2024.05.24

発達障がいを抱える従業員への適切な対応とは?具体的なアドバイスで障がいがあっても活躍できる!

発達障がいを抱える従業員に対する上司の対応は、ニューロダイバーシティの考え方に基づいています。国が推進するこの考え方は、発達障がいを脳の特性の一つとして受け止め、尊重するものです。

現在、軽症の発達障がいのある人々が一般の企業で働いていますが、その中にはメンタルヘルスの問題を抱えて休職するケースも多く見られます。ひつじクリニックの理事長であり精神科産業医として活動する田中和秀氏によれば、このような従業員に対応するには、まずその個々の特性を理解し、適切なサポートを提供することが重要です。

それには、コミュニケーションのスタイルや業務の配慮を含めた柔軟性が求められます。また、チーム全体が理解し、協力することも大切です。彼らの特性を活かし、生産性を高めることが可能な場合もあります。上司が柔軟かつ理解を示し、適切なサポートを提供することで、発達障がいを抱える従業員も組織に貢献できることを示唆しています。

 

うつ状態に陥る要因となることがある

発達障がいを抱える従業員に対する適切な対応が求められています。田中和秀氏によれば、企業における長期休職者の大半がメンタルヘルス不調者であり、その背景には発達障がいが多く関与していると指摘されています。発達障がいを持つ人々は、指示の理解やコミュニケーションの困難さから、問題を抱えやすく、これが仲間外れや自信喪失、うつ状態に陥る要因となることがあります。

 

適切なサポートと配慮が必要

しかしながら、彼らは一般の従業員と同様に採用されており、その障がいは軽度であることが一般的です。企業にとって、彼らの休職や生産性の低下は大きな損失となり得ます。そのため、彼らに対する適切なサポートと配慮が必要です。

具体的には、彼らの個々の特性を理解し、業務上の課題に対する柔軟なアプローチを提供することが重要です。指示の明確化や視覚的な支援、定期的なフィードバックの提供などが有効な手段です。また、職場全体での理解と協力も必要です。発達障がいを持つ従業員が自信を持って業務に取り組めるような環境を整えることが、企業の健全な運営にとっても重要です。

 

職場での環境調整は産業医の役割

ASD(自閉スペクトラム症)は、精神科医の視点から見ると、現時点では特効薬が存在せず、主に環境の調整が必要です。そして、ASDの人が一般の職場で適応できる場合、周囲が彼らの特性を理解し、対応すれば問題は解決できることが多いと考えられています。

そのため、診断を必要としないケースもあるというのが一般的な見解です。職場での環境調整は、産業医の役割であり、ASDの人がうつ病などの二次障がいを発症していない場合、精神科医からも産業医への対応を求める声が多いです。

 

両者の「通訳」役を担う

産業医が実際にどのようにASDの人に対応しているか、一例を挙げて説明しましょう。あるASDの人は、自分のやり方にこだわりがあり、上司からの指示を理解しづらいため、トラブルが生じることがありました。

本人に話を聞くと、「上司の指示が理解できない」という声がありました。一方で上司は、「この人の言い分が理解できない」と不満を抱いていました。このような場合、私はまず両者の「通訳」役を担いました。

ASDの人が曖昧な指示を理解するのが難しいことを上司に説明し、具体的で明確な指示を出すようにお願いしました。また、工場の場合、具体的な作業内容や要求される品質やスピードを示すため、最終製品を見せながら指示を行いました。

 

抽象的な指示は理解しにくい

「いい仕事をしろ!」という指示の解釈は、人それぞれ異なります。特にASDの特性を持つ人にとっては、このような抽象的な指示は理解しにくい場合があります。そのため、産業医の介入や社内での対応が必要となります。

産業医の介入により、上司は数カ月で指示を適切に出せるようになり、ASDの人も1年以上問題を起こすことなく働くことができました。さらに、その上司からは「他のスタッフよりも仕事ができるので、いてもらわなければ困る」と高い評価を受けるまでに至りました。

 

具体的な指示を出すことが大切

「常識的に考えたら分かるでしょ?」という言葉は、一般的な価値観や特性を前提としていますが、ASDの人には適切ではありません。ASDの特性を理解し、具体的な指示を出すことが大切です。社内での対応がトラブルを回避するために重要です。

 

個々の人の価値観や特性の多様性を前提としている

ニューロダイバーシティは個々の人の価値観や特性の多様性を前提としています。そのため、異なる特性を持つ人に対して「常識的に考えろ」と指示するのは効果的ではありません。

また、「いい仕事」の定義も個々人によって異なります。例えば、ASDの人は「いい仕事」というと「時間をかけても精巧さを追求すること」を考えがちですが、上司は「時間内に決められた作業を一定の精度で達成すること」を重視するかもしれません。そのため、コミュニケーションがかみ合わないことが生じる可能性があります。

