2024.03.25

刺激が苦手な「HSC」発達障がいとどう違う?子どもたちへの接し方とは?

「HSC(Highly Sensitive Child)」とは、感受性が極めて高く、日常の些細な刺激にも敏感に反応する子どもたちのことです。

彼らは、強い光や音、においなどの刺激に対して過度に反応し、これが日常生活での困難を引き起こすことがあります。しかし、彼らの特性は発達障がいや病気とは異なります。そこで、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生に、HSCとその違いについて尋ねました。

 

「とても感受性が強い子ども」という意味

「HSC」とは、「Highly Sensitive Child」の頭文字をとったもので、「とても感受性が強い子ども」という意味です。この言葉は、近年メディアや書籍を通じて広く知られるようになりましたが、一部では発達障がいと混同されがちです。

そこで、HSCと発達障がいの違いについて、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生にお聞きしました。

 

生まれながらに持っている先天的な特徴

現在わかっていることは、HSCが病気や発達障がいではなく、その人が生まれ持った「気質」であるということです。

気質とは、後天的な性格とは異なり、生まれながらに持っている先天的な特徴です。性格は環境や経験によって変化する可能性がありますが、気質は比較的変えることが難しいとされています。

 

HSCは感受性、発達障がいは脳

HSCは、感覚過敏の特性があります。彼らが日常生活で経験する刺激に過敏に反応し、これが彼らの生活に影響を与えることがあります。

一方で、発達障がいは脳の機能に問題があり、物事の処理に時間がかかる症状です。つまり、HSCは感受性が高すぎるために刺激に疲れるのに対し、発達障がいは脳の処理に問題があるために困難を抱えます。

 

彼らが適切なサポートを受けることが重要

HSCは、環境感受性や感覚処理感受性が高い子どものことであり、同じ環境下でも刺激を受ける度合いが異なります。そのため、彼らが適切なサポートを受けることが重要です。

また、周囲の理解と支援も必要です。HSCが生活で直面する困難を理解し、彼らが安心して生活できる環境を提供することが重要です。

 

学校では気の休まる間がない子どもたち

HSCの特徴には、さまざまなことが挙げられます。彼らは基本的に人混みが苦手であり、特に学校のような場所では緊張が高まります。しかし、彼らは知的能力に問題がなく、多動性もないため、個別支援学級の対象とはなりません。

教室では、他の子どもたちが叱られている場面などに遭遇すると、その怒りや緊張感に敏感に反応し、自分が叱られているかのようなダメージを感じることがあります。

また、避難訓練のサイレンや、チクチクした素材の衣類など、彼らが苦手とする刺激が多く存在します。

 

「いじめられた」と思ってしまうことも

友達との交流は楽しいものですが、彼らは人の言葉や表情を敏感に感知するため、その場面で疲れてしまうことがよくあります。さらに、彼らは考えを巡らせ過ぎて「いじめられた」と思ってしまうこともあります。また、算数の小テストで誤答をした際には、自信を喪失してしまうことがあります。HSCの子どもたちは、失敗や自身の評価に対して過剰にプレッシャーを感じ、常に自己評価に苦しむ傾向があります。そのため、学校は彼らにとって常にプレッシャーと戦う場所となりがちです。

 

困難を感じたときに「SOS」を出せるような環境を整える

HSCの子どもが少しでもラクに過ごせるようにするために、まわりができることはあります。彼らにとって安心できる環境を整えることが大切です。

家庭や学校が安心できる場所であること、刺激が過多でないかをチェックし、必要に応じて調整することが重要です。また、彼らが困難を感じたときに「SOS」を出せるような環境を整えることも役立ちます。

 

事前に情報を提供し理解させること

HSCの子どもが安心できるようにするためには、彼らに事前に情報を提供し、理解させることが大切です。例えば、学校に関しては、「知らないことを勉強するのは当たり前だし、失敗しても大丈夫だ」といったメッセージを伝えることが重要です。

彼らが自分の状況を理解し、対処できるようにするためには、常にサポートを提供することが重要です。

また、彼らが日常生活で感じる刺激に対処するために、親や教育者は彼らの感受性やニーズを理解し、適切な支援を提供することが重要です。彼らの苦手な刺激を最小限に抑え、安心して生活できる環境を整えることが、彼らの心の健康をサポートする上で重要です。

 

感じやすく傷つきやすい傾向

HSCの子どもは常に「ちゃんとやろう」という気持ちを持っています。そのため、「がんばって」といった言葉かけは逆にプレッシャーに感じることがあります。

彼らの努力やプロセスを見守り、成果にかかわらず「よくがんばったね」といったフィードバックが適切です。

また、対人関係でも、彼らは感じやすく傷つきやすい傾向があります。もし彼らが嫌な気持ちを抱えている様子が見られたら、「悲しくなっちゃったの?」とその気持ちを受け止め、一緒に状況を分析しながら相手の気持ちを淡々と説明してあげると理解しやすいでしょう。

 

家庭では「パーソナルスペース」を意識

家庭では、彼らに「パーソナルスペース」を提供することも重要です。日ごろから、少しの時間でも彼らがひとりで過ごせる環境を用意してあげると、彼らの気持ちを落ち着かせることができます。周囲の刺激を遮断するための工夫も役立ちます。

 

対策を話し合うことも重要

学年が上がるにつれて、彼らは自分の特徴を理解し、慣れてきたり困らなくなったりすることがあります。親子で彼らが不快に感じる刺激やイライラしがちな環境を共有し、対策を話し合うことも有益です。彼らが安心して成長できるよう、家族や周囲のサポートが重要です。

