2024.03.25

「他人の便を触り大腸炎に…」地震で被災した“視覚障がい者” の声 避難先での課題とは

能登町小木での地震によって被災

視覚障がいを抱える方々が遭遇する避難体験は、その厳しさを想像を絶するものです。74歳の灰谷誠司さんも、元日の能登町小木での地震によって自宅が被災しました。

灰谷さんは高校生の時に視力を失い、それ以来、盲導犬と共に暮らしています。地震の揺れが長く強烈だったため、灰谷さんは未曾有の不安に襲われました。

「まだまだ大きな揺れが続くのではないか」という不安に駆られました。そして、トイレにいた彼は、困難な状況に備えて座り込み、静かに待ちました。

 

周囲の支援

家族と共に避難所に向かう途中、普段なじみのある道が崩れ、高台の小学校への階段が使えなくなりました。これは彼にとって大きな試練でした。彼が通常行っていた道が断絶され、迂回路を通らざるを得なくなったのです。

しかし、灰谷さんを取り巻く人々は、彼の安全を最優先に考え、食事やトイレなどの生活必需品を支援しました。特に、トイレの使用においては、水道が使えず、ペットボトルを使って流す必要がある中、彼は周囲の人々に助けを求めました。その際、失敗を恐れず、率直に助けを求める彼の姿勢に、支援者たちは温かく応えました。

 

新しい場所での移動は大きな不安要因

現在、灰谷さんは小松市で2次避難生活を送っています。しかし、新しい場所での移動は未だに彼にとって大きな不安要因です。そのため、彼は週に1度の外出では「同行援護」のヘルパーに頼り、自ら道を覚える努力も怠りません。

新しい道は彼にとって恐怖であり、迷子になることが最も恐れることです。しかし、彼はその恐怖と向き合い、一歩ずつ前進しています。

 

ふるさとに戻りたい

小松市での生活に慣れる努力をする一方で、灰谷さんの願いはずっとふるさとの能登町に戻ることです。彼は語ります。

「散歩していても、僕は見えないけど、向こうから声かけてくださったり、知っている人ばかりだし、ここはあそこの凸凹だとか、あっち側から波の音が聞こえるとか、迷っても知ったところが出てきて、ここなら家まで帰れるという安心感もあるし、やっぱりそういう住み慣れたところがいいのはいいですよね

能登町は彼にとって、地理的な特徴や地域の人々との繋がりが、心の拠り所となっています。

 

視覚障がいのある避難者をサポートする取り組み

一方で、視覚障がいのある避難者をサポートする取り組みも進んでいます。加賀市のホテルでは、金沢工業大学の研究チームが開発した「しゃべる点字ブロック」が設置されています。

これは、点字ブロックに音声で道案内を提供するもので、専用のスマートフォンで読み込むことで避難所内での移動を支援しますと、松井くにお教授が説明します。

点字ブロックというのは『進め』と『止まれ』の2種類しか情報がない。我々はその2種類以上の情報、もっとたくさんの情報を提供したい。いわゆる点字ブロックに黒いマーキングをつけることで、たくさんの情報を提供できるようにした」

この技術は、視覚障がい者の方々の要望に応える形で開発され、避難所内での安全な移動を支援することが期待されています。

 

困っている人たちの話をよく聞いて技術を提供していきたい

松井教授は、視覚障がい者からの要望に基づき、彼らが困っている問題に対して積極的に取り組んでいく姿勢を示します。

「視覚障がい者の方から連絡いただいて、我々の技術が提供できるのではないかということで、やっぱり困っている人たちの話をよく聞いて、その人たちの要望に沿った形で、いろいろな技術を提供していきたい」と述べます。

このような取り組みは、災害時の避難所生活をより安全で快適なものにすることで、社会全体の福祉を向上させることにつながるでしょう。

 

しゃべる点字ブロックの導入により自由に移動できるように

珠洲市から避難している大口史途歩さんは、しゃべる点字ブロックの導入により、ホテルの部屋からロビーまで自由に移動できるようになりました。「壁際に物がなければ、壁伝いに歩くということも可能。でも避難所というのは臨時で作るものだから、廊下に物がたくさん散乱する。白杖も触れない、壁伝いにも歩けない、初見の場所で方向も分からない。なければもう動けないっていうのが正直なところ」と喜びを込めて語ります。彼の言葉は、視覚障がい者が避難所内での移動における課題を率直に表しています。

しかし視覚障がい者の避難所内での移動の困難さが如実に表れています。避難所が一時的な場所であるため、通常の生活とは異なり、障がい者にとっては特に課題が多いのです。

 

