2024.04.16

発達障がいや不適切保育問題対応 日本保育連盟、専門性重視の保育士制度導入を発表

東京都内の保育事業者や学校法人が結集し、新たに設立された一般社団法人「日本保育連盟」が、発達障がいや不適切な保育といった現場の課題に対処するため、「認定保育士」制度の導入を発表しました。

保育現場では多様化する子供たちに対応するための専門知識を持つ保育士が不足しており、この制度を通じて待遇改善と定着率向上を目指す考えです。

 

年内に研修カリキュラムの策定を目指す

この連盟は、来月には大学教授や保育関係者らで構成されるワーキンググループを発足させ、年内に研修カリキュラムの策定を目指します。そして、来年4月には制度を本格的にスタートさせ、約10カ月の研修を経て「認定保育士」の資格取得が可能となる見通しです。

 

発達障がいを抱える子供たちの数は増加傾向

近年、ADHD(注意欠如・多動性障がい)などの発達障がいを抱える子供たちの数は増加傾向にあります。しかし、東京都内の保育施設では、乳児期から幼児期にかけての18カ月健診前に入園したり、入園面接がないため、保護者の認識がないまま入園する園児も決して少なくないのが実情です。未就学教育に特別支援学級がないため、これらの子供たちに適切に対応できる専門知識を持った保育士の育成が喫緊の課題となっています。

 

深刻な保育士不足

また、保育士不足も深刻です。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は近年2~4倍近くあり、全職種平均の1・44倍を大きく上回っています。さらに、給与水準も低く、月平均30万9千円と全産業平均の35万5千円よりも低い状況です。このような状況を改善するため、日本保育連盟は認定制度の導入を提唱しています。これにより、保育士の専門性を評価し、待遇改善につながると期待しています。

 

「課題の改善がますます重要になっている」

杉村代表理事は、「保育業界には専門性を持った保育士が必要であり、待遇改善や離職率の抑制といった課題の改善がますます重要になっている」と述べ、保育の分野にふさわしい制度の構築を目指す考えを示しました。

子供の発達障がいについて

近年、子供の発達障がいの認知度が高まり、その数も増加しています。発達障がいは、子供の成長や学習に影響を与えるさまざまな障がいの総称であり、その種類は多岐にわたります。代表的な発達障がいには、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)、自閉症スペクトラム障がい(ASD)、学習障がい(LD)などがあります。

 

早期発見と適切な支援が重要

これらの障がいは、早期発見と適切な支援が重要です。しかし、一部の子供は十分なサポートを受けられず、学習や社会生活で困難を抱えることがあります。特に、乳幼児期から発達障がいの兆候が見られる場合もありますが、その時期に適切な介入がなされないことが多いのが現状です。

 

学校や社会での支援が必要

発達障がいを抱える子供やその家族は、学校や社会での支援が必要です。学校では特別支援学級や個別支援プログラムなどが提供されていますが、その充実度やアクセスの問題もあります。また、家庭での支援も不可欠であり、子供の個性やニーズに合わせた支援を提供することが重要です。

 

発達障がいへの理解や対応力の向上

一方で、保育現場や学校での発達障がいへの理解や対応力の向上も喫緊の課題です。保育士や教師には、発達障がいを早期に発見し、適切なサポートを提供するための専門知識やトレーニングが求められます。そのため、専門性を重視した資格制度や研修プログラムの充実が必要です。

 

自己実現を果たすための土台

子供の発達障がいに対する理解と支援が進むことで、彼らが健やかに成長し、自己実現を果たすための土台が築かれるでしょう。社会全体がそのサポートに向けて取り組むことが、より包括的な支援体制の構築につながります。

 

子供のADHDについて

子供の発達障がいの一つであるADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は、注意欠陥・多動性障がいとして知られています。この障がいは、子供が集中力を持続させることや過剰な活動性をコントロールすることに困難を抱える状態を指します。こうした困難が日常生活や学校生活に影響を与え、学習や社会的な関係に支障をきたすことがあります。

ADHDの主な症状には、以下のようなものがあります。

 

  • 注意欠陥(Inattention)

この症状は、子供がタスクや活動に注意を集中することが難しいことを示します。彼らはしばしば物事に対して散漫であり、指示を理解し応答することが困難です。彼らの作業中の不注意は、細かい間違いやミスが多くなることにつながります。この症状は、学校や日常生活での成果に直接影響を与え、自己価値感や自己肯定感にも影響を及ぼす可能性があります。

 

  • 多動性(Hyperactivity)

多動性は、子供が座っていることが難しく、絶えず動き回ることや手や足を絶えず動かすことが特徴です。彼らは静かに座って遊ぶことができず、外部からの刺激に敏感であり、しばしば騒々しい行動や発声をします。これは、学校での静かな環境や集中力を必要とする場面で問題を引き起こすことがあります。また、この症状は家庭生活でも同様に影響を及ぼし、親や兄弟姉妹との関係にも影響を及ぼす可能性があります。

 

  • 衝動性(Impulsivity)

衝動性は、子供が思考や行動を制御することが難しく、突然の行動や発言が多い特徴です。彼らは即座に行動し、他人の話を待たずに自分の意見を述べることがあります。この症状は、社会的な相互作用や行動の適切さに関する理解を欠くことがあり、友情や学校での関係に影響を与える可能性があります。

 

これらの症状は、ADHDの診断基準の一部であり、子供がこれらの症状に該当するかどうかを判断する際に考慮されます。そのため、子供が適切なサポートを受けるためには、これらの症状を理解し、適切な対応を行うことが重要です。

 

