発達障がいの子どもたちが「学校はつらい場所」と思わないようにするには?日々をもっとラクに過ごすヒント
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最近、「発達障がい」という言葉が広く知られるようになり、多くの書籍やテレビ番組がこのテーマを取り上げています。しかし、実際には、当事者やその周囲の人々が「まだまだ理解されていない」「サポートが不足している」と感じることもあります。
一般の人だけでなく、医療関係者にさえ、発達障がいの実態が正しく理解されていないというのが大きな課題です。そこで、精神科医・岩波明氏の最新刊『発達障がいの子どもたちは世界をどう見ているのか』から、発達障がいの子どもたちのリアルをご紹介します。
今回は、ASD(自閉症スペクトラム障がい)、LD(学習障がい)、ADHD(注意欠如多動性障がい)の当事者が「学校」のシーンでどのように感じるかに焦点を当てて解説していきます。
ASDの子は一般的な学校生活に適応することが難しい
ASD(自閉症スペクトラム障がい)を持つ子どもたちは、一般的な学校生活に適応することが難しく、特に集団行動を苦手とします。
学校は、みんなで協力して活動する場であり、コミュニケーションや協調性が求められますが、ASDの子どもたちはそのような社会的スキルを発達させることが難しいのです。
彼らの中には、集団活動を嫌がり、何もしないでいることもあります。それは、集団の中での相互作用や予測不能な状況に不安を感じるためかもしれません。
また、他の子どもたちとの摩擦から参加を避ける子も少なくありません。彼らは、自分の興味や関心に集中することが多く、他の人とのやり取りが苦手な場合があります。
さらに、自己主張する子もいますが、他の子の意見を理解するのが難しく、自分の気持ちや考えをうまく表現できないことがあります。結果的に、孤立してしまい、教師やクラスメートとの間で衝突することがあります。
いじめの対象にされやすいのが現実
ASDの子どもたちは、クラスで浮いた存在となることが多く、無視されたり、いじめの対象にされやすいのが現実です。彼らにとって、学校は辛い場所であり、生きづらさを感じる場面が多いのが現実です。
先生が生徒一人ひとりの特性を理解し、常に適切なサポートを提供することで、クラス内には「違いを尊重する」という空気が生まれるかもしれません。
ただし、先生方も忙しく、発達障がいについての知識や理解が不足している場合もあります。そのため、先生が「なぜできないの?」「なぜみんなと一緒に行動しないの?」といった詰問をしてしまうことがあります。
集団の中で自分の役割や持ち分を理解するのが苦手
ASDのお子さんは、集団の中で自分の役割や持ち分を理解するのが苦手です。彼らは、グループでの役割分担や作業の調整が難しく、例えば、グループでの作業でうまく役割を果たせなかったり、発表の時間配分を誤ってしまうことがあります。
先生やクラスメイトが彼らの特性を理解し、彼らと他の生徒との間で仲介や調整を行うことで、より良い結果が生まれるでしょう。生徒一人ひとりの個性を尊重し、適切なサポートを提供することが重要です。
特性を理解することが重要
ASD(自閉症スペクトラム障がい)のお子さんに接する学校関係者は、まずそのお子さんの特性を理解することが重要です。
そのためには、主に二つの情報源を活用します。一つは、長期間そのお子さんと関わってきたご家族や医療関係者からの情報です。
まずは、ご家族や兄弟姉妹などの身近な方々から、そのお子さんに関する情報を集めます。彼らは日常的な生活の中でお子さんの好みや嫌い、不安を感じる状況や快適に過ごすための環境、そして彼らをサポートする際のコツなどを知っています。
同様に、医療関係者からはお子さんの行動や特性に関する専門的な情報を得ることができます。なぜそのような行動をとるのか、その症状の原因についても理解することが重要です。
学校の責任者と情報を共有
次に、学校の担任教師などが早急にこれらの情報を収集し、共有する必要があります。学校の責任者と情報を共有し、さらにクラスメイトや教育関係者にも正確な情報を伝えることで、お子さんへの理解と協力を促進することができます。この際、保護者や医療関係者に情報の共有を許可してもらうことも重要です。
また、定期的なフォローアップや情報の更新も大切です。お子さんの成長や変化に応じて、適切なサポートや配慮を継続して提供することが必要です。
特別支援学級などの利用を検討することが必要
情報のオープンな共有は慎重に行う必要があります。特に、不当な中傷やいじめのリスクを考慮する必要があります。
また、現在の学校の状況では、先生方に余裕がなく、一人の子どもに十分なサポートを提供することが難しい場合もあります。
そのような場合、特別支援学級などの利用を検討することが必要です。特別支援学級では、専門的なサポートが提供され、子どもたちがより適切な環境で学ぶことができます。
LDの子どもたちが抱える問題も多岐にわたる
また、LD(学習障がい)の子どもたちが抱える問題も多岐にわたります。LDと他の発達障がいが併存していることが多く、コミュニケーションに関する困難があります。たとえば以下のような問題があります。
- 相手の話をうまく聞けない、特に集団の中だと難しい
- 相手にうまく伝えられない
- 相手の言うことが理解できない
- 聞いたことを覚えていられない
- 話題が飛ぶことが多い、一方的な話になりやすい
- 反語やシャレがわからない
- 場の雰囲気を読むことが難しく、友人関係をうまく作れない
診断が重複している場合もあるため、ASDやADHDのお子さんと類似した問題がしばしば見られるのです。
これらの問題に対処するためには、専門家や学校関係者と協力して、適切な支援策を検討する必要があります。特に、診断が重複している場合は、それぞれの特性に合わせた支援が必要です。
適切な支援策を見つける
LDのお子さんの学習時、学校や家庭で提供できるサポートは多岐にわたります。
発達障がいの症状は、一人ひとり異なります。LDにおいても同様です。そのため、学習における困難なプロセスを理解し、適切な支援策を見つけるためには、お子さん自身からの情報が不可欠です。
学校や家庭では、お子さんに対して次のようなヒアリングを行うことが重要です。
- 学習の過程でどの段階でつまずいているか?
