2024.03.28

発達障がいの「生きづらさ」を軽減させるため高校生が橋渡し役に

発達障がいの理解を広める活動を続ける陽菜さんのような存在が、世の中には数多く存在します。その背景には、身近な人が発達障がいを抱えているという経験があります。陽菜さんの場合、家族の一員として発達障がいを持つ弟がいます。彼の症状は軽度であり、外見からは判断しづらいため、一般の人々から理解を得ることが難しいという苦労がありました。

 

講演会などで啓発活動を行ってきた

彼女は、そのような状況に直面しながらも、地元の高校生や他の若者たちに発達障がいについて話す機会を積極的に設け、講演会などで啓発活動を行ってきました。弟もまた、学校生活での経験から、特に発達障がいに対する理解の不足を痛感していたようです。

学校では、発達障がい特有の行動や特性が、理解されずに問題視されることがありました。特別支援学級に通っていた弟でさえも、支援が必要な時にはむしろ修正しようとする方向に導かれることがありました。このような状況は、発達障がいを持つ人々が日常的に直面する課題の一部です。

陽菜さんは、家族の苦悩を解消したいという思いから、2022年に世界的なコンテストに挑戦しました。そのスピーチでは、弟が普通に生まれたかったという切実な気持ちや、母親の涙が語られ、発達障がいの理解を求める活動を誓いました。

 

コンテストでグランプリを獲得

その後、彼女は社会貢献に取り組む10代の女性を支援するコンテストでグランプリを獲得しました。彼女の活動は、発達障がいについての理解を深めるだけでなく、他の若者たちにも希望と勇気を与えています。彼女の情熱と努力が、社会にポジティブな変化をもたらすことを期待しています。

鈴木陽菜さん(18)は、大会に参加することで自身の発信力と自信を高めることができたと述べています。彼女は高校生の時から、教育現場での経験や放課後デイサービスでのボランティア活動を通じて、発達障がいの理解を広めるための努力を続けてきました。そして、2023年からは講演活動も開始し、その活動範囲を拡大しています。

この日、藤枝市の依頼を受けて、陽菜さんは発達障がいのある家族が参加する対談会で登壇しました。そこでは、障がいの有無にかかわらず多くの子どもが共に学ぶ「インクルーシブ教育」の重要性を訴えました。彼女は、現在の分離教育では発達障がいのある人にとってもサポートする側にとっても課題があると指摘しました。そのため、みんなが平等に学べる環境を作ることで、将来的に社会全体がより包括的で過ごしやすい環境になるとの信念を述べました。

 

生きづらさを抱える人が身近に存在する

この考えに共鳴する声が、臨床心理士である浜松学院大学短期大学部の志村浩二教授からも寄せられました。彼は、発達障がいのある人を近くで見ている人の発言が大きな影響力を持つとし、特に若い世代が話すことは若い世代の共感を高めると指摘しました。そして、若い世代の人々が積極的に発信することで、理解と共感がより広がることを期待しています。

陽菜さん(18)は、生きづらさを抱える人が身近に存在することを周囲に感じてもらいたいと願っています。彼女は家族や出会った人から学んだ知識を、自らの経験や理解をもとに、同世代の人々に伝える橋渡し役を果たすことを目指しています。

「苦手なことは誰かと補い合えるような共生社会になってほしい」と陽菜さんは語ります。彼女は専門知識を学び、より説得力を持って発達障がいについての理解を広めることを目指しています。その決意と情熱が、より多くの人々に届くことを願っています。

 

若い世代からの発信は非常に貴重な存在

文部科学省が2022年に発表した調査結果によれば、通常学級に在籍する小中学生のうち約8.8%に発達障がいの可能性があるとされています。35人のクラスで考えると、約3人に1人がその可能性を抱えている計算になります。

このような数値が示すように、多くの子どもたちが生きづらさを感じているかもしれません。その中で、陽菜さんのような若い世代からの発信は、非常に貴重な存在だと感じます。彼女の活動が、より理解と共感を生み出し、社会全体がより包括的で支え合いのある場所になることを期待しています。

 

発達障がいについての理解を深める

発達障がいは、近年ますます注目されているトピックの一つです。しかし、まだ多くの人々がその本質や影響について理解していないことも事実です。本記事では、発達障がいについての基本的な知識や、それに対する理解を深めるための重要性について考察します。