詳細な知識と理解が必要

「HSC(Highly Sensitive Child)」という言葉は、近年ではより広く知られるようになりましたが、それにもかかわらず、まだ多くの人々がこの特性を理解していないか、あるいは病気や発達障がいと混同してしまうことがあります。

この誤解は、彼らの感受性の高さが日常的な振る舞いに影響を与えるために起こることがあります。こうした誤解を解消し、HSCを適切に理解し支援するためには、より詳細な知識と理解が必要です。

 

生まれ持った先天的な気質

HSCの特性は、彼らが生まれ持った先天的な気質であることを強調することが重要です。彼らの感受性は、環境の影響を受けるだけでなく、生まれつきのものであり、そのために簡単に変えることができません。

この点で、HSCと性格の形成は異なります。性格は、環境や経験によって形成される傾向がありますが、気質は個々の生まれつきの特性に基づいています。この違いを理解することは、HSCの支援と接し方を理解する上で重要です。

 

一般的な刺激に対しても過度に反応

HSCの子どもたちは、日常生活の中でさまざまな刺激に敏感に反応します。例えば、強い光や音、におい、または触覚的な刺激に対して過剰な反応を示すことがあります。

これは、彼らの感覚が非常に鋭敏であり、一般的な刺激に対しても過度に反応してしまうためです。このような過敏な反応は、彼らが日常生活で様々な困難に直面することを意味します。たとえば、学校や公共の場での刺激によって、彼らは集中力を欠き、ストレスを感じることがあります。

 

感受性の高さによるものであり脳機能の問題ではない

HSCの特性が病気や発達障がいと混同されることがあるのは、彼らの反応が一般的な範囲を超えることがあるためです。しかし、HSCは単なる感受性の高さによるものであり、脳機能の問題ではありません。この点が、彼らが病気や発達障がいとは異なることを理解する上で重要です。彼らは脳の機能に問題があるわけではなく、単に刺激に対する感受性が高いだけです。

 

家族や教育者、専門家のサポートが必要

HSCの子どもたちに対する理解と支援は、彼らの生活の質を向上させる上で重要です。彼らが日常生活で直面するさまざまな困難に対処するためには、家族や教育者、専門家のサポートが必要です。

彼らの感受性を理解し、適切に対処するためには、彼らの個々のニーズや状況に応じたアプローチが必要です。これには、彼らの刺激への対処方法やストレス管理の方法を学ぶことが含まれます。

 

無視したり軽視したりすることはしない

また、HSCの子どもたちに対する周囲の理解と支援も不可欠です。家族や教育者、友人や同僚が彼らの特性を理解し、適切に対処することが重要です。

彼らの感受性を無視したり、軽視したりすることはせず、彼らが安心して生活できる環境を提供することが重要です。これによって、彼らの自己肯定感や社会的なつながりが強化され、より健康的な生活が実現されます。

 

適切な理解と支援

HSCは感受性が極めて高い子どもたちのことであり、彼らが日常生活でさまざまな困難に直面することがあります。しかし、彼らの特性は単なる病気や発達障がいではなく、生まれ持った気質であることを理解することが重要です。彼らに対する適切な理解と支援が提供されれば、彼らはより健康的で充実した生活を送ることができるでしょう。

 

発達障がいの子どもとの接し方:理解とサポートの重要性

発達障がいを持つ子どもたちとの接し方は、理解とサポートが重要です。彼らは他の子どもたちとは異なる特性やニーズを持っており、適切な支援が必要です。ここでは、発達障がいの子どもたちとの良好な関係を築くためのアプローチについて考えてみましょう。

 

  • 理解と受容

最初に大切なのは、彼らの特性やニーズを理解し、受け入れることです。発達障がいは一般的な特性とは異なる場合がありますが、それが彼らの個性の一部であることを理解しましょう。彼らが異なる方法で世界を見たり、情報を処理したりすることを受け入れることが重要です。

 

  • コミュニケーションの工夫

発達障がいの子どもたちは、コミュニケーションにおいて特に支援が必要な場合があります。彼らのコミュニケーションスタイルやニーズに合わせて、コミュニケーションを工夫しましょう。具体的には、簡潔で明確な言葉を使ったり、視覚的な支援を提供したりすることが役立ちます。

 

  • 予測可能な環境の提供

発達障がいの子どもたちは、予測可能な環境を求めることがあります。彼らが安心して行動できるように、日常生活や学校での環境を予測可能にする工夫が必要です。定型的なルーティンやスケジュールを作成し、彼らが安定感を持って生活できるようにしましょう。

 

  • ポジティブなフィードバックとサポート

発達障がいの子どもたちに対しては、ポジティブなフィードバックとサポートが必要です。彼らが努力したり成長したりした際には、その努力や成長を称賛しましょう。また、彼らが困難に直面した際には、適切なサポートを提供してあげることが大切です。

 

  • 個別化されたアプローチ

発達障がいの子どもたちとの接し方は個別化されたアプローチが重要です。特性やニーズは一人ひとり異なるため、個別に合わせたサポートやアプローチを提供しましょう。彼らが最善の環境で成長できるよう、常に彼らのニーズに焦点を合わせて行動しましょう。

まとめ

HSCは発達障がいではなく、生まれ持った特性だということをしっかり理解したうえで、本人の希望や要望などを聴きながら寄り添うことが大切です。

また、発達障がいの子どもたちとの接し方は、理解とサポートが重要です。彼らが安心して成長できるよう、彼らの特性やニーズに合わせたアプローチを取り入れましょう。彼らとの良好な関係を築くことで、彼らが自信を持ち、成功を収めることができるでしょう。

 

参考

繊細で刺激が苦手な「HSC」、発達障がいや病気とどう違うの? 専門家に聞く、子どもとの接し方

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