2024.05.31

多様化する障がい者の就労支援!障がい者が働く「就労継続支援B型事業所」

障がい者が働く「就労継続支援B型事業所」では、いま様々な新しい仕事が生まれ、障がい者がいきいきと働く姿が見られます。

 

障がい者が従事する仕事として、パンやお菓子作りを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、次のような仕事を想像できますか?

  • ベトナム料理に欠かせない香草の栽培
  • 新たな食料として注目されるナマズの養殖
  • 動画制作をしながらeスポーツの選手を目指す

これらはすべて、静岡県内の事業所で行われている仕事です。現在、このような福祉事業所での仕事の内容は、非常に多様化しています。

 

障がいの特性は人それぞれ異なります。そのため、多くの事業所の中から、自分に合った前向きに働ける仕事を選ぶことで、就労のチャンスが大きく広がります。こうした多様な仕事を取り入れたユニークな事業所では、障がい者が生き生きと働いています。

 

豊かな香りに包まれる「パクチーファラン」の栽培者たち

静岡市駿河区の市街地に佇む農業用ハウスでは、普段目にすることの少ない珍しい野菜が栽培されています。その姿は、高さ15cmほどのみずみずしい株が密集し、その収穫物は、細長い葉です。

 

この特別な野菜とは、「パクチーファラン」。ベトナム料理には欠かせない香草であり、その名の通り、見た目は異なりますが、まるでパクチーそのものの香りを放ちます。麺料理フォーをはじめ、多くの料理において、彩りや風味を添える重要な役割を果たしています。

 

「パクチーファラン」の栽培は、2022年から始まりました。この栽培に携わるのは、発達障がいや知的障がいを抱える方々で、静岡県内のハウスを運営する福祉事業所に通う利用者たちです。彼らは、1枚1枚丁寧に葉を摘み取る作業を手作業で行います。この作業には、2~4.5時間かかり、その間、カゴが葉で一杯になる光景が続きます。

 

障がい者の社会参画を促進する重要な取り組み

このような新しい仕事は、彼らにとっては大きな挑戦です。以前は、食品の容器詰めや縄跳びの組み立てなど、いわゆる「内職」を行っていました。しかし、この「パクチーファラン」の栽培によって、彼らは外で働く機会を手に入れ、自信をつけることができました。

 

このような農業分野での活動は、「農福連携」として知られ、障がい者の社会参画を促進する重要な取り組みです。静岡県内では、約9100人が利用する「就労継続支援B型」の福祉サービスが提供されています。

 

障がい者とナマズが紡ぐ「農水連携」の物語

湖西市に佇む古い倉庫は、住宅地の中にひっそりと佇んでいます。しかし、その中では静かなる革命が起こっています。大きな水槽が並び、そこでは陸上養殖が営まれています。この場所は、海や川から孤立し、清浄な水を使って養殖される独自の世界です。そして、そこで飼われているのは、東南アジアでよく食べられる「ヒレナマズ」と呼ばれる魚です。

 

驚くべきは、この養殖場の運営主体です。それは医療法人のグループであり、福祉事業所を運営する団体なのです。この養殖場で働くのは、精神や発達に障がいがある人々です。この場所での仕事は、福祉事業所の一環として提供され、彼らが自己成長を遂げる機会となっています。

 

安定した収入を得る一助となっている

彼らはナマズの世話や清掃など、様々な作業に従事しています。その中には、彼らの手で育てられたナマズを見ると、達成感に満ちた笑顔が広がります。この養殖場は、障がいのある人々が新たな職場で自信をつけ、安定した収入を得る一助となっています。

 

また、この事業は福祉のみならず、食料自給にも寄与しています。養殖されたナマズは、病院給食の食材として利用される予定です。医療法人の理事長は、この事業の意義について語ります。「障がい者を支援しながら、食料自給にもつながれば理想的だ」と。

 

工賃の向上もこの事業の一つの目的です。障がい者の給与は社会的課題であり、その解決は重要です。パクチーファランの栽培やヒレナマズの養殖は、単なる仕事提供だけでなく、障がい者の経済的自立を促進する手段として注目されています。

この「農水連携」は、福祉と農業が結びつく新たな光景を創り出し、社会に変革をもたらしています。

 

ビデオゲームが切り拓く新たな就労支援の道

去年、浜松市に新たな「B型」の事業所がオープンしました。その場所は、スタイリッシュな内装の居室に液晶モニターがずらりと並ぶ、まるで未来のスタジオのような雰囲気を醸し出しています。しかし、そこで行われているのは、単なる遊びではありません。それは、ビデオゲームを競技として取り組む「eスポーツ選手」になるための訓練なのです。

 

この事業所は、ゲームを通じて社会に参画する機会を提供する場所です。利用者の中には、自閉症や学習障がい、社交不安症といった精神的な障がいを抱える人々が多く、その多くは過去には家に引きこもっていたといいます。

 

映像編集による動画作成

彼らが担う仕事は、映像編集による動画作成です。ゲームと同じパソコンを使って、1日に50分間の作業を2回行います。しかし、なぜゲームが就労支援に役立つのでしょうか?事業所を通い始めて半年ほどの利用者にその理由を聞いてみました。

 

ある利用者は、最近所長に誘われて三島市で行われた格闘ゲームの大会に出場しました。緊張はしましたが、それよりもわくわく感が大きかったそうです。相手との対戦やプロ選手の試合観戦など、初めての経験に満ちた一日でした。そして、その経験から「人が集まる場所にも出ていけるようになるかもしれない」と思ったと言います。そして、「もっと練習して強くなりたい。また出場したいです」と語っています。

