2024.06.10

就労継続支援A型事業所とその他の障がい福祉サービスの違いを徹底解説!

障がいを持つ方々が社会で活躍するためのサポートを提供する就労継続支援A型事業所やその他の障がい福祉サービスには、それぞれ特徴とメリットがあります。これから、A型事業所の特徴や利用する際のポイントについて詳しく見ていきます。

また、他の障がい福祉サービスとの違いを理解することで、自分に最適な支援を選択し、より効果的に活用するための知識を深めましょう。まずは、就労継続支援A型事業所がどのようなものかについて詳しく説明します。

 

就労継続支援A型事業所とその他の障がい福祉サービスとの違い

就労継続支援A型事業所では、日常生活の能力向上だけでなく、一般就労を目指すためのサポートも受けることができます。就労支援の障がい福祉サービスには、A型事業所以外に以下の4つの支援があります。

  • 就労継続支援B型事業所
  • 就労移行支援
  • 就労定着支援
  • 就労選択支援(令和7年10月サービス開始予定)

あなたにとってA型事業所が最適な選択であるかを判断するために、それぞれの違いを理解しておきましょう。

 

就労継続支援B型事業所との違い

就労継続支援A型事業所と就労継続支援B型事業所では、以下のように、雇用契約の有無、対象者、報酬形態が大きく異なります。B型事業所は、A型事業所で働くことが困難な人を対象にした障がい福祉サービスで、雇用契約は結びません。

 

軽作業を中心とした仕事の対価は、工賃として受け取りますが、A型事業所の最低賃金以上の給料と比較すると、かなり少ないことがわかります。

就労継続支援A型事業所

就労継続支援B型事業所

雇用契約

あり

なし

対象者

・身体・知的・精神障がい者で、一般企業での就労が困難な人

・原則18歳から65歳未満で、自治体の判断によって受給証が発行された人

・就労経験があるものの、年齢や体力面で一般企業への就労が困難な人

・50歳に達している人

・障がい基礎年金1級受給者

報酬形態

給料(最低賃金以上)

工賃(最低賃金に満たない場合もある)

月平均報酬額   

8万1,645円(令和3年度)

1万6,507円(令和3年度)

利用期間

制限なし

制限なし

事業所数

4,415か所(令和5年4月)

1万6,295か所(令和5年4月)

利用者数

8万5,421人(令和5年4月)

33万3,690人(令和2年4月)

参考:厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について〈論点等〉

 

就労移行支援との違い

就労継続支援A型事業所と就労移行支援では、以下のように雇用契約の有無と対象者、報酬形態の有無、利用可能期間が異なります。就労移行支援は、就労に必要な知識や技術向上のための訓練、職場体験などの機会提供、求職活動の支援や相談ができるところで、給料や工賃は得られません。

 

就労継続支援A型事業所

就労移行支援

雇用契約  

あり

なし

対象者

・身体・知的・精神障がい者で、一般企業での就労が困難な人

・原則18歳から65歳未満で、自治体の判断によって受給証が発行された人

・一般企業への就労を希望する人

・原則18歳から65歳未満の人

報酬形態

給料(最低賃金以上)

なし

利用期間

制限なし

2年

事業所数

4,415か所(令和5年4月)

2,934か所(令和5年4月)

利用者数

8万5,421人(令和5年4月)

3万6,315人(令和5年4月)

参考:厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「就労移行支援に係る報酬・基準について〈論点等〉

 

就労定着支援との違い

就労定着支援は、就労継続支援A型事業所・B型事業所や就労移行支援などを経て、一般就労した人が利用できる障がい福祉サービスです。就労系の障がい福祉サービスを利用してから6か月経過後、最長3年利用できます。サービス内容は、以下の通りです。

  • 就労後の悩みの相談
  • 就労に関するトラブル対応
  • 職場へのフォロー

就労定着支援は2018年4月に開始したばかりの、新しい障がい福祉サービスです。厚生労働省就労定着支援に係る報酬・基準について〈論点等〉によると、令和5年4月の事業所数は1,538か所、利用者数は1万5,332人と、他の障がい福祉サービスと比べて少ないのが現状です。

 

就労選択支援との違い

令和7年10月に開始予定の就労選択支援は、障がい者が自分に最適な職場や働き方を選べるように支援する障がい福祉サービスです。

 

この支援では、障がい者が自身の能力や特性を活かして職場で活躍できるよう、厚生労働省のマニュアルに基づいた「就労アセスメント」を活用する予定です。このアセスメントにより、客観的な調査と評価が行われ、これまで以上にきめ細かな個別支援が可能になることが期待されています。

