2024.05.13

熱中症の兆候を逃さない1日3度のプチ習慣 熱中症予防のためのエアコン利用と注意点

熱中症を防ぐためには、自らがその状態にあるかどうかを正確に認識することが肝要です。天野篤さんの指摘によれば、多くの熱中症患者は自覚がありません。そのため、定期的に体温と室温を把握することが重要です。この簡単な行動が、命を守るための処方箋となるでしょう。(本稿は、天野篤『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー/講談社)の一部を再編集したものです。)

 

心臓にトラブルがある方は要注意

心臓にトラブルがある人は、熱中症になると重症化しやすい傾向があります。特に最近では、9月になっても急に気温が上がることがあり、熱中症を引き起こすケースが減りません。このようなリスクの高い人々だけでなく、健康な人々も熱中症を避けることが重要です。そのために、体温を定期的に測定することが非常に効果的です。

 

熱中症のメカニズム

熱中症は、体内の水分が失われることで起こる病態で、大量の汗をかいた後、体温を下げることができなくなり、様々な臓器に障がいを引き起こします。一般的に、体温が37.0度以上の場合は危険性が高まり、39度以上の場合は脱水が深刻で危険な状態となります。脳の温度が上昇することもあり、意識を失うことさえあります。つまり、体温の上昇は熱中症の警告サインとなるのです。

 

体温を測る習慣をつける

熱中症から命を守るためには、1日に最低2回、できれば3回は体温を測る習慣をつけることをおすすめします。特に持病がなく健康な人が、気温の高い環境で行動する場合は、体温の変化に注意することが重要です。体温を測定すると、状況によってかなりの変化があることがわかります。

耳式体温計を使っている私の場合、右耳が36.0度、左耳も36.0度です。この体温計は耳の中のもっとも高い鼓膜の温度を測定できるため、衣服の脱ぎ着をすることなく手軽に測定できます。

 

日常の活動や精神状態によって変動

私は普段、何かしら考えながら会話していると右側が高くなり、英語の論文を書いていると逆に左側が高くなります。また、体を動かしているときは左右の耳で体温差がより顕著に現れます。このように、体温は自分の体の状態を反映しており、日常の活動や精神状態によって変動します。

 

熱中症を予防するためには

熱中症を予防するためには、体の内部の温度である深部体温を測定し、普段の体温よりも高い場合は、まずは首元など太い血管が通っている部分を冷やすことが重要です。わきの下、口(舌)、耳、直腸などの場所で測定を行い、体温が上昇している場合は適切な対策を取るようにしましょう。

 

水分補給も非常に重要

体温を測定することに加えて、よく言われることですが、水分補給も非常に重要です。特に大切なのは、「排出された分を補充する」という意識です。一般的な体重の人は1日に1リットル程度の水分を尿として排出しています。

したがって、最低でも1日1リットルの水分を食事以外から摂取する必要があります。ただし、一度に1リットルの水分を摂取するのではなく、起床時にコップ1杯の水を飲んだり、三度の食事の際にコップ1杯の水を飲むなど、「生活の中で行動に合わせて水を飲む」という習慣が重要です。

 

汗の量に応じて30分に1回程度の水分補給が必要

これだけでも脱水のリスクは減りますが、暑い環境で体温が上昇している場合は、汗の量に応じて30分に1回程度の水分補給が必要です。また、大量に汗をかくと塩分も失われるため、市販の経口補水液である「OS-1(オーエスワン)」などを利用することが理想的です。

 

利尿作用が強い飲み物は避ける

一方で、アルコールやウーロン茶は利尿作用が強いため、脱水につながり逆効果となりますので、積極的な摂取は避けるようにしましょう。これらの対策を踏まえて、適切な水分補給を心がけましょう。

体の状態を正常な状態に戻すための対策は、「体温が上昇しているな」と感じた段階で行うことが重要です。なぜなら、熱中症になると、通常理解しているはずの行動が困難になるからです。

 