 

eスポーツは世界中で若者たちに愛されており、その人気はますます高まっています。静岡県内でも毎年大会が開催され、プロ選手や愛好者が集まります。障がいの特性上、意欲や目標を持つことが難しい人々が、eスポーツを通じて向上心を掴み、他者と関わることが苦手でも社会に向けて一歩を踏み出そうとしています。ゲームがいわば「コミュニケーションツール」となって、障がい者の社会経験につながっているのです。

 

最初は基礎的なスキルを習得

この事業所は、群馬県の企業のフランチャイズ事業として運営されています。映像編集のスキルを学ぶための仕組みが整っており、最初は基礎的なスキルを習得するために簡単な編集作業から始めます。そして、習熟してくると、取引先の企業から動画作りの仕事を請け負うことができるようになり、それが自信にも工賃アップにもつながります。

 

この事業所では、eスポーツだけでなく、イベントの企画運営を行うコースも用意されています。利用者はビデオゲームの体験イベントを企画し、地域のイベント会場などで実施しています。立ち寄った人たちに遊び方を教え、喜んでもらうことで手ごたえを感じているといいます。

大好きなゲームを足掛かりにして、他者と交流し、社会と関わる力に磨きをかけていく。この事業所は、そんなきっかけを提供する場所なのです。

 

障がい者の働く意欲を支援する新たな視点

社会福祉学の専門家である静岡福祉大学の増田樹郎学長によれば、障がい者の就労支援は大きな変化を遂げています。従来は「どのように働いてもらうか」という視点が主流でしたが、現在では当事者の「働きたい」という意欲を支援する方向に転換しています。

 

増田学長によれば、この動向は事業所で生産される製品(授産製品)にも変化をもたらしています。授産製品は、利用者と事業所や企業との連携を通じて、社会的な需要に合った商品の開発が進んでいます。これにより、障がい者が趣味の範囲で作るものから、品質や適正価格を考慮した「製品」への切り替えが行われています。

 

一定のハードルも存在

しかし、この取り組みには一定のハードルも存在します。特に「B型」の事業所では、市場原理に対する抵抗感が存在し、製品開発における課題が浮き彫りになっています。これに対処するためには、各事業所がどのように取り組んでいくかが重要となります。

 

一方で、障がいがある人たちにとって、仕事の選択肢が増えることは意欲や能力を発揮できるチャンスです。取材した事業所では、新たなやりがいを見出し、充実した日々を送っている方々の姿が印象的でした。これらの製品やサービスが多様化し、消費されることで、さらなる生きがいや工賃として作り手の元に還元されることを願っています。

就労支援施設A型・B型:障がい者の新たなキャリアの拠点

障がい者のための就労支援施設には、A型とB型の2つの主要なタイプがあります。これらの施設は、障がいを持つ人々が働く機会を提供し、自立した生活を送るための支援を提供しますが、それぞれ異なるアプローチを取っています。ここでは、A型とB型の就労支援施設の特徴と、それぞれの役割について見ていきましょう。

 

A型:生産活動に焦点を当てた支援

A型の就労支援施設は、主に生産活動に焦点を当てています。ここでは、障がい者が様々な製品を生産する作業に従事します。

例えば、工場での組み立て作業や植物栽培などが挙げられます。これらの施設では、障がい者が定型的な作業を通じて技術を磨き、自己実現を図ることができます。

また、生産された製品は市場に提供され、一定の収益を得ることができるため、経済的自立を目指す障がい者にとって重要な役割を果たしています。

 

B型:個々の能力や特性に合わせた支援

一方、B型の就労支援施設は、個々の障がい者の能力や特性に合わせた支援を提供することに重点を置いています。これらの施設では、障がい者が自分の興味や能力に基づいた仕事を見つけることができます。

例えば、趣味や特技を活かした仕事や、地域社会のニーズに合ったサービス提供などが行われています。B型の施設では、障がい者の個々のニーズに応じたカスタマイズされた支援が行われるため、彼らが自己実現を果たしやすい環境が整っています。

 

両施設の役割

A型の施設は、生産活動を通じて障がい者が技術を磨き、経済的自立を目指す支援を提供します。一方、B型の施設は、障がい者の個々の能力や特性に合わせたカスタマイズされた支援を提供し、彼らが自己実現を果たすための場を提供します。

両施設は、障がい者が社会での役割を果たし、自立した生活を送るための重要な拠点として、それぞれの役割を果たしています。

 

障がい者の就労支援施設は、彼らが社会での生活に積極的に参加し、自己実現を図るための重要な場です。A型とB型の施設は、それぞれ異なるアプローチを取りながらも、障がい者が自分らしく活躍できるよう支援を提供しています。

まとめ

障がい者の働く場所が多様性を受け入れ、新たな挑戦を提供する時代が到来しています。生き生きと働く姿が見られる事業所や施設は、彼らが自己実現を果たす場を提供し、社会参加の機会を広げています。

障がい者がそれぞれの個性を活かし、自らの可能性を追求することで、社会全体がより豊かになるという理念がここにあります。これからも、彼らの多様な能力や個性を尊重し、社会とのつながりを深める取り組みが求められています。

 

参考

多様化!障がいがある人たちの就労支援 | NHK 【NHK】


凸凹村や凸凹村各SNSでは、

障がいに関する情報を随時発信しています。

気になる方はぜひ凸凹村へご参加、フォローください!

 

凸凹村ポータルサイト

 

凸凹村Facebook

凸凹村 X

凸凹村 Instagram

凸凹村 TikTok


 

関連情報

みんなの障がいへ掲載希望の⽅

みんなの障がいについて、詳しく知りたい方は、
まずはお気軽に資料請求・ご連絡ください。

施設掲載に関するご案内