2022.03.14

世界の障害福祉は?障がい者への考え方・障害福祉のあり方・制度

世界の障害福祉は?障がい者への考え方・障害福祉のあり方・制度

各国によって障がい者への考え方、障がい福祉の在り方はちがいます。そのなかで日本は障がい福祉の考え方や制度が遅れているといわれています。

アメリカやイギリスでは本当の「差別禁止」がすすんでおり、デンマークなど北欧は「福祉先進国」として知られています。アメリカやデンマークなど世界の障がい福祉の考え方、制度を見ていきましょう。

 

アメリカの障がい福祉

アメリカは州ごとに障がい福祉に関する法律が制定されていますが、障がい者に関しては「アメリカ障がい者法(ADA)」というものがあります。障がいをもつアメリカ人法は、障がいに関する差別を禁止し、みんなと同じ生活をおくる機会を保証する法律です。

障がいをもつアメリカ人法では、以下のようなことが記されています。

 

あらゆる差別を禁止

  • 民間企業の雇用
  • 公共機関
  • 民間や団体が運営する施設など
  • 通信サービス

など、生活をおくるなかで起こりうる差別を禁止しています。

雇用面では、週の労働時間が20時間以上、かつ15人以上の従業員を雇う企業にたいして、障がい者を差別して「求人」「採用」をしたり、障がいを理由に「昇進」「解雇」「給与」などで差別をすることを禁じています。意図的ではなくとも、結果的に差別になっている場合も禁止です。

そのため、採用試験などで障がい者が身体に障がいがあり、通常のテストでは受けられない場合は、「タブレットなどを用いて、障がいに配慮しなければいけない」ということになります。

公共機関や施設などでの差別禁止は、障がいを理由に利用や入店を拒むことや、障がい者が利用しづらい環境であることを禁止します。

このように徹底して、日本の「合理的配慮」をおこなっています。

内閣府が実施した「障がい者の社会参加促進等に関する国際比較調査」でも以下のように統計がとれており、「差別禁止」の思想が身についていることがわかります。

障がいのある人への支援や交流経験を見ると、一緒に遊んだり相談や話し相手になったり、寄付や援助などの経験は日本が低く、アメリカやドイツと大きな差があります。

画像引用: https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/hikaku/gaiyou.html

 

アメリカの障がい者雇用

アメリカでは、働く人であれば、「障がい者」と「健常者」を区別せず、同じように扱います。また「障がい者雇用」が日本ほど意識されていません。

障がいをもっていても、だれでもやりたいことや自分の得意な能力を自分で考え、主張して、勤めたい企業に面接を受けることが当たり前です。

 

障がい者雇用義務はなし

アメリカの企業には「障がい者雇用義務」や「法定雇用率」が定められていません。

2013年から、連邦政府と年間1万ドル以上の契約がある民間企業には、被雇用者の「7.0%」直接雇用することが目標として決められています。しかしあくまで努力目標なので、雇用率が達していなくても、罰則などはありません。

雇用率を決めることで、雇用率を目的に障がい者を雇い、優秀な障がい者の能力が認められないのではないかという意見があるためです。

 

 

Good for businessという考え方

アメリカの企業や支援機関は、ビジネスにとってのメリット「Good for business」を重要視する、という考え方です。アメリカでは組織運営方法やその人に合った能力を重視しており、等級が上がったり下がったりしますが、下がっても日本で言われる「降格」ではありません。その人に合ったスキルを伸ばすことに力をいれていきます。

なのでジョブディスクリプション(職務記述書)に規定された条件を満たせば、障がいの有無に関わらず、役職に置かれます。

 

充実した就労支援

徹底した合理的配慮をおこなうアメリカは、障がい者の就職で健常者と大きな差が出ないように、就労支援が充実しています。

「採用」には「就労・マッチング支援」、仕事が定着するまで「障がい者トレーニング」がおこなわれ、「配置」「支援・育成」「評価」でも企業コンサルや指標開発が支援組織によっておこなわれます。

そして各支援組織の情報連携が強いことも特徴です。

 

デンマークの障がい福祉

デンマークは「高福祉国家」だとよく知られています。障がい福祉の分野でも、目指すべき思想や充実した制度があります。

 