就労継続支援A型事業所を利用する5つのメリット

就労継続支援A型事業所と他の就労支援の障がい福祉サービスとの違いがわかったところで、それならばA型事業所を利用するメリットは何なのか、知りたいですよね。A型事業所を利用するメリットは以下の5つがあるので、ご紹介します。

  • 支援を受けながら雇用契約を結んで働ける
  • 最低賃金が保証されている
  • 仕事を通して人と交流できる
  • 知識や技術が身に着く
  • 一般就労への求職支援を受けられる

 

支援を受けながら雇用契約を結んで働ける

就労継続支援A型事業所では、支援を受けながら雇用契約を結んで働けます。雇用契約を結ぶため、週20時間以上勤務すると、雇用保険に加入できるようになります。

社会保険には以下の4つがありますが、A型事業所の利用者が加入するのは、労災保険と雇用保険の2つが一般的です。

労災保険  

・雇用形態に関わらず、全ての利用者が加入する

・保険料は全額事業主が負担するため、利用者の負担はなし

雇用保険

・週20時間以上勤務する場合、加入する

・保険料は、事業主の方が多く負担する

健康保険

・短時間労働が多いため、加入しないことが多い(週30時間以上勤務で加入)

・保険料は、事業主と利用者で折半する

厚生年金

・短時間労働が多いため、加入しないことが多い

・保険料は、事業主と利用者で折半する

参考:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内
参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者

雇用保険に加入すると、もし途中で継続できなくなっても、資格条件を満たせば失業給付を受け取ることができるようになります。雇用保険料を負担する必要がありますが、平均月給8万1,645円の場合、利用者が負担する雇用保険料は、8万1,645円×0.6%(一般の事業)=489円です。

支援を受けながら雇用契約を結んで働き、雇用保険にも加入できるので、利用を検討してみましょう。

 

最低賃金が保証されている

A型事業所では最低賃金が保証されているため、以下のように、B型事業所や就労移行支援といった他の障がい福祉サービスと比較して、一番高い報酬を得られます。

「一般企業へ就職することは難しいけれど、収入を得たい」という方は、最低賃金が保証されているA型事業所で働くことが選択肢のひとつになるでしょう。

就労継続支援A型事業所  

8万1,645円(令和3年度)  

就労継続支援B型事業所

1万6,507円(令和3年度)

就労移行支援

なし

参考:厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について〈論点等〉

 

仕事を通して人と交流できる

A型事業所を利用すると、仕事を通じて人と交流することができます。ここでは、障がいに理解がある職員や、同じように障がいを持つ利用者がいるため、さまざまな情報交換が可能です。

周囲の人が目標に向かって取り組む姿を見ることは、大きな励みとなるでしょう。

さらに、家族以外の人との交流の場となるA型事業所の利用は楽しみの一つとなり、生活リズムを規則正しく保つことにもつながることが多いです。

 

知識や技術が身に着く

A型事業所の仕事に取り組むことで、職場で必要なコミュニケーションスキルやビジネスマナーを始めとする、さまざまな知識や技術が身に着きます。仕事内容に応じて身に着く力は、以下の通りです。給料を得ながら、一般企業に就職するための訓練ができるのが、A型事業所なのです。

事務作業

・パソコンスキル

・締め切りに対応する力

飲食業

・接客スキル(客対応・レジ・金銭管理)

・調理手順を効率化するスキル

製造業

・生産スキル

・販売スキル(金銭管理)

軽作業

・梱包スキル

・検品スキル

・ピッキングスキル

農作業

・栽培スキル

・販売スキル(金銭管理)

清掃業

・清掃スキル

 

一般就労への求職支援が受けられる

A型事業所では、一般就労への求職支援が受けられます。仕事を終えた後、職員が利用者の意向や適性を把握した上で、A型事業所で身に着けた知識や能力を活かせる企業を一緒に探してくれます。

サービス利用終了時における一般就労への移行者割合の推移は以下の通りです。赤色で示されるA型事業所は、青色の就労移行支援と比較すると移行率は低いものの、4人に1人が一般就労へ移行しています。

現時点では一般就労は難しくても、A型事業所で知識や技術を身に着けながら支援を受けることで、一般就労できる可能性が高まります。

出典:厚生労働省「障がい者の就労支援対策の状況

 

就労継続支援A型事業所を利用する5つの注意点

就労継続支援A型事業所は支援を受けながら雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を得られます。一方で、以下の5つの注意点があります。

  • 人によっては利用料金がかかる
  • 短時間労働が多く給料だけでは生活できないことがある
  • 職員や他の利用者との関係が良くないと精神的な負担になる
  • 人気の事業所は利用できない場合がある
  • 事業所での仕事内容が就職の役に立たないことがある

事前に知っておきたい情報ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

 