通常理解しているはずの行動が困難になる

私もかつて、夏の暑い日にゴルフをプレーしている最中に熱中症になりかけた経験があります。その時、バンカーからのショットを何度も失敗し、身に覚えのない奇妙なプレーをしていたところ、キャディーさんが気付いて「具合が悪いんじゃないですか?」と声をかけてくれました。その言葉で我に返り、休憩所で体を冷やし、水分を補給したところ、回復しました。この時、自分が熱中症になりかけていたことに気付かなければ、対処法も分からず、状況は悪化していたかもしれません。

 

体温が上昇しているかどうかを定期的に測定

熱中症になる人は、自覚がないことがよくあります。そのため、体温が上昇しているかどうかを定期的に測定し、上昇していた場合は適切な対策を取ることが重要です。

特に心臓トラブルなど基礎疾患を抱えている人は、熱中症になるまでの時間が短い可能性があるため、さらに注意が必要です。ただし、心臓機能が低下している場合は、水分摂取量に気を付けなければなりません。適切な対処法や水分補給量については、医師に相談することが重要です。

 

室温を適切に調整することも非常に重要

健康維持のためには、室温を適切に調整することも非常に重要です。睡眠不足や便秘など、現代人が抱える多くの問題を改善するためにも、環境の良い場所に身を置くことが重要です。

風通しを良くするために、網戸やエアコンなどが活躍します。特に心臓にトラブルを抱えていたり、複数の薬を服用している人は、体温の管理や体液のバランスを維持することが重要です。そのためには、エアコンを適切に使って室温を環境温度に調整することが必要です。

 

エアコンを清潔に保つ

ただし、エアコンを使う際にはいくつかの注意点があります。古いエアコンを使用している場合、フィルターの劣化や掃除不足により、アレルゲンがまき散らされる可能性があります。私自身もアレルギーを持っており、古い建物に入ると頻繁にくしゃみが出ることがあります。

 

アレルギーは動脈硬化や血栓形成などのリスクを高める

アレルギーは、体内に異物が入ってきたときに排除しようとする免疫反応が過剰になり、体にマイナスの症状を引き起こす状態です。アレルギー反応によって体のどこかで炎症が生じると、放出されたサイトカインが全身の臓器や血管にダメージを与え、動脈硬化や血栓形成などのリスクが高まります。

 

空気清浄機能を備えた新しいタイプのエアコンが理想

特に大動脈で炎症が起こると、免疫細胞を活性化させるサイトカインの影響で炎症が進行し、動脈瘤が急激に膨れて突然死を引き起こす可能性もあります。そのため、心臓疾患など複数の病気を抱えている人は、経済的負担が許す限り、温度管理だけでなく空気清浄機能を備えた新しいタイプのエアコンを利用することが推奨されます。

新しいタイプのエアコンには、空気清浄機能が搭載されており、アレルゲンや微粒子を除去することが可能です。これによって、アレルギー反応が引き起こされるリスクを低減し、体内の炎症や健康への悪影響を軽減することが期待されます。

 

急激に体を冷やさないようにする

2つ目の重要なポイントは、エアコンを使用する際に急激に体を冷やさないようにすることです。特に、屋外から帰宅した際など、急激な温度変化には注意が必要です。エアコンの風量を「最強」や「急冷」「パワフル」などに設定することは避け、ゆっくりとした温度調節を心がけましょう。

体温と環境温度の差が10度を超えると、生体の状態に支障を来す可能性があります。例えば、心臓手術では患者の深部体温が37度とされる場合、血液の温度差を10度以内に抑える必要があります。それ以上の温度差があると、血液の成分が壊れるリスクが高まります。

 

高い深部体温を考慮

深部体温が37度程度である場合、エアコンの設定温度を20度とした場合、17度の温度差が生じます。体の表面の温度よりも高い深部体温を考慮すると、適切な温度差を保つためには10~15度程度にとどめることが重要です。また、体が徐々に冷えてくると感じたら、設定温度を27度程度まで上げることが有効です。

 

