2024.05.23

身体障がい者手帳の等級一覧│小腸機能障がい、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい、肝臓機能障がい

身体障がい者手帳は、障がいを持つ方が必要な支援やサービスを受けるために欠かせないものです。この手帳の等級は、障がいの程度に応じて1級から4級まで設定されており、それぞれの等級によって受けられる支援内容も異なります。本記事では、小腸機能障がい、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい、肝臓機能障がいの等級について詳しく説明し、各等級に該当する具体的な状態や、日常生活での配慮ポイントについても解説します。これを通じて、障がいを持つ方々への理解とサポートの一助となれば幸いです。

小腸機能障がい

小腸機能障がいの等級は、以下のように1〜4級まで(2級はなし)となっています。

 

小腸機能障がいの等級

1級 

小腸機能障がいにより、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの

2級

該当なし

3級

小腸機能障がいにより、家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの

4級

小腸機能障がいにより、社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表

1級の「日常生活活動が極度に制限される」とは、栄養維持が困難で、推定エネルギー必要量の60%以上を、心臓近くの太い血管に高濃度の栄養剤を投与しなければならない状態です。具体的には、以下のいずれかに該当します。

  • 疾患等で小腸が切除され、残存空・回腸が手術時、75cm未満になったもの
  • 小腸疾患により、永続的に小腸機能の大部分を喪失している

参考:東京都福祉局 東京都心身障がい者福祉センター「障がい種類ごとの基準(8)小腸機能障がい

 

小腸機能障がい者への配慮ポイント

3級や4級の場合であっても、ゼリー状のものしか食べられないなど食事制限が必要になります。食事制限があることを理解し、食事会や飲み会についても参加を強要しないようにしましょう。小腸機能障がい者への配慮ポイントは、以下の通りです。

  • 定期通院できるように配慮する
  • 過度な肉体労働を避ける
  • トイレに行きやすいように配慮する
  • 食事やお菓子、アルコールなどを強要しない

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいの等級は、以下のように1〜4級までとなっています。

 

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいの等級

1級 

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいにより、日常生活活動がほとんど不可能なもの

2級

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいにより、日常生活活動が極度に制限されるもの

3級

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいにより、日常生活活動が著しく制限されるもの

(社会での日常生活活動が著しく制限されるものを除く)

4級

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がいにより、社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表

等級は、13歳未満か13歳以上か、年齢によって判定方法が変わります。13歳以上の場合、1級の「日常生活活動がほとんど不可能」とは、以下のいずれかに該当するものです。

 

1.CD4陽性Tリンパ球数が200/μl 以下で、以下のうち6項目以上が認められる

  • 白血球数について 3,000/μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査で連続して2回以上続く
  • HB量について男性12g/dl未満、女性11g/dl未満の状態が4週以上の 間隔をおいた検査で連続して2回以上続く
  • 血小板数について10万/μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査で連続して2回以上続く
  • ヒト免疫不全ウイルス-RNA量について5,000コピー/ml以上の状態が4週以上の間隔をおいた検査で連続して2回以上続く
  • 1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感と易疲労が月に7日以上ある
  • 健常時と比べて10%以上の体重減少がある
  • 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く
  • 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある
  • 1日に2回以上の嘔吐、あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある
  • 口腔内カンジダ症(頻回に繰り返すもの)、赤痢アメーバ症、帯状疱疹、 単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返すもの)、糞線虫症及び伝染性 軟属腫等の日和見感染症の既往がある
  • 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である
  • 軽作業を越える作業の回避が必要である

2.回復不能なエイズ合併症のため、介助なくしては日常生活がほとんど不可能な状態のもの

参考:東京都福祉局 東京都心身障がい者福祉センター「障がい種類ごとの基準(9)ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい

 

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい者への配慮ポイント

発熱、下痢、体重減少、全身倦怠感などの症状が現れ、免疫機能の低下によって、さまざまな感染症にかかりやすくなります。見た目ではわかりにくいですが、さまざまな症状を抱えている場合があるので、配慮を忘れないようにしましょう。ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい者への配慮ポイントは、以下の通りです。