 

発達障がいとは

発達障がいは、個々の脳の発達に関連する異常や遅れを特徴とする一連の障がいの総称です。主な発達障がいには、注意欠陥多動性障がい(ADHD)、自閉症スペクトラム障がい(ASD)、学習障がい、発話・言語障がいなどがあります。これらの障がいは、日常生活や社会的相互作用、学習能力などに影響を与える場合があります。

 

理解の重要性

発達障がいに対する理解は、その人々が日常生活で直面する困難や差別を減らし、適切な支援や対応が提供されることを促進します。例えば、学校や職場での環境の調整や適切な指導法の導入は、発達障がいのある人々が自己実現を果たし、能力を最大限に発揮できるよう支援するために重要です。

 

誤解と偏見の解消

発達障がいに対する誤解や偏見は、しばしばその人々の生活をさらに困難にします。例えば、ADHDの人々が「集中力がない」「行動が落ち着かない」といった誤解がありますが、実際にはそれらは単なる表面的な特徴に過ぎません。また、自閉症スペクトラム障がいの人々が無感情で社会的な接触を避けるといったイメージも誤解です。

 

支援と共生社会の構築

発達障がいに対する理解を深めることは、支援の充実と共生社会の構築につながります。個々の違いを尊重し、誰もが自分らしく生きることができる社会を築くためには、まず発達障がいについての正しい知識と理解が広まることが不可欠です。

 

発達障がいについて理解を深める: ADHD、ASD、学習障がい、発話・言語障がい

発達障がいは、近年ますます注目されるようになっていますが、その種類や特徴についての理解が不十分な場合も多いです。

 

注意欠陥多動性障がい (ADHD)

ADHDは、注意力の欠如、過活動性、衝動性の3つの主要な症状を特徴とする発達障がいです。この症状は、個々の人によって異なりますが、一般的には以下のような特徴が見られます。

 

  • 注意力の欠如

ADHDの人は、注意を集中して続けることが難しい傾向があります。例えば、授業中や仕事中に集中して作業することができず、気が散りやすいと感じることがあります。また、日常生活でも細かいタスクを遂行する際に注意が途切れやすい場合があります。

 

  • 過活動性

ADHDの人は、常に動き回ったり、落ち着きがないと感じることがあります。特に子どもの場合は、座っていることが難しく、絶えず動き回ったり手や足を絶えず動かしたりします。この過剰な活動性は、周囲の人々に対してもっとも目立つ症状の一つです。

 

  • 衝動性

ADHDの人は、衝動的な行動をとる傾向があります。ついつい言葉を突然口に出してしまったり、思考や行動をコントロールするのが難しいと感じることがあります。その結果、意思決定が思慮深くならないことや、計画的な行動が難しいことがあります。

 

ADHDの原因はまだ完全に解明されていませんが、脳の神経伝達物質の不均衡や遺伝的な要因が関与していると考えられています。診断は、専門家が行う綿密な評価に基づいて行われます。

ADHDの治療法には、薬物療法や行動療法などがありますが、それぞれの症状や個々の状況に応じて適切な治療法が選択されます。

 

自閉症スペクトラム障がい (ASD)

自閉症スペクトラム障がい(ASD)は、脳の発達における特定の障がいによって引き起こされる総称的な障がいです。ASDは、非常に幅広い症状を持つスペクトラム障がいであり、その症状の程度や範囲は個々の人によって異なります。

 

  • 社会的相互作用の障がい

ASDの人々は、他者との社会的な関係を築くのが難しいと感じることがあります。視線や身振り、表情などの非言語的なコミュニケーションを理解するのが難しい場合があり、他者とのコミュニケーションに不自然さを感じることがあります。また、他者の感情や視点を理解するのが難しいことがあります。

 

  • コミュニケーションの困難

ASDの人々は、言語の理解や表現に問題を抱えることがあります。言葉の遅れや発話の非効率性、発話内容の制約などが見られることがあります。また、自分の意図や興味を適切に伝えることが難しい場合があります。

 

  • 反復的な行動や興味の制限

ASDの人々は、一定のパターンや習慣にこだわりやすい傾向があります。特定の興味や関心を持つことがあり、それに関連する活動を繰り返し行うことがあります。また、外部の刺激に対して過敏な反応を示すことがあります。