血圧を上昇させたり冠動脈の血流を低下させる可能性

心臓トラブルや複数の薬を服用している人は、急激な体温変化によるリスクがさらに高まります。急激な体の冷却は血管を収縮させ、血圧を上昇させたり、冠動脈の血流を低下させる可能性があります。したがって、「急激な変化」を避け、環境の管理をゆっくりと行うことが重要です。

 

就寝時のエアコンの使用

3つ目の重要な注意点は、就寝時のエアコンの使用です。心臓はもちろん、健康維持のためには十分な睡眠が不可欠です。そのためには、就寝時に快適な環境を整えることが重要です。エアコンを利用して自分が快適に眠ることができる環境を作りましょう。一般的に、真夏の就寝時は「やや高めの温度設定でエアコンをつけっぱなしにして就寝するのが望ましい」とされています。

もしエアコンに細かいタイマー設定ができるなら、気温が下がる深夜はオフにし、気温が上がる時間帯に自動的にオンになるように設定するのも効果的です。自分が夜間にリラックスできる環境温度を見つけ、エアコンを使ってそれを実現する方法を学んで実践しましょう。

 

薬の効果を最大限に発揮

近年の温暖化による環境温度の上昇の下では、エアコンは健康維持のために重要な家電です。特に、複数の薬を服用している人は、エアコンを適切に使用することが求められます。薬の効果を最大限に発揮するためには、体内の条件を整えることが重要です。睡眠環境を含め、食事や水分摂取量、排泄などを適切に管理することが欠かせません。

 

自覚できない生体変化が重篤な疾患の発症のきっかけになることも

また、生体の不感蒸泄(体が自然に水分を失う過程)など、自覚できない生体変化が重篤な疾患の発症のきっかけになることもあります。そのため、エアコンは自身を守る重要な電化製品であることを認識し、適切に活用することが必要です。

熱中症:予防と対処法

熱中症は、高温多湿な環境下で体温調節機能がうまく機能せず、体内の水分や塩分が失われることで引き起こされる疾患です。

熱中症は軽度のものから命に関わる重篤なものまでさまざまな症状を引き起こす可能性があります。暑い季節に特に注意が必要ですが、実は冬でも運動などで過度に体を動かしたり、屋内の暖房が強すぎたりすることで熱中症にかかるリスクがあります。

 

熱中症の症状

熱中症の症状には以下のようなものがあります。

  • 体温上昇: 体温が37.5℃以上に上がる。
  • 頭痛やめまい: 頭痛やめまいが生じる。
  • 悪心や嘔吐: 吐き気や嘔吐が見られる。
  • 倦怠感: 体がだるくなり、倦怠感がある。
  • 意識障がい: 意識が混濁し、最悪の場合は意識喪失が起こる。

 

熱中症の予防と対処法

熱中症を予防し、適切な対処を行うためには以下のポイントが重要です。

  • 水分補給: 適切な水分補給を心掛けましょう。水やスポーツドリンクを定期的に摂取し、脱水を防ぎます。
  • 適切な休息: 長時間の屋外活動や激しい運動をする場合は、定期的な休憩を取りましょう。体を休めることで熱中症のリスクを減らします。
  • 適切な服装: 涼しい服装を選び、直射日光を避けるようにしましょう。帽子や日焼け止めなどを使用して皮膚を保護します。
  • 涼しい場所での活動: 高温多湿の環境を避け、涼しい場所で過ごすように心がけます。
  • 体温管理: 熱中症の症状が現れる前に、体温を定期的に測定し、適切な対処を行います。熱中症の疑いがある場合は、涼しい場所で休息し、医療機関を受診することが必要です。

まとめ

熱中症は高温多湿な環境下で起こりやすい疾患ですが、適切な予防と対処法を行うことで予防することが可能です。暑い季節だけでなく、冬でも十分な注意が必要です。熱中症の症状が現れた場合は、適切な対処を行い、早めに医療機関を受診することが重要です。

 

参考

何もしないと無自覚症状からあっという間に命を落としてしまう…熱中症の兆候を逃さない1日3度のプチ習慣 体温計とエアコンで熱中症から心臓を守る #プレジデントオンライン

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