2024.02.26

麻疹にかかり4歳で最重度知的障がいに…苦悩と奇跡の物語

80代になっても「不安はない」

内閣府が明らかにした「高齢社会白書(令和3年版)」によれば、日本の世帯の49.4%が65歳以上の者を含んでいます。その中で、夫婦のみで構成される世帯が最も多く、約3割を占めています。また、高齢者のみで構成される単独世帯を含めると、約6割が頼れる同居者のいない状況にあることが分かっています

北九州の郊外に住む多良久美子さんは、夫と知的障がいを持つ息子の3人で生活しています。8年前にはがんで娘を亡くし、頼れる子どもや孫がいない彼女は、80代に差し掛かった今でも不安を感じることなく、楽しく毎日を過ごしています。しかし、息子が4歳の頃、麻疹に罹患し最重度の知的障がいを持つようになった過去を持ちます

 

麻疹を患い…

久美子さんは、高校卒業後に勤めた会社で出会った夫と結婚し、24歳の時に息子が誕生しました。息子は非常に賢く、トイレに貼ったカレンダーで数字を覚えるなど、自立した行動が見られました。しかし、入園準備をしていたその時、麻疹により彼の命と知能が脅かされました。

 

「命だけは助けてください」

病院での診断では、肺炎にかかっているという診断が下り、急速に意識を失ってしまいました。その後、2週間の間、息子は植物状態になり、医師からは生存の見込みが薄いと告げられました。久美子さんは必死に祈り、「どんな状態でもいいから、命だけは助けてください」と願いましたが、同時に葬儀の準備も進めていました。

 

奇跡的に意識が戻る

しかし、奇跡的に息子の意識は戻り、体も動くようになりました。しかし、知能は失われたままであり、医師からは回復の見込みがないと告げられました。入院から4ヵ月後、退院を余儀なくされた久美子さんは、息子の将来に対する不安と苦悩に立ち向かっていくことになります

 

「障がい児・者の親の会」との出会い

息子が障がい児となって3年が経ち、治るかもしれないという希望を捨てることができませんでした。病院に行けば治るのではないかと、必死に考えていました。しかし、その思いが変わったのは、「障がい児・者の親の会」との出会いがきっかけでした。

会に参加することで、久美子さんはたくさんのお母さんたちと出会いました。彼らはとてもたくましく、明るく、前向きでした。

 

理解者が心を救う

彼らの姿勢は、障がいを持つ子どもをただの数字ではなく、1人の人間として扱うことの大切さを教えてくれました。その中で、私も自らの心の葛藤を打ち明けることができました。そして、他の参加者たちからの支えや理解が、久美子さんの心を救ってくれたのです。

その経験から、久美子さんは息子の障がいを受け入れ、彼との新しい生活を歩むことを決意しました。姉からの助言や福祉の講演会での言葉も、私の心に深く響きました。これらの出来事を通じて、久美子さんは前向きな未来への道を見つけました。

 

勇気を与えてもらえる

会員のお母さんたちの、子どもたちを「1人の人間」として育てる思いに触れ、久美子さんも彼らと共に前進したいと感じました。彼らの積極的な姿勢は、久美子さんに勇気と希望を与えました。そして、この仲間たちと共に過ごす時間が、久美子さんの心に深い影響を与えました。

その中で、「何度も線路に飛び込もうと思った」というエピソードを聞き、久美子さんも同じような絶望感に襲われたことがあったと明かします。しかし、他の参加者たちの共感と理解が、久美子さんを救ってくれました。お母さんたちの支えに触れることで、新たな希望が湧きました。

 

姉の助言

また、母親代わりである姉からの「福祉の世界で育てなさい」という助言や、福祉の講演会での「障がいを認め、新しいスタートを切る」という言葉も、久美子さんの心に深く響きました。これらの経験を通じて、息子の障がいを受け入れ、前向きなスタートを切ることができました。息子と共に生きる覚悟を決めたとき、久美子さんの中には不思議なほどの元気と希望が湧き出ました。

幸せな日々の発見

息子が養護学校に通うようになってからの生活は、時間の負担こそあったものの、久美子さんにとって大きな安堵でした。毎日24時間息子にぴったりと張り付く必要がなくなり、ひとり息抜きする時間も持てました

初めて養護学校に通い始めた頃は、息子の障がいに沈み込んでいました。何もかもできない彼に対して、謝罪の言葉ばかりが口をついて出ていました。

 

「いいことだけを書こう」

しかし、ある日、担任の先生からの一言が久美子さんの考え方を変えました。「連絡帳にはいいことだけを書こう」という提案でした。これまで否定的な視点に囚われていた久美子さんにとって、その言葉は目から鱗でした。

以来、必死になって息子の良いところを見つけ、連絡帳に記すようになりました。先生からの褒め言葉が、久美子さんの心に希望を与えてくれました。

 

前向きに考える

悪い部分やできないことにばかり目を向けるのではなく、前向きに、改善の余地や可能性を見出すようになりました。息子もその変化に応え、次第に成長していきました

彼は中学や高校、通園施設を経て、現在は生活介護事業所に入所しています。週末には家に戻り、久美子さんたちと共に過ごします。彼の存在は、久美子さんたちにとって大きな喜びであり、心の支えです。

 

尊重し合える仲に

今では、息子との関係は対等であり、お互いに尊重し合っているとのことです。彼の言葉がなくとも、久美子さんたちは彼の気持ちを理解し、共に笑い合える関係が築けています。

息子の存在は、久美子さんたちにとってかけがえのない宝物です。彼が帰ってくると、家の中が一気に明るくなり、おだやかな日々を過ごすことができています

まとめ

麻疹の後遺症は深刻で、知的障がいや神経疾患を引き起こすことがあるため、予防接種などの重要性を改めて感じます。

生活介護事業所は、障がい者や高齢者などの支援を提供し、自立した生活をサポート、日常生活の支援や医療的ケア、社会参加の支援など、個々のニーズに応じたサービスを提供します。これにより、利用者は安心して自宅での生活を続けることができ、家族も介護負担が軽減されます。生活介護事業所は、利用者の自立を促し、地域社会の一員として積極的に参加する支援を行うことで、より豊かな生活を実現する場所になります。

重度認知症などで大変な思いをしている方々の力になれる施設などに相談して、一人で抱え込まずに誰かに相談してほしいと思います。

 

参考

麻疹にかかった息子が4歳で最重度知的障がい者に…「飛び降りたら楽になるかも」思いつめていた私の目を覚ました姉のある一言とは(婦人公論.jp)Yahooニュース

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