2024.05.08

ポジティブ・オポジットとは?子どもの行動を変えるポジティブなアプローチ

子供の行動変容を促す褒め方について、心理学者で遺伝学研究者のダニエル・ディック博士は興味深いアドバイスをしています。

彼によれば、子供への注目は「ごほうび」となるため、最も重要なことを優先し、困った行動には当面無視することが重要です。そして、子どもが困った行動をやめた時には、直ちにその良い行動を褒め、他のことはなかったかのように振る舞うことが良いそうです。

「ごほうび」を使うことが効果的

子犬の訓練と同じく、子どもによい行動を身につけさせるには、「ごほうび」を使うことが効果的です。親の最も力強いツールは「おしおき」ではなく、「ごほうび」なのです。良い行動を褒めることで、親が望む行動が子供にとって習慣となっていきます。

 

良い行動に目を向ける必要

悪い行動にフォーカスするのではなく、良い行動に目を向ける必要があります。親にとってもこれが楽しいはずです。ただし、この方法は正しく実践されなければうまく機能しません。もちろん、何を与えるかではなく、どのようにごほうびを与えるかが重要です。アイスクリームよりもiPhoneの方が良いとは言いませんが、ごほうびの方法は個々の子供に合わせて考える必要があります。

 

適切に与えられた時にのみ効果がある

クリニックでは、「子供を褒めたけれども、うまくいかなかった」という親がよく相談に来ます。実際、ごほうびは適切に与えられた時にのみ、子供の行動を変える効果があります。子供の行動を変えるためには、褒め方には基本原則があります。

 

①「良い行い」に焦点を当てる

良い行いを増やすための最初の要素は、「良い行いに注目すること」です。これは愚かなことのように聞こえるかもしれませんが、考えてみてください。子供が日常的にやるべきことを行っている場合、親はしばしば何も言わずにいます。

 

指示に従ったとき親は何も言わない

親は子供に歯を磨くように指示します。パジャマを着替えるように言います。お風呂に入るように促します。そして、子供がこれらの指示に従った時、親は通常、何も言いません。

親は日常的に子供が「やるべきことをやる」ことを期待しています。しかし、子供がバスタブで水をこぼしたり、パジャマを着ないで遊んだりすると、反応があります。

 

ポジティブな行動に焦点を当てることが重要

子供が良い行動を見せると、親は静かに喜びます。しかし、子供が問題行動を起こすと、親は注意を払い、対処します。

このサイクルを変えるためには、子供を悪い子だと捉えず、ポジティブな行動に焦点を当てることが重要です。そして、適切に褒めるための秘訣は、以下の4つです。

  • 熱意を込めて
  • 具体的に
  • その場で
  • 一貫性を持って

 

熱意を込めて褒めることから始める

良い行動に注目し、熱意を込めて褒めることから始めましょう。例えば、「子どもが自分でパンツを履いた」場合、ただ声をかけるだけではなく、独身時代には想像もしなかったような熱狂的な態度で、チアリーダーになりきるような感じです。

「一人でパンツを履けたの? すごい、すごい!」といった具合に、具体的で熱意を持って褒めましょう。

 

具体的に褒める

具体的な良い行動に対してコメントすることが重要です。例えば、「歯を磨くなんてすごい!」、「自分でパジャマを着るなんて偉い!」、「今日は着替えがとても速いね!」、「自分でスプーンを使ってシリアルを食べてるんだ!」などと伝えます。

 

その場で即座に褒める

よい行動に対しては、その場で即座に、そして毎回忘れずに褒める必要があります。例えば、着替えが苦手な子どもであれば、着替え終わった直後に褒めるのです。後から褒めるのでは遅いのです。

 

毎日同じことを繰り返す

また、よい行動が身につくまで毎日同じことを繰り返します。「よーし、今日もパンツが履けたね!」というように、毎日の積み重ねが大切です。

親からのポジティブなフィードバックは、子どもの成長や行動に深い影響を与えます。私は幸運にも、ポジティブな褒め言葉が豊富な家庭で育ちました。そのため、今では心理学者として、ポジティブなフィードバックを日常的に受け取る環境にいます。

ポジティブなフィードバック

大人になっても、両親にささいな成功を話すと、彼らは喜んで褒めてくれます。たとえば、「今日、支払いを済ませたんだ」と伝えると、両親は大げさに褒めてくれます。「支払いを済ませたなんて、すごいじゃない!気分がいいでしょう?」と言われると、心が温かくなります。

しかし、同じ話を夫にすると、彼は笑ってしまいます。彼にとってはおかしく感じるのでしょう。でも、それでも私はうれしくなります。ポジティブなフィードバックは、支払いを済ませるという些細な成果ですら、少し楽しく感じさせてくれるからです。

 

親は子どもにとって上司のような存在

もし、あなたがこのような話を「くだらない」と感じるのであれば、一考する価値があります。あなたは自分の子どもにとって上司のような存在です。では、どんな上司の下で働きたいですか?

