2024.04.16

ストレス耐性の鍛え方「ごっこ遊び」は重要だった?子どもの遊びから大人の役割まで

脳科学者の茂木健一郎さんは、将棋棋士の藤井聡太氏の子ども時代のエピソードを引用し、ストレス耐性を高める方法について示唆しています。藤井氏は将棋で負けると悔しがって泣き、将棋盤から離れなかったとされています。

茂木さんはこのような負けず嫌いの姿勢が、ストレス耐性を高める優れた資質を持っていることを指摘しています。大人も同様に、仕事のチーム活動においては「ごっこ遊び」として自分の役割を全力で演じ切ることが、ストレス耐性や脳のレベルを高めるのに役立つと述べています。

 

ストレスと上手に向き合わなければならない

多くのビジネスパーソンが、現代社会での生活を送る中で、ストレスと上手に向き合わなければならないと言えるでしょう。「自分はストレスなんて感じない」という人は少数派であり、多くの人が「あー、ストレスで胃が痛いよ」といった不快な症状を経験しているはずです。

しかし、最新の脳研究によれば、強いストレスが長期間続くと、脳の器官である海馬に損傷が生じ、アルツハイマー病や認知症などの記憶障がいが引き起こされる可能性があることが明らかになっています。

職場の人間関係や責任の重さなど、長期間にわたって強いストレスに晒されると、自覚せずに記憶力が低下することがあります。「最近どうも物覚えが悪くなってきた気がするが、きっと年のせいだろう」このように考えることが一般的ですが、実際にはストレスが脳に影響を及ぼしている可能性があるのです。

 

脳の生理学的な変化が関与

ストレスが記憶障がいにつながるメカニズムには、脳の生理学的な変化が関与しています。まず、脳がストレスを感じると、副腎皮質からストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。

このコルチゾールは、身体にエネルギーを供給するために血糖値を上げるなどの応急処置的な役割を果たします。しかし、長期間にわたって強いストレスが続くと、コルチゾールが過剰に分泌され、脳の海馬部分を萎縮させることがわかっています。

 

期間にわたるストレスは脳細胞に直接的なダメージを与える

海馬は、記憶の形成や保持に関与しており、その萎縮は記憶障がいの原因となります。短期的なストレスであれば脳の働きが一時的に抑制されるだけですが、長期間にわたるストレスは脳細胞に直接的なダメージを与え、記憶力の低下や最悪の場合にはアルツハイマー病や認知症を引き起こす可能性があります。

 

海馬の萎縮

PTSD(心的外傷後ストレス障がい)の患者の脳を調査すると、海馬の萎縮が確認されており、強いストレスが長期間続くことで記憶力の低下が引き起こされることがわかっています。

したがって、ストレスが記憶障がいにつながるメカニズムは、脳の生理学的な変化によるものであり、長期間にわたるストレスは脳に深刻なダメージを与える可能性があることを考慮する必要があります。

 

完全にストレスを排除すると脳がストレスに対処する方法を学ぶ機会を失う恐れ

普段からストレスを抱えている、あるいはストレスに弱い人がストレスを完全になくそうとするのは、潔癖症の人が無菌状態を保とうとするのと同様であり、身体の免疫力が低下してしまう可能性があります。

実際、ストレスも同様であり、ストレスに弱い人が完全にストレスを排除しようとすると、脳がストレスに対処する方法を学ぶ機会を失う恐れがあります。市川海老蔵(当時)さんは幼少期から舞台に立ち、常にトップを走り続けてきました。

彼が受けたプレッシャーは相当なものであったと考えられますが、彼はそのプレッシャーに立ち向かい、ストレスに強い脳を育てました。海老蔵さんのような脳レベルに到達することは容易ではありませんが、日々の経験を積むことで、ストレスとの戦いに勝つことができるでしょう。

 

ストレスの原因

ストレスの原因は多岐にわたります。身体的な原因は、長距離通勤や深夜までの残業などの身体的負担が挙げられます。また、アスリートであれば病気やけがもストレスの要因となります。

精神的な原因は、人間関係に関連しています。職場や学校、家庭などでの人間関係は常にストレスの原因となります。これは老若男女を問わずです。

 

30〜40代のビジネスパーソンが最も大きなストレスを感じている

現代社会では、特に30〜40代のビジネスパーソンが最も大きなストレスを感じています。この年代は、社会に出て間もない20代とは異なり、中堅として活躍する立場にあります。役職に就いて部下を指導する役割を担うこともあります。

この時期はプレッシャーが強くかかるため、ミスが増え、ストレスが溜まりやすくなります。仕事や生活においてストレスと上手に付き合うことは重要ですが、脳が受けるほどの強いストレスは避ける必要があります。

なぜなら、短期的なストレスは脳機能の向上に寄与しますが、長期的なストレスは脳に悪影響を与える可能性があるからです。

 

手軽なストレス解消法

手軽なストレス解消法と言えば、食事や飲酒、趣味、運動などが思い浮かびます。確かに、ストレス解消に効果的な食べ物は多くありますし、仲間との食事や飲酒は楽しく、ストレスが発散できそうです。スポーツや音楽、旅行、ショッピングなどを楽しむことも、ストレスの解消に有効かもしれません。

また、最近注目されているのがマインドフルネスです。これは、「今、ここ」で起こっていることに注意を向け、自分の感情や思考を判断せずに観察する心のトレーニングです。マインドフルネスの瞑想によって、ストレスでダメージを受けた脳を活性化させ、認知症の予防にも効果があるという研究結果もあるそうです。

 

「テンション・コントロール」

脳をダメージから守り、認知症を予防するために、一時的なストレス解消法だけでなく、脳科学の観点からお勧めしたいのが「テンション・コントロール」です。これは、自らテンションを上げることです。

