2024.05.29

「発達障がいの子」がイキイキとする接し方とは?知っておきたいポイント!

家庭や学校とは異なり、多様な人々が集まる「社会」という場には、目には見えない多数のルールが存在しています。

倫理や規律などが混在するこの公共空間や地域社会において、発達障がいの子どもたちはどのように日々を過ごしているのでしょうか?彼らの目線から見た「社会」の様子を知ることで、支援する立場にいる人々が心がけるべきポイントが明らかになるはずです。

 

今回ご紹介するのは、臨床経験が豊富でこの分野の第一人者である精神科医・岩波明氏の最新刊『発達障がいの子どもたちは世界をどう見ているのか』から、ASD(自閉症スペクトラム障がい)、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如多動性障がい)の当事者の知覚世界についてです。

本書では、彼らが社会という舞台でどのような視点を持ち、どのように感じているのかを解説しています。社会における具体的なシーンを通じて、発達障がいを持つ子どもたちの理解を深める一助となるでしょう。

 

ASDにも衝動性がある

衝動性があり、動き回ることはADHDに顕著に見られますが、知的レベルにも左右されるものの、ASD(自閉症スペクトラム障がい)の人にも見られる特徴です。例えば、私の診察室に来るASDの方の中にも、じっと座っていられない人がいます。

 

ある思春期の女性の自閉症患者は、外来の診察室において毎回まったく席に座らず、診察室の中をぐるぐる歩き回ったり、勝手にベッドに横になったりしていました。

また、電車の中で独り言を言いながら先頭車両まで移動し、先頭に到着すると最後尾まで移動するという動きを繰り返している人を見かけたことがあるかもしれません。おそらく、そのような人たちはASD(自閉症)である可能性が高いです。

 

規則的な動きや決まった行動パターンを好む

これは有名な自然科学者ダーウィンにも共通しています。彼は広い邸宅の庭をずっと歩き回っていましたが、歩き方や歩くコースは何年もまったく同じだったそうです。

ASDの人たちは規則的な動きや決まった行動パターンを好むのです。このような行動パターンは、彼らの知覚世界の一部であり、理解し支援するための重要な手がかりとなります。

 

ASD(自閉症スペクトラム障がい)では、衝動的な暴力が頻繁に見られるわけではありませんが、極限状況やパニック時には器物損壊や対人的な暴力が発生する可能性があるため、注意が必要です。

 

ASDの方々は自分の好きなものや興味のあるものに対してのめり込む傾向があります。例えば、漢字や石の収集、あるいは女性アイドルの記事収集など、興味や関心の対象は多岐にわたります。鉄道や乗り物、ゲームに対するマニアも多く存在します。

 

ADHDも好きなものや興味のあるものに対してのめり込む

同様に、ADHD(注意欠如多動性障がい)の人々も好きなものや興味のあるものに対してのめり込む傾向があります。

しかし、印象的なのは、ADHDの人が熱く激しくのめり込むのに対して、ASDの人は深く静かにのめり込むという違いがあることです。また、ADHDの場合はのめり込みやすいが同時に飽きやすいという特徴もあります。

ASDの人とコミュニケーションをとる際に、効果的なのは伝え方の工夫です。その際に重要なポイントを以下に詳しく説明します。


  • 迷わない伝え方

ASDの人は具体的で明確な指示を好みます。曖昧な言い回しや複数の指示を同時に与えると、混乱しやすくなります。ですから、「○○をしましょう」というように、シンプルかつ明快な言葉で伝えることが大切です。また、数字や具体的な事例を挙げることで理解を助けることができます。実際に行動を見せたり、動画で説明するのも効果的です。


  • 興味・関心の持てる伝え方

ASDの人は自分の興味や関心があるものには、熱心になります。ですから、相手の興味が何かを知り、そのテーマに関連した話題や資料を使ってコミュニケーションをとると効果的です。たとえば、電車が好きな人には、電車のイラストや模型を使って話をすると興味を引きます。


  • 肯定的な伝え方

ASDの人は、過去に否定的な経験を重ねることが多く、自己肯定感が低い場合があります。ですから、コミュニケーションでは肯定的なアプローチを心がけましょう。まずは相手の良いところを褒め、肯定的なフィードバックを与えます。その上で、改善点について話し合うことで、前向きな関係を築きます。

 

これらの伝え方の工夫を取り入れることで、ASDの人とのコミュニケーションが円滑になり、信頼関係を築くことができます。

 

LDの子はさまざまな場面でも同じ「世界」を生きている

LD(学習障がい)のお子さんは、家や学校だけでなく、日常生活のさまざまな場面でも同じ「世界」を生きています。

たとえば、「似たような文字がすべて同じに見えてしまう」という特性を持つ子は、道路や駅で看板を見ても、書かれている文字の意味が理解しづらいかもしれません。

 

また、「先生の話をうまく書き留められない」という子は、近所の人との会話でも言っていることが理解しづらいかもしれません。さらに、「計算が苦手」という子は、買い物の際にお金の計算が難しく、戸惑うこともあります。

 

こうした困難は、やる気不足や努力不足ではなく、脳の特性によるものです。そのため、周囲の大人は叱るのではなく、「その特性によって生じる問題をどのような工夫で解決できるか?」という視点でサポートしてあげる必要があります。

