2024.05.10

「新しいことに挑戦」筑波技術大学:聴覚障がい・視覚障がい者、唯一の国立大

2024年度、筑波技術大学の入学式が、聴覚障がい・視覚障がいを抱える学生たちのための特別な日として、感動と希望にあふれました。茨城県つくば市の天久保キャンパスで開催されたこの式典には、大学院生を含む81人が新たな一歩を踏み出しました。手話と唇の動きで式辞を述べる石原保志学長の姿が、学生たちに勇気と力を与えました。

 

聴覚障がい者向けの産業技術学部、視覚障がい者向けの保健科学部

筑波技術大学は、聴覚障がい者向けの産業技術学部と、視覚障がい者向けの保健科学部を有し、現在の学生数は計321人にのぼります。

入学式では、学長が学生たちに向けて、自らの意思でこの大学を選んだことの重要性を語りました。社会で成功するためには、自らの意志で壁を乗り越える覚悟が必要であるとのメッセージが、熱い拍手と共に伝わりました。

 

「新たなことに挑戦していく」

学生たちは、少人数教育の環境で成長し、お互いの能力を高め合うことが期待されています。新入生の一人、聴覚障がいがある仲田恭乃さんは、入学式で「多様な考え方を育て、コミュニケーション能力を高めたい。共生社会が求められる今、私たちは新たなことに挑戦していく」と誓いました。彼らは、自らの夢や目標に向かって、決意を新たにしてキャンパス生活をスタートさせました。

 

「4年間で将来の方向性を見極めたい」

2024年度の筑波技術大学入学式には、視覚障がい者の白浜琥太郎さんが保健科学部を代表して参加しました。横浜市金沢区出身の彼は、人に何かを教えることが得意で、中学生の頃から数学教師を目指していました。しかし、筑波技術大学の存在を知り、他の道もあるのではないかと考えるようになったといいます。彼はこの4年間で将来の方向性を見極めたいと語りました。

 

介助者をつけることなく学業に専念できる環境を提供

筑波技術大学では、手話と口話でのコミュニケーションが当たり前のように行われています。産業技術学部の若月大輔教授は、他の大学と異なり、障がいのある学生に介助者をつけることなく、学業に専念できる環境を提供していると述べています。彼は教える側として、聴覚障がいのある学生が本当に理解したかを問い返す配慮を行っています。

 

買い物ができるように「脳内地図」を描く

視覚障がいの学生たちは、触覚や聴覚を重視して学びます。寄宿舎での生活を始める際には、まずは買い物ができるように「脳内地図」を描くことから始めます。彼らは大半の教科書を点字で使用し、学業に取り組んでいます。

 

聴覚障がい者の国際スポーツ大会「デフリンピック」

さらに、来年11月には東京都内で開催される聴覚障がい者の国際スポーツ大会「デフリンピック」で、筑波技術大学の学生がデザインしたエンブレムが採用される予定です。若月教授は、この大会を通じてデフリンピックの社会的認知を高め、成功させたいと期待を寄せています。

 

聴覚障がいと視覚障がいを抱える学生のための高等教育機関として設立

筑波技術大学は、1987年に聴覚障がいと視覚障がいを抱える学生のための高等教育機関として設立されました。当初は3年制の短期大学でしたが、2005年10月に4年制大学へと発展し、その後の2010年4月には大学院も設置されました。学部は学習内容や教育方法に応じて分かれています。

 

様々な学科

産業技術学部には産業情報学科と総合デザイン学科があり、学生は製造業、情報通信業、建設業、金融業などへの進路を選択することができます。一方、保健科学部の保健学科では、鍼灸学や理学療法を学びます。また、情報システム学科も設置されており、中学校や高校で数学を教えるための1種免許を取得することができます。

聴覚障がい: 生活と克服

聴覚障がいは、聴覚器官やその周辺の構造に問題があることにより、音を正しく感知できない状態を指します。これは、生まれつきのものから後天的なものまでさまざまな原因によって引き起こされます。聴覚障がいは、個人のコミュニケーションや日常生活に深い影響を与えることがありますが、近年の医学やテクノロジーの進歩により、その影響を軽減する方法も増えています。

