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発達障害はチーム戦に強い?脳の多様性(ニューロダイバーシティ)が組織にもたらす力

従来の「定型発達が標準」という前提だけではなく、「脳の多様性(≒認知の多様性)=Neurodiversity(ニューロダイバーシティ)」を社会や職場に受け入れようという考え方が広がっています。
特に日本でも、この考え方を取り入れる企業や組織、研究が増えてきています。
たとえば「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」の調査では、オフィスワーカーの約5%が発達障害の特性を持つ可能性があると報告されています。
多様な脳が混ざることで、チームにどんな強みが生まれるのか――。
この記事では、凸凹脳(神経多様性)がチームに与えるポジティブな効果、注意すべきこと、そしてその活かし方を見ていきます。
ニューロダイバーシティとは?

神経多様性という考え方
「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」は、脳や神経の働きの違いを、欠陥や劣ったものとしてではなく“個性”や“多様性”として捉える考え方です。
発達障害(ASD、ADHD、学習障害など)を持つ人だけでなく、すべての人の脳・神経の違いが尊重されるべきだ、という理念から生まれました。
参考リンク:Neurodiversity
この考え方は、社会だけでなく、企業や組織の人材戦略としても注目されています。
多様な「考え方」「感じ方」「得意不得意」が混ざることで、従来の画一的価値観では生まれなかったアイデアや創造性が発揮される――そんな可能性があるのです。
参考リンク:経済産業省 ニューロダイバーシティの推進について
「凸凹脳」は珍しくない
こういった凸凹脳は「発達障害者」「特別な能力を持つ人」のみ、というわけではありません。
前述の調査でも示されるように、オフィスワーカーの中に「発達特性を持つ可能性のある人」が一定割合で存在し、一般的な多様性のひとつと考えられています。
参考リンク:日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト 「職場における脳・神経の多様性に関する意識調査」の結果について
つまり、あなたのチームやクラス、サークルにも既に「凸凹脳」がいるかもしれない――。
それを「弱み」ではなく「違い」「個性」として捉えること自体が、変化の第一歩と言えるでしょう。
なぜ「発達障害 × チーム」は“強み”になり得るのか?

多様な認知スタイルが創造性を生む
異なる認知スタイルを持つ人たちが集まると、同じ課題に対して多角的な視点が出やすくなります。
たとえば、ある人が細かい部分に気づき、別の人が全体像を考え、また別の人がユニークな発想を出す――。
こうした多様性は、マンネリ化した思考や一方向のアイデアに偏らず、チーム全体の“創造力の底上げ”につながります。
実際、日本の企業でもニューロダイバーシティを採り入れることで、組織の活力やイノベーションの可能性を見直す動きが強まっています。
視野の広さと柔軟な対応力
凸凹脳の人は、「普通とは違う」やり方や感覚を持つことが多く、それは新しい対応・代替案を考えるうえで力になります。
既存の枠にとらわれない思考ができる人は、予期せぬトラブルや変化にも柔軟に対応でき、チームの安定性や強さにつながることがあるのです。
強みを引き出すマネジメントとの相性の良さ
もちろん多様性には壁が現れることもあります。
しかし、適切な理解と配慮(コミュニケーションの柔軟性、働き方の調整、役割の明確化など)があれば、凸凹脳の強みは十分発揮されます。
こうした「認知的多様性を尊重するマネジメント」は、現代の多様な価値観や働き方の中で、むしろ合理的かつ必要なアプローチだと、多くの専門家が指摘しています。
参考リンク:JMAソリューション (日本能率協会)ニューロダイバーシティの考え方と実践
実際の職場でどう活かす?発達障害を強みに変えるチームづくり

