2024.05.08

障がい者差別解消法の施行に伴う企業の対応:合理的配慮の重要性と課題

4月1日に施行された「改正障がい者差別解消法」により、障がいのある人への合理的な配慮が民間事業者にも義務づけられることから、都内のIT関連会社では、障がい者に配慮した接し方を学ぶ研修会が開催されました。この会社は、東京・品川区に拠点を置き、企業向けの会計ソフトなどを提供しています。研修には、営業担当を含む約40人が参加しました。

会話ができない状況でのコミュニケーションを体験

研修では、声に障がいのある人への理解を深めるため、参加者は口にマスクを装着し、会話ができない状況でのコミュニケーションを体験しました。また、パソコンに文字を入力すると音声で読み上げるソフトなど、様々なツールを活用して意思疎通を図りました。

その後、合理的な配慮の方法について意見を交換し、例えば、聴覚障がいのある人が訪れた場合には社内で手話ができる社員を特定し、対応策を検討しました。

30代の社員は、「人によって必要な情報や支援が異なると思うが、できる限り多くのツールを活用して対応したい」と述べました。

 

「何らかの成果に結びつく可能性」

この研修を企画した中根雅文さんは全盲であり、「改正法の施行によって社会が急速に変化することはないかもしれませんが、中長期的には何らかの成果に結びつく可能性があると思います。また、当事者がこの法律を契機に、自らの権利を意識し、社会の変革を求めるようになることも期待されます」と述べました。

この会社では今後も定期的に研修を行い、障がい者のニーズに適切に対応できるよう体制を整えていくことが目指されています。

 

障壁を解消するための具体的な配慮

4月1日に施行された「改正障がい者差別解消法」は、国や自治体にとどまらず、民間の事業者にも障がいのある人への「合理的配慮の提供」を義務づけます。

この法律における「合理的配慮の提供」とは、障がいのある人が社会生活を送る際に直面する障壁を取り除くための行動を指します。たとえば、段差がある場合にはスロープを設置するなどの補助措置や、筆談時に大きな文字を使うなど、障壁を解消するための具体的な配慮が含まれます。

 

障がいのある人と事業者が対話し解決策を共に検討することが重要

ただし、この配慮は事業者に負担がかかりすぎない範囲で行われるべきです。法律に違反することなく、飲食店が介助を求められた場合に断ることも認められます。しかし、個別の事情を無視して一律に対応を断ることや、漠然としたリスクを理由に対応を拒否することは避けるべきです。

違反行為を繰り返した場合には、国からの報告や指導、勧告を受ける可能性があります。内閣府は、障がいのある人と事業者が対話し、解決策を共に検討することが、社会的な障壁を取り除く上で重要であると強調しています。

 

企業や個人が積極的に配慮を行うことが求められる

このような法改正によって、社会全体がより包括的かつ包容的な姿勢を持つことが期待されます。障がいのある人々が自由に社会参加できる環境を整えるために、企業や個人が積極的に配慮を行うことが求められるでしょう。また、法律に関する質問や障がいを理由とする差別に関する相談窓口を設置していて、電話やメールで受け付けています。

障がい者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」

  • 電話相談 0120-262-701(午前10時~午後5時 祝日除く)
  • メールでの相談 info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp

 

障がい者への意識調査 配慮不十分で諦める場合も

障がいのある人に対する「合理的配慮」が不十分だと感じる声が増えていますが、そのような状況に対して何もせずに諦める人も少なくありません。

昨年、弁護士や学識経験者、民間企業で構成されるグループが、障がいのある人を対象にオンラインで「合理的配慮」に関する意識調査を行い、2362人が回答しました。

 

合理的配慮が不十分だと感じる場面

その結果、日常生活で合理的配慮が不十分だと感じる場面について尋ねたところ、「仕事や職場」が40%で最も多く、「公共交通機関」が36%、「買い物や飲食などのサービスを利用する時」が29%など、様々な場面での不満が示されました。

自由記述では、「筆談を求めても応じてもらえなかった」とか、「買い物をした時の袋詰めを拒否された」といった具体的な声も寄せられました。

また、「合理的配慮」が提供されないと感じた場合の対応について尋ねた質問では、「何もしない」が31%で最も多く、「問い合わせ窓口がわからず諦めている」という声も多くありました。

 

建設的な対話ができる環境を整えることが重要

調査を行った企業の担当者は、「障がいのある人が自分たちの声を事業者側にどう届けたらいいかわからず、SNSに不満を投稿して炎上するケースも散見される。このような状況において、事業者側も硬直した態度に陥ることがある。障がいのある人が利用しやすい問い合わせ窓口を設けるなど、建設的な対話ができる環境を整えることが重要だ」と話しています。

 