 

原因と種類

聴覚障がいの原因は、さまざまな要因によって引き起こされます。その中でも、先天性の聴覚障がいは胎児期の発達上の問題や遺伝的な要因によることがあります。例えば、母体が感染症や疾患にかかったり、胎児が発達中に十分な酸素を受け取れなかったりすることが考えられます。また、遺伝的な変異や遺伝子の異常も先天性の聴覚障がいの原因として挙げられます。

 

後天性の聴覚障がい

一方、後天性の聴覚障がいは、生まれた後に発症することがあります。感染症や怪我、長期間にわたる騒音や耳への過度な圧力などが原因となることがあります。また、高齢による自然な聴力の低下も後天性の聴覚障がいの一因として考えられます。

 

音の聞こえ方には個人差

聴覚障がいには、完全に聴力を失った人から、一部の音を聞くことができる人までさまざまな程度があります。一般的には、聴力の低下の程度に応じて、軽度、中等度、重度、深刻な聴覚障がいなどの分類があります。また、音の聞こえ方にも個人差があり、周囲の環境や状況によっても影響を受けます。

 

聴覚障がいの種類

聴覚障がいは、次のような種類に分類されます。

  • 聴力障がい: 聴覚的な情報を全く受け取れないか、ほとんど受け取れない状態です。音声の認識や音の方向の把握が困難です。
  • 平衡機能障がい: 内耳の平衡感覚を司る器官に問題があり、平衡を保つことが難しい状態です。めまいや立ちくらみが頻繁に起こります。
  • 音声機能障がい: 言語を発音する器官に問題があり、言葉の発音や聞き取りに支障が生じます。
  • そしゃく機能障がい: 聴覚と連動して働く構音器官や咽頭に問題があり、発声や飲み込みに支障が生じます。

 

影響と対処法

聴覚障がいは、個人の生活にさまざまな影響を与えます。社会的な交流やコミュニケーション、教育、職場での活動など、日常生活のさまざまな側面で困難を引き起こすことがあります。しかし、近年の技術の進歩により、聴覚障がい者が克服するための多くの手段が提供されています。

 

聴覚補助装置や人工内耳などのテクノロジー

聴覚補助装置や人工内耳などのテクノロジーは、音を聞く能力を改善し、日常生活での活動をサポートするのに役立ちます。また、手話や口話などのコミュニケーション手段や、字幕や手話通訳などの支援サービスも利用できます。さらに、周囲の理解と支援も非常に重要です。家族や友人、教育機関、職場などが、聴覚障がい者の生活をより良くするために役立つことがあります。

 

聴覚障がい者への配慮ポイント

聴覚障がい者とのコミュニケーションや日常生活において、以下の配慮ポイントが重要です。

  • 手話や筆談の利用: 聴覚に頼らないコミュニケーション手段を提供します。手話や筆談を理解し、それに応じたコミュニケーションを行います。
  • 音声の代わりに文字の利用: 音声情報を文字情報に変換し、理解しやすい形で提供します。字幕やテキスト情報を活用します。
  • 環境の適応: 聴覚障がい者にとって安全で快適な環境を整えます。音の大きさや方向を視覚的に示し、通行路や非常口を明示します。
  • 情報の提示: 重要な情報を視覚的に示し、聴覚障がい者が情報にアクセスしやすいようにします。視覚的な指示や表示を利用します。
  • アシスト技術の活用: 聴覚補助機器や手話通訳などのアシスト技術を提供し、聴覚障がい者のコミュニケーションや情報アクセスを支援します。

 

視覚障がい

視覚障がいは、眼球や視覚神経などの視覚器官に障がいがあることにより、視覚に関する情報を正しく受け取れない状態を指します。これは生まれつきのものから後天的なものまでさまざまな原因によって引き起こされます。視覚障がいは、個人の生活や日常活動に大きな影響を与える可能性がありますが、適切な支援や取り組みによって、克服することができます。