  • こまめに休憩を取れるように、配慮する
  • 症状に応じて、残業制限やフレックスタイム制を利用できるようにする
  • 感染症予防のため、適切な室温設定や換気など、職場の衛生環境に気を付ける
  • 在宅勤務ができるようにする

肝臓機能障がい

肝臓機能障がいの等級は、以下のように1〜4級までとなっています。

 

肝臓機能障がいの等級

1級 

肝臓機能障がいにより、日常生活活動がほとんど不可能なもの

2級

肝臓機能障がいにより、日常生活活動が極度に制限されるもの

3級

肝臓機能障がいにより、日常生活活動が著しく制限されるもの

(社会での日常生活活動が著しく制限されるものを除く)

4級

肝臓機能障がいにより、社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表

1級の「日常生活活動がほとんど不可能」とは、以下のいずれかに該当するものです。

 

1.Child-Pugh 分類の合計点数が7点以上で、肝性脳症、腹水、 血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の項目のうち肝性脳症、または腹水の項目を含む3項目以上が2点以上の状態が90日以上の間隔 をおいた検査で連続して2回以上続くもの

2.以下のうち、5項目以上が認められるもの

  • 血清総ビリルビン値が5.0 mg/dl以上
  • 血中アンモニア濃度が 150 μg/dl以上
  • 血小板数が 50,000/mm3以下
  • 原発性肝がん治療の既往
  • 特発性細菌性腹膜炎治療の既往
  • 胃食道静脈瘤治療の既往
  • 現在のB型肝炎、またはC型肝炎ウイルスの持続的感染
  • 1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感と易疲労感が月7日以上ある
  • 1日に2回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある
  • 有痛性筋けいれんが1日に1回以上ある

参考:東京都福祉局 東京都心身障がい者福祉センター「障がい種類ごとの基準(10)肝臓機能障がい

 

肝臓機能障がい者への配慮ポイント

肝臓移植をした人は、抗免疫療法を必要とする期間中は、1級に該当します。「沈黙の臓器」といわれる肝臓が機能障がいを起こすまでになっているということは、かなりのダメージがある状態なので、しっかりと配慮しましょう。肝臓機能障がい者への配慮ポイントは、以下の通りです。

  • 定期通院を認める
  • 疲れやすい症状がある場合、こまめに休憩を取ったり、業務量を見直したりする
  • 食生活の乱れや飲酒を避けるため、接待の多い部署を避ける

身体障がい者手帳の等級は通常固定、ただし例外的に変更できる場合がある

身体障がい者手帳には、原則として有効期限がなく、更新の必要もありません。(療育手帳は一定期間後、精神障がい者保険福祉手帳は2年ごとに更新が必要です)そのため、一度交付されたら、基本的にはずっと同じ等級です。

脳性麻痺や四肢欠損などの身体障がいは、月日が経ってもその程度が変わることは考えにくいためです。しかし、以下の2つの場合については、等級が変更される可能性があるので、ご紹介します。

  • 手帳に有効期限が記載されている場合
  • 障がいが重くなり現在の等級で得られる支援では不足する場合

 

手帳に有効期限が記載されている場合

手帳に有効期限が記載されている場合、再認定を受ける必要があり、身体障がい者手帳の等級に該当する障がいが引き続き認められると、手帳が更新されます。等級に該当しないレベルまで症状が改善している場合は、手帳を返納しなくてはなりません。

なぜなら、近年のペースメーカー植え込みや臓器移植といった医療や、機能回復訓練技術のめざましい進歩によって、障がいの程度が変化する事例が増加してきているからです。

障がいの状態が軽減する可能性がある場合は、手帳に1~5年程度の有効期限が記載されていて、有効期限の1か月前までに通知が届くので、必ず再認定を受けましょう。

 

障がいが重くなり現在の等級で得られる支援では不足する場合

身体障がい者手帳を取得したときよりも障がいが重くなり、現在の等級で得られる支援では不足する場合も、再認定の申請が可能です。

自覚症状では障がいが重くなっていると感じていても、医師にそう診断されなければ、等級はそのまま、あるいは、反対に下がったり、手帳を返納したりしなくてはならない可能性があります。まずは、お住まいの自治体の障がい福祉課などの窓口に問い合わせてみましょう。

 

身体障がい者手帳の等級についてよくある疑問

ここまで身体障がい者手帳の等級について理解が深まったと同時に、疑問も生じたことと思います。身体障がい者の方からよくお聞きする、等級についての以下の2つの質問に回答するので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 等級の変更はどこでおこなえばいいの?
  • 等級によって受けられるサービスは変わるの?

