2021.11.02

大人の発達障がいの特徴・診断・治療

大人の発達障がいの特徴・診断・治療

発達障がいとは「脳機能の偏り」であり、発達が凸凹していて、できる事とできない事の差が非常に激しい状態を指します。コミュニケーションがうまくいかなかったり、こだわりが強すぎたりと、一人ひとり障がいのあらわれ方がちがいます。

発達障がいは生まれつきのものですが、「大人の発達障がい」という言葉が注目を集めています。

大人の発達障がいとは何か、特徴・診断・治療について解説します。

 

大人の発達障がいとは?

大人の発達障がいは、子どものときに発達障がいと知ることがなく、何も対応をせず、大人になった場合に呼ばれます。

発達障がいが見過ごされてしまう理由の多くは、環境に適応していて、発達障がいだと気づかれないためです。

学校では、コミュニケーションに支障があっても、「仲良くするか」「仲良くしないか」というだけで、それほど問題にはなりません。

しかし大人になると、よりコミュニケーションが複雑になり、コミュニケーションなしでは仕事ができないことも。そのため発達障がいの可能性があった大人は、まわりとの違いに気づいたり、うまく関係を築くことができなかったりして、「発達障がいかもしれない」と悩みます。

 

 

大人の発達障がいからの二次障がい

二次障がいとは、発達障がいによる「生きづらさ」から起こる精神的な病です。

努力していても、くり返すミスで何度も怒られ、コミュニケーションがうまくいかず、まわりとの違いに気づくなどして、自己肯定感を失ったり、過剰なストレスを抱え込んだりしてしまいます。すると、以下のような二次障がいがあらわれます。

おもな二次障がい
・頭痛や食欲不振など体の不調
・依存症
・うつ病
・不安障がい
・社交不安障がい
・引きこもり

うつ病だと思って心療内科を受診したら「発達障がいであった」と見つかることが多いです。

 

大人の発達障がいの特徴

発達障がいには、

・ADHD

・自閉症スペクトラム

・学習障がい/限局性学習障がい

などがあります。

大人の発達障がいでよく発見されるのは、ADHD、自閉症スペクトラムです。

発達障がいの種類ごとに特徴を説明します。

 

ADHD

ADHDは、「不注意」や「多動・衝動性」がおもな特徴です。

大人になると、多動性は子どもの頃にくらべて落ち着きますが、「不注意」な点が目立ってきます。

「不注意」はひとつのことに集中が続かず、ミスが続いてしまう状態です。

「多動・衝動性」は、「行動力が優れている」と評価されて、営業などの仕事で活躍できることがありますが、衝動的に発言して、人間関係が悪くなってしまうことも。

 

ADHDには以下のような特徴が見られます。

  • ひとつの作業が続かず、いろいろな作業をして中途半端に終わってしまう
  • 複数の仕事を同時におこなうことができない
  • 同じミスを何度もくり返す
  • 約束を覚えられない
  • 期限を守れない
  • 外からの刺激で気が散りやすい
  • 物をどこに置いたのかを忘れる
  • よく考えずに発言することがたくさんある
  • どうしても何か行動したいような衝動がある
  • じっと座っていることができない
  • 少しのことでイライラしてしまう

 

 

 

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラムは、アスペルガー症候群、広汎性発達障がいなども含まれます。

自閉症スペクトラムの特性で目立つのは、「コミュニケーションのむずかしさ」です。

また「こだわりの強さ」も特性のひとつです。この「こだわりの強さ」で、まわりと意見がぶつかってしまうことがあります。

自閉症スペクトラムの範囲は広いので、まったく話せない人もいれば、むしろ快活によく話す人も、自閉症スペクトラムの可能性があります。

 

自閉症スペクトラムには以下のような特徴があります。

  • コミュニケーションをとることが苦手
  • 言葉を発することが遅い
  • 人の目を見て話すことができない
  • 冗談がわからない
  • 雰囲気を読むことができない
  • 目上の人にも友達のように話す
  • 興味・関心がないことはできない
  • 徹底したルーティンがある
  • 仕事のやり方にこだわりが強く妥協できない
  • いつもと違うこと・場所に、すぐに適応できない
  • 外からの刺激(光や温度)に強く反応してしまう

 

 

LD/SLD(学習障がい・限局性学習障がい)

LD(学習障がい)・SLD(限局性学習障がい)は知的な遅れはなく、適切な教育を受け、本人が努力しているにも関わらず、特定の分野がまったく学習できない状態のことを指します。

読むのが苦手な「読字障がい」、書くのが苦手な「書字障がい」、計算ができない「算数障がい」などがあります。

LD(学習障がい)・SLD(限局性学習障がい)は、以下のような特徴があります。

  • 文字をつなげて読むことができない
  • 文末などを適当に読んでしまう
  • 長い文章を書くことができない
  • メモをとることができない
  • 文字を同じ大きさで書くことができない
  • 鏡文字で書いてしまう
  • 簡単な計算でもすぐに暗算することができない
  • 図形やグラフを理解できない

 

 

大人の発達障がいの診断

発達障がいはADHD、自閉症スペクトラム、LD/SLDにはっきりと分かれるのではなく、それぞれの種類の特徴が組み合わさってあらわれることがあり、自己診断ではどの種類に分類されるのかを知ることはむずかしいです。