周囲から「あいつ、テンション高くない?」と思われるくらいがちょうどいいのです。たとえば、試験勉強をしている学生が試験の前日にテンションを上げることは重要です。ダラダラとしていては成績が良くなりませんが、「明日は試験だ! 頑張らなくちゃ!」とテンションを上げることで脳が活性化し、勉強もスムーズに進みます。

 

日常的にストレス耐性を養うことが重要

ビジネスパーソンが日々自らに課しているプレッシャーの量は、個々の経験や状況によって異なります。私の知る限りでは、多くの人々がこのようなプレッシャーに直面しており、ストレスに悩んでいることが証拠です。

ストレスに対する耐性は個人差があり、ストレスの影響も受ける側によって異なります。そして、この耐性は脳のストレスへの対処能力にも関連しています。

ただし、完全なストレスのない生活は脳機能の衰えを招きます。適度な緊張や興奮は、脳の活性化につながる効果があります。逆に、ストレスのない環境では意欲が低下し、脳の活性化も停滞します。

したがって、ストレスのダメージを軽減するだけでなく、日常的にストレス耐性を養うことが重要です。普段からストレスに対処する方法を学び、ストレス耐性を高めることで、大きなストレスにも対処できるようになります。

 

おすすめは「ごっこ遊び」

ストレス耐性を高めるための方法として、おすすめなのが「ごっこ遊び」です。これは、子どもの頃に行っていた活動であり、ストレスへの対処法を身につけるのに役立ちます。

例えば、将棋棋士の藤井聡太四段(当時)のエピソードを考えてみましょう。彼は子どもの頃から将棋に情熱を持ち、負けた時には悔しがり、将棋盤から離れずに取り組んでいました。これは、彼がストレスにどのように向き合うかを学んでいたと考えられます。

大人にとっては些細な遊びかもしれませんが、子どもにとっては真剣に取り組むことで、ストレス耐性を高める訓練となります。このような資質を持つ子どもは、将来的にもストレスに強い成人になる可能性が高いでしょう。

つまり、「ごっこ遊び」は、子どもの頃からストレス耐性を養う重要な活動の一つなのです。

 

大人になってからは役割を演じる

大人になってからも、ごっこ遊びとは異なる形でストレス耐性を高める方法があります。それは、役割を演じることです。

例えば、仕事のチームでの役割分担を考えてみましょう。自分の役割を理解し、その役割を最大限に果たすことで、ストレス耐性を高めることができます。

また、友人とのキャンプ旅行などでも同様のことが言えます。テントを張る人、買い出しをする人、料理を担当する人など、それぞれが役割を持ちます。自分の役割を見極め、それを完璧に果たすことで、ストレスに対処する能力を養うことができます。

つまり、大人になってからも、自分の役割を演じ切ることで、ストレス耐性を高めることができるのです。

ストレスが引き起こす健康リスク:心と体の不調に注意を払う

近年、ストレスは多くの人々にとって深刻な問題となっています。仕事、家庭、社会的圧力など、様々な要因によって引き起こされるストレスは、健康に大きな影響を与える可能性があります。以下では、ストレスが引き起こす健康リスクについて考察し、その対策について見ていきましょう。

 

心の健康への影響

慢性的なストレスは、心の健康に深刻な影響を与える可能性があります。不安や抑うつの症状が現れるだけでなく、心臓疾患や高血圧などの心血管系の疾患のリスクも増大します。ストレスによる心の負担を軽減するためには、リラックス法やメンタルヘルスのサポートを活用することが重要です。

 

免疫系の弱体化

長期間にわたるストレスは、免疫系を弱める可能性があります。ストレスによって体内のストレスホルモンが増加し、免疫細胞の活動が抑制されることがあります。これにより、風邪や他の感染症に対する抵抗力が低下し、病気にかかりやすくなります。ストレス管理や健康的な生活習慣の確立が、免疫系の強化につながります。

 

消化器系の問題

ストレスは消化器系にも影響を及ぼし、胃潰瘍や消化不良などの問題を引き起こす可能性があります。ストレスによって消化器官の動きが乱れ、胃酸の分泌が増加したり、消化器の運動が鈍化したりすることがあります。バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス軽減の方法を取り入れることが、消化器系の健康を維持するための鍵です。

 

睡眠障がい

ストレスは睡眠にも影響を与え、睡眠障がいを引き起こす可能性があります。ストレスによって不安や緊張が増加し、入眠困難や睡眠中の目覚め、睡眠の質の低下などが生じることがあります。健康的な睡眠環境の整備やリラックス法の活用が、睡眠障がいの予防や改善に役立ちます。

 

行動パターンの変化

ストレスは、人々の行動パターンにも影響を与える可能性があります。ストレスによって過食や食欲不振、運動不足、喫煙や飲酒の増加など、健康に悪影響を及ぼす行動が引き起こされることがあります。ストレス管理の重要性を認識し、健康的な行動を促進するためのサポートが必要です。

 

以上の点から、ストレスは健康への深刻なリスク要因であることが分かります。ストレス管理や健康的な生活習慣の確立が、心身の健康を維持するために不可欠であることを再確認しましょう。

まとめ

子どもの頃から大人になるまで、さまざまな経験や挑戦を通じてストレス耐性を養うことが重要であることがわかります。日常生活や仕事の中でのささいな役割や責任を全力で果たすことで、自らのストレス耐性を高めることができるのです。

 

参考

本気で「ごっこ遊び」ができるかを見ればわかる…脳科学者が指摘「藤井聡太級に脳レベルが高い人」の共通点 大人になってからストレス耐性を強化する方法 #プレジデントオンライン

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