2024.05.24

「ニューロダイバーシティが企業経営を左右する」企業経営における多様性とイノベーションの源泉

早稲田大学の入山章栄教授は、「ニューロダイバーシティが企業経営に与える影響」をテーマに講演を行いました。彼は、発達障がいやその他の精神疾患を脳の特性の違いとして捉え、これを尊重するニューロダイバーシティの重要性を強調しました。

日本では依然として、ニューロダイバーシティが障がい者雇用促進策の一環として見られがちですが、入山教授はこの概念が単なる雇用対策を超え、企業のイノベーション創出に不可欠であると述べました。

彼の主張によると、多様な神経特性を持つ人々が集まることで、企業はより斬新で革新的なアイデアを生み出すことができるということです。このような多様性が尊重される職場環境を整えることが、今後の企業経営にとって極めて重要であると彼は語りました。

経営戦略の中でニューロダイバーシティをどう位置付ければよいのか

入山章栄氏は、ニューロダイバーシティは今後の経営の在り方を大きく揺さぶる概念だと考えています。経営学の視点からすると、多様な考え方はイノベーションの源泉となります。

新しいビジネスモデルを生み出し、企業経営にプラスの効果をもたらすのが多様性であり、ニューロダイバーシティもその多様性の一つの次元です。すでに海外のIT企業では、ニューロダイバーシティ推進が大きな潮流になっています。

 

ラジオ番組で精神科の医師に指摘されたADHD

実は、私自身も注意欠如・多動症(ADHD)のようです。「ようです」というのは、これまで医療機関を受診したことはないのですが、あるラジオ番組で精神科の医師に指摘されたためです。確かに言われてみれば、年に一度は必ず財布やスマートフォンなどを失くしますし、時計はあまりに紛失するのでもう着けるのを諦めています。

時計を腕にはめ続けることができず、知らず知らずに外してしまうんですね。これは典型的なADHDの特徴だそうです。またそれより前にも、ある専門家から「入山先生はADHDだと思う」と言われたことがあり、その時は物を失くしてばかりいる自分自身への理解の一助となり、ショックはなくて、むしろ「なるほど」と納得する気持ちの方が強かったですね。

 

周囲は「ただの不注意な人」と受け止めている

物を無くしてばかりなので妻にはよく怒られますが、大学教授という職業なら、周囲は「ただの不注意な人」と受け止めてくれています。軽度ということもあり、ADHDの特性があっても、あまり困ることはありません。

こうした自分の経験もありますし、発達障がいには、その傾向に強弱があると聞いています。素人の極論ではありますが、実は「完全に普通の人」などこの世にいないのではないでしょうか。人には個性があるのだから、脳にも違いがある。程度の差こそあれ、「誰もが発達障がいとも言えるのでは」とすら感じます。

 

病気かどうかの解釈は周囲の受け止め方に左右

多様性だけではイノベーションは生まれないとされる中で、発達障がいの特性についても論じられています。発達障がいを持つ人が自らや周囲で問題にならない場合、診断基準を満たさないため、病気とはみなされないことがあると述べられています。そのため、病気かどうかの解釈は周囲の受け止め方に左右されると指摘されています。特に軽度の発達障がいでは、このような傾向がよく見られるとされています。

 

多様な発想が求められる現代

入山教授は、発達障がいが画一的な教育の中で問題になることを指摘しています。過去の製造業モデルでは、同じものを同じように作ることが求められ、ミスなく作業をこなすことが必要でした。しかし、現代では企業が生き残るためには、新しいものを生み出す能力が不可欠です。イノベーションは、既存のものを組み合わせて生まれるものであり、多様な発想が求められます。

 

多様性とともに「寛容さ」が重要

そのため、ニューロダイバーシティを尊重し、多様性とともに「寛容さ」が重要であると説かれています。日本ではダイバーシティ経営が強調されますが、ダイバーシティだけではなく、組織内でのインクルージョンやエクイティが整備されて初めて、多様性がイノベーションの源泉となると述べられています。

 

インクルージョンやエクイティの考え方が重要

ダイバーシティだけを追求しようとしても、人間は似た属性のグループを作り、自分たちのグループと異なる人たちと対立しがちです。

例えば、男性だけの経営層に少数の女性を入れても、うまく溶け込めず、男性は男性だけで固まり、女性の方もグループ化して男性グループと対立してしまうことがあります。これは、社会分類理論と呼ばれるもので、人々は自らを同じグループに分類し、他のグループと対立する傾向があります。

そのため、ダイバーシティを追求するだけではなく、インクルージョンやエクイティの考え方が重要です。これにより、異なる属性やバックグラウンドを持つ人々が組織内で認め合い、共存する文化が醸成されます。

 

人事制度や評価方法も見直す必要

また、多様な人材を採用した場合、その多様性を生かすための人事制度や評価方法も見直す必要があります。例えば、朝から夕方までの勤務時間に固執せず、夜型の人材や家庭がある人々のニーズにも柔軟に対応する必要があります。このような規則の見直しは、組織内の多様性を活かし、生産性や働きやすさを向上させる一助となります。

 

「認知的多様性」

「認知的多様性」を認め合う組織への移行が求められています。欧米の企業では、多様な人材が最も力を発揮しやすい環境を整えているという報告があります。一方で、日本では障がい者雇用促進法による障がい者雇用率のような制度が存在し、その文脈でニューロダイバーシティを受け入れる傾向が強いとのことです。

入山教授は、「多様性を高めることはイノベーション創出に不可欠であるため、ニューロダイバーシティは障がい者雇用率の維持だけでなく、経営にプラスな概念だという認識が重要だ」と述べています。

