2024.03.06

高学歴発達障がい者の挑戦:ブラック企業を経験して天職を見つけるまで

幼少期から発達障がい(ASD)として精神科に通っていた高橋希美さんは、数学に優れ上智大学に入学しました。

卒業後は大学院に進むほどの優秀な頭脳を持っていましたが、不本意な職場を転々とするハメになりました。しかし、彼女が最終的にたどり着いたのは、自分にフィットする「天職」でした。

 

4〜5歳の頃に自閉スペクトラム症を診断される

高橋希美さん(45歳)は、すらっとしたモデル体型の女性です。彼女は上智大学の理工学部を卒業し、同大学院を中退しています。

しかし、彼女の人生には困難がありました。4〜5歳の頃に自閉スペクトラム症(ASD)の傾向が見つかり、精神科に通い始めました。発達障がいを抱えた彼女にとって、学校という環境は苦痛であり、家族との関係も複雑でした。

 

父親のストレスのはけ口

彼女は、「父は医師でしたが、私が幼稚園に入る前に精神を病んでしまって半年くらい精神科に入院していました。

父は勤務医で、職場の人間関係や激務のストレスなどを全部私にぶつけていました。ひとりっ子でほかに兄弟はいないし、母は気が強いので、母には当たらず子どもの私に来るんですよね」と振り返ります。

 

学校生活は苦難の連続

彼女の学校生活は苦難の連続でした。小中学校にはほとんど行くことができず、高校も不登校の生徒や中退者を受け入れる学校に通うことになりました。

それでも、彼女は立ち向かいました。「その頃からずっと、どうしようもなく死にたいと思っていました」と彼女は語ります。

 

自分の強さに気付く

しかし、彼女の人生は絶望的なものではありませんでした。彼女は自分の強さに気付き、努力し、成長しました。

学校での経験から、彼女は発達障がいを抱える人々の支援に興味を持ち、自らの経験を活かして社会に貢献しています。

 

数学の道を切り拓く:高橋さんの大学生活

周りには勉強熱心な人が少なく、大学進学率もそれほど高くなかった環境で育った高橋さん。

彼女は定期試験で90点台を取ることが容易な学校でしたが、その高い評定平均を活かして推薦入試を受けることを決意しました。文章を書くことが苦手な彼女は、小論文がない上智大学の数学科に進学しました。

 

理工学部数学科に入学

「小さい頃から算数・数学がとにかく好きだったんです。問題集があればひとりでできるところが数学の魅力です」と彼女は振り返ります。

入学後、彼女は地方から上京し、理工学部数学科に入学しました。しかし、女子が少ない学科であり、彼女は1年の頃、女子学生が十数名しかいない状況に直面しました。

 

さらに困難な状況

彼女はさらに困難な状況に直面しました。他の女子学生が全員自宅から通学しているため、彼女は常に孤立してしまいました。

また、女子高出身であったことから、他の女子学生は固まって行動し、その輪に彼女は馴染めなかったのです。

 

卒業まで5年かかる

結局、彼女は同じ学年の人と仲良くなることができず、休学を挟んで卒業まで5年かかりました。

しかし、彼女の勉強への情熱は変わりませんでした。特に幾何学のテストではベスト3に入るなど、彼女の数学の才能は際立っていました。

 

大学院を中退、障がい者雇用で入社するが退職

高橋さんは大学院を卒業後、てんかん発作の頻発や親からの圧力により大学院を中退しました。

その後、ニート生活を送った後、発達障がいの就労訓練を受け、障がい者雇用で予備校の教材部で働き始めました。しかし、その会社ではなぜか障がいをオープンにすることを避けられ、3年後に退職しました。

 

健康を損なうほどの体重の減少

この会社での経験は彼女にとって苦いものでした。数学科に所属していた彼女は、別の科の社員とのコミュニケーションが難しく、また、大学生のアルバイトが上司的な役割を果たし、彼女が部下になることに不快感を覚えました。

さらに、彼女の体重もさらに減少し、健康を損なうレベルまで落ちてしまったため、彼女は退職を決断しました。

 

あきらめずに前に進むが…

この経験は彼女にとって大きな挑戦でしたが、それでも彼女は諦めずに前に進みました。退職後、彼女は新たな可能性を探求し始めました。彼女は自分の経験を活かし、次の一歩を踏み出す準備を進めました。

2社目も教材関係の仕事に就きました。ここではクローズ(自身の障がいを企業に開示しない)で、派遣として入社しました。しかし、この会社はブラック企業でした。

「何をやっても怒られた」

高橋さんの次の職場もまた、彼女にとって苦難の連続でした。数学課でのパワハラや過酷な労働環境により、彼女は苦しい日々を送りました。

「数学課の社員の方がパワハラ気質の人で、何をやっても怒られました。私が入社する前に私のポジションにいた人は男性だったらしいのですが、その人が職務中に泣いたというレベルのパワハラ具合で。私もパワハラが嫌になって2〜3日無断欠勤したこともあって、もうクビでいいと思ったこともありました。それでも派遣元から『無断欠勤した期間は有給ということにしてあげるから戻ってこないか』ということを言われて戻りました

