2024.04.11

『障がいとはどういうものか』『このような配慮が必要』を明らかにする必要 合理的配慮義務化とは?

茨城県土浦市役所では、民間事業者に対する障がいへの合理的配慮義務化を前に、市職員向けの障がい理解研修が行われました。今年は初めて精神障がいをテーマにし、約50人の職員が当事者の声に耳を傾けました。

 

「精神障がい当事者会ポルケ」当事者同士が交流する場を提供

研修の講師は、「精神障がい当事者会ポルケ」の代表理事である山田悠平さん(39)でした。ポルケは2016年に発足し、「精神障がいがあることで経験する苦い経験や辛さも含めて、ひとりで抱え込まずに言葉にしていこう!」という合言葉のもと、当事者同士が交流する場を提供しています。精神障がいに関する調査や政策提言、学習会の開催なども積極的に行っており、地域社会における理解と支援の促進に努めています。

 

見た目では分からない精神障がいについて理解してもらう

山田さんは21歳の時に精神科を受診し、統合失調症と診断され、その後4度の入退院を経験しました。精神障がいによって、周囲とのコミュニケーションが難しくなり、抱えている悩みを共有できないことや友人関係の途絶えることもありました。そのような経験をもとに、当事者同士のつながりを作ろうと、「ポルケ」を始めました。

ポルケでは、見た目では分からない精神障がいについて地域の人々にも理解してもらうために、関連映画の上映や写真展を企画し、障がいへの啓発活動も積極的に行っています。山田さんは自らの経験を通じて、精神障がいのある人々が社会で理解され、支援される環境を作り出すために尽力しています。

 

「合理的配慮」の具体例として「午後2時からの研修」

山田さんは講演の冒頭で、研修が午後2時から始まったことを「合理的配慮」の具体例として述べました。市は最初、午前中の開催を希望していましたが、山田さんが体調面で午前中が難しいことを理由に時間変更を希望しました。

山田さんは、「電車のラッシュにあたると、いいパフォーマンスを発揮できず支障が出るかもしれない。」と述べ、時間の変更を提案しました。市はこの提案を受け入れ、「会場が取れたので午後にしましょう」と応じたことを山田さんは話しました。彼の特性に市が配慮を示し、当事者と実施者が対話を通じて、より適切な研修を行う状態を作り上げたことを指摘しました。

 

大事なのは「対話」だと強調

障がい者差別解消法では、事業者が障がいのある人に対して、障がいを理由に来店を拒否したり、サービス提供の時間や場所を制限したりすることが差別とされています。山田さんの体調に応じて市が研修時間を変更したことも、障がいの特性に柔軟に対応する合理的配慮の一例です。

一方で、事業者にとって過度の費用負担や物理的に実現不可能な場合は提供義務に反しないとされます。個別の場面で判断が求められますが、「障がいがあるからと特別扱いはできない」「前例がない」と無碍(むげ)に拒むことは認められていません。ここで大事になるのが「対話」だと山田さんは強調します。

 

「障がい者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要」

「合意的配慮ではプロセスが重要になります。障がい者からの申し出への対応が難しい場合でも、できるかできないかを一方的に決めるのではなく、互いが持つ情報や意見を共有し、代替手段を見つけていくことが求められます。障がい者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要です」。

山田さんは、合理的配慮の民間事業所への義務化が控えたこの時期を「重要なタイミング」と位置付けています。「合理的配慮には、障がい者の側から『障がいとはどういうものか』『このような配慮が必要』ということを明らかにする必要があります。しかし精神障がいには、偏見や差別の問題や、言語化に長けていない人もいます。今回の義務化は、自分の障がいをどう伝え、どのような配慮を望むかを改めて考える機会であり、私たちにとってエンパワーメントの機会だと思っています。過渡期ではありますが、障がいのない人と一緒に成長していくことが大切だと考えています」と述べました。

 

「障がいのある人の背景を理解してもらう必要」

山田さんは「対話が必要だが、障がいのある人の背景を理解してもらう必要がある。『権力勾配』という言葉があります。例えば、一緒に話しましょうと言っても、力関係があることで対等に話せないことがあります。行政など力を持つ側にも意識を促すことが重要です。障がい者団体を招いて勉強会をするという取り組みは、他の自治体にも広がってほしい」と語りました。

 

「見た目でわかりにくい障がい」という認識が共生社会を作る上で大事

今回の研修について、市障がい福祉課の酒井史人係長は「職員にとっては、ほとんど知らない内容も多かったと思う。当事者の方から直接実体験を聞くことでより伝わることが多いのではと考えた。さらに理解が進む必要があると思う」と話しました。同課の白田博規課長は「4月には合理的配慮の法的義務が民間事業者にも課せられる。社会全体での対応がより必要になってくる」とし、「窓口に来る方は車椅子の方ばかりではない。見た目でわかりにくい障がいのある方がいるという認識が共生社会を作る上で大事になる。当事者も見た目でわからない分、『障がいがある』と言えない人もいると思う。自分のことを伝えやすい環境をつくっていければ」と語りました。

合理的配慮義務化:障がい者への社会的包摂の一歩

合理的配慮義務化は、障がい者差別解消法の改正に伴い、日本において重要な法的枠組みの一つとなりました。この法改正により、民間事業者にも障がいへの合理的配慮が義務付けられることとなり、障がい者にとってより包括的な社会の実現が目指されています。

 

合理的配慮とは?