 

「計算せずに済む環境」をサポートする

例えば、最近ではコード決済なども浸透しているため、計算の苦手な子が買い物をする際には、「計算せずに済む環境」をサポートすることが重要です。このような工夫を通じて、LDの子どもたちが日常生活でよりスムーズに活動できるよう支援していくことが重要です。

周囲のサポートを得ることで乗り越えられる

LDを克服し、世界的に活躍する著名人は数多くいます。その中には、俳優のトム・クルーズやキアヌ・リーブスなどが含まれます。

彼らは仕事上、台本を暗記する必要がありますが、他の俳優とは異なり、台本を読むのではなく聞いて覚えるという方法を用いてきました。

若い頃は母親やアシスタントに台本を読んでもらい、録音テープを何度も聞いてセリフを覚えたそうです。このように、苦手なことでも周囲のサポートを得ることで乗り越えてきました。

 

LDは成人してから気づく場合もある

また、テレビタレントのミッツ・マングローブさんも、文字が認識できないため、読むことが難しい特性を持っています。しかし、LDであることを克服し、難関の慶應義塾大学法学部に合格するなど、勉強法を工夫して問題を乗り越えました。

LDは成人してから気づく場合もあり、落語家の柳家花緑さんもその1人です。40歳の時にLDと診断され、以後、その特性と付き合いながら活躍しています。さらに花緑さんは、LDに加えてADHDの特性も持っています。

 

ギフテッドとして活躍する可能性

LDに悩みながらも活躍を続ける著名人の例は、当事者やその周囲の人々にとって大いに参考になります。

LDの人々は、言語ではなくイメージによって思考を行う特性を持ち、非言語的な思考と直感力が特別な才能を生むこともあると、彫刻家のロナルド・D・デイビスさんは述べています。このように、LDは困難をもたらすだけでなく、ギフテッドとして活躍する可能性も秘めています。

 

「見ず知らずの他人に対して思ったことを口にしてしまう」

ADHDの子どもが成人し、社会生活を送る上で心配な点の一つは、「見ず知らずの他人に対して思ったことを口にしてしまう」という行動です。この特性はASDの方々にも共通するものであり、規律正しい言動を求める社会において問題となることがあります。

 

たとえば、喫煙が禁止されている路上で喫煙者を見かけて、衝動的に大きな声で注意してしまうことが挙げられます。このような行為はルールを守らない人に対しての批判であり、当然ながら悪いことではありませんが、きつい言い方をすることで相手と揉めることもあります。

 

見ず知らずの他人だけでなく、身近な相手に対しても思ったことを口にしてしまい、トラブルになるケースもあります。社会人として入社した会社の上司や先輩に対しても、率直な意見を述べることがトラブルの原因となることがあります。

 

社会に出る前にソーシャルスキルを身につけておくことが重要

このような特性を踏まえると、社会に出る前にソーシャルスキルを身につけておくことが重要です。

特別支援学級などでのトレーニングでは、相手の意図や気持ちを理解することの重要性や、感情や行動をコントロールする力の磨き方を学びます。

また、さまざまな日常生活の場面を設定し、お手本を見せたり、ロールプレイングで演じたりすることで、適切な行動を身につけることができます。

 

「過剰集中・一点突破」実は素晴らしい個性

ADHDのお子さんが持つ「過剰集中・一点突破」という特性は、実は素晴らしい個性と捉えることができます。この特性を肯定的に捉え、本人が打ち込める対象を見つけることが重要です。

 

例えば、芸術の分野ではこの特性が活かされます。絵画やイラスト、漫画などの芸術活動に没頭することで、ADHDの人たちは自己表現の場を見つけることができます。

彼らは想像力豊かで、新しい試みを考えることが得意なため、起業家としても活躍することがあります。

 

また、スポーツもおすすめです。激しい動きを伴うコンタクト競技やスタミナを求められる競技に打ち込むことで、身体的な活動を通じてエネルギーを発散し、集中力を高めることができます。

 

チャレンジする機会を与えることが重要

ADHDのお子さんにとって、「苦手」や「できない」ということが多いかもしれませんが、チャレンジする機会を与え、新しい興味や才能を見つけるサポートをしてあげることが重要です。彼らが自分にとっての「これだ!」という出会いを見つけることができれば、自己肯定感や生きる喜びを感じることができるでしょう。

まとめ

発達障がいの子どもたちが社会で日々過ごす中で、私たちが知っておくべきポイントが明らかになりました。彼らの視点から見た社会の様子を理解することで、より支援的な環境を築くためのヒントを得ることができるでしょう。

発達障がいの当事者が抱える課題やニーズに対する理解を深めることで、彼らの生活をより豊かに支援することが可能です。また、彼らの持つ個々の特性や個性を活かし、彼らが自己実現し、社会で活躍できるように助けることも重要です。

社会の一員として彼らが自信を持ち、自分らしく生きられるよう、私たちの支援が求められています。

 

参考

「発達障害の子」がもっとイキイキとする接し方 #東洋経済オンライン Toyokeizai


凸凹村や凸凹村各SNSでは、

障がいに関する情報を随時発信しています。

気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!

 

凸凹村ポータルサイト

 

凸凹村Facebook

凸凹村 X

凸凹村 Instagram

凸凹村 TikTok


 

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内