ノーマライゼーション思想

デンマークの障がい福祉は「ノーマライゼーション思想」が特徴的です。

ノーマライゼーション思想とは、障がい者は「他の人たちと同じように地域社会で生活を送る権利を持つ存在である」という思想です。つまり障がいに関わらず、すべての人が普通の生活をおくれるようにする考えを指します。

「ノーマライゼーション」という言葉を初めに提唱したデンマークでは、高齢者の地域移住がすすめられています。介護が必要な高齢者を社会から隔離することなく、ほかの一般の人と同じ環境で暮らせるようにする取り組みです。

また高齢者施設は住宅街にあり、施設の外観は通常の住宅と同じようになっています。そのほか北欧では、障がい福祉施設が大きな街中にあることがよくあります。

 

ペタゴーという専門職

デンマークでは、さまざまな生活の課題に関する専門職が配置されています。そのひとつが「ペタゴー(社会教育指導員)」です。

ペタゴーは保育の分野、障がい福祉の分野、社会的困難者の分野など幅広い領域で、指導員として働くために必要な資格です。

このペタゴーの資格をもつ生活支援員のステーションがあります。そのステーションは障がい者が集う場所となっており、障がい者が自立した生活を送れるよう、さまざまなサポートがおこなわれます。

たとえば障がい者のカップルが子どもを生み育てたいと希望したときは、子育て経験ができる赤ちゃん人形がステーションから貸し出され、ペタゴーの指導のもと子育てについて学びます。

このように障がい者がほかの人と同じように、学んだり、子育てをしたり、具体的に生活することにたいして、専門職が配置されているのが大きな特徴です。

 

デンマークの障がい者雇用

デンマークもまた企業に障がい者を雇用する義務を定めていません。法定雇用率を達成するために障がい者を雇うことよりも、障がいを特別な能力ととらえるビジネス形態を定着させるねらいがあります。

デンマークでは働く障がい者を支援する職業リハビリ訓練や補助金制度などが充実していますが、ここでは「フレックス・ジョブ」をご紹介します。

 

フレックス・ジョブ

フレックス・ジョブ制度は、パートタイムで働く障がい者もフルタイムと同等の給料を受け取れるようにしたものです。

まず企業は障がい者をパートタイムで雇い、労働時間にあった給与を支払います。その金額をフルタイムで働いた場合の給与から引き、残りの金額を自治体が労働者(障がい者)に支払うというものです。

 

デンマークのフルタイムの勤務時間は週で37時間。そこで、たとえば週20時間ほどしか働けない障がい者がいた場合、

20時間分の給与:企業が支払う

残り17時間分 :自治体が支払う

ただし障がいにより生産性が低く、週に20時間働いても、健常者の10時間分ほどの成果を出していた場合は、企業から10時間分の給与、残り27時間分は自治体から支払われるかたちになります。

この制度によって、障がい者が雇用しやすくなっており、また自治体から障がい者に給付される社会保障費も削減されています。フレックス・ジョブ制度を利用する障がい者の数は年々増えています。

 

まとめ

アメリカやイギリスの「差別禁止」、デンマークの「ノーマライゼーション」といった考え方の実現は、今の日本ではむずかしいものです。一人ひとりの意識や、環境、制度を整えていかないといけません。

日本では法定雇用率はどんどん引き上げられ、障がい者雇用がすすんでいるように思われますが、最終的に目指すべきところは、法定雇用率がなくとも採用されやすく、能力を生かしやすく、障がい者がいきいきと働ける障がい福祉でしょう。

 

 

参考

米国調査報告 ~障がい者のさらなる活躍・発信の可能性~

アメリカと日本の障害者雇用や就労支援政策の違い | 障害者と企業をつなぐ就労支援・障害者雇用のTRYZEメディアhttps://tryze.biz/media/knowledge/usa-japan-compare/

【障がい者雇用】世界の障がい者雇用制度!今後の日本の法定雇用率の展望 | 障がい者雇用支援サービス コルディアーレ農園 | 株式会社JSHhttps://www.jsh-japan.jp/cordiale-farm/column/1073/

デンマークにおける障害者の「自立」の考え方−政治と倫理 片岡  豊

北欧研究所 デンマークの障がい者雇用

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