2024.05.14

肥満防止、がんの抑制、全身の体力向上につながる!「噛むこと」の大切さとは?

長寿を迎えるために、食事において何を重視すべきか。精神科医の保坂隆さんは、「よく噛むことが何よりも重要です。噛むことの大切さを考え、伝えることを目的にした日本咀嚼学会には『卑弥呼の歯がいーぜ』という標語があります。そこでは、肥満の予防、がんの抑制、全身の健康向上など、噛むことの8つの利点が説かれています」と述べています。

 

食事の重要性

食事は、加齢とともにその重要性が一段と高まります。年齢を重ねると、歯の健康や口の機能が低下し、嚥下障がいや誤嚥性肺炎のリスクが増大します。このような状況下で、しっかりとした噛むことは欠かせません。食物を十分に噛むことで、消化が促進され、栄養の吸収が改善されると共に、嚥下障がいや誤嚥性肺炎のリスクも軽減されます。

 

健康を維持する上で極めて重要

古代の日本人が硬い食物を主食としていた時代には、1回の食事でおよそ3900回も噛んでいたとされます。そのような習慣があったことは、健康的な食事の取り方を示唆しています。しかし、現代では、食事の摂取方法や生活習慣の変化により、食物を丁寧に噛む機会が減少しています。それでも、食事をゆっくりと噛むことは、健康を維持する上で極めて重要です。

したがって、食事をする際には時間をかけ、よく噛むことを心がけることが肝要です。この習慣は、身体の健康維持だけでなく、精神的な満足感や食事の楽しみも増すでしょう。加齢による身体機能の変化に対して、食事の質を保つことはきわめて重要です。

 

食事にかかる時間も約11分ほどに短縮

時代は変わり、食事の西洋化が進む中、口に入るものがますます柔らかくなっています。柔らかい食べ物は噛まずに飲み込むことができますから、噛む回数は従来の約620回程度に大幅に減少し、食事にかかる時間も約11分ほどに短縮されました。しかしこのままでは、噛む回数が極端に少なすぎると言わざるを得ません。

では、具体的にどのくらいの噛み数が適切なのでしょうか。一般的な目安として、「ひと口30回」が理想的だとされています。ただし、現代人にとってこれは少々ハードルが高いかもしれません。

 

たくさん噛める工夫をする

そのため、この目標を達成するためには、噛みごたえのある食材を積極的に取り入れることが重要です。例えば、玄米や胚芽米、きのこ、根菜、こんにゃくなどが挙げられます。さらに、食材を大きめに切ったり、少量をひと口に入れて味わいながら食べるようにすることも有効です。味付けは控えめにし、素材そのものの味わいを楽しむことも大切です。

 

「あと10回!」

現代人は、平均してひと口で10~20回しか噛んでいないと言われています。ですから、「飲み込もう」と思ったときに、「あと10回!」と自分に声をかけることで、適切な噛む回数に近づけるでしょう。

 

学会の標語「卑弥呼の歯がいーぜ」

日本咀嚼学会は、噛むことの重要性を広めるために1990年に設立されたNPO法人です。その学会の標語は「卑弥呼の歯がいーぜ」で、古代時代の女王・卑弥呼がよく噛んで食事をしていたことに由来しています。この標語のもと、噛むことの8つの効用が伝えられています。

  • ひ:肥満防止。よく噛むことで脳が満腹感を覚え、食べ過ぎを防ぎます。
  • み:味覚の発達。よく噛めば、食材の本来の味がよくわかり、味覚が発達します。
  • こ:言葉の発達。噛むことで顔の筋肉が鍛えられ、表情が豊かになり、言葉の発音が改善されます。
  • の:脳の発達。噛む動作により脳への血流が増え、脳の活性化につながります。
  • は:歯の病気予防。噛む回数が増えると、唾液の分泌が増え、口内が洗い流され、虫歯や歯周病の予防になります。
  • が:がんの予防。唾液に含まれる成分が発がん性を抑制する働きがあるため、がんの予防につながります。
  • い:胃腸の働きの促進。噛むことで食品が細かくなり、胃腸の負担が軽減され、正常な消化が促進されます。
  • ぜ:全身の体力向上。しっかり噛むとあごの筋肉が発達し、全身に力が入ります。

 

このように、噛むことには多くの利点があります。噛むことで健康を保つことができ、お金や特別な技術は必要ありません。自分の歯でも義歯でも、噛むことで健康を維持できます。

 

最も重要なのはバランスよく摂取すること

食事をする上で、最も重要なのはバランスよく摂取することです。一つの食材に偏ってしまうと、体に良くありません。これが偏食の問題です。

ある食材を過剰摂取すると、ホルモンのバランスを乱したり、成長を阻害したり、下痢を引き起こすこともあります。バランスの良い食生活を心がけることが重要です。

 

少ない品数で済ませる傾向

しかし、最近では、少ない品数で済ませる傾向が見られます。高齢者も同様で、牛丼やパスタ、ラーメン、おにぎり、サンドイッチなど、一つのものだけで食事を済ませることがあります。

かつての家庭料理は、豪華ではなかったものの、味噌汁、煮物、焼き物、漬物など、様々な品数があり、自然と栄養バランスが取れていました。

 