人によっては利用料金がかかる

A型事業所を利用する際には、利用料金がかかる場合があります。「お金を稼ぐつもりなのに、どうして利用料金を支払わなければならないの?」と疑問に思うかもしれません。

利用料金がかかる理由は、利用者の生産活動の売上だけでは障がい福祉サービスの運営費をまかなえないためです。運営費は行政からの給付金や助成金に加え、利用者からの利用料金で補っています。

利用料金は、世帯(本人とその配偶者)の収入に応じて負担上限月額が以下のように決められています。

区分

世帯の収入状況

負担上限月額  

生活保護  

生活保護受給世帯

0円

低所得

住民税非課税世帯※1

0円

一般1

住民税課税世帯(所得割16万円未満※2)

・入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※3  

9,300円

一般2

上記以外

3万7,200円

※1 3人世帯で障がい基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象

※2 収入が概ね670万円以下の世帯が対象

※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」となる

 

A型事業所を月に何回利用しても、上限を上回って支払う必要はありません。始めは利用料金が0円だったとしても、世帯収入次第では、その後、利用料金が発生する可能性があります。条件によって減免があるので、お住まいの障がい福祉課に確認してください。

 

短時間労働が多く給料だけでは生活できないことがある

A型事業所では短時間労働が多いため、給料だけでは生活できないことがあります。B型事業所よりは高いと言っても、以下のように、一般企業と比較すると給料は低く、生涯賃金となれば、その差がさらに開くことは明らかです。

ただし、補助金や障がい年金だけでは生活できない方でも、A型事業所の給料を合わせれば、生計を立てられるケースは少なくありません。

区分

月平均報酬額

就労継続支援A型事業所  

8万1,645円(令和3年度)

就労継続支援B型事業所

1万6,507円(令和3年度)

障がい者全体

約14万6,000円(平成30年度)

参考:厚生労働省「就労継続支援A型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について〈論点等〉
参考:厚生労働省「平成30年度障がい者雇用実態調査結果

 

職員や他の利用者との関係が良くないと精神的な負担になる

A型事業所では、職員や他の利用者との関係が良くないと、精神的な負担になることもあります。

事業所によって、職員の支援体制や利用者の年齢層が異なるため、職場の雰囲気もさまざまです。A型事業所は障がい福祉サービスである一方で、職員は事業所の存続や利益も考えなければならないため、人間関係に十分な配慮が行き届かないことも少なくありません。

事前に見学して雰囲気を知っておくと安心ですが、見学せずに利用を開始すると、職員や他の利用者と馴染めず、A型事業所に通うのが苦痛になってしまう可能性があります。

 

人気の事業所は利用できない場合がある

以下のような人気の高いA型事業所は、利用できない場合があります。

  • 高い給料を得られる可能性がある事業所
  • 送迎や、事業所実施の健康診断があるなど、健康面へのきめ細かい配慮がある事業所
  • ホームページやSNSを通して、幅広い広報活動をしている事業所

 

利用できない理由は、以下の通りです。

  • そもそも募集していない
  • 募集していても、スキル不足などの理由で、面接で落とされる
  • 面接を通過しても、定員がいっぱいで利用できない

 

A型事業所では定員数(20名定員が多い )が決まっているので、定員数を超えると募集がなくなったり、利用できなくなったりするのです。

 

事業所での仕事内容が就職の役に立たないことがある

一般就労を目指す利用者にとって、「A型事業所の仕事が就職に役立たない」と感じることがあります。

実際に、事業所の仕事内容によっては、単純作業が多く、専門的なスキルを身につける機会が少ない場合もあります。また、求職支援が仕事終了後に行われるため、就労移行支援のような充実した支援を期待してA型事業所を利用し始めると、求職支援体制に物足りなさを感じることもあります。

パソコンスキルを身につけたい場合は、パソコンを使ったデータ入力ができるA型事業所を探すなど、就職に役立つ事業所を選ぶことが重要です。

まとめ

A型事業所を利用するメリットや他の障がい福祉サービスとの違いを理解することは、就労支援を最大限に活用するために非常に重要です。A型事業所では、日常生活の能力向上や一般就労への準備ができるだけでなく、雇用契約を結んで働ける点や最低賃金が保証される点など、多くのメリットがあります。しかし、職員や他の利用者との人間関係や、事業所の仕事内容が一般就労にどれだけ役立つかといった点にも注意が必要です。

 

事前に事業所の雰囲気や支援体制を見学し、自分の目標やニーズに合った事業所を選ぶことが成功への鍵となります。例えば、パソコンスキルを身につけたい場合は、パソコンを使ったデータ入力の仕事ができる事業所を選ぶと良いでしょう。また、人気のある事業所は定員が限られているため、早めに情報収集を行い、適切なタイミングで応募することが大切です。

 

参考

就労継続支援A型事業所を解説!雇用形態、対象者、仕事内容、給与額は?


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