 

本人が理解できているか確認することが大切

そのため、あいまいな言葉ではなく、具体的な指示が必要です。作業の目的や工程、求められる成果、質、時間枠などを明確に説明し、本人が理解できているか確認することが大切です。

また、本人に理解した内容を話してもらうことも重要です。これによって、コミュニケーションの円滑化や業務の効率化が図れます。その際のコミュニケーションにおいては、比喩は使わず、簡単な言葉で詳細に、かつ、相手を尊重して話すようにします

 

作業設定のためのチェックリスト

  • 作業の目的を理解する
  • 作業工程の各ステップを説明する
  • 求められている成果または最終製品を示す
  • 求められている結果の質を伝達する
  • 完了までの時間枠を設定する
  • 指示が理解されたかどうかを確認する

 

「適当に」や「きちんと」といった漠然とした、不明確な基準で指示された場合、どうすればよいか戸惑ってしまうので「言語化」や「視覚化」が有効

「言語化」や「視覚化」した手順がいつでも確認できるよう、マニュアルや作業手順書を作成することが有効

仕事は優先順位をつけて指示することで混乱を防止

 

コミュニケーションのチェックリスト

  • 仮定を避けて
  • 直接的に
  • 正確に
  • 比ゆ的な言葉は避け、簡単な単語で
  • 詳細に
  • 尊重しつつ
  • 文書で補強し
  • 理解されるように

 

具体的な例示を含め、明確に指示を与える

指導や注意に当たっては、感情をあらわにした物言いは望ましくなく、落ち着いた態度で「〇〇は非常に良かった。また、今後は、××の部分をこうしたらもっと良くなる」といったように具体的な改善点を指摘する

 

上司が的確な指示を出すと他の従業員も働きやすくなる

先ほどの例では、上司が的確な指示を出すことで、他の従業員も働きやすくなり、良い上司としての評価を得ることができました。私はニューロダイバーシティを、上司の成長を促進する概念だと捉えています。指示が明確になることで部下は仕事をしやすくなり、それがチームの業績向上につながります。そして、上司自身の評価も向上することになります。

 

うつ病などの二次障がいを予防

「仕事ができない」という厳しい指摘を受け続けることは、本人を追い詰め、二次的にうつ病などの問題を引き起こす可能性があります。「指示があいまいだから理解できない」という認識を変え、具体的な指示を求めることで、ASDの特性に対応するだけでなく、全ての従業員が働きやすくなり、うつ病などの二次障がいを予防し、休職を防ぐことができるのです。

 

ADHDの特性を持つ従業員の対応

不注意や落ち着きのなさが特徴の注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持つ従業員にはどう対応すればよいでしょうか。

ADHDには治療薬があり、薬物治療で改善する可能性があります。そのため、ASDとは異なり、忘れっぽさや衝動性が高いために仕事に支障を来している方には、精神科医の受診が有益だと思います。ただし、薬物治療だけで不十分な場合には、環境調整も必要となります。このような場合、精神科主治医と産業医が協力して、社内の環境を改善することが求められます。

 

合併しているケースは特に注意が必要

また、ADHDとASDを合併しているケースも多く、そのような場合は特に注意が必要です。このような方々は、場の空気が読めず衝動的に行動してしまうため、周囲からの指摘や怒りを受けることが増え、二次障がいのリスクも上がります。しかし、私が診ているADHDとASD、そしてうつ病を合併している方々は、ADHDの症状を薬物治療で抑えることで、忘れることが減少し、うまくいくことが増え、うつ病の症状も改善しました。

発達障がいについて

発達障がいは、個々の発達の進み方において異なる特性や困難があらわれる状態の総称です。この障がいは、生涯にわたって持続し、日常生活や社会生活に影響を与える可能性があります。一般的な発達障がいには、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障がい、発達性協調運動障がい(DCD)などが含まれます。

 

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症(ASD)は、その幅広い症状スペクトラムに特徴づけられます。ASDの症状は、個々の人によって異なり、軽度のものから重度のものまで、さまざまな特性が見られます。

まず、ASDの主な特徴の一つは、社会的な相互作用の困難です。ASDの人々は、他人とのコミュニケーションや関係の構築が難しい場合があります。表情やジェスチャーの理解が不十分であったり、他人の感情や意図を読み取ることが難しいことが挙げられます。

 

言語の発達に遅れや反復行動の傾向

ASDの人々は言語の発達に遅れや障がいを抱えることがあります。言語の遅れや不自然な言語の使用、社会的な文脈に即した適切な会話が難しいことがあります。これにより、他人とのコミュニケーションがより困難になる場合があります。