食材の色に注目

現在、栄養バランスを保つためにはどうしたらいいのでしょうか。それには、食材の色に注目することが重要です。赤、黒、緑、黄色、そして白の5色がそろうように食材を選ぶことが大切です。各色の代表的なものを挙げてみましょう。

  • 赤:にんじん、トマト、そして肉類が含まれます。
  • 黒:黒豆、黒ごま、昆布やわかめなどの海藻類、そして黒酢があります。
  • 緑:レタス、ほうれん草、きゅうり、アスパラガス、ブロッコリーなどが含まれます。
  • 黄色:とうもろこし、かぼちゃ、たくわん、卵があります。
  • 白:大根、カリフラワー、豆腐、牛乳などが含まれます。

 

“ちょい足し”を意識

たとえば、ラーメンを食べる際に、コーン(とうもろこし)、海苔、青ねぎをトッピングすれば、黄色、黒、緑がすぐにそろいます。

メインの料理に“ちょい足し”する気持ちがあると、各色をそろえやすいかもしれません。これにより、食事の栄養バランスを向上させることができます。

 

栄養バランスをチェックする「マゴワヤサシイ」

栄養バランスをチェックするための簡単な目安として、「マゴワヤサシイ」というキーワードがあります。

 

  • マ(豆類):納豆、豆腐、煮豆、枝豆、きなこ、おから、ゆばなどが含まれます。
  • ゴ(ごまなどの植物性油脂):炒りごまやすりごまを常備し、料理にひとさじ加える習慣をつけましょう。
  • ワ(わかめなどの海藻類):海苔、昆布、ひじきなどを積極的に摂取し、ヨウ素の不足に注意しましょう。
  • ヤ(野菜):生野菜だけでなく、煮たり焼いたりして1日350グラムの野菜摂取目標を達成しましょう。
  • サ(魚):特に青魚を積極的に摂取しましょう。味噌汁には煮干しを使うなど、魚介類を工夫して摂取します。
  • シ(しいたけなどのきのこ類):しめじ、エリンギ、えのきだけ、まいたけなどを料理に取り入れましょう。
  • イ(いも類):いも類に含まれる澱粉と繊維質は、脳の栄養源や便秘予防に役立ちます。

 

これらの食品をバランスよく摂取することで、健康的な食事習慣を身につけることができます。

バランスの良い食事の重要性と実践方法

バランスの良い食事は健康的な生活を送る上で欠かせません。適切な栄養素をバランスよく摂取することは、体の機能を維持し、疾病のリスクを低減するのに役立ちます。ここでは、バランスの良い食事の重要性と実践方法について探ってみましょう。

 

バランスの良い食事の重要性

  • 栄養素の摂取バランス: 健康な食事は、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく含んでいます。これらの栄養素は、体の機能を正常に保ち、健康を維持するために必要です。
  • 疾病予防: バランスの良い食事は、心臓病や糖尿病などの慢性疾患のリスクを低減するのに役立ちます。適切な栄養素を摂取することで、体重を管理し、血糖値やコレステロールレベルをコントロールすることができます。
  • 消化器官の健康: 食物繊維や水分を含むバランスの良い食事は、消化器官の健康を促進し、便秘や消化不良などの問題を予防します。
  • エネルギーの安定供給: 適切な栄養バランスを保った食事は、エネルギーの安定供給につながります。急激な血糖値の変化を防ぎ、一日中持続的なエネルギーを提供します。

 

バランスの良い食事の実践方法

  • 五大栄養素のバランス: 炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取しましょう。食事を計画する際に、これらの栄養素が含まれる食品を組み合わせることが重要です。
  • 食品グループのバランス: 主食、主菜、副菜、果物、乳製品など、食品グループをバランスよく摂取することを心がけましょう。食事のバリエーションを豊かにすることで、様々な栄養素を摂取できます。
  • 色とりどりの食材を選ぶ: 赤、緑、黄色、白など、色とりどりの食材を選ぶことで、多様な栄養素を摂取することができます。例えば、野菜や果物の色合いを意識して選ぶことで、ビタミンやミネラルをバランスよく摂取できます。
  • 食事の回数と量を調整する: 一日に何度か小分けして食事を摂ることで、消化吸収が効率的に行われます。また、適切な食事量を摂取し、過剰摂取や偏った食事を避けることも大切です。

 

バランスの良い食事は、健康的な生活を送るための基本です。食事を通じて様々な栄養素をバランスよく摂取し、体に必要な栄養をしっかりと補給しましょう。

まとめ

バランスの良い食事とよく噛むことは、長寿を迎えるための重要な要素です。食事の品数や色合いに気を配り、噛む回数を意識することで、健康な生活を送ることができます。食事は単なる栄養摂取だけでなく、健康の基盤を築く行為です。今日から食事を通じて、健康的なライフスタイルを実践しましょう。

 

参考

これで肥満防止、がんの抑制、全身の体力向上になるうえボケない…長生きに直結する「卑弥呼の教え」の中身 古代人は一度の食事に1時間かけ約3900回噛んでいた #プレジデントオンライン

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