- 精神障がい
- 発達障がい
「ちゃんとしなきゃ」が止まらない。アダルトチルドレンの生きづらさ

「私はずっと“いい子”だった」
親の顔色をうかがい、感情を飲み込んで育った。
頼ることが苦手で、なのに人の期待には応えてしまう。
…それ、もしかすると「AC(アダルトチルドレン)」かもしれません。
この記事では、ACの意味や背景、そして回復のヒントを、心の痛みに寄り添いながら丁寧に解説していきます。
生きづらさの「理由」に気づいたとき、自分を責める苦しさから少しずつ解放されるかもしれません。
アダルトチルドレン(AC)とは?

大人になっても心が癒えていない「子ども」
アダルトチルドレン(AC)とは、「子ども時代に安心・信頼・自由を得られなかった人が、大人になってもその影響で生きづらさを感じる状態」を指します。
病名ではなく、自分を理解する“ひとつのレンズ”です。
他人から見れば「しっかりした人」でも、心の奥では「人に頼れない」「感情を出せない」苦しさを抱えています。
“普通の家庭”でもACになることがある
ACという言葉を聞くと、「虐待や依存症があるような特別な家庭の話では?」と思うかもしれません。
でも実際には、一見すると“問題のない家庭”でも、子どもの心が置き去りにされていればACになり得ます。
たとえば…
- 親の期待が強く、自由に選択できなかった
- 「泣くな」「我慢しなさい」と感情を抑えさせられた
- 家族の問題を子どもが背負っていた(親の相談役、弟妹の世話係など)
大切なのは、「何があったか」よりも「どう感じていたか」。
ACとは、**感情をしまいこんで生きてきた“心の生存者”**なのです。
セルフチェックリスト|10の質問でわかるあなたの中のAC傾向
以下の質問に、「あてはまる」と思った数を数えてみてください。
多ければ多いほど、AC的な傾向を抱えている可能性があります。
🔍 10のセルフチェック
- 子どもの頃、「いい子だね」と言われることが多かった
- 人の期待に応えることが、自分の価値だと思ってしまう
- 「感情を出すのはよくない」と思って育った
- 親や家族の顔色を気にして行動していた
- 頼まれごとを断るのが苦手
- 人に頼ることに強い抵抗や不安を感じる
- 他人との距離感がうまくつかめない(近づきすぎる/離れすぎる)
- 自分にだけとても厳しく、失敗を許せない
- 「私はどこかおかしいのでは」と感じることがある
- 恋愛・人間関係でいつも同じパターンにハマって苦しくなる
🌱 結果の目安
- 0~3個:あまり強くは感じていないか、他の要因の可能性あり
- 4~6個:AC的な傾向があり、生きづらさを感じやすいかもしれません
- 7個以上:ACの影響が日常生活に強く出ている可能性が高いです。
※このチェックは診断ではありません。気づきのきっかけとしてご活用ください。
ACが感じやすい生きづらさ

人といてもしんどい。ひとりでもさみしい。
ACの人は、人との距離感がうまくつかめなかったり、感情に蓋をしてしまったりする傾向があります。
幼い頃に「頼ること」や「甘えること」が否定された経験から、大人になっても無意識にそれを避けてしまうのです。
よくある感覚や行動のパターン
- 自分の気持ちがわからず、「何がしたいのか」見失う
- 人間関係で「嫌われないように」と頑張りすぎてしまう
- 褒められても素直に受け取れず、「もっと頑張らなきゃ」と思ってしまう
- 助けを求めることに罪悪感を感じる
「いい子だったね」と言われても、うれしくない。
本当は、「そのままでいいんだよ」って言ってほしかった。
なぜACは「今も苦しい」のか