自分の特性への適切な対処をおこなうには、心療内科や精神科に行き、問診やテストを受ける必要があるでしょう。

心療内科や精神科すべての病院で発達障がいが診断できるわけではないので、発達障がいにくわしい医師が在籍する病院を調べて行きましょう。また地域の発達障がい者支援センターに問い合わせると、発達障がいを診療している病院を知ることができます。

 

 

大人の発達障がいの診断に必要なもの

発達障がいかどうかを診断するためには、子どもの頃の情報を客観的に知る必要があります。

子どもの頃をよく知る親や家族に付き添ってもらいましょう。

付き添ってくれる人がいない場合は、以下のものを持っていくとよいでしょう。

・母子手帳

・育児日記

・通知表

・連絡帳

・そのほか子どもの頃の様子がわかるもの

 

 

大人の発達障がいの診断方法

・問診(成育歴、生活歴、既往歴などを確認)

・脳波検査や血液検査など身体検査

・知能検査、認知機能検査

知能や認知機能検査は、まずスクリーニング検査で、発達障がいの可能性があるかどうかをテストします。そしてスクリーニングされた中から、診断や評価をおこないます。

認知機能検査では、WAIS-Ⅳや、WISC-Ⅳなどが使われ、頭の使い方や、能力の得意・不得意を調べます。

これらのさまざまな検査を通して総合的に判断し、診断名がつきます。

 

 

大人の発達障がいの治療方法

発達障がいの治療には、「薬物療法」と「精神療法」「環境調整」があります。

 

薬物治療

薬物治療は発達障がいを完全に治すものではなく、特性を抑え、生活を改善するものです。

また薬には眠気や体のだるさ、頭がぼーっとするといった副作用があらわれることが多いので、薬を使用するか、薬の種類や使用量をしっかり医師と話し合わないといけません。

 

現在、ADHDの薬物療法には以下のような薬が使用されています。

薬剤名

作用

コンサータ

ドーパミンとノルアドレナリンの働きを強める

ストラテラ

ノルアドレナリンの働きを強める

インチュニブ

脳の情報伝達をふやす

 

ドーパミンやノルアドレナリンの働きを強めることで、不安を抑制したり、衝動性を抑えたりすることができます。

このほか二次障がいがあったとき、以上の薬剤や、そのほか抗精神病薬を使用することがあります。

薬物治療について詳しくはこちら

大人の発達障がい…使用する薬は?依存性や危険性はある?

 

精神療法

精神療法には「認知行動療法」や「SST(ソーシャルスキル・トレーニング)」などがあります。

認知行動療法とは、その人の「ものの見方」や「受け取り方」を整えていき、心のストレスをへらす療法です。SSTは人との関わり方や状況に適した行動を身につけるトレーニングを指します。

 

環境調整

「環境調整」は、環境をストレスのないように整えたり、特性に合わせて生活の工夫をしたりすることです。

指示を忘れやすく、仕事でミスをしてしまう場合は、メモをしっかりとるように意識します。時間を忘れてしまう方は、スマートフォンのアラーム機能やアプリをつかって、時間のコントロールをしましょう。

このように自分の特性を理解し、生活の中でどのような工夫をするのかを考えることが大切です。

 

また環境調整には、まわりの協力も欠かせません。光や音など刺激が強く、仕事に集中できない場合は、上司などに相談して場所を変えてもらう必要があります。文字が読みにくい場合はICT技術の導入も検討しなくてはいけないでしょう。

自分ができること、まわりに配慮してもらう必要があることを考えて相談しましょう。

 

 

まとめ

「大人の発達障がい」とは、生まれつきの発達障がいを子どもの頃に診断されず、発達障がい特有の「生きづらさ」を感じながら、大人になった状態を指します。

大人の発達障がいを正しく診断するためには、発達障がいを診療する病院へ行き、子どものころの様子を正しく伝えることが必要です。

子どもの頃からどこかまわりとの違いがあり、今「生きづらさ」を感じているなら、一度医師に相談することをすすめます。

 

 

参考

大人の発達障害の診断基準は?診断を受けるデメリットはある?診断書があることで利用できる支援などを紹介します | LITALICO仕事ナビ

大人の発達障害 : 発達障害とは - 株式会社Kaien

大人の発達障害とは?症状の特徴や周囲からの接し方や対応について | atGPしごとLABO

大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア

大人の発達障害、症状の特徴とは? 職場で配慮したいことを解説 | 産業医のご紹介なら 医師会員30万人以上のエムスリーキャリア

「大人の発達障害かも?」と思ったら | 病気と医療の知って得する豆知識 | サワイ健康推進課

【大人の発達障害】ASD、ADHD、LDの特徴を専門医が解説!〈チェックリスト付き〉前編|話題|婦人公論.jp

注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬の解説|日経メディカル処方薬事典

大人の発達障害 ADHD治療薬について|疾患について|名古屋市瑞穂区の心療内科・精神科あらたまこころのクリニック

大人の発達障害(ADHD /ASD) | 精神科・神経科 | 心療内科・精神科の医療法人和楽会

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内