まずは「認めること」から:神経の多様性を理解する環境づくり
チームや職場として最初にできるのは、「発達障害や認知特性は個性である」「みんな違って当然」という共通認識を持つこと。
たとえば、勉強会やミーティングで「ニューロダイバーシティとは何か」を共有したり、意見を言いやすい雰囲気を作ることが第一歩です。
日本でも、この考え方を取り入れた企業が増えており、「発達障害を強みにする人材戦略」は徐々に広がっています。
参考リンク:大人の発達障害ナビ ニューロダイバーシティ 脳の多様性を考えてみよう
適材適所を意識する配置と役割分担
例えば、細やかなチェックやルーチンワークを得意とする人、アイデア出しや発想に強い人、全体の流れを見るのが得意な人――。
特性によって得意分野は変わるので、役割を固定せず、その人の特性に応じて柔軟に配置するのが理想です。
ある会社の例では、発達特性を持つ人をテスターや検証作業担当に配して、高い成果を出しているという報告があります。
コミュニケーションとサポート体制の工夫
認知の特性ゆえに、コミュニケーションで困ることがあるかもしれません。
だからこそ、
- 指示や依頼は「文章+口頭」でわかりやすく
- やることを見える化(ToDo管理やチェックリスト)
- 無理のないスケジュール設定と休憩の確保
など、サポート体制を整えることで、多様な人が力を発揮しやすくなります。
こうした取り組みは「合理的配慮」「インクルージョン」の一部として、多くの企業が採用し始めています。
発達障害 × チームのメリットと注意点

メリット:創造性・柔軟性・多角的思考
多様な脳が混ざることで、同じ課題に対して複数のアプローチが出やすくなります。
これにより、問題解決の幅が広がり、イノベーションが生まれやすくなります。
たとえば、最近の記事でも「発達障害のある人はイノベーションと相性が良い」とする分析があります。
参考リンク:Forbes JAPAN 日本で10人に1人。なぜ発達障害のある人はイノベーションと相性がいいのか
注意点:誤解・摩擦・情報処理のズレ
一方で、認知の違いが “ズレ” を生み、誤解やコミュニケーションの齟齬、チーム内での摩擦につながることもあります。
多様性そのものが「両刃の剣」になり得るからです。
実際、国際研究でも「多様性があるだけでは効果が出ず、心理的安全性(その違いを認める土壌)が重要だ」と報告されています。
そのため、チームとして「多様性を活かすルールづくり」や「心理的安全な場の確保」が不可欠です。
日本で広がる「ニューロダイバーシティ」

実践と動き
日本でも近年、ニューロダイバーシティの受け入れ・推進に前向きな企業や団体が増えています。
たとえば「Neurodiversity at Work」を掲げるコンサルティングや講座、社員の受け入れ事例の公開などが進んでいます。
また、社会全体としても「脳や神経の多様性は当然の変異」という見方が少しずつ広がりを見せており、障害者雇用に限らず、通常の職場や組織でも、凸凹脳を含む多様な人材をどう活かすかが問われています。
参考リンク:朝日新聞 ニューロダイバーシティとは? 発達障害との関係や具体例、批判と今後のあり方を解説
「発達障害 × チーム」をうまく回すための実践ポイント
少し手間かもしれませんが、次のような取り組みが有効です。
- チーム全体で「認知の多様性とは何か」を学ぶ機会をつくる
- 個々の特性や働き方の好みを共有する
- 仕事の割り振り・環境を柔軟にする(役割分担、タスク管理、休憩・休息の確保)
- コミュニケーションやフィードバックの方法を明文化する(口頭+文章など)
- チームメンバーの「違い」を尊重する姿勢を持つ
こうした取り組みは、決して「特別扱い」ではなく、チームの当たり前の土台として機能します。
まとめ : “発達障害× 多様性” は、チームの資産になる
従来、「定型発達が基準」とされてきた社会では、脳の多様性は見落とされがちでした。
しかし、今は「違いこそが力になる」という価値観が広がり、「凸凹脳を含めた多様性」がチームの強みに変わりつつあります。
もしあなたが、発達特性や神経の違いを持っていて、「自分のせいで迷惑をかけているかも…」と感じていたら。
それは“弱み”ではなく、“このチームに必要な個性”かもしれません。
チームには様々な人がいて当然。
その多様性を大切にすることで、チームはもっと強く、豊かになります。
凸凹脳がもたらす多様性を、あなたも、あなたのまわりも、強みに変えてみませんか?
🔗 参考リンク・動画
- 「あなたの“特性”はチームの“強み”になる」 — 発達特性をチームの資産とする実践的コラム 株式会社rewrite(リライトキャンパス浜松駅南)
- 日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト 「職場における脳・神経の多様性に関する意識調査」の結果について 武田薬品工業
- 「ニューロダイバーシティを解説」精神科医がこころの病気を解説するCh
- 「ニューロダイバーシティ/脳と神経の多様性」について質問ある?| Tech Support | WIRED Japan