専門家「普通のサービスを障がい者にも 対話で合意形成を」

障がいのある人への「合理的配慮の提供」が民間の事業者にも義務づけられることに関して、障がい者政策に詳しい静岡県立大学の石川准名誉教授は、「健常者の人たちが普通に得られているサービスを、障がい者も得られるようにするための調整や変更をしてほしいということが法律の趣旨であって、特別なサービスや待遇を行う必要があるわけではない」と指摘しています。

 

合理的配慮の範囲

また、合理的配慮の範囲について、飲食店を例に挙げ、「視覚障がい者であればトイレの場所まで店員が案内すること。聴覚障がい者であれば筆談で注文できるようにすることなどが合理的配慮にあたる。一方で店から自宅まで送迎するようなことはあたらない。合理的配慮の範囲が際限なく広がっていくことは考えられないので、事業者は過度に心配しないでほしい」と話しています。

 

対話を通して両者で合意を形成する

しかし、石川准名誉教授は、重要なポイントを強調しています。「障がい者は、自分が困っていることを遠慮なく穏やかに相手に伝える。事業者は、対応が可能なことと難しいことを、分かりやすく説明する。こうした対話を通して両者で合意を形成することで、障壁をなくしていくことが大事だ」と訴えています。

言い換えれば、両者が対話を通じてお互いの立場や課題を理解し、合意を形成することで、障がい者も健常者も利用しやすい社会を築いていくことが重要であるということです。

改正障がい者差別解消法:社会の障壁を取り除く重要な一歩

4月1日、日本では「改正障がい者差別解消法」が施行され、障がいのある人々が社会においてより円滑に参加できる環境が整えられることが期待されています。

この法律の最も注目すべき点は、国や自治体にとどまらず、民間の事業者にも障がいのある人への「合理的配慮の提供」が義務づけられたことです。これは、健常者が享受しているサービスや利便性を、障がいのある人も同等に享受できるようにするための取り組みを強化するものです。

 

個々の状況に応じた配慮

「合理的配慮」とは、障壁を取り除くために必要な適切な措置をとることを指します。例えば、視覚障がい者には案内を提供し、聴覚障がい者には筆談での対応をするなど、個々の状況に応じた配慮が求められます。

 

過度な負担をかけることはない

ただし、この法律が民間事業者に義務づけるのは「合理的な範囲内」であり、過度な負担をかけることはありません。法律に違反することなく、実現可能な措置をとることが求められます。そして、合理的な配慮が提供されない場合でも、当事者が積極的に声を上げ、対話を通じて解決を図ることが重要です。

 

障がいのある人々が社会に参加しやすくなる

改正障がい者差別解消法の施行により、障がいのある人々が社会に参加しやすくなることが期待できます。しかし、法律の下での配慮だけでなく、社会全体が障がいのある人々を受け入れ、支援する文化が根付くことが、より包括的な解決への道を開くでしょう。

 

合理的配慮:障壁を取り除くための重要な概念

障がいのある人々が社会参加する際に直面する障壁を取り除くために、法律や社会規範の下で重要な概念となっているのが「合理的配慮」です。この概念は、彼らが平等な機会を享受できるようにするために、個々の状況やニーズに応じた配慮を行うことを意味します。

 

合理的配慮とは?

合理的配慮とは、障壁を取り除くために必要な適切な行動や措置をとることを指します。これは、障がいのある人が他の人々と同等な条件でサービスや機会を受けることを可能にするための手段です。

 

具体例

合理的配慮の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 視覚障がい者には、点字や音声案内を提供すること。
  • 聴覚障がい者には、手話通訳者の手配や字幕付き動画の提供を行うこと。
  • 身体障がい者には、バリアフリーな施設や設備を整備すること。

     

    合理的配慮の範囲

    合理的配慮は、その範囲において過度な負担をかけないように行われます。法律や規定に違反することなく、実現可能な措置をとることが求められます。つまり、合理的な範囲内での配慮が原則とされます。

     

    社会全体の責任

    合理的配慮は、単に法律で規定されるだけでなく、社会全体の責任でもあります。障壁を取り除くためには、企業や行政だけでなく、個々の市民や社会団体も積極的に取り組むことが必要です。

    まとめ

    合理的配慮は、障壁を取り除き、障がいのある人々が社会的に完全に参加できるようにするための重要な概念です。法律や社会の規範に基づいて、個々の状況やニーズに応じた配慮を行うことが求められます。そして、社会全体が共に協力し、包括的な支援体制を築くことで、障壁のない社会を実現することができるでしょう。

    改正障がい者差別解消法の施行により、障がいのある人々が社会参加をより円滑に行える環境が整いつつあります。この法律の下で、企業が障がい者に対して合理的な配慮を行うことは欠かせません。対話を通じて相互理解を深め、共に障壁を取り除いていくことが、より包括的で包括的な社会を築くための鍵となります。

     

    参考

    障がい者への「合理的配慮」4月から民間事業者にも義務化 | NHK

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