合理的配慮とは、障がい者が一般の人々と同等の機会を享受するために必要な配慮を指します。具体的には、障がい者が労働や教育、公共サービスなどを利用する際に、その障がいを考慮した適切な支援や調整を行うことを指します。例えば、車椅子を利用する人が建物に入るためのスロープの設置や、視覚障がい者が情報を得るための点字案内の提供などが該当します。

 

法改正の背景

これまで、障がい者差別解消法は、主に公共機関や官公庁に対する合理的配慮の義務を規定していました。しかし、民間事業者においても障がい者に対する配慮が不十分であるとの指摘があり、法改正が求められていました。この改正により、民間企業や団体も障がい者に対する配慮を義務付けられ、より包括的な社会の実現が期待されます。

 

期待される効果

合理的配慮義務化により、障がい者がより平等な機会を享受し、社会参加が促進されることが期待されています。また、障がい者が労働市場や教育機会によりアクセスしやすくなることで、彼らの能力や才能を最大限に活用することが可能となります。さらに、障がい者への配慮が一般的になることで、社会全体が多様性を尊重し、包括的な社会の実現に向けて一歩近づくことが期待されます。

 

社会的包摂の一環として重要な一歩

合理的配慮義務化は、障がい者に対する社会的包摂の一環として重要な一歩です。障がい者が社会の中で自立し、自己実現を果たすためには、彼らの特性やニーズに適切に配慮することが不可欠です。法改正により、民間事業者も障がい者に対する配慮を義務付けられることで、より包括的な社会の実現が目指されます。

 

統合失調症:症状、原因、治療法について

統合失調症は、重度の心の疾患の一つであり、現実感覚が混乱し、思考や感情の一貫性が乱れる病気です。一般的には、思考の解体や幻覚、妄想、社会的な隔離、異常な感情の表現などの症状が見られます。この疾患は、人生の各段階で発症する可能性があり、一度発症すると、慢性的な経過をたどることが一般的です。

統合失調症は、その症状の多様性と深刻さから、心の疾患の中でも特に重度なものの一つです。この病気では、患者の現実感覚が混乱し、思考や感情の一貫性が乱れることが特徴です。

 

思考の解体

思考の解体という特徴的な症状があります。これは、患者が自分の考えを整理することが難しくなり、複雑で不連続な思考パターンを示すことを意味します。また、幻覚や妄想といった現実とは異なる感覚や信念を経験することがあります。これにより、患者は虚偽の信念や見えない存在に対する恐怖を抱くことがあります。

さらに、社会的な隔離も統合失調症の特徴の一つです。患者は他者との関係を避け、自己の世界に閉じこもる傾向があります。これにより、友人や家族とのコミュニケーションが希薄になり、孤立感や孤独感が増大します。

 

感情の表現

感情の表現も、統合失調症の症状の一部です。患者は極端な感情の変化を示すことがあり、興奮状態から鈍感な状態まで幅広い感情を経験することがあります。また、感情の適切な調節が困難であり、不適切な反応を示すことがあります。

統合失調症は、発症のタイミングや経過に個人差がありますが、一度発症すると慢性的な状態をたどることが一般的です。治療や支援の早期介入が重要であり、患者とその家族にとっての負担を軽減するために必要です。

 

症状

統合失調症の症状は個人によって異なりますが、以下のような特徴的なものがあります。

 

  • 幻覚と妄想:病気の中核的な症状であり、現実には存在しないものを感覚的に経験することがあります。
  • 混乱した思考と話:統合失調症の人々はしばしば複雑で不連続な思考や発言をします。
  • 感情の変化:感情の範囲が極端に広がり、不適切な反応を示すことがあります。
  • 社会的な撤退:社会的な活動からの撤退や孤立が見られることがあります。

 

原因

統合失調症の原因には、遺伝的、生物学的、環境的な要因が関与していると考えられています。遺伝的要因は重要であり、家族歴に統合失調症を持つ人々の発症リスクが高くなることが知られています。また、脳内の神経伝達物質の異常や出生時の合併症なども関連しています。

 

治療法

統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会的治療の両方が一般的に用いられます。抗精神病薬は、幻覚や妄想などの症状を管理するのに効果的ですが、副作用も注意が必要です。心理社会的治療では、認知行動療法や家族療法が有効であり、患者の社会的スキルや日常生活の管理能力を向上させることを目指します。

 

統合失調症の理解

統合失調症は、深刻な精神疾患であり、患者やその家族にとって大きな負担をもたらすことがあります。早期の診断と適切な治療は、症状の管理や社会的な機能の改善に役立ちます。また、統合失調症を理解し、患者やその家族に対する支援を提供することが重要です。

まとめ

障がい者への合理的配慮義務化への準備が進む中、市職員向けの研修が有意義な一日となりました。山田さんの率直な体験談や、権力勾配に対する意識の高まりが、より包括的な社会への一歩を示唆しています。今後も、対話と理解を深め、障がい者の自己実現を促進するための努力が続けられることを期待します。

 

参考

「当事者との対話が重要」 精神障害を初のテーマに 土浦市が職員研修 NEWS Tsukuba

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