最も必要と感じているのは代筆のサポート

一方で、地震から2か月が経過し、生活再建への動きが加速する中で、大口さんが最も必要と感じているのは代筆のサポートです。

スマートフォンとかを使ったアプリで読み取ることはできる。でも情報を書くことができない。書類の中身も分かって、字の書ける方がいないと、枠が分からないから結局枠の中に字を収めることもできない。代筆代行とか、そういうのがあったら、いま直近で欲しいのはそういう感じ」と述べます。

代読・代筆の支援は、災害時には特に重要であり、避難所での生活再建において不可欠な支援となっています。

 

代読・代筆の支援はまだ十分ではない

しかし、石川県では代読・代筆の支援はまだ十分に整っていません。石川県障がい者協会の米島芳文理事長は、「障がい者総合支援法」に基づき、自治体が支援員の派遣事業を行うよう定められているものの、代読や代筆の支援は任意であるため、導入している自治体は少ないと指摘します。

彼は、居住地だけでなく避難先の自治体でも代読・代筆の支援が必要であるとし、県レベルでの広域支援の必要性を訴えています。災害時には、特に弱者の声に耳を傾け、支援の充実を図ることが、社会の包摂性と福祉の向上につながるでしょう。

手も洗えずに大腸炎に

珠洲市で被災した大口さんは、避難所での困難な経験を語っています。彼は最初に身を寄せた避難所の簡易トイレで、他人の便に触れるという状況に何度か遭遇し、さらに手を洗うことができなかったため、大腸炎にかかってしまったと述べています。このような状況は、災害時における障がい者支援の不備や課題を浮き彫りにします。

さらに、点字ブロックの上に荷物が置かれることもあるとし、大口さんは障がいのある人に配慮した簡易防災マニュアルを避難所に設置してほしいとの願いを語っています。

このような取り組みがあれば、障がい者も含めた避難所利用者が安全かつ快適に過ごすことができるでしょう。

 

不十分な支援

珠洲市で被災した大口さんの体験は、避難所での生活が障がい者にとっていかに困難であるかを浮き彫りにしています。

彼は避難所の簡易トイレでの衛生状態の悪さや、点字ブロックの上に荷物が置かれることによる障がい者への配慮の不足を指摘しています。特に、代読や代筆の支援が欠かせない書類作成においては、自治体の導入が不十分であることが問題視されています。

 

行政や関連機関が積極的な取り組みを行う必要

このような課題に対して、石川県障がい者協会の米島芳文理事長は、自治体ごとの支援策の導入とともに、県レベルでの広域支援の必要性を強調しています。

地域全体での協力が必要であり、障がい者が適切な支援を受けられるよう、行政や関連機関が積極的な取り組みを行うことが求められています。

心理的・精神的なサポートも必要

大口さんの経験からも明らかなように、障がい者の生活再建においては、物理的な支援だけでなく、心理的・精神的なサポートも欠かせません。避難所や仮設住宅においては、障がい者に対する十分な配慮と支援が必要です。被災者の声に耳を傾け、適切な施策を講じることが、地域社会の連帯と復興のために不可欠です。

 

社会全体での支援

視覚障がい者が避難所内での移動において直面する課題は深刻です。物理的な障がいや未知の環境によって、彼らの自立性や安全性が脅かされることがあります。

しかし、しゃべる点字ブロックのような技術の導入は、彼らの生活を改善する一翼を担っています。このような支援がさらに普及し、避難所内での生活をより安全かつ快適にすることが求められます。

また、生活再建においては、代読・代筆の支援も欠かせません。災害時には様々な手続きや書類が必要とされますが、これらを適切に処理できない場合、被災者の生活再建が遅れる可能性があります。

そのため、自治体や関連機関は代読・代筆のサービスを充実させるとともに、被災者が必要な支援を適切に受けられるように努める必要があります。

 

まとめ

さらに、障がい者支援の拡充には、地域レベルから県レベルまでの包括的な取り組みが必要です。自治体間の情報共有や連携強化によって、支援の質と効率を向上させることが可能です。緊急時には迅速な対応が求められるため、事前に計画を立て、リソースを適切に配置することが重要です。

さらに、代読・代筆の支援が災害時だけでなく日常生活でも提供されるようにすることが望まれます。これにより、障がい者が社会参加する際のハードルを下げることができます。また、支援員の育成や教育プログラムの拡充も重要です。代読・代筆の技術やノウハウを持った専門家の存在は、障がい者の自立と社会参加を支援する上で不可欠です。

 

参考

「他人の便を触り大腸炎に…」地震で被災した“視覚障がい者” 避難先で直面する課題 | TBS NEWS DIG (1ページ) 

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