 

原因と種類

視覚障がいの原因は多岐にわたります。先天的なものは、胎児期の発達障がいや遺伝的な要因によることがあります。また、後天的な視覚障がいは、疾患、外傷、加齢などさまざまな要因によって引き起こされます。

視覚障がいには、完全な盲目から一部の視力を持つ人までさまざまな程度があります。主な種類には、以下のようなものがあります。

 

視覚障がいの種類

  • 視力障がい: 視覚的な情報を全く受け取れないか、ほとんど受け取れない状態です。文字の拡大や視覚補助具の使用によって視力を活用することができます。
  • 視野障がい: 見える範囲が狭くなったり、一部が欠けたりする状態です。球心性視野狭窄や中心暗転などがあります。
  • 色覚障がい: 特定の色が見にくい、区別しにくいなどの状態です。
  • 光覚障がい: 夜や暗い場所では何も見えない状態や、光を眩しいと感じたり、痛みを感じる状態です。

視覚障がい者は、これらの状態によって「盲」と「弱視」に分類されます。盲は視力が極端に低い状態であり、弱視は視力が低く、見える範囲が狭い状態です。

 

視覚障がい者への配慮ポイント

視覚障がいは、視覚機能に問題があり、日常生活や社会参加に支障をきたす状態です。視覚障がいはさまざまな原因によって引き起こされ、その種類によって異なる症状やニーズがあります。以下では、視覚障がいの種類とそれに対する配慮ポイントについて説明します。視覚障がい者と円滑なコミュニケーションを図るためには、以下の配慮ポイントが重要です。

  • 視力がほとんどない場合: 視覚補助具の利用や、歩行時の障がい物の排除などが必要です。
  • 保有する視力を活用できる場合: 視覚補助具の利用や、照明の配置などで明るい環境を提供することが重要です。
  • 近いところが見えない場合: 歩行時の障がい物の排除や、照明の配置などで明るい環境を提供することが重要です。
  • 特定の色が見えにくい場合: 見やすい色に変更するなどの配慮が必要です。
  • 暗いところで見えにくい場合: 明るい環境を提供することが重要です。
  • 光を眩しい、痛いと感じる場合: 座席や照明の配置を調整し、眩しい光を避けるようにします。

これらの配慮ポイントを考慮することで、視覚障がい者とのコミュニケーションを円滑にし、社会参加の機会を向上させることができます。

 

影響と対処法

視覚障がいは、個人の生活にさまざまな影響を与えます。例えば、移動や認識、読書、日常生活の活動などが困難になることがあります。しかし、近年の医学やテクノロジーの進歩により、視覚障がい者が克服するための多くの手段が提供されています。

視覚補助装置や視覚支援テクノロジーは、視覚障がい者の日常生活をサポートするのに役立ちます。例えば、点字や音声読み上げ機能を備えたデバイスやアプリ、視覚障がい者用のナビゲーションシステムなどがあります。また、白杖や盲導犬などの移動支援も重要です。

周囲の理解と支援も視覚障がい者にとって非常に重要です。家族や友人、教育機関、職場などが、視覚障がい者のニーズに合わせた支援を提供し、彼らが自立した生活を送ることを支援することが重要です。

 

まとめ

2024年度の筑波技術大学入学式は、聴覚障がい・視覚障がいを抱える学生たちにとって特別な一日となりました。手話と唇の動きで式辞を述べる石原保志学長の姿が、学生たちに勇気と力を与えました。

彼らは、少人数教育の環境で成長し、互いの能力を高め合うことが期待されています。新入生の一人、聴覚障がいがある仲田恭乃さんの誓いは、共生社会の実現への希望となりました。筑波技術大学は、学生たちが自らの夢や目標に向かって決意を新たにし、克服の道を歩むことを支援し続けます。

 

参考

将来へ「新しいこと挑戦」 筑波技術大で本年度81人入学 聴覚・視覚障がい者、唯一の国立大:東京新聞 TOKYO Web

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