ADHDの原因

ADHDの原因は、明確にはわかっていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。遺伝的要因が重要な役割を果たしており、家族内でのADHDの既往歴がある場合、子供がADHDを発症するリスクが高まる可能性があります。また、環境要因や脳の発達に関連する要因も関与しているとされています。特に、妊娠中や出生時の環境要因がADHDの発症リスクに影響を与える可能性が指摘されています。

 

ADHDの診断

ADHDの診断は、専門家による評価が必要です。一般的には、子供の行動や症状を詳細に観察し、継続期間や日常生活への影響を評価します。また、心理学的テストや親や教師からの情報も重要な診断ツールとなります。

 

治療のアプローチ

治療のアプローチは個々の症状やニーズに応じてカスタマイズされますが、一般的には複数のアプローチが組み合わされることがあります。

薬物療法は、主に注意力や衝動性を制御するために使用されますが、副作用や効果の個人差があるため、医師の指導の下で適切な薬剤が選択されます。行動療法は、特定の行動パターンやスキルを変えるために使用され、親や教師が子供の行動を管理し、ポジティブな行動を促進する方法を学ぶのに役立ちます。

 

家族や学校との連携

家族や学校との連携も治療の重要な部分を占めます。家族は、子供の状況を理解し、治療計画をサポートするために関与することが重要です。学校では、教師やカウンセラーが子供を支援し、学習環境を調整することで、彼らの学習や社会的な成長を促進することができます。

 

理解と支援が必要

ADHDを持つ子供やその家族は、理解と支援が必要です。周囲の人々が偏見や誤解を排除し、子供が適切な環境で成長できるようにするために、社会全体が協力することが重要です。それにより、子供がポジティブな自己像を育み、自己実現を達成するための土台が築かれます。

 

子供の自閉症スペクトラム障がい(ASD)について

自閉症スペクトラム障がい(Autism Spectrum Disorder:ASD)は、子供の発達や行動に影響を与える複雑な神経発達障がいの一つです。ASDは、幼児期から早期児童期に発症し、社会的な相互作用やコミュニケーション能力、興味や活動の範囲などに特徴的な障がいをもたらします。以下に、ASDの主な特徴と治療について掘り下げてみましょう。

 

ASDの特徴

  • 社会的な相互作用の困難

ASDの子供は、他人との社会的なつながりを築くのが難しい傾向があります。彼らはしばしば他人との目を避け、他人の感情や意図を理解するのが難しい場合があります。また、他人との会話や関係を持つのが困難であり、適切な社会的行動やコミュニケーションスキルを身につけることが難しいことがあります。

 

  • コミュニケーションの障がい

ASDの子供は、言語の遅れや発達に問題がある場合があります。彼らは言語を理解するのが難しく、自分の思考や感情を適切に表現することが難しい場合があります。また、非言語コミュニケーションのスキルも不十分であり、ジェスチャーや表情を理解するのが難しいことがあります。

 

  • 反復的な行動や興味

ASDの子供は、特定の興味や活動に強い関心を持ち、それに強く執着する傾向があります。彼らは同じ行動や活動を繰り返し行い、特定の興味やトピックについて深く掘り下げることがあります。また、予測可能な環境やルーチンに執着することがあります。

 

  • 感覚過敏

ASDの子供は、感覚に過敏な場合があります。彼らは光や音、触覚などの刺激に対して過剰な反応を示すことがあります。これにより、過剰な刺激に対して不快感やストレスを感じることがあります。一方で、感覚の鈍さを示すこともあり、刺激に反応しないか、適切に処理することが難しい場合があります。

 

これらの特徴は、ASDの診断と治療において重要な役割を果たします。早期の介入と適切なサポートが、ASDの子供たちが健やかに成長し、社会生活で成功するための鍵となります。

 

ASDの治療

現在のところ、ASDの治療法は特定の薬物療法などの根本的な治療法はなく、症状の管理や機能の向上を目指す支援的なアプローチが一般的です。以下は、ASDの治療に用いられる主なアプローチです。

 

  • 行動療法(ABA療法)

ABA療法は、望ましい行動を促進し、問題行動を減少させることを目的とした行動修正の手法です。この療法は、コミュニケーションスキルの向上や社会的な相互作用の改善などに役立ちます。

 

  • 言語療法

言語療法は、言語の遅れやコミュニケーションの障がいを改善するために使用されます。子供が適切なコミュニケーションスキルを身につけ、他人との関係を築くのを支援します。

 

  • 個別支援プログラム

個別支援プログラムは、子供の特定のニーズや興味に合わせて設計された支援プランです。これには、学習支援や社会的スキルのトレーニングなどが含まれます。

 

  • 親や家族の教育と支援

ASDの子供の家族は、彼らの特殊なニーズや症状に対処するために支援を受ける必要があります。教育プログラムや親のトレーニングなどが、家族の理解と支援を促進するのに役立ちます。

 

ASDは個々の症状やニーズに応じて異なるため、適切な治療計画を立てるためには専門家の評価と支援が必要です。早期の介入と適切なサポートが、子供の成長や発達を促進し、彼らが健やかな生活を送るための鍵となります。

まとめ

東京都内の保育事業者や学校法人が結集した日本保育連盟の専門性重視の保育士制度導入は、待遇改善や発達障がい児への適切な支援に向けた重要な一歩です。保育業界の質と専門性の向上を目指し、これまで以上に子供たちの健やかな成長と安心した保育環境の提供が実現することが期待されます。この取り組みは、保護者や保育士の双方にとって望ましい方向への進展であり、社会全体の福祉向上に貢献するものと期待されます。

 

参考

発達障がいや不適切保育問題対応へ「認定保育士」制度創設 日本保育連盟、待遇改善も狙う

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