 

ASDの原因は複雑で、遺伝的、環境的、および神経発達上の要因が組み合わさっている可能性があります。診断は、専門家が行う包括的な評価に基づいて行われます。

早期の介入や適切な支援は、ASDの人々が自己実現を果たし、充実した生活を送るために重要です。これには、行動療法、言語療法、特別支援教育などのさまざまなアプローチが含まれます。

 

学習障がい

学習障がいは、個々の人が基本的な学習能力を獲得する際に困難を経験する発達障がいの一つです。学習障がいは、読み書き、計算、理解力などの基本的な学習スキルの獲得が遅れるか、困難を伴う場合があります。

 

  • 読み書きの困難

学習障がいの人々は、文字や言葉の理解や表現に問題を抱えることがあります。文字や言葉の音を理解しにくいため、読み書きが遅れることがあります。また、読解力が低下したり、文章を理解するのが難しい場合があります。

 

  • 計算能力の低下

学習障がいの人々は、数学的な概念や計算方法を理解するのが難しい場合があります。数字の意味や関係性を把握することが難しいため、計算や数学的な問題解決に困難を抱えることがあります。

 

  • 理解力の低下

学習障がいの人々は、言葉や概念の理解が遅れたり、困難を抱えることがあります。新しい情報や概念を理解するのが難しいため、授業や学習活動で他の生徒よりも遅れを取ることがあります。

 

学習障がいは、知能の低さや教育環境の問題ではなく、特定の神経発達上の問題によるものです。これは、学習能力や学習スタイルに関する個人差があり、一般的な教育方法では適切に対処できない場合があることを意味します。

学習障がいの治療法は、個々の状況や症状に応じて異なりますが、特別な教育プログラムや個別指導、学習支援ツールの使用などが含まれる場合があります。早期の発見と適切な支援は、学習障がいを持つ人々が自信を持って学習し、成功を収めるために不可欠です。

 

発話・言語障がい

発話・言語障がいは、発話、言語理解、コミュニケーション能力の発達に問題がある状態を指します。この障がいには、以下のようなさまざまな特徴が含まれます。

 

  • 言葉の発音の困難

発話障がいの人々は、正確な言葉の発音が難しいと感じることがあります。特定の音や音節を正確に発音することが困難であったり、言葉の音が歪んだりすることがあります。これは、舌や唇、口蓋などの口の部位の制御や協調が困難な場合に起こることがあります。

 

  • 言葉の理解の遅れ

言語理解の遅れは、言葉の意味や文の構造を理解するのが難しいと感じることがあります。例えば、他人が話す内容を正確に理解するのが難しい場合があります。これは、脳の言語処理機能に問題がある場合に起こることがあります。

 

  • 言葉の使用の困難

言葉の使用の困難は、適切な言葉や文法を使って自分の考えや感情を表現するのが難しいと感じることがあります。自分の意図を的確に伝えることができないため、コミュニケーションが円滑に行われないことがあります。

 

  • 流暢性の低下

言語障がいの人々は、言葉を流暢に話すことが難しいと感じることがあります。言葉が途切れたり、詰まったりすることがあり、スムーズな会話が難しい場合があります。これは、言語生産プロセスの一部に問題がある場合に起こることがあります。

 

これらの特徴は、子どもの発達過程での特定の段階において問題が生じることがあります。発話・言語障がいは、個々の人に異なる程度で影響を与えることがありますが、早期の介入や適切な治療が重要です。

言語療法や個別指導などの治療法が、言語能力の向上やコミュニケーションスキルの発達を支援するのに役立ちます。また、周囲の理解とサポートも、発話・言語障がいを持つ人々が自信を持ってコミュニケーションを行い、社会的に参加することを支援する上で重要です。

まとめ

発達障がいについての理解は、個々の生活だけでなく社会全体の健全な発展に不可欠です。誤解や偏見を排除し、適切な支援や環境の提供を通じて、発達障がいのある人々が自己実現を果たし、豊かな生活を送ることができるよう努めることが重要です。

 

参考

発達障がい「生きづらさ」を減らすために…18歳女子高校生が“橋渡し役”になる【現場から、】(静岡放送(SBS)Yahooニュース

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