2021.11.04

身体拘束とは?身体拘束をせざるを得ない現状!身体拘束をしないケアを目指すには?

身体拘束とは?身体拘束をせざるを得ない現状!身体拘束をしないケアを目指すには?

「障がい者の閉じ込め」「障がい者を拘束具で押さえつける行為」が問題視されています。一歩間違うと虐待になりかねないといわれる身体拘束。身体拘束について、身体拘束をしてはいけないとされる理由や、身体拘束をせざるを得ない現状、身体拘束をしないケアの実現について解説します。

 

身体拘束とは?

身体拘束とは、本人(障がい者)の意思に関わらず、身体的・物理的な自由を奪ったり、行動を制限したりする行為を指します。

身体拘束の例
・ひもや抑制帯などでベッドや車いすに縛り付ける
・三トン型の手袋を装着させる
・支援者の体で押さえつけて行動を制限する
・向精神薬を過剰に飲ませる
・部屋に閉じ込める  など

 

身体拘束がやむを得ない場合

原則、障がい者に身体拘束をおこなうことは禁止されています。

しかし、以下の要件を満たす場合、必要最低限の身体拘束もやむを得ないとされます。

①切迫性

利用者などの生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が高い状況。

②悲代替性

身体拘束、そのほかの行動制限をおこなう以外に、代替できる手段がない状況。

③一時性

身体拘束、そのほかの制限が一時的なものであること。

身体拘束をおこなう場合の手続き
①管理者、責任者、虐待防止の責任者など複数の職員と身体拘束をおこなわない方法を会議し、身体拘束をおこなわず支援する方法がない場合は②へ

②本人や家族へ、身体拘束の内容・目的・時間・期間などの十分な説明と同意を得る

③身体拘束をおこなったときの状況・時間・利用者の心身の状態・身体拘束がやむを得ない理由を記録する

 

 

身体拘束をしてはいけない理由

現場の声を見ると、身体拘束の未実施に反論する意見が多いです。しかし、令和3年度障害福祉報酬改定では身体拘束に関する要件が追加され、身体拘束に厳しい目が向けられています。身体拘束をしてはいけないとされる理由には、以下のことが指摘されています。

 

虐待につながるおそれがある

身体拘束は「これぐらいならいいだろう」という考えが起こりやすく、また安易にできるため、身体拘束をくり返したり、「これぐらいならいいだろう」という考えが進んだりして、虐待につながるおそれがあると考えられています。

虐待として取り上げられる事例
・長時間にわたって正当な理由なく、または罰として部屋に閉じ込めた。
・長時間にわたって正当な理由なく、行動を制限した。
・向精神薬など薬物を過剰に飲ませた。
・長期間、保護者・後見人などと面会謝絶、帰宅不許可・中止など、外部との交流を制限した。
・縄、ロープ、ビニールテープ、布ヒモ、鉄鎖、手錠などで身体拘束をおこなった。

 

症状を悪化させる場合がある

身体拘束をされることによって、障がい者によっては怒り、屈辱、不安といった負の感情をもってしまう方もいます。精神的苦痛でますます他害、自傷などがふえ、また身体拘束をするといった悪循環に陥るおそれがあります。

 

 

職員のモチベーション低下

身体拘束をおこなうことによって、職員が自身のケアに自信がもてなくなり、安易な身体拘束をくり返してしまうことが考えられます。すると支援技術を向上させることもできなくなり、身体拘束がますますくり返される事態になります。

 

 

身体拘束をせざるを得ない現状

身体拘束をしてはいけない理由があり、身体拘束を禁じる意向となっていますが、それでも度々ニュースになってしまう身体拘束の問題。現場には身体拘束をせざる得ない現状があります。

 

福祉の人員不足

人口減少といわれているにも関わらず、障がい者の人口は年々ふえています。

身体拘束

そのため、障害福祉施設の需要が上がり、施設数はどんどん増えていますが、求人数と求職者には大きな差ができています。

福祉人材の減少

参照:https://www.fukushi-work.jp/toukei/index_2.html

 

人員が少ないと、緊急時の対応に遅れたり、支援が行き渡りにくくなります。

強度行動障がいなど、突発的で危険度が高い障がい者の方に、身体拘束をしないケアを実施しようとするなら、その障がい者に職員が1対1、または1対2でずっと対応できる体制が望ましいでしょう。

しかし、1人の障害者に1人の職員がずっとついて支援することがむずかしい施設もあるのが現状です。人員が足りていないのに加えて、研修、会議、記録など仕事が増えていくばかりです。このように余裕のない環境もまた、身体拘束をしてしまう状況をつくる一因となっているでしょう。

 

身体拘束を廃止して起こるトラブル

身体拘束を廃止して起こるトラブルも考えられます。自傷がある方は体に傷をつくり、時に命に関わるようなケガもします。他者に噛みつくような他害がある場合、人の口も雑菌があるため、しっかり処置をしなくてはいけません。このようなことが頻繁にあると、対応に追われ、医療費も上がります。

身体拘束をしていればケガまたは死亡しなかった、という訴えが起こる可能性もあります。

 



 

身体拘束をしないケアを実現するには

身体拘束をしないケアを実現するには、研修や会議、記録も大切ですが、環境の改善も必要です。

 

福祉のイメージを変える

障害福祉や介護などは、仕事内容が大変だと多くの人に知られているなか、さらに「待遇が悪い」「給料が低い」「労働環境が悪い」と悪いイメージをもたれています。

これでは福祉業界への求職者がふえません。人員不足による労働環境、支援体制の悪化も防げません。そのため、福祉への悪いイメージを変え、求職者をふやすような施策が必要です。

 

 

給与・待遇の向上

福祉の悪いイメージをなくすには、まず労働に見合った対価が求められるでしょう。「給与・待遇を向上させる」または「人員をふやして労働環境に余裕をもたせる」など。

また、どれだけ意欲があっても労働環境が悪く、仕事内容も大変だと長く続けることはむずかしいです。労働環境が改善し、少しの余裕ができるようになれば、離職率を下げることにもつながります。

 

人員をふやす

人員をふやし、障がい者一人ひとりに丁寧な支援ができるようになれば、障がい者が何に困っているか、どうして他害や自傷が出るのか、といった「気づき」がしやすくなります。この「気づき」と「早急な対応」が、身体拘束をしない支援に欠かせないものです。

「気づき」がふえて、気づいてすぐに支援を見直し・実行できるようになると、「身体拘束をしない支援」の実現に近づくでしょう。

 

まとめ

身体拘束を推奨してはいませんが、身体拘束をしないケアを目指すには、今施行されている研修、会議、記録の実施だけでは改善につながらないでしょう。

たとえ身体拘束に関する正しい知識を身につけたとしても、まったく余裕のない環境では実行することがむずかしくなります。施設側も努力をしなくてはいけませんが、労働環境の改善、人員の増加など、身体拘束ゼロは社会全体で取り組むべきことでしょう。

 

 

参考

介護事業者が知るべき身体拘束に関する研修 | 動画で無料視聴可能 | 介護経営ドットコム

厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業 障害福祉サービス事業所等における身体拘束等に関する実態調査

不適切な身体拘束を防止する手引き

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000768753.pdf

身体拘束ゼロマニュアル

 

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