 

2年在籍したのち退職

「派遣は3カ月ごとの更新制なので、次の更新はもうないだろうなと思っていたら、なぜかまた『お願いします』と言われて。結局2年少々引っ張られて在籍し、最後はもうこっちから辞めたいと言って辞めました」

過酷な労働環境やパワハラといった困難に直面しながらも、彼女が自らの意思を持って前に進んでいく強さを示しています。彼女は苦しい状況に耐え、自らの人生をコントロールし、最終的には自分の幸福を追求しました。

 

強い意志を持つ

彼女の経験は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、困難に直面したときにも希望を持ち、自らの人生を切り開いていくことの重要性です。

彼女のような強い意志を持つ人々は、自らの困難を乗り越え、自分の目標に向かって進むことができることを示しています。

 

塾や予備校向けの参考書や教材の編集を行う

高橋さんは、別の会社を経て、現在の天職だと語る職場にたどり着きました。そこでは塾や予備校向けの参考書や教材の編集を行っています。

数学が好きである彼女にとって、数学を扱う仕事に就けてとても嬉しいことです。

 

練習問題の模範解答などを作成

彼女の仕事内容は多岐にわたります。高校教科書の練習問題の模範解答や、学校の教師向けの指導書の作成、中学生向けの高校入試対策模擬試験の作成など、幅広い業務を行っています。

また、編集だけでなく、時には執筆や校正も行います。さらに、中学生向けの高校入試の指導書やタブレット教材の制作にも携わっています。

 

自分が書いたものが本や模擬テストとして製品になること

彼女が現在の仕事で一番楽しんでいることは、自分が書いたものが本や模擬テストとして製品になることです。

彼女はこの会社にクローズで正社員として入社しており、その理由の1つは穏やかな社長と、働きやすい環境にあることです。彼女は自身が数学が得意なこともあり、ASD気質の人が多い環境で自分が浮かびづらく感じています。

また、彼女は障がい者手帳を持っていますが、会社側には発達障がいではなく、併発しているてんかんで手帳を持っていることを伝えています。

 

クローズで働いている理由

クローズ(自身の障がいを企業に開示しない)で働いている最大の理由はやはりお金です。障がい者雇用の多くは低賃金です。以前、障がい者雇用で働いていたときは幸い、親がワンルームマンションを購入してくれて、家賃の負担がありませんでした。そして今でもその部屋に住み続けています。

 

「発達障がいが悪いとは思わない」

「私という人間は数学がなければ何もありません。発達障がいがあって、数学に秀でていたから今の職に就けたので、一概に発達障がいが悪いとは思っていません。社長が元気なうちはずっとこの会社で働き続けたいです」と語りました。

 

障がい者差別を受ける

天職と語る職業に恵まれた一方で、全く苦難がないわけではありません。交際中の男性が詳細は話さずざっくりと「彼女は障がい者だ」と男性の親に伝えたところ、「障がい者の嫁なんていらない」と会わせてもらえなかったことがありました。

高橋さんは障がい者差別を受けたことになります。少しでも障がいについての理解が一般の人にも認知されることを願うばかりです。

 

困難に立ち向かうことの大切さ

彼女の物語は、困難な状況に直面しながらも、自分の情熱を持ち続け、困難を乗り越えていく姿を示しています。彼女のような強い意志を持つ人々は、自分の目標に向かって進む際のモデルとなるでしょう。

彼女のような人々が、社会の理解と支援を得て、自分の可能性を追求できるように、社会全体が努力しなければなりません。

また、新しい道を切り拓く勇気を私たちに示しています。彼女は自分の価値を見出し、社会において自分の居場所を見つけるために努力しました。彼女の経験は、障がいを持つ人々が困難に立ち向かい、成長し、成功することができることを示しています。

 

自分に向いていることを模索する

彼女の経験は、勇気がどれほど重要であるかを示しています。彼女は自分の情熱に従い、自分が属するべき場所を見つけるために困難に立ち向かいました。そして、彼女の努力と才能が結実し、彼女は自分の夢を追求するための道を切り拓くことができました。

まとめ

高橋さんの言葉には、数学への情熱と、障がい者としての誇りが感じられます。彼女は自分の能力を信じ、それを生かせる環境で働くことの大切さを知っています。また、彼女の経験は、障がい者が直面する現実と、それに対する社会の課題を示しています。

高橋さんは、数学の才能を活かし、現在の職場で天職と呼べる環境に恵まれました。彼女は過去に苦難や差別に直面しながらも、自らの能力を信じ、前進し続けました。彼女の経験は、障がい者の雇用や社会に対する理解の必要性を示唆しています。

 

参考

【高学歴発達障がい】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職 | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン

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