例えば、台湾の元デジタル大臣のオードリー・タン氏やイーロン・マスク氏は自閉スペクトラム症(ASD)と言われていますが、発達障がいのある人々は特異な才能を持つ場合があります。しかしそれに限らず、脳の特性の違いを認め合うこと、つまり「認知的多様性」を受け入れることが企業経営に有用であると説いています。

 

脳の特性の違いが考え方に影響を与えることがある

また、男女や日本人と外国人のように、性別や人種が異なる場合、脳の特性の違いが考え方に影響を与えることがあります。このような差異を受け入れることがニューロダイバーシティの理解に繋がり、性別や人種、LGBTQ+などの多様な属性についても差異を認めることにつながると指摘されています。

ニューロダイバーシティ:多様な脳の特性を尊重する

ニューロダイバーシティは、発達障がいや他の神経多様性を持つ個人たちの多様性を尊重し、それを肯定的な光で見る考え方や運動です。この概念は、発達障がいの特性を単なる障がいとしてではなく、脳の異なる機能や特性として捉えることを提唱します。

特に自閉症スペクトラム障がい(ASD)、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)、統合失調症、学習障がいなどの条件が含まれます。

 

個々の違いをポジティブに捉える

ニューロダイバーシティの重要な側面の一つは、個々の違いをポジティブに見ることにあります。つまり、特定の特性が「正常」とされる基準に適合しないからといって、それが必ずしも障がいであるとは限らないという考え方です。

例えば、ADHDを持つ人は、創造的な発想や柔軟な思考を持っている場合があります。同様に、自閉症スペクトラム障がいの人々は、独創性や深い専門知識を発揮することがあります。

 

社会が異なる脳の機能や特性を受け入れ活かす

このような視点から、ニューロダイバーシティは、社会が異なる脳の機能や特性を受け入れ、それを活かすための環境を整えることが重要だと主張します。従来の医学的なアプローチでは、これらの特性が病気や障がいとして扱われることがありましたが、ニューロダイバーシティの視点では、個々の違いを尊重し、社会がそれらを受け入れることが求められます。

 

ニューロダイバーシティの概念

ニューロダイバーシティの概念は、個々の脳の多様性を尊重し、それを社会的な資源として活用することを提唱します。従来の医学的なアプローチでは、発達障がいや神経多様性は問題とされ、治療や支援が必要とされてきました。

しかし、ニューロダイバーシティの視点では、これらの特性は個々の個性や才能の一部であり、社会がそれらを受け入れ、活かすことで多様性とイノベーションが生まれると考えます。

 

特性を個々の個性として認める

例えば、自閉症スペクトラム障がいの人々は、独自の興味や集中力を持ち、特定の分野で優れた能力を発揮することがあります。同様に、ADHDを持つ人々は、創造性や行動の柔軟性を持ち合わせています。ニューロダイバーシティの視点では、これらの特性を個々の個性として認め、それを活かすための支援や環境整備が重要だと考えられています。

 

従来の障がいモデルとは異なる

このようなアプローチは、従来の障がいモデルとは異なります。障がいモデルでは、特定の条件を持つ人々は問題や制約を持っているとみなされ、それを克服するための支援が重視されます。しかし、ニューロダイバーシティの視点では、それらの特性は単なる問題ではなく、個々の個性や才能の一部として位置付けられます。

 

ニューロダイバーシティの重要性

ニューロダイバーシティの重要性は、個々の個性や能力を尊重し、それらを活かすことで社会全体の豊かさやイノベーションを生み出すことにあります。例えば、自閉症スペクトラム障がいを持つ人々は、詳細な情報の処理や特定の専門知識の分野で優れた能力を発揮することがあります。また、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)の特性を持つ人々は、創造的な問題解決や柔軟な思考を示すことがあります。

 

イノベーションを促進

企業や組織においても、ニューロダイバーシティの理念を取り入れることで、様々な人材の力を最大限に活用し、イノベーションを促進することができます。また、職場の文化をより包括的で包括的で受け入れるものにすることができ、従業員の幸福感や生産性の向上にもつながるとされています。

 

ニューロダイバーシティの実践

ニューロダイバーシティの実践は、教育、雇用、社会組織の各分野で進んでいます。教育では、異なる学習スタイルやニーズに対応するためのアクセシビリティや支援を提供することが重要です。雇用では、採用プロセスや職場環境をより包括的にすることが求められます。そして、社会組織では、個々の個性や能力を尊重し、包括的な職場文化を構築することが必要です。

 

社会全体の発展とイノベーションの促進に重要

ニューロダイバーシティは、私たちが多様な脳の特性を尊重し、それをポジティブな価値として捉えることを促進します。このアプローチは、個々の個性や能力を活かし、社会全体の包括的な発展とイノベーションを促進するために重要です。企業や組織がニューロダイバーシティの理念を取り入れ、多様な人材の力を最大限に活用することで、より豊かな未来を築くことができるでしょう。

まとめ

ニューロダイバーシティの理念は、個々の脳の特性の多様性を尊重し、それを組織内で活かすことで、イノベーションと競争力を高めることが可能です。入山教授の主張は、企業経営における多様性の重要性を強調し、障がい者雇用促進策だけでなく、ニューロダイバーシティを経営戦略の一環として位置付けることの重要性を示唆しています。多様な人材が活躍する職場環境を整え、認知的多様性を尊重することが、今後の企業経営において不可欠であるとの彼の言葉が、我々に未来への道筋を示しています。

 

参考

早稲田大・入山章栄教授「ニューロダイバーシティが企業経営を左右する」


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