子ども時代の“守り方”が、大人になって自分を縛る
ACの苦しさの多くは、**子ども時代に自分を守るために身につけた“生き残りの方法”**が、大人になっても自動的に作動してしまうことにあります。
- 親に怒られないように、本音を隠した
- 感情を抑えることで、家庭の混乱から身を守った
- 「役に立つ子」になることで、自分の存在価値を保った
でも、それらの行動は**「その場しのぎの防御反応」**。
今のあなたにはもう、そんなにがんばらなくてもいいのです。
「うまくやってるのに苦しい」の正体
ACの人は「しっかりしている」「責任感がある」と言われがちです。
でも、それは苦しさの裏返し。
- 周囲に合わせすぎて、自分の感情がわからなくなる
- 頼られることで安心するが、自分が助けを求められない
- 一人で抱え込み、限界がきてから崩れてしまう
この“繰り返しのパターン”に気づくことが、回復の最初の一歩になります。
回復のステップ|感情に気づき、向き合う

「変わる」よりも「自分に戻る」こと
ACの回復は、「性格を変えること」ではありません。
ずっと閉じ込めてきた“本当の気持ち”と向き合うことです。
まずは、こう問いかけてみてください。
- 本当は、あのときどう感じていた?
- どんな言葉をかけてほしかった?
- 今、どんな気持ちを無視してる?
気づくのが怖いときは、ノートに書いてみたり、信頼できる人に少し話してみたりすることから始めましょう。
自分にやさしくなる“練習”も大事
- 「こう感じてもいいんだよ」と自分に許可を出す
- 「今日はよくやった」と1日の終わりに声をかけてみる
- 無理にポジティブにならず、「苦しいままでも大丈夫」と認める
これらはすべて、インナーチャイルド(内なる子ども)を癒す小さなステップになります。
回復のためのサポートを知ろう

一人で抱え込まないで
回復は、一人きりではとても大変です。
だからこそ、「安心できる場所」や「共感してくれる人」とつながることがとても大切です。
おすすめのサポートや方法
- ACやインナーチャイルドを扱う専門カウンセリング
- アダルトチルドレンの自助グループ(ACOAなど)
- 心理学や体験談の本を通じた“共感”と“理解”の深まり
話すのが苦手なら、無理に話さなくてもいい。
でも、聴いてくれる人がいるだけで心は変わります。
ACは「弱さ」ではない

がんばってきた証としてのAC
ACの人は、弱かったから傷ついたのではありません。
がんばっても報われなかった経験を、心の奥で引きずっているだけなのです。
- 家族の平和のために、自分を後回しにしてきた
- 期待に応えなければ存在を許されないと感じていた
- 自分を責めることで、家族の崩壊を止めようとした
そんなふうに生きてきたあなたは、誰よりも耐え、努力してきた人です。
役立つおすすめ書籍5選
1. 『アダルト・チルドレン癒しのワークブック』
著者:西尾和美(学陽書房)
→ 日本にACという言葉を広めた第一人者による解説と癒しのヒントが詰まった一冊。信頼性・内容ともに非常に高いです。
2. 『インナーチャイルドと仲直りする方法』
著者:由井寅子(ビジネス社)
→ 感情を閉じ込めた“子どもの自分”との向き合い方をやさしく解説。実践ワーク付き。
3. 『毒になる親 一生苦しむ子ども』
著者:スーザン・フォワード(講談社)
→ ACの核心に迫る一冊。親との関係を見つめ直す視点を提供してくれます。
4. 『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』
著者:根本裕幸(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
→ ACに限らず、対人不安・自己否定に苦しむ人にぴったり。優しい語り口。
5. 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』
著者:岡田尊司(光文社新書)
→ ACの背景にある「愛着の傷」に焦点を当てた専門的かつわかりやすい良書。ファクトベースの内容です。
まとめ:「私が悪かったんじゃない」と気づけたら
もしあなたが今、しんどさを抱えているのなら――
ACという言葉が、少しだけその理由を照らしてくれるかもしれません。
「過去に何があったか」よりも、「今、どうしたいか」。
もう、ひとりで抱えなくていい。
あなたには、「そのままでいていい」未来を生きる価値があります。
ゆっくりでいい、一歩ずつ歩いていきましょう。