さらに、ASDの人々は狭い興味や反復行動の傾向を示すことがあります。特定のトピックや活動に強い関心を示し、それに没頭することがあります。また、同じ行動や繰り返しのパターンを好み、予測可能性や安定性を求める傾向があります。

 

軽度の場合は日常生活に大きな支障をきたすことは少ない

症状の重さや特性は、個々の人によって異なります。軽度の場合では、社会的なコミュニケーションにおいて一般的な違和感や不自由さを感じることがありますが、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないかもしれません。一方で、重度の場合では、ほとんどの日常活動において支援や介助が必要となることがあります。

ASDの特性を理解し、適切な支援を提供することが重要です。個々の症状やニーズに合わせたアプローチが必要であり、早期の介入や専門家の支援を受けることで、ASDの人々がより良い生活を送ることができるでしょう。

 

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症(ADHD)は、注意力の欠如、多動性、そして衝動性の問題が特徴です。これらの症状は、日常生活の様々な場面で影響を及ぼし、学校や職場、家庭などで問題を引き起こす可能性があります。

まず、注意力の欠如は、物事に集中することが難しいという特徴です。ADHDの人々は、タスクを終える前に何度も他のことに気を取られたり、注意をそらされたりすることがよくあります。これは、勉強や仕事において継続的な集中が難しくなる原因となります。

 

体を動かしたり手や足を絶えず動かしたりする傾向

次に、多動性は、静座することが難しいという特徴です。ADHDの人々は、体を動かしたり、手や足を絶えず動かしたりする傾向があります。このような多動性は、授業や会議などの静かな環境で特に問題となります。

最後に、衝動性は、衝動的な行動や決定をする傾向を指します。ADHDの人々は、思考や行動を抑制することが難しく、その結果、衝動的な行動をとることがあります。これは、衝動的な買い物や意思決定、他人との関係での衝突などに表れることがあります。

 

学校や職場での学習や仕事に支障をきたす可能性

これらの症状は、学校や職場での学習や仕事に支障をきたす可能性があります。また、家庭生活や社会的関係にも影響を及ぼすことがあります。ADHDは子どもだけでなく、成人にも影響を与えることがあり、適切な支援や治療が必要です。早期の診断と適切な対応が、ADHDの人々が日常生活で成功を収めるための鍵となります。

 

学習障がい

学習障がいは、個々の人によって異なる学習スキルに問題を抱える状態を指します。この状態は、知的障がいや外傷性脳損傷などとは異なり、通常の知能を持つ人々にも見られます。学習障がいは、読み書き障がい(ディスレクシア)、計算能力障がい(ディスカルキュリア)、記憶障がいなど、さまざまな形で現れることがあります。

 

ディスレクシアとディスカルキュリア

ディスレクシアは、読み書きの障がいであり、文字や単語の認識や理解が困難であるという特徴があります。ディスレクシアの人々は、文字や単語の順序を逆に書いたり、読み書きの速度や正確性に問題を抱えることがあります。

ディスカルキュリアは、計算能力の障がいであり、数字や算式の理解や処理が難しいという特徴があります。ディスカルキュリアの人々は、基本的な数学的概念や計算スキルに苦労し、数学の問題や計算作業に対する抵抗感を抱くことがあります。

 

記憶障がい

また、記憶障がいは、情報の記憶や保持に問題を抱える状態を指します。記憶障がいの人々は、情報を短期的に記憶することが難しかったり、長期的な記憶の形成や保持に問題を抱えることがあります。

これらの学習障がいは、日常生活や学業、職場での様々な活動に影響を及ぼす可能性があります。早期の発見と適切な支援が重要であり、個々のニーズに合ったアプローチが求められます。また、学習障がいを理解し、差別や偏見を排除することも重要です。

 

発達性協調運動障がい(DCD)

DCDは、運動技能の習得や実行に困難を抱える状態です。この障がいは、基本的な運動スキルの発達が遅れ、日常生活や学校、スポーツなどでの活動に支障をきたすことがあります。

発達障がいは、早期の診断と適切な支援が重要です。多くの場合、早期の介入や適切な治療プランによって、症状の緩和や日常生活の改善が期待されます。また、周囲の理解や支援が重要であり、発達障がいを持つ人々が社会で十分なサポートを受けられるようにすることが必要です。

まとめ

発達障がいを抱える従業員に対する適切な対応が求められています。上司が柔軟かつ理解を示し、適切なサポートを提供することで、彼らも組織に貢献できることを示唆しています。ニューロダイバーシティの考え方を取り入れ、個々の特性を尊重し、適切な環境を整えることが、企業の成功にとって不可欠です。

 

参考

発達障がいを「戦力」にする上司の対応とは? 


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