 

ミスから学ぶ機会を与え成長できる環境が好ましい

おそらく、あなたがやるべきことを認識し、業績を評価し、賞賛してくれる上司が理想的だと思います。間違いを犯しても叱責されるよりも、ミスから学ぶ機会を与え、そこから成長できる環境が好ましいです。

温かく理解してくれる上司のもとで働くと、幸福度と生産性が向上します。同様に、子どもも温かく応援してくれる環境で育つことで、自信を持ち、成長することができるでしょう。

 

②「小さく分解」して褒める

「小さく分解」して褒めることは、子供の成長にとって重要です。例えば、お子さんが朝の着替えを嫌がる場合は、まずは服を選ぶことや下着を身につけることから褒めてみましょう。

また、着替えに時間がかかりすぎる場合は、「制限時間レース」を導入してみることも有効です。始めはおおらかな気持ちで、徐々に時間を短くしていくことがポイントです。

 

小さなステップに分解して褒めることが重要

子供が自発的に行動するようになるには、小さなステップに分解して褒めることが重要です。そして、各行動に対して個別に褒めることも大切です。複数の行動をまとめて褒めるのではなく、それぞれの行動に対して褒めることで、子供の自信ややる気を育むことができます。

 

③「重要なこと」に集中する

子どもの行動を褒める際には、すべての行動に焦点を当てる必要はありません。家庭で課題になっている行動に集中しましょう。一度に取り組むべきポイントを2〜3つに絞ることが大切です。

 

具体的な項目に集中して取り組む方が実現可能

自分が働きたい上司のタイプを考えてみると、一度に20もの改善点を指摘されるよりも、2つか3つの具体的な項目に集中して取り組む方が実現可能です。そして、それらが習慣になると、自信をつけて次の課題に取り組む準備が整います。子どもも同様です。

 

2〜3つの行動に焦点を絞る

人は同時に2〜3つの行動にしか集中できません。複雑な「ごほうびシール表」を使うのは難しいでしょう。ですから、2〜3つの行動に焦点を絞りましょう。

もし他の悪い行動が見られた場合は、それを無視しましょう。親にとって難しいことかもしれませんが、悪い行動を無視することで、子供が望ましい行動に集中できる環境を作ることができます。

 

「なかったふりをする」は親が培うべきスキル

注目は「ごほうび」の一部であり、よい行動を育てることに焦点を合わせることを思い出しましょう。そのため、悪い行動にごほうびを与えたくない場合は、最も重要なことに優先順位をつけ、他のことは無視してください。

 

無視とは言葉でも態度でも、視線ですらも反応しないこと

例えば、就寝前のルーティンに取り組んでいる場合、子どもがシリアルボウルから牛乳をズルズルと飲む音に反応しないでください。無視するとは、言葉でも態度でも、視線ですらも反応しないということです。それが難しい場合は、部屋を離れることも考えましょう。

 

多くの困った行動は無視できる

もちろん、人を傷つけたり物を投げたり、親の指示に従わないような行動は無視できません。しかし、めそめそする、駄々をこねる、すねる、注目を浴びようとする、親を困らせるなど、多くの困った行動は無視できます。

 

一度無視し始めたらそれを続けること

大切なことは、一度無視し始めたらそれを続けることです。これは初めは困った行動をエスカレートさせるように見えるかもしれません。子どもはさらに激しく親の注意を引こうとするかもしれませんが、そこで折れてしまうと、悪い行動を助長することになります。ですから、強い意志を持ち続けましょう。

 

長期的な戦略

これは長期的な戦略です。時間が経つにつれて、悪い行動は減少していくことを保証します。そして、子どもがめそめそするのをやめたときには、すぐにその良い行動を褒めましょう!

例えば、「ママが電話でお話ししている間、静かに座っていてくれて本当にありがとう!」と言いましょう。静かに座っていたのが、15分もめそめそして疲れてしまった結果だったとしても、問題ありません。その行動には触れず、ただ褒めてあげましょう。これは習得すべきスキルです。

 

④「言葉のごほうび」で悪い行動をやめさせる

親が子どもにやめてもらいたい行動に焦点を当てる代わりに、その正反対の望ましい行動に注目することが重要です。この手法を「ポジティブ・オポジット」と呼ぶイェール大学の児童心理学者アラン・カズディン博士による研究が示唆する方法です。

 

正反対の行動に置き換える

例えば、朝からぐずぐずするのをやめさせたい場合、代わりに朝、時間通りに着替えることを褒めます。きょうだいをいじめるのをやめさせたい場合は、夕食を食べる際にきょうだいげんかをせずにいることを褒めます。汚れた服を散らかしたままにするのをやめさせたい場合は、前日に履いた靴下をベッドルームに散らかさず片付けることを褒めます。

この方法を使えば、子どもの望ましくない行動を、その正反対の行動に置き換えることができます。

まとめ

ポジティブ・オポジットの手法を使えば、子どもの望ましくない行動を、その正反対の行動に置き換えることができます。親が焦点を望ましい行動に当て、褒めることで、子どもの成長と変容を促進することができます。この方法は時間と忍耐を要しますが、子どものポジティブな変化を見ることができるでしょう。親の支援と積極的な関与によって、子どもたちはより良い行動パターンを身につけることができます。

 

参考

子供の悪い行いをどれだけ無視できるか…わが子の行動を激変させる"ポジティブ・オポジット"という神対応 よい行動を褒め、それ以外のことはなかったふりをする #プレジデントオンライン

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