- その時、お子さんにとって学習する「世界」がどのように見えているか?
これらの情報を基に、個々のお子さんに適した対処法や支援策を検討します。特に、視覚的な支援や多様な学習方法の提供、ポジティブなフィードバックの提供などが有効です。
また、学校と家庭の連携も重要です。両者が情報を共有し、お子さんの学習に一貫したサポートを提供することで、彼らの学習環境をより良く整えることができます。
学校や家庭で行える具体的な対処法
ここでは、「読む」「書く」「計算する」に区分して、複数の対処法を挙げていきます。
具体的なものから抽象的なものまで幅広く、一部重複するものもありますが、より多くの選択肢を示すためですので、その点ご了承ください。
LD全般に当てはまる支援の原則としては、「指導内容を細分化する」「具体的な教材を使用する」「子どものペースに合わせて繰り返し指導する」などが挙げられます。
〈読むのが苦手な場合の対処法〉
- 読みやすくする工夫(文字を拡大する、ルビを振る、行間をあける、背景の色を変える、書体を変える、間違いやすい文字にマーカーで色付けする)
- 読み飛ばしをなくす工夫(指でなぞりながら読む、しおりや定規をあてながら読む、鉛筆や定規ですでに読んだ行を隠す、厚紙などを切って1行だけ見えるようなシートを使う)
〈書くのが苦手な場合の対処法〉
- 大きなマス目や広い罫線のノート、紙を使う
- 間隔をあけて書く
〈計算するのが苦手な場合の対処法〉
- ゆっくり落ち着いて計算させる
- 数字や記号は大きく印字する
〈共通の対処法〉
- スマートフォンやタブレット(デジタル教科書、アプリなど)を積極的に取り入れる
- 動画、漫画、図鑑などを有効活用する
小学校入学後、症状に悩まされることが増える
小学校入学後、規則正しい集団生活が始まると、ADHDのお子さんが症状に悩まされることが増えます。その症状には多様なレベルがあります。
静かに座っていることが難しく、貧乏ゆすりをしたり、イスや机をガタンガタン鳴らしたりすることもあります。また、授業中に出て行ってしまう子もいます。さらに、しゃべり続けることや、待つことが苦手なこともあります。
衝動性も顕著で、内的な衝動性では思慮深く考えずに簡単に決めてしまうことがあります。このため、質問が終わる前に答えてしまったり、人の会話に割り込んだりすることもあります。
個々のお子さんのニーズに合った支援が重要
こうした症状に対処するためには、個々のお子さんのニーズに合った支援が重要です。例えば、クラス内での落ち着きを保つための特別な座席や、授業中のリフレッシュのための休憩時間の提供などが考えられます。
また、衝動的な行動に対処するためには、事前のルール設定やポジティブなフィードバックを通じて、適切な行動を促すことが有効です。家庭や学校での支援の連携も重要で、定期的なフォローアップや情報交換が必要です。
様々な対処法
ADHDの症状や問題を読むと、学校生活がどれだけ辛いものかを感じてしまうかもしれませんが、安心してください。次のような対処法をご提案します。
行政レベルからは、教育政策の見直しや、特別支援教育の充実など、制度レベルでの対応が必要です。また、個別の学校や教育機関においては、アセスメントや支援体制の整備、教師や職員の研修などが重要です。
ADHDに対してパターン化されたマニュアルは存在していませんが、多くの場合、以下に示すポイントが必要な内容です。
- 「子どもをほめること、自信をつけさせること」
失敗を指摘するよりも、できたこと、良かったところをほめてあげましょう。長い説教や叱責は意味がありません。
- 「強制しない」
力まかせによる強制や、威嚇して言うことを聞かせることは、本人が自身の誤認・ミスなどに気づくチャンスをつぶしてしまいます。
- 「学習の環境を整える」
子どもがより良い条件で課題に取り組めるように、クラスなどの環境を変えていくことを試みましょう。
まとめ
発達障がいの子どもたちが学校で直面する様々な困難に焦点を当て、適切なサポートや理解がいかに重要かを探りました。支援策の充実と共に、子どもたちが安心して学べる環境づくりに向けて、学校や家庭が連携して取り組むことが求められます。このような取り組みが、彼らの学びと成長を支え、多様なニーズに応える社会の実現につながるでしょう。
参考
「発達障がいの子」が日々もっとラクに過ごすヒント #東洋経済オンライン @Toyokeizai
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