 

等級の変更はどこでおこなえばいいの?

既に身体障がい者手帳をお持ちの方で、等級の変更を希望している方は、お住まいの市区町村の障がい福祉課などの窓口に行きましょう。事前に確認が必要ですが、多くの場合、以下の5点を準備しておくと安心です。

  • 指定医師による診断書、意見書
  • 顔写真
  • 身体障がい者手帳
  • 印鑑
  • 身分証明書、もしくはマイナンバーカード

本人による申請が難しい場合は、家族や医療機関の職員による代理申請が可能な場合もあるので、窓口で相談してみてください。

注意したいのは、等級が上がると思って申請しても、医師の診断によっては、等級がそのままになったり、反対に下がる、もしくは手帳を返納することになる可能性があることです。まずは、自治体の障がい福祉課などの窓口でご相談ください。

 

等級によって受けられるサービスは変わるの?

等級によって、受けられるサービスは変わります。身体障がい者手帳を所持する人が受けられる支援サービスのうち、以下の3つは、等級が上がると手厚いサービスが受けられるようになります。

 

等級が上がると手厚くなる支援サービス

自治体によって受けられる支援サービスや、等級に応じた内容の差は異なるので、詳細については、お住まいの自治体HPや障がい福祉課などの窓口で確認しましょう。

就職のチャンスに   

関するもの

1級・2級の重度身体障がい者は、障がい者雇用率の算定方法が異なり、企業は実際よりも多くカウントできるため、一般企業への就職のチャンスが広がる

医療費の助成に

関するもの

1級・2級の人と、3級で療育手帳Bとの重複障がいがある人は重度障がい者・高齢重度障がい者医療費の助成が利用できる

税金控除に

関するもの

1級・2級の特別障がい者は、所得税と住民税の控除額が増える

まとめ

身体障がい者手帳の等級について、詳しくご説明させていただきました。改めて、ポイントをおさらいしていきましょう。身体障がい者手帳の等級とは、障がいの程度を示したもので、障がいの程度に応じて均等にサポートするために制定されました。等級が重い方が、受けられる支援サービスは手厚くなっています。障がいの種類は5つに分類でき、それぞれ等級が定められています。

視覚障がい

1~6級

聴覚または平衡機能の障がい

聴覚機能障がい

2~6級

(5級はなし)

平衡機能障がい

3級・5級

音声機能、言語機能、

またはそしゃく機能の障がい

3~4級

肢体不自由

上肢機能障がい

1~7級

下肢機能障がい

体幹機能障がい

1~5級

(4級はなし)

乳幼児期以前の非進行性の脳病変による

運動機能障がい

1~7級

内部障がい

心臓機能障がい

1~4級

(2級はなし)

じん臓機能障がい

呼吸器機能障がい

ぼうこうまたは直腸の機能障がい

小腸機能障がい

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい

1~4級

肝臓機能障がい

参考:厚生労働省「身体障がい者障がい程度等級表

身体障がい者手帳の等級は、障がいの程度に応じた適切な支援を受けるために重要です。障がい者一人ひとりの状況やニーズを理解し、日常生活や職場での適切な配慮を心掛けることが求められます。定期的な状態の確認と必要に応じた手帳等級の再認定を行い、適切な支援を受けられるよう努めましょう。また、障がい者がより快適に過ごせるよう、周囲の理解と協力も大切です。

 

参考

身体障がい者手帳の等級一覧│基準や違い、等級別のサポートを解説


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