活動や環境整備を行うことが重要です。

 

  • 短時間労働の障がい者の雇用を検討する

改正により、短時間労働の障がい者も雇用率の算定対象となります。企業は、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の障がい者を雇用し、柔軟な働き方を提供することで、雇用の範囲を拡大することができます。特に、短時間しか就業できない障がい者を採用することで、雇用の多様性を高めることができます。

 

支援機関を積極的に活用し、障がい者の雇用を支援する体制を構築

障がい者は、就職や職場定着に関するさまざまな支援を必要としています。企業は、支援機関と連携して、障がい者の採用から定着までのプロセスをサポートすることが重要です。支援機関のアドバイスや指導を受けながら、障がい者の雇用を成功させるための具体的な施策を進めることが重要です。

 

さまざまな支援機関

障がい者の雇用促進において、ハローワーク以外にもさまざまな支援機関が存在します。これらの支援機関は、障がい者が就職や職場定着を支援するためのプログラムやサービスを提供しています。以下に、その一部を紹介します。

 

  • 障がい者就業・生活支援センター

このセンターは、障がい者の職場定着や日常生活に関する様々な支援を行っています。例えば、職場での適応支援や生活習慣のサポート、金銭管理など、障がい者が社会で自立した生活を送るための支援を提供しています。

 

  • 地域障がい者職業センター

このセンターは、雇用企業への体系的な支援を行っています。具体的には、職務の創出や受け入れに向けた社内研修の実施、雇い入れ計画の策定、雇用管理の助言などを提供しています。企業が障がい者を雇用する際の支援体制を構築するための支援を行っています。

 

  • 就労移行支援事業所

この事業所は、障がい者の就職に向けて様々な訓練や支援を提供しています。具体的には、職場実習の実施や就職後の定着支援を行うことで、障がい者が就労を実現し、社会での役割を果たすための支援を行っています。

 

これらの支援機関は、障がい者の雇用を促進するための重要な役割を果たしています。企業が障がい者を雇用する際には、これらの支援機関との連携を活用することで、より効果的な採用や定着支援が行えるでしょう。

 

障がい者雇用率、4月引き上げ 無理な採用が招く危険とは

2024年4月からの障がい者雇用率の引き上げにより、企業は新たな課題に直面しています。その一つが、無理な採用が招く障がい者への負担です。

障がい者の雇用率を向上させることは、社会的責任としても重要ですが、それを実現するためには適切なサポートや環境が整っていることが必須です。否応なく行われる採用ではなく、障がい者が十分に働ける環境が整っていることが重要です。

そのためには、企業が適切な支援や教育プログラムを提供し、職場環境を適応的に整える必要があります。

 

障がい者求人の不足

障がい者専用求人の不足も深刻な問題です。障がい者のスキルや能力を最大限に活かす職場を提供することは、障がい者自身にとっても、社会にとっても有益です。

しかし、そのような求人はまだまだ少なく、障がい者が自らの能力を発揮できる機会が限られています。求人情報の提供や、企業と障がい者のマッチングを促進する仕組みの整備が必要です。

 

適切なサポート不足

無理な採用は、企業にとって大きなリスクを伴います。例えば、障がい者に対する適切なサポートが不足している場合、業務の効率性が低下する可能性があります。

また、従業員間のコミュニケーションや協力がうまくいかない場合、職場の雰囲気が悪化し、結果として従業員の離職率が上昇する可能性もあります。そのためには、事前の準備や計画が欠かせません。

適切なトレーニングやアセスメントを通じて、障がい者の能力やニーズを把握し、それに基づいた支援プランを策定することが重要です。

 

障がい者雇用で重要なこと

適切なサポート体制を整え、障がい者が円滑に業務に取り組める環境を整えることが重要です。これには、障がい者向けのトレーニングプログラムやアセスメント、適切な職場環境の整備が含まれます。

また、障がい者自身の声に耳を傾け、彼らのニーズや能力を理解することも欠かせません。二つ目は、障がい者とのコミュニケーションを重視することです。障がい者は、自身の能力やニーズを正しく理解してもらうことで、より満足度の高い働き方ができます。

そのためには、オープンなコミュニケーションを促進し、障がい者の意見や要望を積極的に取り入れることが重要です。

 

持続可能な雇用関係

最後に、採用人数を増やすことよりも大切なのは、質の高い雇用を実現するための取り組みです。障がい者雇用においては、単に人数を増やすだけではなく、適切なサポートや環境の提供が不可欠です。

障がい者が働きやすい環境を整えることで、企業の生産性や従業員の満足度が向上し、持続可能な雇用関係が築かれます。

そのためには、採用だけでなく、その後のサポートやフォローアップも重要な要素として考慮されるべきです。

まとめ

ポジティブな思考で障がい者雇用に取り組むことは、企業にとっても社会にとってもプラスの効果をもたらすと考えられます。企業は法的義務だけでなく、社会的責任やビジネスチャンスとして障がい者雇用に積極的に取り組むことが重要です。

 

参考

2024年4月障がい者の法定雇用率引き上げ、その対応とは?クリエアナブキ

障がい者雇用率、4月引き上げ 無理な採用が招く危険とは:働き方の見取り図(1/4 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン 

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